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入学したては……
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近嗣は入学してすぐに学校で美羽の姿を探していた。
一年生と二年生では、美羽とあまり接点がなかった。
遠くで見かける程度だ。そうなると、せっかく同じ学校にいても、見かける分だけ近くに居れない事が苦しくなった。
(同じ学校の方が辛い……)
見かける度にそんな気持ちを引きずっていた。
さらには、本来の目立つ容姿は、近嗣を放っておいてはくれなかった。
進学校であっても、問題児はいるものだ。近嗣もそう思い込まれてしまい、歩いているだけで喧嘩を売られてしまった。
『何見てんだ?』
上級生は、そう言って因縁を付けてきた。
目立つやつを叩きのめせば、一年なんて大人しくなると思ったのだろう。
最初は大人しく殴られようと思ったけれど、近くにいた同級生も巻き込まれそうになってしまい、その同級生を守ろうと手を出してしまった。
すると、不本意な噂が広まってしまった。糸崎近嗣は、ケンカばかりの問題児。近付いたら怪我をする。そして、根も歯もない噂を近嗣自身も否定する機会がない。
それに比べて美羽は、トップクラスの成績と人望で優等生だった。
同じ学校に入学したからこそ、近嗣と美羽は違う人種であり、共にいてはいけないのだと近嗣は思い始めていた。
『みぃちゃんは、俺と一緒にいない方がいい……』
近嗣の家で会っていた時にそう切り出した近嗣に、美羽は目つきを細めて腕を組む。
『──で? それで、チカはどうしたいんだ?』
『…………』
『別れるという事か?』
別れる──美羽と別れるなんて考えてもいなかった。
近嗣は、安易に言葉を発した事に気付く。
美羽は、黙ったままの近嗣にため息をついた。
『わかった。ならば、僕から言ってやろう。チカ、僕と別れ──んぐっ』
近嗣は、思わず美羽の口元を手で覆った。
美羽は、びっくりしたように目を見開いていた。
『……ごめん……俺……別れたくない……』
別れたいなんて思っていなかった。ただ自分が迷惑をかけたくないとそればかり考えていた。
近嗣が美羽を見つめる顔はくしゃりと歪んで辛そうだ。それを見て、美羽の目元が綻ぶ。
『でも、俺はあまり良く思われない……どうしたらいいのかわかんない……』
美羽はいい加減離せと言いたいのに、近嗣に口を塞がれていては言葉を発せない。
近嗣が考え込んでいれば、美羽は近嗣の手のひらをペロリと舐めた。
近嗣は、それにびっくりして思わず手を離す。
その反応を見て、美羽が口の端を上げてニヤリと笑う。
『チカ、僕がこの高校を受けろと言った時、僕とずっと一緒にいろと言ったつもりだ。チカはそのつもりがないのか?』
『そんなわけない! 俺も一緒に……いたい……』
美羽が近嗣の頭をポンッと叩いて微笑む。
『何に悩んでいるのか知らないが、チカは問題児じゃない。わかる人はわかっている。そんな事で悩むな』
自信満々に笑う美羽に、近嗣は自分は馬鹿な事を言ったと思う。
美羽は、底辺にあった近嗣の暗い気持ちを良い方向に変えてくれる。
それでも、近嗣にとって美羽は何よりも大事な存在で、だからこそ近嗣の存在が美羽にとって邪魔になるのは許せない。
『学校では……仲良くしないね……』
そう言った近嗣に対して、美羽は少ししてため息をつく。
『それでチカの気がすむならいいさ……』
その決まり事は、美羽が三年、近嗣が二年になった今でも続いていた。
一年生と二年生では、美羽とあまり接点がなかった。
遠くで見かける程度だ。そうなると、せっかく同じ学校にいても、見かける分だけ近くに居れない事が苦しくなった。
(同じ学校の方が辛い……)
見かける度にそんな気持ちを引きずっていた。
さらには、本来の目立つ容姿は、近嗣を放っておいてはくれなかった。
進学校であっても、問題児はいるものだ。近嗣もそう思い込まれてしまい、歩いているだけで喧嘩を売られてしまった。
『何見てんだ?』
上級生は、そう言って因縁を付けてきた。
目立つやつを叩きのめせば、一年なんて大人しくなると思ったのだろう。
最初は大人しく殴られようと思ったけれど、近くにいた同級生も巻き込まれそうになってしまい、その同級生を守ろうと手を出してしまった。
すると、不本意な噂が広まってしまった。糸崎近嗣は、ケンカばかりの問題児。近付いたら怪我をする。そして、根も歯もない噂を近嗣自身も否定する機会がない。
それに比べて美羽は、トップクラスの成績と人望で優等生だった。
同じ学校に入学したからこそ、近嗣と美羽は違う人種であり、共にいてはいけないのだと近嗣は思い始めていた。
『みぃちゃんは、俺と一緒にいない方がいい……』
近嗣の家で会っていた時にそう切り出した近嗣に、美羽は目つきを細めて腕を組む。
『──で? それで、チカはどうしたいんだ?』
『…………』
『別れるという事か?』
別れる──美羽と別れるなんて考えてもいなかった。
近嗣は、安易に言葉を発した事に気付く。
美羽は、黙ったままの近嗣にため息をついた。
『わかった。ならば、僕から言ってやろう。チカ、僕と別れ──んぐっ』
近嗣は、思わず美羽の口元を手で覆った。
美羽は、びっくりしたように目を見開いていた。
『……ごめん……俺……別れたくない……』
別れたいなんて思っていなかった。ただ自分が迷惑をかけたくないとそればかり考えていた。
近嗣が美羽を見つめる顔はくしゃりと歪んで辛そうだ。それを見て、美羽の目元が綻ぶ。
『でも、俺はあまり良く思われない……どうしたらいいのかわかんない……』
美羽はいい加減離せと言いたいのに、近嗣に口を塞がれていては言葉を発せない。
近嗣が考え込んでいれば、美羽は近嗣の手のひらをペロリと舐めた。
近嗣は、それにびっくりして思わず手を離す。
その反応を見て、美羽が口の端を上げてニヤリと笑う。
『チカ、僕がこの高校を受けろと言った時、僕とずっと一緒にいろと言ったつもりだ。チカはそのつもりがないのか?』
『そんなわけない! 俺も一緒に……いたい……』
美羽が近嗣の頭をポンッと叩いて微笑む。
『何に悩んでいるのか知らないが、チカは問題児じゃない。わかる人はわかっている。そんな事で悩むな』
自信満々に笑う美羽に、近嗣は自分は馬鹿な事を言ったと思う。
美羽は、底辺にあった近嗣の暗い気持ちを良い方向に変えてくれる。
それでも、近嗣にとって美羽は何よりも大事な存在で、だからこそ近嗣の存在が美羽にとって邪魔になるのは許せない。
『学校では……仲良くしないね……』
そう言った近嗣に対して、美羽は少ししてため息をつく。
『それでチカの気がすむならいいさ……』
その決まり事は、美羽が三年、近嗣が二年になった今でも続いていた。
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