大魔法使いは二度目の人生を〝普通〟に楽しみたい

おみなしづき

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入学後

学院生活

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 無事に試験に合格した。
 30人ぐらいいた受験者は20人程度になっていた。

 これから、学院で魔法を学ぶ。
 エルドの時にはできなかった事で、ワクワクする。

 寮は、エルドの時は特別室で一人だったけれど、今回は一部屋をニ人から三人で使うらしい。
 人と一緒に暮らすというのが楽しそうだ。
 与えられた部屋で同室の魔法使い見習いと挨拶を交わす。

「同室のケフィン・フリューリンだ。18歳」

 赤い髪に赤目の男が太陽のような笑顔を見せた。
 典型的な明るい人っぽい。

「エーベルト・ドナフです。17歳です」

 深い森のような緑の髪に黒い瞳の、気の弱そうな眼鏡だった。

「ディノ・バスカルディです。20歳です」
「え? お前が一番年上? 見えないな」
「まぁ、体調が良くなったのが最近なので、皆さんより年は上かもしれませんね」

 みんなでよろしくと言い合う。

「お前らは得意な属性ってあるか? 俺は火が得意だ!」

 ケフィンは見た目通りだな。

「ぼ、僕は、水」

 こっちは見た目と違うらしい。

「僕は……火……ですかね?」

 得意な属性なんてないからちょっと困る。
 今から俺は火が得意にしよう。

「ディノは、見た目が水っぽいのに得意属性は違うんだね」

 それ、俺もエーベルトに思ったから。
 その言葉、そのままお前に返したい。

「ディノって……なんていうか美人だよな」
「それ、僕も思う……男の人なのに緊張するっていうか……」
「髪も綺麗だし、色も白い……」

 二人にじっくりと眺め回される。
 ディノ自体は寝たきりだったからね。
 これでも筋肉をつけた方なんだけれど、もう少し鍛えた方がいいか?

 髪は、切ろうとしたら屋敷の連中に反対されて、切れずじまいだった。
 最初は傷んでいた髪は、体調が良くなるにつれて随分と綺麗になったものだ。

「髪、切ろうかな」

 ボソリとつぶやく。
 屋敷にいた間は、縛ってもらっていたけれど、自分だと縛るのも面倒だ。
 自分の腰まである水色の髪を指先で弄ぶ。

「やめろ! そんな勿体無い事するな!」
「だめ! いつも綺麗にしておいて!」

 ここでも反対されるらしい……。

「でも、縛るの面倒だから……」
「普通に縛ればいいだけじゃない!」

 エーベルトは、大人しそうなやつだと思っていたのに、鼻息を荒くして詰め寄られる。
 どうやら好きな事に夢中になるタイプらしい。
 普通に縛る……普通……なら、縛るか。

「それなら、切りません」
「時々僕にもいじらせて」

 エーベルトが嬉しそうに笑った。
 人の髪を弄るのが好きなのか?
 とりあえず了承する。

「なぁ、一緒に食堂行こうぜ!」

 ケフィンの言葉にエーベルトと頷く。

 これからの生活、楽しくなりそうだ。

     ◆◇◆
 
「ディノ、起きろよ! 初日から遅刻になる……って、うわぁ!」

 布団を半分剥がされて肌寒くなって震える。
 なんだよ? 大きな声を出して驚いたようなのはケフィンか?

 ベッドは一人に一つある。自分のベッドで寝ていたら、ケフィンの声で起こされた。

「ケフィン? どうし……あわわっ! ディノ!」

 エーベルトも朝っぱらからうるさい。
 これじゃ寝ていられない。
 眠い目を擦りながら上半身を起こす。
 ケフィンもエーベルトも顔を真っ赤にする。

「二人ともうるさいですよ……」
「お前っ! 裸で寝るなよ!」
「え? みんな服着て寝るんですか?」

 俺はいつも裸で寝るから服を脱いでいた。

「どうりで昨日寝る前にゴソゴソしてるなって思ったんだ……」
「何も着ない方が気持ちいいです。それにパンツは履いてます」

 もしかして、裸で寝るのは普通じゃないのか?
 普通って難しい……。
 それにしてもなんでそんな反応をするんだ。二人とも真っ赤だ。

「男の裸なんて見慣れているはずですよね?」
「お前の裸はなんか違う!」

 どういう意味だ……。
 エーベルトなんてこっち見ないし。

「と、とにかく、早く着替えろよ!」
「すぐに着替えますよ……」

 人と暮らすって面倒なんだな……。

 エルドだった時は、寮の部屋も一人部屋だったし、森に住んでいた時も一人だった。
 伯爵家でも何も言われなかった。
 裸じゃないと寝られないとかじゃないけれど、裸で寝た方が気持ちがいい。
 寝る時に裸でも文句言う奴はいなかったんだけどな……。

 リンゼイと一緒に住んでいたら怒られてたかな……って、余計な事を考えるな。

 この学院の黒いスラックスを履いて、白シャツを着てネクタイを締める。
 ネクタイの色で学年が分かれているらしい。
 学生服の上に魔法使いのローブを羽織る。
 髪はエーベルトが三つ編みにしてくれた。

「それじゃ、行くか!」
「「はい!」」

 ケフィンの掛け声にエーベルト共に返事をした。
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