9 / 94
第一章
テレフベニア王国
しおりを挟む
三日目の昼にテレフベニアの城に着いた。
正直色々驚いている。
まず、王都は俺の国の三倍はあるんじゃないかと思うほど大きいし賑わっていた。
散策したくてうずうずする。
そして、この城。
城壁は敵を寄せ付けないであろうと思えるほど強固で立派だった。
軍事大国だと言うのが言葉だけではないのだと見てとれる。
なんか……場違いの世界……。
馬車が止まった。
ラトの手を取って馬車から降りれば、城の大きさに見上げんばかりだった。
長い階段を登りながら、段々と見えてくる城の出入り口。
そのまま通り過ぎた。
お出迎え的なものはないらしい。
うちみたいな弱小国家が各国から来る王女に比べたら歓迎されるわけないか。
「このまま国王陛下に拝謁します。一緒に来るのはミリアンナ様のみで、侍女の方は別の者が先にお部屋へ案内します」
ラトに言われた言葉に驚く。
このまま!? しかも一人で!?
フロルに『助けて』と目で訴えたけれど、『観念しろ』と目で言われた。
急に緊張してきた!
連れてかれた城の大広間の奥の真ん中には、国王陛下が座るであろう立派な椅子があった。
周りには所々に兵士がいるだけで、人なんていなかった。
たった一人で拝謁とは恐れ入る。とりあえずその椅子の前に跪いておく。
男は、片膝をついた姿勢でいいのだけれど、女は両足で跪かないといけない。それがこの国の正式な挨拶だ。
両足で跪いたら、足の踵がお尻に当たって痛ーい! 中腰でもいいかな?でも、中腰は辛い……。
なんて下を向いて座り方に苦労していたら、しばらくしてやってきた誰かの足音が大広間に響く。
国王陛下らしき人物が、椅子に座った気配がした。
「お前がアスラーゼ王国のミリアンナ・ヴァーリンだな。私はアデニス・デラール。このテレフベニアの国王だ。お前の発言を許そう。顔を上げろ」
そっと頭を上げて見れば、肘掛けに肘をついて足を組み、頬を押さえたテレフベニアの国王陛下は、思ったより全然若く見えた。
癖のある金髪に通った鼻筋と金色の瞳。眉間の皺が深くて貫禄のある態度が俺の父とは大違いだ。
これが本物の国王陛下というんじゃないだろうか。威厳のオーラが見えるみたいだ。
後光が差している……。
おっと、挨拶挨拶。
「わ、わたくしは、アスラーゼ王国第一王女ミリアンナ・ヴァーリンと申します。この度は──……よ、よろしくお願い申し上げます……」
やばい……挨拶が頭からすっぽり抜け落ちてた!
お辞儀してとりあえず微笑んでおく。笑うしかない。
緊張もあるけれど、いきなりすぎたし、余計な事言ってもダメだから……これで良しとしよう!
というか、酷使したお尻が痛すぎてそれどころじゃないし!
「ほう……悪くないな。今までで一番話が短い。話の長い女は好かん」
それって好感触って事でいいんだよね?
国王陛下に目をつけられたら、アスラーゼなんてプチッと潰されてもおかしくない。
「まぁ、精々励め」
国王陛下は立ち上がるとさっさと大広間を出て行った。
挨拶が早すぎる! でも、そっちの方がすごく良かった!
中腰の足も限界で、ホッと胸を撫で下ろして立ち上がる。
手のひらがびっしょびしょになってるんですけど……。
ラトがこちらにやってきた。
「では、ミリアンナ様、お暮らしになる屋敷へ案内致します。すぐ近くですが、馬車でどうぞ」
ラトなりの気遣いだったみたいだが、歩いても良かった……。
俺の尻は、限界を迎えて天に召されるかもしれない……。
◆◇◆
「ここがミリアンナ様が過ごすお部屋になります。他国の王女方も隣や上のお部屋にいらっしゃいます」
案内されたのは、城のすぐ近くにある大きなお屋敷だった。
このお屋敷……まさかこの為に作ったとか言わないよな……。だとしたら、かなり裕福な国だというのも納得できる。
比較的新しい建物にそんな事を思ってしまった。
「王女様方は一人部屋になります。一階は全て使用人の部屋になります」
一人部屋はありがたい。男だとバレるリスクが少なくていい。
案内された部屋は、ごく普通の部屋だった。
豪華さも何もないけれど、質素という感じでもない。
よく見れば、調度品は良いものだとわかる。
フロルが軽い片付けをしていてくれたみたいだ。
「レイジェル様にお会いするのは、数日後になるかと思います」
王子に会わなくていいだって?
