86 / 94
第四章
とあるご令嬢視点
しおりを挟む
レイジェル殿下に選ばれた婚約者は、どんな人なのかと興味があった。だから、お茶会に出席しようと城までやってきた。ほとんどの令嬢はそうなんだと思う。
城に着いてお茶会の開かれる庭園へ行こうと足を進めていたら、廊下で待ち伏せしていたマリエラに足をとめられた。
「ミリアンナ殿下は、意地悪な人よ。わたくしの頬を叩いてこの城に来るなと言ったのよ」
にわかには信じられない話をされて困惑する。
「わたくしは、子供の時からこの城に出入りが自由なのに、あの人は横暴だわ」
「そうですわね……」
確かにマリエラは、姉のヴェルマと一緒に幼い頃からレイジェル殿下と親しいと聞いている。この話が事実なら、ミリアンナ殿下はレイジェル殿下に相応しくない。
各国の王女の中から選ばれたというレイジェル殿下の婚約者は、レイジェル殿下を騙すほどの悪女なのかもしれない。
「ミリアンナ殿下の所へ行く必要なんてないわ。でも、せっかく来たのだから、こちらに部屋を用意させたの。楽しんで行って」
そう言って案内された部屋には、既に令嬢が何人もいて、優雅に紅茶を飲んでいた。
城の一室を使えるのは、やはりベルエリオ公爵の娘であるマリエラだからだ。
城の窓からは、庭園が見渡せた。
遠目で見るミリアンナ殿下は、笑顔を絶やさずに挨拶しているように見える。
マリエラの頬を叩いて横暴に振る舞うような人物には見えない。
「ほら、見て。出席しているのは令息ばかりよ。ああやって男に取り入るのは得意なのよ」
マリエラがそう言えば、その場にいた令嬢からも非難の声が上がる。
「なんて卑劣な女なのかしら」
「レイジェル殿下に選ばれただけではなく、他の令息にも色目を使うなんて」
確かにあの笑顔も偽物に思えてきた。
それから少しして、庭園に注目していた令嬢が「あっ!」と声を上げた。みんなで庭園に注目すれば、そこにやってきた人物達を見て、ザワリとざわついていた。
「あれは……オアデムのイリーナ殿下……?」
「シェリー殿下だわ」
「フェリシャ殿下よ」
一介の貴族である私も名前なら聞いた事がある人達に驚きを隠せない。
「まさか、このお茶会に出席なさるなんて……」
「ミリアンナ殿下と親そうね……」
「田舎王女じゃなかったのかしら……」
三人は、ミリアンナ殿下と会話を交わすと楽しそうにしている。
各国の王女達が集まるなんて聞いていない。
正式なものじゃないと言われていたけれど、王女達が出席するお茶会を欠席するなんてあり得ない事だ。
貴族として、私はここにいていいのかと自問自答を繰り返す。
「あ、あれぐらいわたくしだって呼べますわ」
マリエラはそう言うけれど、今まで王女の来るお茶会に出席したことはない。
「あ! ほら、見て!」
一人の令嬢が指差した方を見れば、アルネとエレッタとヨランデが挨拶しているのが見える。
「あの子達……さっきまでここにいたわよね?」
私がきた時にはいたはずなのに、周りを確認しても三人はいつの間にかいなくなっていた。
「王女様方とお話ししてるわよ」
「見て……出されたケーキを美味しそうに食べて……」
「随分と嬉しそうね。どんなケーキなのかしら? ここからじゃ見えないわ……」
アルネ達の楽しそうな笑い声がここまで届いてくるようで、どうしようかと戸惑う。よくよく考えれば、横暴な態度を取るのは、マリエラだってそうなのだ。令嬢を足止めしていれば、お茶会に令息しかいないのも当たり前だ。ここにいる令嬢達は、マリエラに逆らえない人が多い。
少しして、他にも数人の令嬢が扉をそっと開けてこの部屋から出ようとするのがわかった。私も行こうかと悩む。
「お待ちになって!」
今にも部屋を出て行こうとしていた令嬢をマリエラが止めてしまう。
「言ったじゃない! このままレイジェル殿下と結婚させてはダメなのよ!」
マリエラはとても必死に見えた。
「でも……」
「殿下に相応しいのは、わたくし以外にいないの!」
そんな事はないと思った所で、中途半端に開いている扉が開いてスッと人が入ってきた。
「レ、レイジェル殿下……」
出て行こうとして偶然近くにいてしまった令嬢が青くなって震える。
レイジェル殿下は、ラトが開いた扉を背に、部屋内にいる令嬢を見回した。
そこにいた全員が金縛りにあったようだった。
城に着いてお茶会の開かれる庭園へ行こうと足を進めていたら、廊下で待ち伏せしていたマリエラに足をとめられた。
「ミリアンナ殿下は、意地悪な人よ。わたくしの頬を叩いてこの城に来るなと言ったのよ」
にわかには信じられない話をされて困惑する。
「わたくしは、子供の時からこの城に出入りが自由なのに、あの人は横暴だわ」
「そうですわね……」
確かにマリエラは、姉のヴェルマと一緒に幼い頃からレイジェル殿下と親しいと聞いている。この話が事実なら、ミリアンナ殿下はレイジェル殿下に相応しくない。
各国の王女の中から選ばれたというレイジェル殿下の婚約者は、レイジェル殿下を騙すほどの悪女なのかもしれない。
「ミリアンナ殿下の所へ行く必要なんてないわ。でも、せっかく来たのだから、こちらに部屋を用意させたの。楽しんで行って」
そう言って案内された部屋には、既に令嬢が何人もいて、優雅に紅茶を飲んでいた。
城の一室を使えるのは、やはりベルエリオ公爵の娘であるマリエラだからだ。
城の窓からは、庭園が見渡せた。
遠目で見るミリアンナ殿下は、笑顔を絶やさずに挨拶しているように見える。
マリエラの頬を叩いて横暴に振る舞うような人物には見えない。
「ほら、見て。出席しているのは令息ばかりよ。ああやって男に取り入るのは得意なのよ」
マリエラがそう言えば、その場にいた令嬢からも非難の声が上がる。
「なんて卑劣な女なのかしら」
「レイジェル殿下に選ばれただけではなく、他の令息にも色目を使うなんて」
確かにあの笑顔も偽物に思えてきた。
それから少しして、庭園に注目していた令嬢が「あっ!」と声を上げた。みんなで庭園に注目すれば、そこにやってきた人物達を見て、ザワリとざわついていた。
「あれは……オアデムのイリーナ殿下……?」
「シェリー殿下だわ」
「フェリシャ殿下よ」
一介の貴族である私も名前なら聞いた事がある人達に驚きを隠せない。
「まさか、このお茶会に出席なさるなんて……」
「ミリアンナ殿下と親そうね……」
「田舎王女じゃなかったのかしら……」
三人は、ミリアンナ殿下と会話を交わすと楽しそうにしている。
各国の王女達が集まるなんて聞いていない。
正式なものじゃないと言われていたけれど、王女達が出席するお茶会を欠席するなんてあり得ない事だ。
貴族として、私はここにいていいのかと自問自答を繰り返す。
「あ、あれぐらいわたくしだって呼べますわ」
マリエラはそう言うけれど、今まで王女の来るお茶会に出席したことはない。
「あ! ほら、見て!」
一人の令嬢が指差した方を見れば、アルネとエレッタとヨランデが挨拶しているのが見える。
「あの子達……さっきまでここにいたわよね?」
私がきた時にはいたはずなのに、周りを確認しても三人はいつの間にかいなくなっていた。
「王女様方とお話ししてるわよ」
「見て……出されたケーキを美味しそうに食べて……」
「随分と嬉しそうね。どんなケーキなのかしら? ここからじゃ見えないわ……」
アルネ達の楽しそうな笑い声がここまで届いてくるようで、どうしようかと戸惑う。よくよく考えれば、横暴な態度を取るのは、マリエラだってそうなのだ。令嬢を足止めしていれば、お茶会に令息しかいないのも当たり前だ。ここにいる令嬢達は、マリエラに逆らえない人が多い。
少しして、他にも数人の令嬢が扉をそっと開けてこの部屋から出ようとするのがわかった。私も行こうかと悩む。
「お待ちになって!」
今にも部屋を出て行こうとしていた令嬢をマリエラが止めてしまう。
「言ったじゃない! このままレイジェル殿下と結婚させてはダメなのよ!」
マリエラはとても必死に見えた。
「でも……」
「殿下に相応しいのは、わたくし以外にいないの!」
そんな事はないと思った所で、中途半端に開いている扉が開いてスッと人が入ってきた。
「レ、レイジェル殿下……」
出て行こうとして偶然近くにいてしまった令嬢が青くなって震える。
レイジェル殿下は、ラトが開いた扉を背に、部屋内にいる令嬢を見回した。
そこにいた全員が金縛りにあったようだった。
113
あなたにおすすめの小説
最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~
水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。
「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。
しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった!
「お前こそ俺の運命の番だ」
βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!?
勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる