攻め×攻め事情

おみなしづき

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中学生と高校生

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 交際は順調だったと言っていい。
 近嗣の世界の中心は、美羽になった。

『チカ。僕と同じ高校に来ないか?』

 美羽は、唐突にそんな事を言った。

『進学校だが、受かれば僕とずっと一緒にいられる』

 自信満々に言う美羽に近嗣は迷っていた。
 美羽の通う高校は、学費が高いと思った。
 母親に迷惑をかけたくなかった。

『僕は、父の跡を継いで医者になる。チカは、その僕の隣に居てくれるんだろう?』

 そんな事ができたら、どんなに幸せか……。
 近嗣の中で夢のような話は、美羽には夢ではないようで、近嗣はそんな美羽の期待を裏切れなかった。

(高校生になったらアルバイトもできる。学費の事は母親と相談しよう)

 試すように見てくる美羽に近嗣は頷いた。

『チカ──いい子だな』

 そっと美羽に頬を撫でられて、甘い雰囲気に近嗣の胸がドキドキと音を立てた。
 美羽がニヤリと笑う。

『その気があるなら、成績を上げろ』

 ドンッと目の前に積まれた問題集と参考書に近嗣が青くなった。

 母親は、近嗣の選んだ高校に反対するどころか大賛成だった。
 近嗣が初めて言ったワガママだ。母親には嬉しい事以外何もなかった。

『母さん、仕事頑張るから、アルバイトなんてしなくていいから、学業を頑張りなさい!』

 そう言って笑ってくれた。

 それからの近嗣は、驚くほど真面目に勉強に励んでいた。
 それが母親への恩返しになると思っていた。
 美羽も積極的に勉強を見てくれて、近嗣の成績はみるみるうちに良くなった。

     ◆◇◆
 
 ある日の事。その日も近嗣の家で勉強をしていた。

『チカ、このページが全問正解できたらご褒美をやろうか?』

 美羽が問題集を指差しながら言った言葉に近嗣のやる気を煽った。
 ご褒美ならば、今までできなかった事をさせてもらいたい。
 近嗣がこんなにも必死に問題を解いたのは初めてだ。
 全問解き終わって丸をつける美羽の手元をジッと見つめていた。

『──全問正解だな』

 微笑みながらポンッと頭を叩かれた瞬間に、近嗣は美羽にガバッと抱きついてドサリと床に押し倒した。

『おい──んっ……』

 近嗣は、美羽の唇を貪った。
 キスは何度もした。それでも、胸は高鳴る。
 お互いのキスの癖はもう知り尽くしている。
 美羽は、舌を吸った後に甘噛みすると体を震わせる。
 近嗣は、美羽に舌先で巧みになぞられるとビクッと反応してしまう。

『ご褒美……みぃちゃんがいい……』

 長いキスの後に美羽の眼鏡に手を掛けてそっと外せば、綺麗な素顔が見れて胸がドキドキと鳴る。
 こんな美羽を眺める事ができるのは、近嗣だけだという優越感にゾクゾクとする。

『がっつくな──』
『したい……』

 上から見下ろす美羽の姿に近嗣は堪らなくなる。
 美羽を組み敷く姿を何度も何度も想像した。男を抱く事も勉強した。
 ずっと美羽のブレザーのネクタイを外したかった。
 ネクタイに手をかければ、美羽がニヤリと笑う。
 美羽が近嗣の手を押さえると、ぐるりと反転する。
 今度は美羽に上から見下ろされた。

『チカが女役ならしてもいい』
『え……』

 思ってもいなかった美羽の申し出に近嗣は返答に困っていた。

『僕は、チカを抱きたいんだ』
『俺も抱きたい……』

 二人で眉間に皺を寄せた。
 元々頑固な二人の間にしばらくの沈黙が流れる。

『こればかりは譲れない』
『俺も……』

 二人とも、それ以上無理に進める気にはなれずに、お互いの出方を窺う事が多くなる。
 この時から二人の戦いは続いている。

     ◆◇◆

『みぃちゃん……見て』

 近嗣が高校の制服に袖を通して母親の次にその姿を見せたのは美羽だった。

『学ランも似合っていたが、お揃いの制服は嬉しいな』

 言葉通りに嬉しそうに笑う美羽に、近嗣は頑張って良かったと思う。

『それにしても……チカはまだ成長しているのか? 僕も低い方ではないのに、僕より身長が高くなりつつあるな……』

 そういえば、視線が合うようになったと思ったら、美羽を見下ろしつつある。
 美羽に手を伸ばした。もう少しで包み込むように抱きしめる事ができそうだった。
 この時ばかりは、近嗣は自分の成長を嬉しく思えた。
 思わず美羽の首筋に擦り寄る。

『ふふっ。チカは可愛いな』

 美羽が近嗣の背中をポンポンと叩く。

 近嗣は、美羽に可愛いと言われる事があまり好きではない。年下扱いされるのが嫌だった。
 擦り寄っていたのをピタリと止めて、美羽を不満気に見つめる。

『ははっ。チカは案外わかりやすい』

 美羽は、そう言いながら近嗣の頬にキスをした。
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