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会えない時間
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学校行事があるたびに、生徒会長である美羽は忙しくて家でも会えなくなる。
近嗣の悶々とした生活が始まる。
美羽が近嗣といる事で美羽まで悪く言われては困る。学校では話しかけられない。
どうにか二人きりになるきっかけが欲しいのに何もない。
近嗣は、何度目かわからないため息をついて屋上でお昼のパンを齧っていた。
屋上は、クラスに馴染めなかった近嗣が、のんびりと過ごすのにちょうどいい場所だった。
しばらくして、聡が屋上にやってきた。
聡は、時々やってきては嬉しそうに近嗣に話しかけてくる。今日は、友達と三人でやってきた。
「糸崎さん、この前は本当にありがとうございました!」
聡の友達が、ペコリと頭を下げてお礼を言った。
上級生に絡まれていたのを助けてあげたのは数日前の事だ。
「こいつの事、助けてもらってあざっした!」
「ありがとうございましたぁ!」
聡もその隣にいた別の友達もペコリと頭を下げた。
三人して頭を下げ続けている。
近嗣は、食べていたパンを急いで飲み込んでお茶で胃へ流し込んだ。
「気にしなくていい」
近嗣が言えば、三人とも嬉しそうに笑う。
「糸崎さん本当カッコ良かったです! 僕は、川淵って言います! 舎弟にして下さい!」
「俺もです! 俺は、楢林です!」
聡の友達は、近嗣を好意的に思ってくれたらしい。
「俺は……そういうのいらない……」
舎弟なんて必要ない。
ため息をつきながら言えば、聡が鼻息を荒くする。
「お前らな! 糸崎さんは、俺だってパシリにした事ないんだからな! お前らに頼むわけねぇだろ!」
訳のわからない事で三人で盛り上がっている。
どうやら、自称舎弟が三人に増えたらしい。
近嗣は賑やかなのは苦手だけれど、聡達の事は嫌いじゃない。
「糸崎さん、生徒会の手伝いって大丈夫でしたか? 生徒会長の野郎に何かされませんでしたか?」
心配そうに声を掛けてきた聡にフッと笑う。
「ああ……大丈夫」
近嗣が笑う事は珍しいので、三人は見惚れてしまう。
生徒会の補佐と言っても、美羽と一緒にいられたのでむしろ楽しかった。
そこで近嗣はふと思い立つ。
「生徒会って……俺でも入れたかな……」
もしも近嗣も生徒会に入れたのなら毎日一緒にいれたはずだ。
「え……糸崎さんが……?」
近嗣がボソリと呟いた言葉に聡はポカンと口を開けた。
(そこまで意外なのか……ちょっとショックだ……)
眉間に皺を寄せた近嗣に、聡は慌てて取り繕おうとする。
「入れないって事はないと思うっす! 糸崎さんって成績どれくらいなんすか?」
「上位10位以内には……いる……」
「へ……」
聡は、またもポカンと口を開けた。
近嗣は美羽に勉強を見てもらっているので成績はいい。母親と勉強を頑張るという約束もちゃんと守っている。
真面目にやっているのに真面目に思われないのは悲しいと思う。
「やっぱり俺じゃ無理か……。聡は成績は?」
近嗣に聞き返されるとは思わなかったのか聡は慌て出す。
「お、俺っすか!? えっとぉ……ビリから数えた方が早いっすね」
近嗣は、苦笑いする聡の頭をポンっと優しく叩いた。近嗣なりに慰めてあげたいと思った。
「勉強はしといた方がいい……お前の役に立つ」
聡は、近嗣のこういう所に憧れている。
見た目で誤解されやすいけれど、近嗣が本当は優しいのだと聡はわかっていた。
「糸崎さん……俺、頑張ります! 糸崎さんみたいになります!」
聡が言えば、二人も手を挙げる。
「ぼ、僕も頑張ります!」
「俺も!」
無表情でも頷いてあげれば、三人は嬉しそうに笑った。
暫くワイワイとしている三人の会話に耳を傾けていれば、川淵にふと質問された。
「糸崎さんて、彼女とかいるんすか?」
興味津々で聞かれてしまう。
「いる……」
生徒会長だとは言えないけれど、いないとは言いたくなかった。
「どんな人なんですか!?」
今度は聡が聞いてきた。
「……面倒見が良い……年上……」
「年上!? かっこいいっすね」
「でも……最近会えてない……」
言葉にしたら余計に会いたくなってしまった。
「会いに行ったらどうですか?」
楢林が言った。
「それは……迷惑だから……」
「何言ってんすか! 糸崎さんに会おうって言われたら嬉しいに決まってんじゃないっすか!」
聡にニコニコしながら言われたら、少し自信が湧いた。
「俺が会いに行ってもいいのかな……?」
「大丈夫っすよ! 俺だったら嬉しいですよ!」
「……そっか……」
