94 / 165
第二部三章 風を切る翼
(あだ花姫)別れ
しおりを挟む
「パパァ……」
私より先に娘が仕事から帰ってきた夫の足に抱きつく。
シュナイダーと結ばれて四年が経った。
二歳になる娘は夫と同じ金色の翼を持って生まれた。
翼を持って生まれた娘を見た時、夫は声をあげて泣いた。
訓戒を受けた者から、天人は生まれることはない。
しかし娘は天人としての祝福を受けたのだ。
「クリスティーナ、娘を天界にいる両親に預けようと思っている。
天人として学ぶべき事が地上では教えてあげられない。
今は翼が小さいからごまかせるが、そのうち隠せなくなる。
娘には翼を隠して生きるより、堂々と生きてほしいんだ。」
夫の言葉にうなずくことしか出来なかった。
私も夫も本当の姿を隠して暮らしている。
だからせめて娘にはありのまま暮らして欲しい。
親なら子供の幸せを願うのは当たり前だ。
「ママァ…」
夫に抱かれてご満悦な娘が小さな金色の翼をパタパタ羽ばたかせて喜んでいる。
「二人とも愛しているわ」
私は夫と娘に抱きついた。
私さえいなくなれば、天人の二人なら共に天界へ戻れるのに…
私は知っている。
夫に啓示が降りたことを。
真夜中目が覚めた時、夫がベッドに居ないことに胸騒ぎを覚えて眠っている娘を起こさぬよう、静かに部屋を抜け出したのだ。
リビングの窓辺に夫は跪き祈りを捧げている。
月明かりに照らされて金色の翼が光を帯びて見える。
一瞬、部屋中が眩しくなったと思ったら夫の身体が光を放ちはじめる。
「私には妻が居るので帰れません。
主よ…娘をお願いします。私は妻と二人、ここで暮らそうと思います。」
夫は私のせいで失ってばかりだ。
私さえいなければ、私さえあの夜、教会に行かなければ……
夫には天人としての輝かしい未来があったのに…
翼を折り畳み隠して暮らすことなどなかったのに。
娘の3回目の誕生日。
お祝いを終えた次の日、
娘を天界の夫の両親に預けることになっている。
「あなたご馳走を作って待っているわ。
いってらっしゃい…」
笑顔で娘と二人夫を見送る。
私は小さなカバンに荷物をまとめ裏庭の作業小屋にそれを隠す。
小さなケーキと娘の大好きなオムレツ、夫の好物のロールキャベツ、ポテトのチーズソースを机に並べる。
夫と娘と過ごす最後の夜。
無邪気に笑う娘を、それを愛おしそうに見つめる夫の姿を脳裏に焼きつける。
三人で娘を真ん中にはさんで眠りにつく……
夫の規則正しい寝息と娘の小さな寝息が聞こえてくる。
私は静かに部屋を出るとそのまま二度と家に戻ることはなかった。
何故なら裏庭の小屋へと向かう途中、翼のもがれた男に連れ去られたからだ。
私は囚われの身となり、孕女として犯され続ける。
エンドロールが流れる。
次の朝、私の置き手紙を読んで狂ったように私を探し回る夫と泣き続ける娘。
娘を自分の両親に預けると夫は私を探す旅にでる。
まるで浮浪者のようは出で立ちになりながらも、懸命に私を探し求める。
七度目の冬が過ぎた後、夫は私を見つけ私を解放するために自らの手で翼をもぎ取る。
犯され生まされ続けた私はもう廃人だった。
それでも夫は何のためらいもなく美しい金色の翼と引き換えに私を救ったのだ。
そしてエンドロールの終わりに夫は冷たくなった私を抱きしめたまま自らの首をナイフで突き刺して命を絶つ。
「クリスティーナ、来世こそ幸せになろう」
目が覚めると私は着の身着のままシュナイダーを探す。
「シュナイダー」
あの泉のほとりにシュナイダーが立っている。
泣きながら彼の背中に抱きつく。
「思い出したのか?
