7 / 22
お礼が言いたくて
しおりを挟む
聡に背中を押されて、近嗣は放課後に生徒会室の前で美羽が出てくるのを影に隠れて待った。
美羽には、こうやって会うしかないと思った。
日が暮れて辺りが暗くなると、生徒会室のドアが開いて生徒会のメンバーが出てくる。
話をしながら近嗣に気づかずにみんな通り過ぎていく。美羽は生徒会室の鍵を閉めていて、最後を歩いてきた。
美羽も近嗣に気付かなかった。近嗣は、思わず美羽の腕を掴んで引っ張った。
驚きながらこちらを見た美羽は、すぐに近嗣に気付いて顔を綻ばせた。
生徒会の役員が気付かずにそのまま行ってしまうと、美羽は口角を上げながら口を開いた。
「学校では仲良くしないんじゃなかったのか?」
「ごめん……」
近嗣は、やっぱり迷惑だったのかと思い、シュンと肩を落としてしまう。
美羽は、そんな近嗣にクスクスと笑った。
「冗談だ。話せて嬉しい」
「みぃちゃん……」
嬉しそうにする美羽を見て、会いに来て良かったと思う。
近嗣がハニカミながら笑う。
「チカ……僕に──」
「会長!」
美羽が何かを話したと同時に別の声が聞こえてそちらに注目する。
こちらに戻ってきたのは忍だった。
美羽の姿が見えなくなって探しにきたらしい。
近嗣が美羽の腕を掴んでいるのを見て、近嗣と美羽の間に立ちはだかった。
近嗣は、掴んでいた手を放してしまう。
「糸崎近嗣! お前はこの前会長に助けてもらっただろう! 恩を仇で返すのか!?」
一緒にいただけでそんな風に言われてしまうのは悲しい。でも、そう見られてしまう。
近嗣は、違うと言いかけてやめた。違うと言ったところでそれを信じてもらえるとは思わないし、例え信じてもらっても、美羽に会いたくて会いに来たとは言えないからだ。
仕方なく踵を返して歩き出す。
「会長? 大丈夫でしたか?」
「ああ……」
近嗣は、そんな声を背中越しに聞きながら、悲しくなってはぁとため息をついた。
◆◇◆
美羽は、去っていく近嗣の背中を見ながらどうしたものかと悩む。
近嗣は、美羽と親しい仲にあると思われるのを嫌がっている。そこまで自分に自信がないのは困ったものだ。
(僕の評判なんて気にしなくていいのに……)
そう思いつつも、生徒会長という立場で問題児と仲がいいというのは評判に関わるのは確かだ。
そこまで自分の事を考えているのは嬉しいとは思う。けれど、時々寂しいとも思う。
近嗣は頑固だ。美羽が近付いたところで、野良猫のように威嚇して逃げてしまう気がしてならない。結局のところ、それが一番怖い。
「危ないところでしたね。あの糸崎です。何するか分かりませんからね」
忍が鼻息を荒くして言う言葉に少し苛ついて目を細めた。
近嗣は誤解されやすい。
それを知っているからもどかしい。
「僕は何もされていない。忍の勘違いだ」
「会長! そんな事ありません! 腕を掴むなんてよっぽどの事ですよ!」
美羽は、唐突にガシッと忍の腕を掴んだ。
「会長!?」
忍にニッコリと微笑む。
「これで僕も君に何かしたという事になるのか?」
「あ……いえ! と、とんでもないです……」
赤くなって震える忍にやっとわかったのかとため息をつく。
「そうだ。これだけで何かしたという事にはならない。だから糸崎も何もしていない」
「僕は嬉しいです!」
忍が嬉しそうにするので顔を引きつらせる。全然わかっていなかった。
「おい……話を聞いてるのか?」
「はい! 腕……洗いません……」
ちょっと引いてしまって思わず手を放す。
忍が美羽の事を崇拝しているのはわかっているが、少し度が過ぎる。
美羽は、こちらもどうしたものかとため息をついた。
◆◇◆
美羽は、生徒会のメンバーと共に家に帰りながら考える。
(チカは、あのまま家に帰っただろうか?)
近嗣の場合、美羽が忙しいと連絡もして来なくなる。気を遣いすぎていると思うのだが、美羽がいくら言っても近嗣からは連絡が来た事はない。
今日、少し会えた時の顔を思い出す。
あまり表情の変わらない近嗣がとても嬉しそうだった。
『みぃちゃん……』
数日ぶりに聞いた近嗣の声を思い出して、堪らなくなった。
すぐ近くにいたのに全然触れ合えてない。キスの一つもしたかった。
『チカ……僕に会いに来てくれてありがとう』
そう言いたかった。
あれだけ学校で仲良くしないと言っていた近嗣が、自分から美羽に会いに来てくれた。まだお礼を言えてない。
美羽は、ピタリと足を止めた。
「会長?」
「悪いな。寄るところを思い出したんだ」
「それなら僕も──」
ついて来そうな忍に学校で評判の微笑を向ければビクッと怯んだ。
「一人でいい。それじゃあ、みんなは早く帰るように」
「会長……」
美羽は、居ても立っても居られなくて早足で近嗣の家を目指した。
美羽には、こうやって会うしかないと思った。
日が暮れて辺りが暗くなると、生徒会室のドアが開いて生徒会のメンバーが出てくる。
話をしながら近嗣に気づかずにみんな通り過ぎていく。美羽は生徒会室の鍵を閉めていて、最後を歩いてきた。
美羽も近嗣に気付かなかった。近嗣は、思わず美羽の腕を掴んで引っ張った。
驚きながらこちらを見た美羽は、すぐに近嗣に気付いて顔を綻ばせた。
生徒会の役員が気付かずにそのまま行ってしまうと、美羽は口角を上げながら口を開いた。
「学校では仲良くしないんじゃなかったのか?」
「ごめん……」
近嗣は、やっぱり迷惑だったのかと思い、シュンと肩を落としてしまう。
美羽は、そんな近嗣にクスクスと笑った。
「冗談だ。話せて嬉しい」
「みぃちゃん……」
嬉しそうにする美羽を見て、会いに来て良かったと思う。
近嗣がハニカミながら笑う。
「チカ……僕に──」
「会長!」
美羽が何かを話したと同時に別の声が聞こえてそちらに注目する。
こちらに戻ってきたのは忍だった。
美羽の姿が見えなくなって探しにきたらしい。
近嗣が美羽の腕を掴んでいるのを見て、近嗣と美羽の間に立ちはだかった。
近嗣は、掴んでいた手を放してしまう。
「糸崎近嗣! お前はこの前会長に助けてもらっただろう! 恩を仇で返すのか!?」
一緒にいただけでそんな風に言われてしまうのは悲しい。でも、そう見られてしまう。
近嗣は、違うと言いかけてやめた。違うと言ったところでそれを信じてもらえるとは思わないし、例え信じてもらっても、美羽に会いたくて会いに来たとは言えないからだ。
仕方なく踵を返して歩き出す。
「会長? 大丈夫でしたか?」
「ああ……」
近嗣は、そんな声を背中越しに聞きながら、悲しくなってはぁとため息をついた。
◆◇◆
美羽は、去っていく近嗣の背中を見ながらどうしたものかと悩む。
近嗣は、美羽と親しい仲にあると思われるのを嫌がっている。そこまで自分に自信がないのは困ったものだ。
(僕の評判なんて気にしなくていいのに……)
そう思いつつも、生徒会長という立場で問題児と仲がいいというのは評判に関わるのは確かだ。
そこまで自分の事を考えているのは嬉しいとは思う。けれど、時々寂しいとも思う。
近嗣は頑固だ。美羽が近付いたところで、野良猫のように威嚇して逃げてしまう気がしてならない。結局のところ、それが一番怖い。
「危ないところでしたね。あの糸崎です。何するか分かりませんからね」
忍が鼻息を荒くして言う言葉に少し苛ついて目を細めた。
近嗣は誤解されやすい。
それを知っているからもどかしい。
「僕は何もされていない。忍の勘違いだ」
「会長! そんな事ありません! 腕を掴むなんてよっぽどの事ですよ!」
美羽は、唐突にガシッと忍の腕を掴んだ。
「会長!?」
忍にニッコリと微笑む。
「これで僕も君に何かしたという事になるのか?」
「あ……いえ! と、とんでもないです……」
赤くなって震える忍にやっとわかったのかとため息をつく。
「そうだ。これだけで何かしたという事にはならない。だから糸崎も何もしていない」
「僕は嬉しいです!」
忍が嬉しそうにするので顔を引きつらせる。全然わかっていなかった。
「おい……話を聞いてるのか?」
「はい! 腕……洗いません……」
ちょっと引いてしまって思わず手を放す。
忍が美羽の事を崇拝しているのはわかっているが、少し度が過ぎる。
美羽は、こちらもどうしたものかとため息をついた。
◆◇◆
美羽は、生徒会のメンバーと共に家に帰りながら考える。
(チカは、あのまま家に帰っただろうか?)
近嗣の場合、美羽が忙しいと連絡もして来なくなる。気を遣いすぎていると思うのだが、美羽がいくら言っても近嗣からは連絡が来た事はない。
今日、少し会えた時の顔を思い出す。
あまり表情の変わらない近嗣がとても嬉しそうだった。
『みぃちゃん……』
数日ぶりに聞いた近嗣の声を思い出して、堪らなくなった。
すぐ近くにいたのに全然触れ合えてない。キスの一つもしたかった。
『チカ……僕に会いに来てくれてありがとう』
そう言いたかった。
あれだけ学校で仲良くしないと言っていた近嗣が、自分から美羽に会いに来てくれた。まだお礼を言えてない。
美羽は、ピタリと足を止めた。
「会長?」
「悪いな。寄るところを思い出したんだ」
「それなら僕も──」
ついて来そうな忍に学校で評判の微笑を向ければビクッと怯んだ。
「一人でいい。それじゃあ、みんなは早く帰るように」
「会長……」
美羽は、居ても立っても居られなくて早足で近嗣の家を目指した。
0
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる