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延長戦はまた今度
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みんなで散々遊んでから駅で別れを告げて、近嗣は一人で家に帰ってきた。
ビーチバレーはしなかったけれど、聡達と一緒にはしゃぐのは楽しかった。
美羽は一度家に戻ってから来るそうだ。
(みぃちゃんが来る前に少し掃除しよ)
そう思って掃除を始めれば、美羽から連絡が来た。もうすぐ着くとあった。
ウキウキしながら美羽を待った。
◆◇◆
そのうちに、ガチャリとアパートのドアが開いた。まだ早いと思いつつ出迎えに行けば、そこにいたのは、近嗣の母親の紀子だった。
「ただいま。何よ? なんでがっかりした顔してんのよ」
「……今日、遅いんじゃなかった?」
紀子は工場勤務で残業があれば必ず残業してくる。時々居酒屋の手伝いもしていて、遅い時間に帰ってくる事がほとんどだ。
「今日は……ちょっとね。お風呂入っていいよね?」
「うん……」
風呂場へと向かう紀子に、美羽が来ると言おうとしたところでピンポーンとチャイムが鳴った。
「誰か来たわね」
「あ……みぃちゃんが……」
「美羽くん!? 早く開けてあげなさいよ!」
紀子に急かされて、慌ててドアを開けた。
美羽が中に入ると、紀子が脱衣所から大声を出す。
「美羽く~ん! 久しぶりね! いつもチカと遊んでくれてありがと~」
近嗣の苦笑いに、美羽も状況を理解してクスクスと笑った。
「紀子さん、お元気そうですね」
「あははっ。お風呂あがったらお話しようね!」
「はい」
そんなやり取りをして、紀子は浴室へ入ったようだ。
「ごめん……母さん、今日早かったみたいだ……」
「気にしなくていい。紀子さんに会えて嬉しい。チカも紀子さんが早く帰ってきてくれるのは嬉しいだろう?」
「うん。俺もアルバイトするって言ってるのに……母さんが許してくれないから……」
その代わりに学業を頑張る約束はまだ有効だ。
母親を少しでも楽にしたくて家事全般を近嗣がやっている。そうやってこの親子が支え合っているのを美羽は見てきている。
昼間の続きができないのは二人とも残念だけれど、いつもより早く帰ってきた母親に、近嗣は嬉しそうに目元を綻ばせる。美羽もそれを見て微笑んでいた。
「僕たちの時間はまた今度だな」
「その時は……抱かせて……」
「僕が抱くんだ。覚悟をするのはチカの方だ」
「みぃちゃんの方が俺より気持ち良さそうだった」
「気持ち良くない!」
美羽は、ニヤニヤと笑う近嗣の腕にボスッとパンチした。
赤くなってそんな事をする美羽が可愛くて仕方ない。
「みぃちゃん、好きだよ……」
「僕もだ……」
二人が気持ちを確認し合えば、それだけでも満たされたような気がした。
◆◇◆
紀子は珍しくアルコールを飲んでいる。
機嫌が良さそうで時々鼻歌を歌う。
テーブルには近嗣が作ったおつまみが並んでいる。その正面にいる美羽は、ご飯を食べながら紀子と談笑中だ。
近嗣は、キッチンで次の料理を作っていた。
「美羽くんには感謝してるの。チカがこんなに明るくなったのはあなたのおかげだもの」
紀子はグビッと缶ビールを喉へ流し込んだ。
「高校もあなたと同じ所へ行くって言ってくれて、どんなに嬉しかったか……」
ヘラッと笑った紀子に美羽は優しく微笑む。
「僕のわがままですよ。僕がチカと一緒に居たくて……僕は、チカが可愛くて仕方ないんです」
「そうなのよ! 私の息子って超可愛いの。料理も洗濯も、掃除もできて頭もいいし、スポーツ万能。文句も言わず……優しくて……」
紀子が指折り数えている。
美羽がクスクスと笑った。
「自慢の息子ですか?」
「こんないい子いないのよぉ。それなのに、どうして世の中の女の子はそれがわからないのよぉ!」
今度は憤慨している。
昔からコロコロと表情の変わる明るい人だ。
会話を聞いていた近嗣が口を挟む。
「俺は……自分で決めた人……いる……」
紀子は、近嗣の言葉に前のめりになって近嗣を見つめた。
「え!? そうなの!? 今度紹介してよね! チカの決めた人なら、母さんどんな人でも応援できるから」
「うん……俺がもっと自信ついたら……言う……」
紀子がこの上ないほどニコニコしているのを見て、近嗣も優しく笑った。
美羽は、この親子を見るのが好きだ。
父親がいなくても、たっぷりの愛情が見えるようだ。
「ふふっ。飲み過ぎちゃったみたいね」
紀子は、飲んでいた缶ビールを一気に飲み干して立ち上がった。
「美羽くんがいてくれたら、私も安心できるよ。これからもチカの事……よろしくね」
「はい……」
紀子は、そのまま寝ると言って自分の部屋に行った。
暫くして近嗣がきんぴらごぼうをテーブルに置きながらエプロンを外す。
「せっかく作ったのに……食べないで寝ちゃった……」
「僕が食べるよ」
「みぃちゃんは辛いの苦手でしょ? 母さんが食べると思ったからこのきんぴら、味付け辛めにしちゃった……」
「大丈夫だ!」
美羽は辛いものが苦手だ。それでも、近嗣が作った物を辛いと言いながら頑張って食べているのを見て、近嗣はクスクスと笑う。
「水、おかわりする?」
「た、頼む……」
近嗣が水のおかわりをグラスに注いで美羽に渡す。
「ねぇ、みぃちゃん、俺たちの事、いつか母さんに話したい」
「そうだな。僕も話したい」
優しく笑う美羽を見て、近嗣は嬉しそうに微笑む。
「いつか……僕達の覚悟が決まったら……ちゃんと挨拶しよう」
「うん……」
こうやって二人でいる未来を話す事が幸せだった。
未来でも、ずっと一緒にいるのだと信じて疑わなかった。
ビーチバレーはしなかったけれど、聡達と一緒にはしゃぐのは楽しかった。
美羽は一度家に戻ってから来るそうだ。
(みぃちゃんが来る前に少し掃除しよ)
そう思って掃除を始めれば、美羽から連絡が来た。もうすぐ着くとあった。
ウキウキしながら美羽を待った。
◆◇◆
そのうちに、ガチャリとアパートのドアが開いた。まだ早いと思いつつ出迎えに行けば、そこにいたのは、近嗣の母親の紀子だった。
「ただいま。何よ? なんでがっかりした顔してんのよ」
「……今日、遅いんじゃなかった?」
紀子は工場勤務で残業があれば必ず残業してくる。時々居酒屋の手伝いもしていて、遅い時間に帰ってくる事がほとんどだ。
「今日は……ちょっとね。お風呂入っていいよね?」
「うん……」
風呂場へと向かう紀子に、美羽が来ると言おうとしたところでピンポーンとチャイムが鳴った。
「誰か来たわね」
「あ……みぃちゃんが……」
「美羽くん!? 早く開けてあげなさいよ!」
紀子に急かされて、慌ててドアを開けた。
美羽が中に入ると、紀子が脱衣所から大声を出す。
「美羽く~ん! 久しぶりね! いつもチカと遊んでくれてありがと~」
近嗣の苦笑いに、美羽も状況を理解してクスクスと笑った。
「紀子さん、お元気そうですね」
「あははっ。お風呂あがったらお話しようね!」
「はい」
そんなやり取りをして、紀子は浴室へ入ったようだ。
「ごめん……母さん、今日早かったみたいだ……」
「気にしなくていい。紀子さんに会えて嬉しい。チカも紀子さんが早く帰ってきてくれるのは嬉しいだろう?」
「うん。俺もアルバイトするって言ってるのに……母さんが許してくれないから……」
その代わりに学業を頑張る約束はまだ有効だ。
母親を少しでも楽にしたくて家事全般を近嗣がやっている。そうやってこの親子が支え合っているのを美羽は見てきている。
昼間の続きができないのは二人とも残念だけれど、いつもより早く帰ってきた母親に、近嗣は嬉しそうに目元を綻ばせる。美羽もそれを見て微笑んでいた。
「僕たちの時間はまた今度だな」
「その時は……抱かせて……」
「僕が抱くんだ。覚悟をするのはチカの方だ」
「みぃちゃんの方が俺より気持ち良さそうだった」
「気持ち良くない!」
美羽は、ニヤニヤと笑う近嗣の腕にボスッとパンチした。
赤くなってそんな事をする美羽が可愛くて仕方ない。
「みぃちゃん、好きだよ……」
「僕もだ……」
二人が気持ちを確認し合えば、それだけでも満たされたような気がした。
◆◇◆
紀子は珍しくアルコールを飲んでいる。
機嫌が良さそうで時々鼻歌を歌う。
テーブルには近嗣が作ったおつまみが並んでいる。その正面にいる美羽は、ご飯を食べながら紀子と談笑中だ。
近嗣は、キッチンで次の料理を作っていた。
「美羽くんには感謝してるの。チカがこんなに明るくなったのはあなたのおかげだもの」
紀子はグビッと缶ビールを喉へ流し込んだ。
「高校もあなたと同じ所へ行くって言ってくれて、どんなに嬉しかったか……」
ヘラッと笑った紀子に美羽は優しく微笑む。
「僕のわがままですよ。僕がチカと一緒に居たくて……僕は、チカが可愛くて仕方ないんです」
「そうなのよ! 私の息子って超可愛いの。料理も洗濯も、掃除もできて頭もいいし、スポーツ万能。文句も言わず……優しくて……」
紀子が指折り数えている。
美羽がクスクスと笑った。
「自慢の息子ですか?」
「こんないい子いないのよぉ。それなのに、どうして世の中の女の子はそれがわからないのよぉ!」
今度は憤慨している。
昔からコロコロと表情の変わる明るい人だ。
会話を聞いていた近嗣が口を挟む。
「俺は……自分で決めた人……いる……」
紀子は、近嗣の言葉に前のめりになって近嗣を見つめた。
「え!? そうなの!? 今度紹介してよね! チカの決めた人なら、母さんどんな人でも応援できるから」
「うん……俺がもっと自信ついたら……言う……」
紀子がこの上ないほどニコニコしているのを見て、近嗣も優しく笑った。
美羽は、この親子を見るのが好きだ。
父親がいなくても、たっぷりの愛情が見えるようだ。
「ふふっ。飲み過ぎちゃったみたいね」
紀子は、飲んでいた缶ビールを一気に飲み干して立ち上がった。
「美羽くんがいてくれたら、私も安心できるよ。これからもチカの事……よろしくね」
「はい……」
紀子は、そのまま寝ると言って自分の部屋に行った。
暫くして近嗣がきんぴらごぼうをテーブルに置きながらエプロンを外す。
「せっかく作ったのに……食べないで寝ちゃった……」
「僕が食べるよ」
「みぃちゃんは辛いの苦手でしょ? 母さんが食べると思ったからこのきんぴら、味付け辛めにしちゃった……」
「大丈夫だ!」
美羽は辛いものが苦手だ。それでも、近嗣が作った物を辛いと言いながら頑張って食べているのを見て、近嗣はクスクスと笑う。
「水、おかわりする?」
「た、頼む……」
近嗣が水のおかわりをグラスに注いで美羽に渡す。
「ねぇ、みぃちゃん、俺たちの事、いつか母さんに話したい」
「そうだな。僕も話したい」
優しく笑う美羽を見て、近嗣は嬉しそうに微笑む。
「いつか……僕達の覚悟が決まったら……ちゃんと挨拶しよう」
「うん……」
こうやって二人でいる未来を話す事が幸せだった。
未来でも、ずっと一緒にいるのだと信じて疑わなかった。
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