彼女と突然別れて落ち込んでいたはずの俺が、次の日から色んな女の子と仲良くなっているのはなぜだ?

リン

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第十八話 朝の一幕・登校中

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「……うーん。流石にさっきのはやり過ぎたな。雫もあんなに真っ赤になるまで我慢してたみたいだし、今度からは少し注意しよう。
 でないと、雫の事を際限なく撫で続けてしまう可能性があるし……。」


 俺は朝の一件をボンヤリ思い出してそのように呟きながら、いつも通りの学校までの通学路を歩いて行く。

 今朝の登校前、そこで見せた雫の照れたような顔はとても可愛らしくて、ずっと見ていたいようなものではあった。

 しかし可愛いからと言っても、別に俺は雫を困らせたい訳では無いのだ。

 俺は雫の照れた顔、そして焦るような態度を思い出しながらそんな事を考えていた。


「(別に雫が嫌がっているようには見えなかったし、単純に兄から長時間撫でられる事に羞恥心を抱いたんだろうな。)」


 だから、次同じ事があるとするなら、今度は雫の反応を見て行う事にしようと思う。

 それが良い兄妹関係を続けていくためには、重要であり必要であると思うからだ。


 などと俺は言って結論付け、雫との朝の一件についての考えをまとめたのだが、考えないといけない問題は他にもあって……。


「まあ、雫の事は帰ってから考えるとして、それより目下の問題は昨日の事だよな。
『かずはちゃん』の上の名前が知りたくて、その家まで近付いたら、ちょうどそのタイミングで三葉先輩と鉢合わせするとはな……。
 あの時は思わず逃げだしてしまったが、ちゃんと事情を説明した方が良かったのか?
 まあ、今となっては今更どうしようもない事なんだけども……。」


 俺は思わずそう呟いて、昨日の三葉先輩とのバタバタとした別れを思い出す。

 あの時は後ろめたい気持ちで、思わず逃げるように帰って来てしまったが……、よく考えれば、ありのままを先輩に伝えれば良かっただけのような気もする。

 なんでも、かずはちゃんを送った事は事実だし、そこで名前を聞き忘れて気になるというのも、別段おかしな話ではないだろう。


「(あー、そこでちゃんと話しておけば、こんな風に先輩と会うのが気まずくならずに済んだのに……。いつもながら、直情的に動くのをどうにかしないとな。)」


 俺は自身の言動に溜息を吐きつつ、昨日の家の付近まで辿り着く。

 今からでもかずはちゃんの入っていった家を確認すれば、かずはちゃんの上の名前を知る事が出来るが、溜息を吐きたい今の気分では到底そんな事をする気にはなれなかった。


「はぁ……、今日の俺、どんな顔して先輩に会えばいいんだよ……。
 放課後までにはおそらく会う事もあるだろうし、一体どうすればいいのやら……。」

「ーーそんな深い溜息をついて、朝から何かお困り事ですか?相太くん?」

「いえ……。別になんでもありませんよ。三葉先輩。……って、えっ!?三葉先輩?」


 俺が溜息を吐きながら、その家の近くをそのまま歩き去ろうとしていた所、背後から、三葉先輩の俺を心配する声が突然聞こえた。

 まさか今まさに考えていたその人が、いきなり俺に声を掛けてくるなんて……こんな偶然あるのだろうか?

 俺は驚きを隠せないまま、声のした方を振り向くと、やはり三葉先輩がそこにいて、その少し後ろにはもう一人、背の低め女の子が立っていてーーって、ええ!?


「えぇ!?か、かずはちゃん!?なんで君がここに?」


 思わず驚いて大きな声を上げてしまった俺の視線の先には、三葉先輩の後ろからちょこんとこちらに顔を出す、かずはちゃんの姿がそこにはあったのだ。

 そしてその大きな声でビクッとしていたかずはちゃんだったが、先輩の前に立つ人間が俺である事を認識すると、おどおどした顔から一転、パァっとその顔を輝かせると……。


「また……お会い出来ました!……昨日ぶりです!……お兄ちゃん!」


 そう言うや否や、かずはちゃんは俺の前にぴょこんと飛び出して、ぎゅっと俺の手を取ってきたのだった。

 そして俺の手を取ったかずはちゃんは、ニコニコと笑顔で俺の顔を見上げてくる。


「(な、なんで三葉先輩とかずはちゃんがここに!?……ていうか、かずはちゃんが先輩の後ろにいたって事は、もしかしてかずはちゃんと先輩は……知り合い!?)」


 俺が呆然としながら、先輩とかずはちゃんの関係についてあれこれ考えていると……。


和葉かずは!あ、あなた……、相太くんとお知り合いだったのですか!?そ、それにそんなにも相太くんに顔を近づけて羨ま……、い、いえ!何でもありません!
 ーーはっ!もしや、昨日家に帰ったあなたが嬉しそうに話していた『お兄ちゃん』とは、相太くんの事だったのですか!?」