馬鹿だな…思い出さなければ傷つかずにすんだのに…」
私は首を横にふる。
「あの頃…私の生きる意味は全てシュナイダー貴方だけでした。」
私の言葉にシュナイダーが声をあげて泣き始める。
今ではない前世の記憶。
それでも私達にとって確かに愛し合った日々は紛れもなく本物だった。
「一度だけキスしていいかい?クリスティーナの温もりを匂いを覚えておきたいんだ。」
私達は一度だけ触れるだけの優しいキスを交わした。
今生の別れと、過去への決別として……
次の日の朝…おじ様と殿下と私はStairway to Heavenで海底国アクアミューズへと向かった。
見送りにきてくれたみんなに手を振る。
その中にシュナイダーは居なかった。
私は最後にお祖父様に抱きつき別れを告げた。
「心のままに……
私は何があろうとミカエルを信じるよ。」
祖父の言葉を胸に天界を後にした。
私より先に娘が仕事から帰ってきた夫の足に抱きつく。
シュナイダーと結ばれて四年が経った。
二歳になる娘は夫と同じ金色の翼を持って生まれた。
翼を持って生まれた娘を見た時、夫は声をあげて泣いた。
訓戒を受けた者から、天人は生まれることはない。
しかし娘は天人としての祝福を受けたのだ。
「クリスティーナ、娘を天界にいる両親に預けようと思っている。
天人として学ぶべき事が地上では教えてあげられない。
今は翼が小さいからごまかせるが、そのうち隠せなくなる。
娘には翼を隠して生きるより、堂々と生きてほしいんだ。」
夫の言葉にうなずくことしか出来なかった。
私も夫も本当の姿を隠して暮らしている。
だからせめて娘にはありのまま暮らして欲しい。
親なら子供の幸せを願うのは当たり前だ。
「ママァ…」
夫に抱かれてご満悦な娘が小さな金色の翼をパタパタ羽ばたかせて喜んでいる。
「二人とも愛しているわ」
私は夫と娘に抱きついた。
私さえいなくなれば、天人の二人なら共に天界へ戻れるのに…
私は知っている。
夫に啓示が降りたことを。
真夜中目が覚めた時、夫がベッドに居ないことに胸騒ぎを覚えて眠っている娘を起こさぬよう、静かに部屋を抜け出したのだ。
リビングの窓辺に夫は跪き祈りを捧げている。
月明かりに照らされて金色の翼が光を帯びて見える。
一瞬、部屋中が眩しくなったと思ったら夫の身体が光を放ちはじめる。
「私には妻が居るので帰れません。
主よ…娘をお願いします。私は妻と二人、ここで暮らそうと思います。」
夫は私のせいで失ってばかりだ。
私さえいなければ、私さえあの夜、教会に行かなければ……
夫には天人としての輝かしい未来があったのに…
翼を折り畳み隠して暮らすことなどなかったのに。
娘の3回目の誕生日。
お祝いを終えた次の日、
娘を天界の夫の両親に預けることになっている。
「あなたご馳走を作って待っているわ。
いってらっしゃい…」
笑顔で娘と二人夫を見送る。
私は小さなカバンに荷物をまとめ裏庭の作業小屋にそれを隠す。
小さなケーキと娘の大好きなオムレツ、夫の好物のロールキャベツ、ポテトのチーズソースを机に並べる。
夫と娘と過ごす最後の夜。
無邪気に笑う娘を、それを愛おしそうに見つめる夫の姿を脳裏に焼きつける。
三人で娘を真ん中にはさんで眠りにつく……
夫の規則正しい寝息と娘の小さな寝息が聞こえてくる。
私は静かに部屋を出るとそのまま二度と家に戻ることはなかった。
何故なら裏庭の小屋へと向かう途中、翼のもがれた男に連れ去られたからだ。
私は囚われの身となり、孕女として犯され続ける。
エンドロールが流れる。
次の朝、私の置き手紙を読んで狂ったように私を探し回る夫と泣き続ける娘。
娘を自分の両親に預けると夫は私を探す旅にでる。
まるで浮浪者のようは出で立ちになりながらも、懸命に私を探し求める。
七度目の冬が過ぎた後、夫は私を見つけ私を解放するために自らの手で翼をもぎ取る。
犯され生まされ続けた私はもう廃人だった。
それでも夫は何のためらいもなく美しい金色の翼と引き換えに私を救ったのだ。
そしてエンドロールの終わりに夫は冷たくなった私を抱きしめたまま自らの首をナイフで突き刺して命を絶つ。
「クリスティーナ、来世こそ幸せになろう」
目が覚めると私は着の身着のままシュナイダーを探す。
「シュナイダー」
あの泉のほとりにシュナイダーが立っている。
泣きながら彼の背中に抱きつく。
「思い出したのか?
馬鹿だな…思い出さなければ傷つかずにすんだのに…」
私は首を横にふる。
「あの頃…私の生きる意味は全てシュナイダー貴方だけでした。」
私の言葉にシュナイダーが声をあげて泣き始める。
今ではない前世の記憶。
それでも私達にとって確かに愛し合った日々は紛れもなく本物だった。
「一度だけキスしていいかい?クリスティーナの温もりを匂いを覚えておきたいんだ。」
私達は一度だけ触れるだけの優しいキスを交わした。
今生の別れと、過去への決別として……
次の日の朝…おじ様と殿下と私はStairway to Heavenで海底国アクアミューズへと向かった。
見送りにきてくれたみんなに手を振る。
その中にシュナイダーは居なかった。
私は最後にお祖父様に抱きつき別れを告げた。
「心のままに……
私は何があろうとミカエルを信じるよ。」
祖父の言葉を胸に天界を後にした。
10
あなたにおすすめの小説
思い込みの恋
秋月朔夕
恋愛
サッカー部のエースである葉山くんに告白された。けれどこれは罰ゲームでしょう。だって彼の友達二人が植え込みでコッチをニヤニヤしながら見ているのだから。
ムーンライトノベル にも掲載中。
おかげさまでムーンライトノベル では
2020年3月14日、2020年3月15日、日間ランキング1位。
2020年3月18日、週間ランキング1位。
2020年3月19日、週間ランキング1位。
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる