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外見

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12.『外見』

 「船長、前方に文明を持った星があります。」

ピフル人の船員が望遠鏡を眺めながら言った。

「何?それは我々と貿易ができそうな相手か?」船長が訊(たず)ねる。

「ええ、なかなかの文明を持った住民のようです。」

船員が答えると船長は頷きながら言った。

「よし、では〝離脱〟を行え。」

ピフル人は体長が3m近くある上に皮膚が無数のゲジゲジで覆われているため、異星人と交流する際、薄気味悪く思われることが多い。

そこで彼らは、宇宙船から自分の意識を地上の異星人に飛ばし、その体を一時的に操る〝離脱〟と呼ばれる方法を発明したのだ。

この体を通じて会話することで、相手のショックを軽減させるというわけだ。

船長は付け加えて言った。

「意識のある奴は面倒だから、寝ている、それもなるべく地位の高そうな奴を選べ。」

船員は了解です、と答えるとその惑星、地球へと自分の意識を飛ばした。


 数十分で船員の意識が戻ってきた。皆が期待を持って船員に近づくと、船員は信じられないといった顔で話した。

「あれが彼らの敬意なのでしょうか? 皆から崇められていた偉い人を選んで群衆に話しかけようとしたのに、私が近づくと誰もが恐ろしい形相で逃げていきます。会話のしようもありません。とても貿易の話どころでは…。」

その話を聞いた船長は大きくため息をつき、この星から撤退することを皆に伝えた。

我々と似た文明を持った星だと思ったのに残念だ、そんな話をしながら宇宙船は地球を離れてゆく。


 その頃地球では、葬式の最中に棺(ひつぎ)から死者が飛び出し、うわごとを呟きながら人々に近づいてくる、という前代未聞の大騒動に賑わいをみせていた。

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