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11.残念令嬢クラリッサ・フォンテーヌの変身 by ChatArt
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水晶のシャンデリアが燦然と輝く王立貴族学園の大ホール。優雅なワルツの旋律が絢爛たる空間に響き渡り、貴族たちは宝石のように煌めくドレスや燕尾服に身を包み、春の訪れを祝う学祭閉会式典に興じていた。
そんな華やかな宴の片隅で、一人の少女がひっそりと分厚い本に向かっていた。クラリッサ・フォンテーヌ――フォンテーヌ公爵家の令嬢でありながら、灰のような色の地味なドレス、歪んだ眼鏡、手入れもされていないそばかすの茶髪という姿は、周囲の輝きの中ではむしろ異質な存在として浮き彫りになっていた。
「見てよ、あのフォンテーヌ令嬢相変わらずあの格好で」
「今日だって学園の式典なのに、あの服装は流石に無作法じゃないかしら」
「王太子妃候補がそんな姿でいるなんて、王国の恥よ」
囁き声は嘲笑に変わり、好奇の視線はあからさまな侮蔑へと変質していく。しかしクラリッサはそれらを一切気に留める様子もなく、むしろ本のページをめくる指先に集中しているように見えた。
ホールの中央では、王太子フェリックス・アルベルトがエミリア・バロウ男爵令嬢を囲んで談笑していた。金色の髪を完璧に整え、深紅の礼服に身を包んだ王太子は、まさに王国の未来を象徴するような華やかさを放っている。その傍らで、薄桃色のドレスに身を包んだエミリアは、わざとらしく首をかしげながら、時に口元を手で隠しては愛らしく笑い声をあげる。
「フェリックス様、今日のお話し本当に面白かったですわ。お聞きしているだけで、私の心が踊り出しそうです」
「ふふ、エミリア。君はいつもそうやって私を楽しませてくれるね。クラリッサとは大違いだ」
フェリックスがエミリアの手を取ると、周囲の側近候補たちがすぐさま同調する。
「お言葉ですが、エミリア様のような方こそが王太子妃に相応しいと存じます」
「フォンテーヌ令嬢は……残念ながら、王室の威光を背負うにはあまりにも無様でございますな」
そう言ってレオン・ヴァンダールがホールの隅を軽蔑の眼差しで一瞥する。王太子側近候補としての地位を確固たるものにしたい彼にとって、クラリッサの存在は邪魔でしかなかった。
式典が中盤に差し掛かった時、フェリックスは突然立ち上がると、静かに拍手を求める仕草をした。ホール内の注目が一斉に王太子に集まる。
「皆様、本日はこの素晴らしい学祭の閉会式にご列席いただき、誠にありがとうございます」
フェリックスの声は澄んでいて、王族としての威厳に満ちていた。しかしその目は、時折エミリアの方へと向けられ、密かな合図を交わしているように見えた。
「しかしながら、この喜ばしい席ではございますが、私は一つだけ、重大な発表をしなければならないことがございます」
ホール内に緊張が走る。貴族たちは息を詰めて王太子の次の言葉を待った。
フェリックスはゆっくりとホールの隅――クラリッサが座っている方向へと歩み寄ると、彼女を指差した。
「クラリッサ・フォンテーヌ。フォンテーヌ公爵家の令嬢であり、私の婚約者である貴女に、私は今日この場で婚約破棄を宣言します」
一瞬の沈黙の後、ホール内は騒然とした声に包まれた。クラリッサはゆっくりと顔を上げ、眼鏡の奥の灰色の瞳で静かに王太子を見つめる。
フェリックスは続けた。
「その理由は明白です。貴女は貴族としての矜持を完全に失い、王太子妃として相応しくない行為を繰り返しております。特に先日、貴女が学園図書館で『平民の文学』を読んでいるのを目撃されたことは、我が王国の威信を傷つける許し難い行為です」
レオンが前に出て、王太子の言葉を補足する。
「お言葉を返すようですが、フェリックス様の言われる通りでございます。クラリッサ様が読んでおられたのは、明らかに平民向けの低俗な文学書。貴族たるもの、そのような品性を疑う書物に手を出すべきではございません」
エミリアはわざとらしく涙を浮かべながら、クラリッサの方へ歩み寄った。
「クラリッサさん、どうかお気を悪くなさいませんように……私たちはただ、フェリックス様のためを思ってのことです。王太子妃としてふさわしい方が側におられるべきだと思いまして……」
その言葉に、周囲の貴族たちはさらに囁き合った。
「エミリア様は心優しすぎる」
「フォンテーヌ令嬢も大概だが、王太子の面前でこれほどまでに醜態を晒すとは」
「さすがにこれは婚約破棄もやむなしだろう」
クラリッサはゆっくりと立ち上がった。彼女の動きは静かで、まるで周囲の騒ぎなどどこ吹く風というような落ち着きぶりだった。
「お話しはよく分かりました」
彼女の声は意外にも澄んでいて、ホールの隅々まで響き渡った。これまで無愛想で無口だと思われていた彼女の声は、実は驚くほど良く通る美しい声だった。
「ですが、フェリックス様。一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか?」
クラリッサは眼鏡を押し上げると、冷たい灰色の瞳で王太子を真っ直ぐに見つめた。
「貴方がおっしゃる『貴族の矜持』とは、具体的にどのようなものを指しておられるのでしょうか?」
フェリックスは少し面食らったような表情を見せたが、すぐに威厳を取り戻して答えた。
「当然のことだろう。貴族としての品位を保ち、王室の威信を傷つけない行動こそが、矜持というものだ」
「では、去年の冬、王国南部の平民地域で大飢饉が発生した際、貴方が『彼らは自業自得だ』と公言されたことは、貴族の矜持に叶ったお行動なのでしょうか?」
ホール内が水を打ったように静まり返った。フェリックスの顔色が一瞬で青ざめる。
「何を……そんなことをどこで」
「さらに、レオン・ヴァンダール様」
クラリッサの視線が鋭く側近候補に向けられる。
「貴方が『平民の文学』と断じた書物は、実は王国歴史学会が編纂した『平民の労働記録と生活史』という貴重な資料です。貴方はそれをご存じなかったのですか?」
レオンは言葉に詰まり、額に汗を浮かべ始めた。
「そ、それは……まさか……」
クラリッサは静かに壇上へと歩み寄った。彼女の動きは優雅で、これまでの地味な印象とはまるで別人のような威厳に満ちていた。
「図書館で学問に励むことが貴族の品位を傷つけるのであれば、無知と偏見に基づいて他者を断罪する方が、よほど貴族としてあるまじき行為ではないでしょうか?」
ホールの一角から、白髪の老貴族が立ち上がった。学術院の長老として知られるルドルフ公爵である。
「……確かに、その資料は我が学術院も貴重な文献として認めているものだ。平民の生活を記録したものではあるが、決して低俗な書物などではない」
その証言に、ホール内の空気が一変した。これまでクラリッサを冷ややかに見ていた貴族たちの目に、驚きと敬意が浮かび始めた。
フェリックスは顔を紅潮させて反論しようとしたが、クラリッサは先に指輪を外す動作を始めた。
「婚約破棄については、むしろ私からお願いしたいところでした」
彼女はゆっくりと指から銀の指輪を外すと、それを壇上に置いた。
「この指輪は、もう貴方には必要ありません。なぜなら――貴方には、私の真価を見極める目がなかったからです」
クラリッサが振り返り、ホールの出口へと歩き出した。その背中は驚くほど堂々としており、これまでの「残念令嬢」のイメージとはかけ離れていた。
通り過ぎる貴族たちの間から、驚嘆の声が漏れる。
「あの方がフォンテーヌ令嬢だと?」
「まるで別人のようだ……」
「いや、むしろこれが本来の姿なのかもしれない」
エミリアは蒼白な顔でフェリックスの袖を引っ張った。
「フェリックス様、どうかお気になさいませんように。クラリッサさんはただ逆上しているだけですから……」
しかしフェリックスの目は、去り行くクラリッサの背中から離れない。彼の表情には、わずかながら後悔の色が浮かんでいるように見えた。
クラリッサがホールの出口に差し掛かった時、彼女は袖の中に隠していた小さな水晶片を取り出した。指先でそっと撫でると、水晶はかすかに輝いた。
――これがフォンテーヌ家の秘伝の力。今日から、私は本当の自分を取り戻す。
彼女の歩みは止まることなく、ホールの重厚な扉を開けて外へ出た。背後には、呆然と立ち尽くす王太子と貴族たち、そして完全に瓦解した婚約の形骸が残された。
夜風がクラリッサの髪を優しく揺らす。彼女は眼鏡を外し、乱れた髪を整えながら、月明かりの下でほのかに輝く学園の庭園を見渡した。
「長い間、偽りの姿を演じてきた……」
彼女の呟きは、突然の雨のように静かに響いた。水晶片はますます強く輝き、まるで彼女の内に秘められた力が目覚めようとしているかのようだった。
「フォンテーヌ家の血を引く者として、私はもはや逃げ隠れしない」
クラリッサの目に、これまでに見たことのない決意の光が宿った。灰色の瞳は月明かりを受けて銀色に輝き、地味なドレスもまた、彼女の内側から滲み出る気高さによって全く異なって見えた。
「フェリックス、エミリア、レオン……そして私を貶めようとした全ての者たちに、真の『残念』とは何かを教えてあげる」
