彼女と突然別れて落ち込んでいたはずの俺が、次の日から色んな女の子と仲良くなっているのはなぜだ?

リン

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第十六話 コンビニからの帰路

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「……ありがとうございました。……この辺りに……私の家があります……。
 お兄ちゃんと、一緒にお話が出来て……今日は、とても楽しかったです……。」


 俺の右隣を歩くかずはちゃんが俺の家の近くに差し掛かった辺りの場所で、突然俺にそのように伝えてきた。


 俺とかずはちゃんはコンビニから出た後、2人で一緒にかずはちゃんの家の辺りまで、会話をしながら歩いて来た訳であるが……、どうやら俺の家の近所、ここら辺の住宅街にあるどれか一つの家が、『かずはちゃん』の家であるようだ。


「へー、ここら辺にかずはちゃんは住んでるんだ。意外と近所かもしれないね俺達。
 それに実は、俺もこの近くに家があるんだよ。もしかすると、どこかでまた会える事があるかもしないね?
 今日は俺も楽しかったよ。かずはちゃん。またいつか、どこか時間がある時に会う事が出来たら……、また一緒にお話しようね?」


 俺はかずはちゃんにそう言って、繋いでいた右手をゆっくりと離す。

 もう家が近いと言うのなら、送るのはここまでで十分だろう。

 それに俺の方も早く帰って、雫に色々とお礼を言わないといけないしな……。


 俺はそう思いつつ、離した右手でかずはちゃんにバイバイと手を振る。


 すると、それを見たかずはちゃんは意外にも引き留める等を行う事は無かった。


「……はい!また、お会いましょう。……お兄ちゃん!」


 そう言ってこちらにバイバイと手を振り返してから……、くるりと背を向け、ある一軒の家に向かってそのまま歩き出すのだった。

 俺はそんな後ろ姿を、一応その姿が完全に俺からは見えなくなるまで見送る。

 もし俺が少しでも目を離した時に……、なんてなったらホントに嫌だしな。


 そしてついには、俺の視界からかずはちゃんが見えなくなるという所で、ピタリとかずはちゃんは立ち止まった。


「(おっ?あそこがかずはちゃんのお家かな?結構綺麗な大きいお家で……、なんか良いとこのお嬢さまの家って感じの家だなぁ。
 かずはちゃん、言葉遣いも丁寧だったし、もしかすると本当のお嬢さま……だったりして?まあ、もしホントにそうでも、それでどうという事はないんだけど……。)」


 俺はそんな事を思いながら、俺も自宅に帰ろうとその場から背を向けて……、ふと、その場に立ち止まる。


「(あれ?そういえばかずはちゃんって、苗字は何て言うんだ?ここまで話しながら帰って来たけど、苗字はまだ聞いてなかったな……?
 しかも年齢や学年、それに在学している学校の名前だって、かずはちゃんからは聞いてないし……、これじゃあ、本当に次会う気があるのか?って話だよな……。)」


 俺はかずはちゃんと話をする事が楽しくて、全くと言っていい程に彼女の情報を知らないと、その時になって初めて気がついた。

 おそらく、あの身長とあどけない顔付きからすると……、中学生?くらいだとは思うんだが、本人に正確な事を聞いていないから、それも予測の域を出ない。

 もし中学生であれば、下校の時間に一緒になる可能性もあるが……、もし小学生であれば確実にもう会う事はないだろう。(そもそも、帰宅の時間帯が全然違うから。)


 しかし、あれを小学生……いや、中学生と言うにはとても……。


「その……デカすぎるよな……、主に一部の身体的特徴が……。」


 誰もいない路地で一人、そんな事を呟く。

 そう……。今朝もなんかこんな感想を女性に対して抱いてしまったのだが、先程のかずはちゃんも三葉先輩程ではないけれど、十分に巨乳と言える程の大きな胸をしていたのだ。

 視認するだけでは少々分かりにくいかもしれないが……、近くで、それも肩と肩が触れ合う程の距離を歩いていた俺には、その大きさがハッキリと分かってしまっていた。

 何と言っても俺に手を振る際、ムギュッと目に見える形でそこが潰れていたので……。


 俺はそんなかずはちゃんの身体的特徴について、色々思い巡らしそうになってーー


「……って!はっ!俺は本当に変態か!?女の子の体、それも中学生くらいの子のそんな所を思い浮かべるなんて!
 いや、そんな事より……苗字!かずはちゃんの苗字についての方が気になるんだよ!もしかすると、友達の誰かの妹って可能性もある訳だし……、なんたって、俺のことを『お兄ちゃん』って呼んでたくらいなんだから。」


