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横川ガード下探偵団 結成篇 8 ~あの夏、僕らは名前をつけた~
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第8章「ケンジの過去」
その夜、テツとケンジの二人が、商店街の外れにある公園に残った。
他のメンバーは解散していた。ナツは「本を少し持ち帰っていいか」と浜田に聞き、今日だけという約束で持ち帰ることにした。ミクはのぐちの夕方の片付けがある。ユイは夕飯の時間が決まっている。ショウタは「少し用事がある」と言って一人で行った。
ケンジがなんとなく公園のベンチに座っていると、テツが自転車を止めてそばに来た。特に理由があって残ったわけではなく、なんとなく二人になった。
「何か考えてるな」とテツが言った。
ケンジは「別に」と言ってから、その答えが嘘だと思って止めた。「まあ、少し」と言い直した。
「浜田さんの話を聞いてから?」
「それもあるし、ずっと考えてたことがあって」
テツはベンチの端に座った。向こうの方で、夜の商店街の提灯の明かりが揺れている。祭りの準備の提灯だ。
「言いたくなければ別にいい」とテツは言った。
「言いたくないわけじゃないけど」ケンジは少しの間黙った。「恥ずかしい話だから」
「俺は笑わない」
「その言葉、信じていいの?」
「笑ったことない、人の恥ずかしい話で」
ケンジはテツをちらりと見た。確かにそういう人間に見えた。人の話を笑うタイプではない。
「夏休みの前に」ケンジは話し始めた。「クラスのグループで、夏休みの旅行の計画を立ててた。ちょっとした遊び計画で、近くの海に行こうとか、キャンプしようとか」
「うん」
「グループの中に、田村っていう男がいて。そいつが計画をすごく引っ張ってた。予算とか、場所とか、全部自分で決めようとしてた。他の子が意見を言っても、なんか流すというか、自分のやりたいようにしようとしてた」
「よくいるタイプだな」
「そう。で、俺は」ケンジは少し口をつぐんだ。「それが嫌だなと思って。みんなの旅行なのに、一人が全部決めるのはおかしいって。それで、みんながいる前で、田村に言ったんだ。『みんなの意見も聞くべきだ』って」
「言ったことは正しいんじゃないか」
「言ったことはそうかもしれない。でも言い方が」ケンジは少し力のない顔をした。「田村がみんなのために頑張ってたのは本当だったのに、俺の言い方が攻撃してるみたいになって。田村、すごく傷ついた顔してたんだ。その後、何も言わなくなって、旅行の計画も全部取りやめになって」
「それで気まずくなった」
「田村に直接謝れてない。言いに行こうとするたびに、なんか言葉が見つからなくて。夏休みに入ってから、ずっと」
テツは黙っていた。公園の木が夜風に揺れた。
「お前が言ったことは」とテツはゆっくり言った。「正しかったと思う。田村が傷ついたのも、本当だったかもしれない。二つとも本当のことで、どっちかが嘘じゃない」
「そうは思うけど」
「謝ることと、自分が正しかったことは、別じゃないか」テツは言った。「お前は正しいことを言った。でも言い方が相手を傷つけた。それについて謝る。正しかったことまで謝らなくていい」
「それ、どこかで聞いた?」
「聞いてない。思っただけ」
ケンジはテツを見た。テツはいつもの眠そうな目で、公園の先を見ていた。
「テツって」ケンジは言った。「なんか、言い方が面白いね」
「面白いとは何が」
「ぶっきらぼうなのに、ちゃんと的確なところが」
「父親が無口で、俺もそうなっただけだ」
「父親のこと、あまり好きじゃない?」とケンジが聞いた。
「好きだよ」とテツは即答した。「ただ、一緒にいると何を話せばいいか分からないだけで」
「それ、難しいな」
「難しい」テツは認めた。「自転車屋の息子だから自転車屋を継ぐとか、そういう話になると——まだ俺、何もちゃんと決めてないのに、もう決まってる感じがして、走り出したくなる」
「走ることで、考えなくていい?」
「そういうこと」
二人が黙った。商店街の方から、提灯の揺れる光が届いた。
「俺さ」とケンジが言った。「田村に手紙を書こうかと思った」
「今日、浜田さんの話を聞いて?」
「うん。後悔してからじゃ遅いって、なんか分かった気がして」
「手紙ね」テツは言った。「お前、手紙なんて書いたことあるか?」
「ない」
「俺もない。でも、書けるんじゃないか。文具屋の息子なんだし」
「それ全然関係ないけど」
テツが初めて、少し笑った。
「そうだな」と彼は言った。
帰り際、テツがふと「ショウタが探してた場所って、分かった気がする」と言った。
「え、なんで?」
「昨日、父に聞いたら、ガード下だって言ってた。昔の子供の溜まり場。父が子供の頃にいた場所がガード下だった」
「ショウタの父親もガード下で遊んでたのかな」
「同じ世代くらいなら」とテツは言った。「可能性あるかもしれない」
「明日、ショウタに話してみよう」
「そうしよう」
二人は別の方向に帰っていった。商店街の夜に、提灯の光が揺れていた。
つづく
その夜、テツとケンジの二人が、商店街の外れにある公園に残った。
他のメンバーは解散していた。ナツは「本を少し持ち帰っていいか」と浜田に聞き、今日だけという約束で持ち帰ることにした。ミクはのぐちの夕方の片付けがある。ユイは夕飯の時間が決まっている。ショウタは「少し用事がある」と言って一人で行った。
ケンジがなんとなく公園のベンチに座っていると、テツが自転車を止めてそばに来た。特に理由があって残ったわけではなく、なんとなく二人になった。
「何か考えてるな」とテツが言った。
ケンジは「別に」と言ってから、その答えが嘘だと思って止めた。「まあ、少し」と言い直した。
「浜田さんの話を聞いてから?」
「それもあるし、ずっと考えてたことがあって」
テツはベンチの端に座った。向こうの方で、夜の商店街の提灯の明かりが揺れている。祭りの準備の提灯だ。
「言いたくなければ別にいい」とテツは言った。
「言いたくないわけじゃないけど」ケンジは少しの間黙った。「恥ずかしい話だから」
「俺は笑わない」
「その言葉、信じていいの?」
「笑ったことない、人の恥ずかしい話で」
ケンジはテツをちらりと見た。確かにそういう人間に見えた。人の話を笑うタイプではない。
「夏休みの前に」ケンジは話し始めた。「クラスのグループで、夏休みの旅行の計画を立ててた。ちょっとした遊び計画で、近くの海に行こうとか、キャンプしようとか」
「うん」
「グループの中に、田村っていう男がいて。そいつが計画をすごく引っ張ってた。予算とか、場所とか、全部自分で決めようとしてた。他の子が意見を言っても、なんか流すというか、自分のやりたいようにしようとしてた」
「よくいるタイプだな」
「そう。で、俺は」ケンジは少し口をつぐんだ。「それが嫌だなと思って。みんなの旅行なのに、一人が全部決めるのはおかしいって。それで、みんながいる前で、田村に言ったんだ。『みんなの意見も聞くべきだ』って」
「言ったことは正しいんじゃないか」
「言ったことはそうかもしれない。でも言い方が」ケンジは少し力のない顔をした。「田村がみんなのために頑張ってたのは本当だったのに、俺の言い方が攻撃してるみたいになって。田村、すごく傷ついた顔してたんだ。その後、何も言わなくなって、旅行の計画も全部取りやめになって」
「それで気まずくなった」
「田村に直接謝れてない。言いに行こうとするたびに、なんか言葉が見つからなくて。夏休みに入ってから、ずっと」
テツは黙っていた。公園の木が夜風に揺れた。
「お前が言ったことは」とテツはゆっくり言った。「正しかったと思う。田村が傷ついたのも、本当だったかもしれない。二つとも本当のことで、どっちかが嘘じゃない」
「そうは思うけど」
「謝ることと、自分が正しかったことは、別じゃないか」テツは言った。「お前は正しいことを言った。でも言い方が相手を傷つけた。それについて謝る。正しかったことまで謝らなくていい」
「それ、どこかで聞いた?」
「聞いてない。思っただけ」
ケンジはテツを見た。テツはいつもの眠そうな目で、公園の先を見ていた。
「テツって」ケンジは言った。「なんか、言い方が面白いね」
「面白いとは何が」
「ぶっきらぼうなのに、ちゃんと的確なところが」
「父親が無口で、俺もそうなっただけだ」
「父親のこと、あまり好きじゃない?」とケンジが聞いた。
「好きだよ」とテツは即答した。「ただ、一緒にいると何を話せばいいか分からないだけで」
「それ、難しいな」
「難しい」テツは認めた。「自転車屋の息子だから自転車屋を継ぐとか、そういう話になると——まだ俺、何もちゃんと決めてないのに、もう決まってる感じがして、走り出したくなる」
「走ることで、考えなくていい?」
「そういうこと」
二人が黙った。商店街の方から、提灯の揺れる光が届いた。
「俺さ」とケンジが言った。「田村に手紙を書こうかと思った」
「今日、浜田さんの話を聞いて?」
「うん。後悔してからじゃ遅いって、なんか分かった気がして」
「手紙ね」テツは言った。「お前、手紙なんて書いたことあるか?」
「ない」
「俺もない。でも、書けるんじゃないか。文具屋の息子なんだし」
「それ全然関係ないけど」
テツが初めて、少し笑った。
「そうだな」と彼は言った。
帰り際、テツがふと「ショウタが探してた場所って、分かった気がする」と言った。
「え、なんで?」
「昨日、父に聞いたら、ガード下だって言ってた。昔の子供の溜まり場。父が子供の頃にいた場所がガード下だった」
「ショウタの父親もガード下で遊んでたのかな」
「同じ世代くらいなら」とテツは言った。「可能性あるかもしれない」
「明日、ショウタに話してみよう」
「そうしよう」
二人は別の方向に帰っていった。商店街の夜に、提灯の光が揺れていた。
つづく
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