「わかりました!」
ニコニコとしてしまった俺は、溢れんばかりの感情を誤魔化す事すら忘れてしまう。
「早く会いたいと……思わないんですか?」
「…………」
首を傾げる。
「なぜ?」
質問に質問で返してしまった。
俺からしたら男だとバレる可能性が低くなるし、このまま会わないで婚約者候補から外れる事ができれば万々歳だ。
「いえ。出過ぎた事を言ってしまいました。俺はこれで失礼します。何かあれば、一階にいる使用人に言ってください」
「はい」
そのまま部屋から出たラトと一緒に外に出た。フロルも付いてきてくれる。
「ミリアンナ様? なぜご一緒に?」
折角だからお礼と挨拶がしたいだけだけど……不思議がられても……。
三日間一緒に来てくれていた御者と護衛達は、俺が乗ってきた馬車の前でくつろいでいた。みんなを集めてもらい、ドレスの裾を軽く持ち上げて膝を折る。
「ここまで送ってもらい感謝致します。ありがとうございました」
「「「「!?」」」」
ポカンと口を開けて驚かれてしまった。
お礼を言いたかっただけなのに、なぜそんな風になるのか……。
お世話になったらお礼を言うのは当たり前なのに……。
「そ、それでは、失礼致します……」
居た堪れなくなって、すごすごと部屋に戻って行く。
後をついてきてくれていたフロルに小声で話す。
「フロル……俺、何かやらかした……?」
「いいえ。何も問題有りません」
フロルがフッと笑ってくれた!
間違っていないらしい。良かった。
「──……あのさ、お尻が痛いから、もう休んでいいかな?」
どさくさに紛れてそんな提案をしてみる。
フロルの表情がスッとなくなった。
「また朝までお休みになる気ですか?」
「……ですよね……」
ちょっと言ってみただけだよ……。
正直色々驚いている。
まず、王都は俺の国の三倍はあるんじゃないかと思うほど大きいし賑わっていた。
散策したくてうずうずする。
そして、この城。
城壁は敵を寄せ付けないであろうと思えるほど強固で立派だった。
軍事大国だと言うのが言葉だけではないのだと見てとれる。
なんか……場違いの世界……。
馬車が止まった。
ラトの手を取って馬車から降りれば、城の大きさに見上げんばかりだった。
長い階段を登りながら、段々と見えてくる城の出入り口。
そのまま通り過ぎた。
お出迎え的なものはないらしい。
うちみたいな弱小国家が各国から来る王女に比べたら歓迎されるわけないか。
「このまま国王陛下に拝謁します。一緒に来るのはミリアンナ様のみで、侍女の方は別の者が先にお部屋へ案内します」
ラトに言われた言葉に驚く。
このまま!? しかも一人で!?
フロルに『助けて』と目で訴えたけれど、『観念しろ』と目で言われた。
急に緊張してきた!
連れてかれた城の大広間の奥の真ん中には、国王陛下が座るであろう立派な椅子があった。
周りには所々に兵士がいるだけで、人なんていなかった。
たった一人で拝謁とは恐れ入る。とりあえずその椅子の前に跪いておく。
男は、片膝をついた姿勢でいいのだけれど、女は両足で跪かないといけない。それがこの国の正式な挨拶だ。
両足で跪いたら、足の踵がお尻に当たって痛ーい! 中腰でもいいかな?でも、中腰は辛い……。
なんて下を向いて座り方に苦労していたら、しばらくしてやってきた誰かの足音が大広間に響く。
国王陛下らしき人物が、椅子に座った気配がした。
「お前がアスラーゼ王国のミリアンナ・ヴァーリンだな。私はアデニス・デラール。このテレフベニアの国王だ。お前の発言を許そう。顔を上げろ」
そっと頭を上げて見れば、肘掛けに肘をついて足を組み、頬を押さえたテレフベニアの国王陛下は、思ったより全然若く見えた。
癖のある金髪に通った鼻筋と金色の瞳。眉間の皺が深くて貫禄のある態度が俺の父とは大違いだ。
これが本物の国王陛下というんじゃないだろうか。威厳のオーラが見えるみたいだ。
後光が差している……。
おっと、挨拶挨拶。
「わ、わたくしは、アスラーゼ王国第一王女ミリアンナ・ヴァーリンと申します。この度は──……よ、よろしくお願い申し上げます……」
やばい……挨拶が頭からすっぽり抜け落ちてた!
お辞儀してとりあえず微笑んでおく。笑うしかない。
緊張もあるけれど、いきなりすぎたし、余計な事言ってもダメだから……これで良しとしよう!
というか、酷使したお尻が痛すぎてそれどころじゃないし!
「ほう……悪くないな。今までで一番話が短い。話の長い女は好かん」
それって好感触って事でいいんだよね?
国王陛下に目をつけられたら、アスラーゼなんてプチッと潰されてもおかしくない。
「まぁ、精々励め」
国王陛下は立ち上がるとさっさと大広間を出て行った。
挨拶が早すぎる! でも、そっちの方がすごく良かった!
中腰の足も限界で、ホッと胸を撫で下ろして立ち上がる。
手のひらがびっしょびしょになってるんですけど……。
ラトがこちらにやってきた。
「では、ミリアンナ様、お暮らしになる屋敷へ案内致します。すぐ近くですが、馬車でどうぞ」
ラトなりの気遣いだったみたいだが、歩いても良かった……。
俺の尻は、限界を迎えて天に召されるかもしれない……。
◆◇◆
「ここがミリアンナ様が過ごすお部屋になります。他国の王女方も隣や上のお部屋にいらっしゃいます」
案内されたのは、城のすぐ近くにある大きなお屋敷だった。
このお屋敷……まさかこの為に作ったとか言わないよな……。だとしたら、かなり裕福な国だというのも納得できる。
比較的新しい建物にそんな事を思ってしまった。
「王女様方は一人部屋になります。一階は全て使用人の部屋になります」
一人部屋はありがたい。男だとバレるリスクが少なくていい。
案内された部屋は、ごく普通の部屋だった。
豪華さも何もないけれど、質素という感じでもない。
よく見れば、調度品は良いものだとわかる。
フロルが軽い片付けをしていてくれたみたいだ。
「レイジェル様にお会いするのは、数日後になるかと思います」
王子に会わなくていいだって?
「わかりました!」
ニコニコとしてしまった俺は、溢れんばかりの感情を誤魔化す事すら忘れてしまう。
「早く会いたいと……思わないんですか?」
「…………」
首を傾げる。
「なぜ?」
質問に質問で返してしまった。
俺からしたら男だとバレる可能性が低くなるし、このまま会わないで婚約者候補から外れる事ができれば万々歳だ。
「いえ。出過ぎた事を言ってしまいました。俺はこれで失礼します。何かあれば、一階にいる使用人に言ってください」
「はい」
そのまま部屋から出たラトと一緒に外に出た。フロルも付いてきてくれる。
「ミリアンナ様? なぜご一緒に?」
折角だからお礼と挨拶がしたいだけだけど……不思議がられても……。
三日間一緒に来てくれていた御者と護衛達は、俺が乗ってきた馬車の前でくつろいでいた。みんなを集めてもらい、ドレスの裾を軽く持ち上げて膝を折る。
「ここまで送ってもらい感謝致します。ありがとうございました」
「「「「!?」」」」
ポカンと口を開けて驚かれてしまった。
お礼を言いたかっただけなのに、なぜそんな風になるのか……。
お世話になったらお礼を言うのは当たり前なのに……。
「そ、それでは、失礼致します……」
居た堪れなくなって、すごすごと部屋に戻って行く。
後をついてきてくれていたフロルに小声で話す。
「フロル……俺、何かやらかした……?」
「いいえ。何も問題有りません」
フロルがフッと笑ってくれた!
間違っていないらしい。良かった。
「──……あのさ、お尻が痛いから、もう休んでいいかな?」
どさくさに紛れてそんな提案をしてみる。
フロルの表情がスッとなくなった。
「また朝までお休みになる気ですか?」
「……ですよね……」
ちょっと言ってみただけだよ……。
111
あなたにおすすめの小説
最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~
水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。
「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。
しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった!
「お前こそ俺の運命の番だ」
βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!?
勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる