男装の公爵令嬢ドレスを着る

おみなしづき

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番外編 レオフィルド

修羅場

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 全員と過ごして少しして、再び全員が集まった。
 家族までも勢揃いだ。
 今回は、ラース兄さんも最初から一緒にいれて嬉しそうだ。

 そして、父に問いかけられた。

「それで、誰にするか決まったか?」
「…………」

 固唾を飲んで見守られた。
 全員の視線が集まって居心地が悪い。
 意を決して結果を言わなくては……。

「──レオフィルド……にしようと思っています」

 思わず立ち上がったレオは、信じられないという顔をしていた。

「僕で……いいの?」
「ああ」

 頷けば、今度はカラムが問いかけてきた。

「彼を選んだ理由は?」
「レオは、私がいないとダメな気がする」
「私もアデルがいないとダメだぞ」

 カラムの言い方に笑う。

「レオは私が手を引いて歩いてきたんだ……だから、この先も手を引いてあげたいというか……私が守ってあげたいんだ」
「私もギルバートも強いからか……?」
「レオだって強くない訳じゃない。でも、レオが私を頼ってくれるのが嬉しいんだ」

 言い切れば、もうそれ以上何も言ってこなかった。
 改めてレオを見れば、まだ実感していないらしい。

「レオ、婚約するにも条件がある」
「なに?」
「さすがにローマンのいる城では暮らせない。レオが城を出る事が条件だ」
「うん。わかってる。王都にある屋敷を使えるように用意する」
「ありがとう」

 父さん達は、私が選んだならと祝福してくれた。
 話が終わってもまだ信じられないという顔をするレオの手を取った。

「どうした? レオらしくないな」
「僕は、自信がなかったから……カラム殿下は僕よりも立派な王子だし、ギルバートは騎士として僕よりもアデルを理解していると思う」
「レオは、私が好きか?」

 握っていた手に力が入った。

「好き! 大好き!」
「その気持ちは誰にも負けないだろう?」

 コクリと頷かれる。

「私もレオが好きだから選んだ。それ以外に何か必要か」
「アデル……大事にする。もっと頼りになる夫になる……」

 やっと嬉しそうに笑うレオに笑顔を返した。

      ◆◇◆

 それから数日後に父と共に城へと来ていた。
 そこにいたのは、国王と王妃、王太子と当事者のローマン、それからレオだった。
 みんなの前で跪いて処罰を待った。

「アデル……君への処罰なんだが……詳しい証言をしたいとレオフィルドが言ってな。不貞をしていたのはローマンだというではないか」
「そうです」

 キッパリと言い切れば、ローマンは立ち上がって憤慨する。

「何を言っているんだ! レオフィルドと不貞していたのはアデルの方だ!」
「レオフィルド殿下とは友人です」
「嘘を言うな! 私との婚約が無くなったからとレオフィルドと婚約するそうじゃないか!」
「そうですね。だからって、レオフィルド殿下と不貞行為があったわけではありません。ローマンとの婚約が無くなったから、レオフィルド殿下が手を挙げてくれたんです」

 これは、レオの名誉の為でもある。
 しっかりと否定しなければならない。

「俺を殴ったのはアデルだ! 不貞を働いたのを誤魔化す為に殴ったんだ!」

 そこで、レオフィルドもローマンを見据える。

「兄上は、アンネマリー嬢とキスしてましたよね? それを見ていたのは、僕とギルバートだけじゃない。店の店員にも確認してもらいましょうか?」
「そ、そんなわけないだろ……!」
「あそこで会うのは初めてじゃないそうですね。アンネマリー嬢とは5年前からあの店で会うことが多いそうですね」

 ローマンがグッと口ごもる。

「ローマン……本当なのか?」

 国王が厳しくローマンを見つめれば、ローマンは慌てて否定する。

「そんな訳ないですよ! この二人が口裏合わせているんですよ!」
「ならば、証人を呼びましょう。僕達以外にもちゃんとした証人を──」

 レオが目配せすれば、そこにいた騎士が広間の外からアンネマリーを連れてきた。
 その他にも数人の女性がいる。
 レオは、アンネマリーに向かって微笑む。

「アンネマリー嬢、君はローマン兄上と付き合っていますよね?」
「もちろん。結婚の約束だってしてますわ」
「ちょっと待て!」

 慌て出したローマンに構うことなく、レオはアンネマリーに問いかける。

「付き合いは5年前からですか?」
「もっと前よ。6年は経つんじゃないかしら?」
「だ、そうですよ、他の皆さんも聞いてましたね?」

 レオが周りの女性に問い掛ければ、アンネマリーとは別の女性が話し出す。

「私も3年前から付き合っています!」
「私もよ!」
「私だって7年経つわ!」

 まさか……ここにいる女性全員と付き合っているんじゃ……?

「ローマン様! どういう事ですか!?」
「私と結婚してくれるって言いましたよね!?」
「私よ! 私だけだって言ったじゃない!」

 これは……修羅場というやつでは……?
 揉めている女性たちを気の毒に思う。全員ローマンに騙されていたという事なんだろう……。

「ローマン、申し開きがあるのか?」

 国王の問い掛けにローマンは首を横に振る。

「俺は知らない! 全員知らない!」

 国王は大きなため息を吐いた。女性から抗議の声がする。

「それで済む訳がなかろう! このたびの事はローマンの自業自得だ! それを人のせいにした上に、色んな女性と通じるだなんて言語道断だ!」

 国王がローマンへため息を吐く。

「ローマンは、王位継承権を剥奪、王子と名乗る事も許さん。それから……そうだな──」

 悩む国王に父が声を掛けた。

「陛下、ローマンをシドラスの騎士団に預けて下さい」
「騎士団に?」
「はい。私が立派な騎士に育てます」

 ニヤリと笑った父に、国王もニヤリと笑って頷く。

「よし! 今日からローマンはシドラスの騎士見習いとしてルドルフの元へ行け!」
「そ、そんなぁ!」
「ルドルフの言う事は、この父の言う事と同じだと思え! お前の居場所はそこだけだ! 逃げ出そうものなら幽閉だ!」
「父上!」
「黙れ! この親不孝者!」

 さすがのローマンも父親には弱いらしい。

「そこにいるお嬢様方も、ローマンは王子でもなければ、家からの援助もない。それでも結婚するか?」
「私は遠慮します」
「私も」

 次から次へと広間から出ていく。
 最後に残ったアンネマリーもローマンをキッと睨んだ。

「王子でないローマン様に何が残るの? わたくしも遠慮しますわ」

 そして、ローマンには誰もいなくなった……。

「アデル、君がローマンを殴ったのは、騎士となるローマンへの稽古の延長だったのだな?」
「え……?」

 国王がウインクしてくる。父もウインクしてくる。
 話を合わせろという事だ。

「は、はい……」
「稽古の延長なら殴るのも仕方ないな。アデルは処罰するに値しない」
「よろしいのですか……?」
「いいも何も、稽古に処罰したら騎士はみんな処罰せねばならなくなる」

 国王陛下も父も満面の笑みで頷いてくれる。

「ありがとうございます!」

 処罰がないとは嬉しい。
 父は早速ローマンを連れて広間を出ていく。これからたっぷり扱かれるんだろう。

 レオは、私の所に来て微笑む。

「アデル、良かったね」
「レオが証言してくれたからだ……」
「違うよ。アデルが普段から真面目にやってるから、陛下だって信じてくれたんだ」

 それでも、レオのおかげだと心の中で思った。
 レオは、頼りなさそうに見えて本当はずっと頼もしいのかもしれない。
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