へへへっと照れ臭そうに笑った聡に、ありがとうと呟いた。
それならばと思い、美羽にこっそり会いに行こうと決めた。
近嗣の悶々とした生活が始まる。
美羽が近嗣といる事で美羽まで悪く言われては困る。学校では話しかけられない。
どうにか二人きりになるきっかけが欲しいのに何もない。
近嗣は、何度目かわからないため息をついて屋上でお昼のパンを齧っていた。
屋上は、クラスに馴染めなかった近嗣が、のんびりと過ごすのにちょうどいい場所だった。
しばらくして、聡が屋上にやってきた。
聡は、時々やってきては嬉しそうに近嗣に話しかけてくる。今日は、友達と三人でやってきた。
「糸崎さん、この前は本当にありがとうございました!」
聡の友達が、ペコリと頭を下げてお礼を言った。
上級生に絡まれていたのを助けてあげたのは数日前の事だ。
「こいつの事、助けてもらってあざっした!」
「ありがとうございましたぁ!」
聡もその隣にいた別の友達もペコリと頭を下げた。
三人して頭を下げ続けている。
近嗣は、食べていたパンを急いで飲み込んでお茶で胃へ流し込んだ。
「気にしなくていい」
近嗣が言えば、三人とも嬉しそうに笑う。
「糸崎さん本当カッコ良かったです! 僕は、川淵って言います! 舎弟にして下さい!」
「俺もです! 俺は、楢林です!」
聡の友達は、近嗣を好意的に思ってくれたらしい。
「俺は……そういうのいらない……」
舎弟なんて必要ない。
ため息をつきながら言えば、聡が鼻息を荒くする。
「お前らな! 糸崎さんは、俺だってパシリにした事ないんだからな! お前らに頼むわけねぇだろ!」
訳のわからない事で三人で盛り上がっている。
どうやら、自称舎弟が三人に増えたらしい。
近嗣は賑やかなのは苦手だけれど、聡達の事は嫌いじゃない。
「糸崎さん、生徒会の手伝いって大丈夫でしたか? 生徒会長の野郎に何かされませんでしたか?」
心配そうに声を掛けてきた聡にフッと笑う。
「ああ……大丈夫」
近嗣が笑う事は珍しいので、三人は見惚れてしまう。
生徒会の補佐と言っても、美羽と一緒にいられたのでむしろ楽しかった。
そこで近嗣はふと思い立つ。
「生徒会って……俺でも入れたかな……」
もしも近嗣も生徒会に入れたのなら毎日一緒にいれたはずだ。
「え……糸崎さんが……?」
近嗣がボソリと呟いた言葉に聡はポカンと口を開けた。
(そこまで意外なのか……ちょっとショックだ……)
眉間に皺を寄せた近嗣に、聡は慌てて取り繕おうとする。
「入れないって事はないと思うっす! 糸崎さんって成績どれくらいなんすか?」
「上位10位以内には……いる……」
「へ……」
聡は、またもポカンと口を開けた。
近嗣は美羽に勉強を見てもらっているので成績はいい。母親と勉強を頑張るという約束もちゃんと守っている。
真面目にやっているのに真面目に思われないのは悲しいと思う。
「やっぱり俺じゃ無理か……。聡は成績は?」
近嗣に聞き返されるとは思わなかったのか聡は慌て出す。
「お、俺っすか!? えっとぉ……ビリから数えた方が早いっすね」
近嗣は、苦笑いする聡の頭をポンっと優しく叩いた。近嗣なりに慰めてあげたいと思った。
「勉強はしといた方がいい……お前の役に立つ」
聡は、近嗣のこういう所に憧れている。
見た目で誤解されやすいけれど、近嗣が本当は優しいのだと聡はわかっていた。
「糸崎さん……俺、頑張ります! 糸崎さんみたいになります!」
聡が言えば、二人も手を挙げる。
「ぼ、僕も頑張ります!」
「俺も!」
無表情でも頷いてあげれば、三人は嬉しそうに笑った。
暫くワイワイとしている三人の会話に耳を傾けていれば、川淵にふと質問された。
「糸崎さんて、彼女とかいるんすか?」
興味津々で聞かれてしまう。
「いる……」
生徒会長だとは言えないけれど、いないとは言いたくなかった。
「どんな人なんですか!?」
今度は聡が聞いてきた。
「……面倒見が良い……年上……」
「年上!? かっこいいっすね」
「でも……最近会えてない……」
言葉にしたら余計に会いたくなってしまった。
「会いに行ったらどうですか?」
楢林が言った。
「それは……迷惑だから……」
「何言ってんすか! 糸崎さんに会おうって言われたら嬉しいに決まってんじゃないっすか!」
聡にニコニコしながら言われたら、少し自信が湧いた。
「俺が会いに行ってもいいのかな……?」
「大丈夫っすよ! 俺だったら嬉しいですよ!」
「……そっか……」
へへへっと照れ臭そうに笑った聡に、ありがとうと呟いた。
それならばと思い、美羽にこっそり会いに行こうと決めた。
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