 俺は危うく変な方向に逸れて行きそうになった思考を元に戻し……、かずはちゃんの苗字について改めて興味を抱いた。

 別に知ってどうする訳ではないが、あんな風に懐いて色々話をしていた子の名前を、正確に把握していないというのは……、どこか変な感じがしたのだ。


 本人が意識的に言わなかったのか、はたまた唯上の名前を伝え忘れただけなのか……その理由は今となっては確認する術はないが、なぜかそれがその時の俺には言葉で言い表せない不安な感覚に陥らせていたのだ。

 そして、本人に直接聞いてはおらず許可を取っていない事に罪悪感を覚えたが、俺はかずはちゃんの家の表札見に行く事にした。

 また今度会った時に、ちゃんとそれをかずはちゃんに謝罪すると心に誓いながら……。


 そうして、いざ……、かずはちゃんが入っていった家の近くまで歩み寄っていた所ーー


「あれ……?相太くん……?」


 背後からそんな声が聞こえてきて、俺が驚きながら振り返るとそこには……えっ?


「み、三葉先輩……ですか?」


 思わず疑問系になってしまったが、俺が振り返るとそこには紛う事なき三葉先輩その人が、戸惑う様子で立っていたのであった。


 突然の先輩の登場には流石に驚いてしまったが……、ここは一旦落ち着こう。

 まだ俺が、他所様のお家の表札を勝手に覗き見ようとしていた事は……、おそらく三葉先輩にはバレていない筈だ。


 なので、それを勘付かれないようにと、テキトウな世間話でもして……。


「相太くん?どうかしましたか?何やら少し動揺しているようにも見えますが……、そういえば、こんな時間にこんな所に立ち止まって……、一体何をしていたのですか?」


 俺がテキトウな世間話を振るよりも先に、三葉先輩の方から俺が何をしていたのかと聞いてきてしまった。

 先輩は特に俺の事を怪しんでいる様子ではないが、純粋にこんな所で何をしているのかが気になったのだろう。


 正直気になっている先輩、雫と同じく、俺の事を元気付けてくれた優しい三葉先輩。

 俺はそんな人に変な奴だと思われたくなくて、咄嗟に早口で捲し立ててしまう。


「い、いえ……。何かをしていたとかそういう訳ではなくて……、そう!の子を見送っていただけなんです!俺もこの辺りの近くに家があるんで、それで……。
 と、とにかく!その子は無事見送れたので俺もう帰りますね?また明日です!先輩!」


 誤魔化すように早口になりながら俺はそう言うと、先輩からの返答を聞く事なく逃れるようにしてその場を立ち去るのだった……。

 後ろで先輩の「また、明日……です?」と、戸惑う声が聞こえてきたが、少しの嘘でも先輩についてしまった罪悪感から、俺の足はその声によって止まる事はなかった。

 そうして、長かったようであっという間に過ぎた1日が、新しい出会いと戸惑いの中、その1日の幕を下ろしたのであった……。




ーーー帰宅後『雫への贈り物』ーーー

 帰ってから俺は、謝罪と感謝の言葉を共に雫にプリンをプレゼントした。

 そして、それを雫は「ありがとう!」と言って、受け取ってくれたのだが……。


「お兄ちゃんにはいつも優しくして貰っているし、別にそんな気にしないでいいよ……?
 だって私達は、同じ家で暮らす『家族』なんだから。でも、せっかくのお兄ちゃんからの贈り物だし、ちゃんとプリン受け取るね?
 私のために美味しそうなプリンを買って来てくれてありがとう!お兄ちゃん。」


 優しい微笑みと共にそう言った雫は「家族なんだから、幸せは分け合うものだよ?」と続けて言うと、俺が買ってきたプリンを半分わけてくれたのだった。

 俺はそんな雫の優しさに改めて感謝しつつ、今度休日にはどこか連れて行ってあげようと、そんな風に思うのだった……。
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