彼女の口元に、ほのかな微笑が浮かんだ。それはこれまでの無愛想な表情とは違い、計り知れない知性と意志を感じさせる笑みだった。
水晶片は再び輝きを増し、クラリッサの手のひらで温もりを放ち始めた。フォンテーヌ家に伝わる秘術の力が、長い眠りから覚めようとしている。
「これからが本当の始まりです」
クラリッサ・フォンテーヌは夜空を見上げ、ゆっくりと息を吸った。彼女の周りに、目に見えない力が渦巻き始めるのを感じながら――
(続く)
そんな華やかな宴の片隅で、一人の少女がひっそりと分厚い本に向かっていた。クラリッサ・フォンテーヌ――フォンテーヌ公爵家の令嬢でありながら、灰のような色の地味なドレス、歪んだ眼鏡、手入れもされていないそばかすの茶髪という姿は、周囲の輝きの中ではむしろ異質な存在として浮き彫りになっていた。
「見てよ、あのフォンテーヌ令嬢相変わらずあの格好で」
「今日だって学園の式典なのに、あの服装は流石に無作法じゃないかしら」
「王太子妃候補がそんな姿でいるなんて、王国の恥よ」
囁き声は嘲笑に変わり、好奇の視線はあからさまな侮蔑へと変質していく。しかしクラリッサはそれらを一切気に留める様子もなく、むしろ本のページをめくる指先に集中しているように見えた。
ホールの中央では、王太子フェリックス・アルベルトがエミリア・バロウ男爵令嬢を囲んで談笑していた。金色の髪を完璧に整え、深紅の礼服に身を包んだ王太子は、まさに王国の未来を象徴するような華やかさを放っている。その傍らで、薄桃色のドレスに身を包んだエミリアは、わざとらしく首をかしげながら、時に口元を手で隠しては愛らしく笑い声をあげる。
「フェリックス様、今日のお話し本当に面白かったですわ。お聞きしているだけで、私の心が踊り出しそうです」
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フェリックスがエミリアの手を取ると、周囲の側近候補たちがすぐさま同調する。
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「フォンテーヌ令嬢は……残念ながら、王室の威光を背負うにはあまりにも無様でございますな」
そう言ってレオン・ヴァンダールがホールの隅を軽蔑の眼差しで一瞥する。王太子側近候補としての地位を確固たるものにしたい彼にとって、クラリッサの存在は邪魔でしかなかった。
式典が中盤に差し掛かった時、フェリックスは突然立ち上がると、静かに拍手を求める仕草をした。ホール内の注目が一斉に王太子に集まる。
「皆様、本日はこの素晴らしい学祭の閉会式にご列席いただき、誠にありがとうございます」
フェリックスの声は澄んでいて、王族としての威厳に満ちていた。しかしその目は、時折エミリアの方へと向けられ、密かな合図を交わしているように見えた。
「しかしながら、この喜ばしい席ではございますが、私は一つだけ、重大な発表をしなければならないことがございます」
ホール内に緊張が走る。貴族たちは息を詰めて王太子の次の言葉を待った。
フェリックスはゆっくりとホールの隅――クラリッサが座っている方向へと歩み寄ると、彼女を指差した。
「クラリッサ・フォンテーヌ。フォンテーヌ公爵家の令嬢であり、私の婚約者である貴女に、私は今日この場で婚約破棄を宣言します」
一瞬の沈黙の後、ホール内は騒然とした声に包まれた。クラリッサはゆっくりと顔を上げ、眼鏡の奥の灰色の瞳で静かに王太子を見つめる。
フェリックスは続けた。
「その理由は明白です。貴女は貴族としての矜持を完全に失い、王太子妃として相応しくない行為を繰り返しております。特に先日、貴女が学園図書館で『平民の文学』を読んでいるのを目撃されたことは、我が王国の威信を傷つける許し難い行為です」
レオンが前に出て、王太子の言葉を補足する。
「お言葉を返すようですが、フェリックス様の言われる通りでございます。クラリッサ様が読んでおられたのは、明らかに平民向けの低俗な文学書。貴族たるもの、そのような品性を疑う書物に手を出すべきではございません」
エミリアはわざとらしく涙を浮かべながら、クラリッサの方へ歩み寄った。
「クラリッサさん、どうかお気を悪くなさいませんように……私たちはただ、フェリックス様のためを思ってのことです。王太子妃としてふさわしい方が側におられるべきだと思いまして……」
その言葉に、周囲の貴族たちはさらに囁き合った。
「エミリア様は心優しすぎる」
「フォンテーヌ令嬢も大概だが、王太子の面前でこれほどまでに醜態を晒すとは」
「さすがにこれは婚約破棄もやむなしだろう」