 突然声を上げた先輩がそのよう言ったかと思うと、かずはちゃんとは逆の方……、俺の左側にピッタリとくっつくと、俺の手ではなく腕を取って自身の体に密着させる。

 そして先輩と俺は、お互いの腕と腕を絡めているので、恋人達が行うような腕を組む体勢となってしまっていた。

 その様はまるで、俺を巡ってかずはちゃんと張り合っているようにも見える。


「(……って、自分に都合よく考え過ぎか。かずはちゃんが俺に引っ付いているのを見て、それを先輩も真似しただけだろう。)」


 突然の事態に動揺したままそんな事を考えていると、先輩は説明を求めると言った様子で、かずはちゃんはニコニコとこちらを見上げて、各々が俺の事をじぃっと見てくる。

 2人から急に見つめられた俺は、とりあえず2人の拘束から抜け出しつつ、2人の肩にポンと手を置いて……動転した気持ちのまま、この周りからの注目を集めまくっている状況を打開する提案を試みる。


「と、とりあえず、学校に向かいながら話し合いましょ?俺達の関係とか、先輩とかずはちゃんの関係を含めた話し合いをしながら。」


 俺は何とか2人にそう言うと、周りからの好奇と嫉妬の視線を意識しつつ、そのまま3人で話し合いながら学園に向かうのだった……。



 ・
 ・・
 ・・・
 ・・
 ・



「じゃあ……、三葉先輩と和葉かずはちゃんは姉妹だったって事ですか?それで昨日、あの家が先輩のお家だったから俺とばったり遭遇したと……、そういう訳ですね。
 すいません先輩。昨日は気が動転して逃げるように帰ってしまって……。あと、和葉ちゃんもごめん。家の表札を覗こうとして。」


 俺は三葉先輩から大体の事情を伺い、あの時先輩とは会うべくして遭遇した事を理解して、そのように謝罪の言葉を述べた。

 まさか、先輩と一葉ちゃんが姉妹だとは思わなかったが……、言われてみれば顔の作りや雰囲気など、何処と無く似たものを感じさせる共通点が所々ある。

 まあ、別の部分でもそう思わせる所があるのだが……。


 とにかく今は、2人が姉妹であると知ったとしても、先輩には逃げるように帰った事を、和葉ちゃんには勝手に家の表札を覗こうとした事を真摯に謝る事の方が優先だ。

 そう思った俺は2人に先程の謝罪の言葉を述べたのだった……。


 そして俺の謝罪を聞いた2人は顔を見合わせて、2人は同時に頷くと……。


「「大丈夫ですよ。相太くん(お兄ちゃん)。私達は気にしていませんから。」」


 そう言って、2人共口を揃えて俺の謝罪を受け入れてくれたのだった。


 その後話のまとまった俺達は、3人仲良く話をしながら歩みを進め、気がつくともう学校の近くまで辿り着いていた。

 その間も、右手は和葉ちゃんが握り、左腕の方は先輩が確保していた。

 もちろん、そんな姿で学園まで登校してきた俺が、男子からは殺気立った目で、女子からは好奇と戸惑いの目で見られまくっていた事は言うまでもないだろう……。


 そして学校の校門の前に差し掛かり、様々な視線がより一層強くなった事を感じていた俺は、ふと何かを忘れているような気がして考えてみると……、本日の日直が自分である事をその時になって思い出した。

 それに気づいた俺は、すぐさま2人に謝罪を入れて、早く教室に向かうべく、1人だけ先に学校へと走って行くのだった……。



 それから、和葉ちゃんと一緒に登校しつつ聞いたのだが、まさかの和葉ちゃんは俺と同級生の一年生であり、呼び方を変えようとしたのだが、『……お兄ちゃんはそのままの呼び方がいいです……。』との要望があり、引き継ぎ和葉ちゃんと呼ぶ事になった。

 自分と同じ年齢の同級生を『ちゃん』を付けて、相手からは『お兄ちゃん』と呼ばれるのは違和感だが、あのうるうるした瞳で頼まれると断れないのだった……。
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