クラリッサはゆっくりと立ち上がった。彼女の動きは静かで、まるで周囲の騒ぎなどどこ吹く風というような落ち着きぶりだった。
「お話しはよく分かりました」
彼女の声は意外にも澄んでいて、ホールの隅々まで響き渡った。これまで無愛想で無口だと思われていた彼女の声は、実は驚くほど良く通る美しい声だった。
「ですが、フェリックス様。一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか?」
クラリッサは眼鏡を押し上げると、冷たい灰色の瞳で王太子を真っ直ぐに見つめた。
「貴方がおっしゃる『貴族の矜持』とは、具体的にどのようなものを指しておられるのでしょうか?」
フェリックスは少し面食らったような表情を見せたが、すぐに威厳を取り戻して答えた。
「当然のことだろう。貴族としての品位を保ち、王室の威信を傷つけない行動こそが、矜持というものだ」
「では、去年の冬、王国南部の平民地域で大飢饉が発生した際、貴方が『彼らは自業自得だ』と公言されたことは、貴族の矜持に叶ったお行動なのでしょうか?」
ホール内が水を打ったように静まり返った。フェリックスの顔色が一瞬で青ざめる。
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ホールの一角から、白髪の老貴族が立ち上がった。学術院の長老として知られるルドルフ公爵である。
「……確かに、その資料は我が学術院も貴重な文献として認めているものだ。平民の生活を記録したものではあるが、決して低俗な書物などではない」
その証言に、ホール内の空気が一変した。これまでクラリッサを冷ややかに見ていた貴族たちの目に、驚きと敬意が浮かび始めた。
フェリックスは顔を紅潮させて反論しようとしたが、クラリッサは先に指輪を外す動作を始めた。
「婚約破棄については、むしろ私からお願いしたいところでした」
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「この指輪は、もう貴方には必要ありません。なぜなら――貴方には、私の真価を見極める目がなかったからです」
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「あの方がフォンテーヌ令嬢だと?」
「まるで別人のようだ……」
「いや、むしろこれが本来の姿なのかもしれない」
エミリアは蒼白な顔でフェリックスの袖を引っ張った。
「フェリックス様、どうかお気になさいませんように。クラリッサさんはただ逆上しているだけですから……」
しかしフェリックスの目は、去り行くクラリッサの背中から離れない。彼の表情には、わずかながら後悔の色が浮かんでいるように見えた。
クラリッサがホールの出口に差し掛かった時、彼女は袖の中に隠していた小さな水晶片を取り出した。指先でそっと撫でると、水晶はかすかに輝いた。
――これがフォンテーヌ家の秘伝の力。今日から、私は本当の自分を取り戻す。
彼女の歩みは止まることなく、ホールの重厚な扉を開けて外へ出た。背後には、呆然と立ち尽くす王太子と貴族たち、そして完全に瓦解した婚約の形骸が残された。
夜風がクラリッサの髪を優しく揺らす。彼女は眼鏡を外し、乱れた髪を整えながら、月明かりの下でほのかに輝く学園の庭園を見渡した。
「長い間、偽りの姿を演じてきた……」
彼女の呟きは、突然の雨のように静かに響いた。水晶片はますます強く輝き、まるで彼女の内に秘められた力が目覚めようとしているかのようだった。
「フォンテーヌ家の血を引く者として、私はもはや逃げ隠れしない」
クラリッサの目に、これまでに見たことのない決意の光が宿った。灰色の瞳は月明かりを受けて銀色に輝き、地味なドレスもまた、彼女の内側から滲み出る気高さによって全く異なって見えた。
「フェリックス、エミリア、レオン……そして私を貶めようとした全ての者たちに、真の『残念』とは何かを教えてあげる」
彼女の口元に、ほのかな微笑が浮かんだ。それはこれまでの無愛想な表情とは違い、計り知れない知性と意志を感じさせる笑みだった。
水晶片は再び輝きを増し、クラリッサの手のひらで温もりを放ち始めた。フォンテーヌ家に伝わる秘術の力が、長い眠りから覚めようとしている。
「これからが本当の始まりです」
クラリッサ・フォンテーヌは夜空を見上げ、ゆっくりと息を吸った。彼女の周りに、目に見えない力が渦巻き始めるのを感じながら――
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