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やっと自分の部屋に帰って来れた。長い一日だった。
シャワーを浴びていると、曇った鏡に淡いピンクがぼんやり映っている。唯一自慢のローズブロンドの髪。
ニコラス様ほどの容姿なら、自慢できるところが多すぎて一つだけ選ぶ方が難しいでしょうね。
美人は三日で飽きると言うけど間違いだと思う。本当の美人は飽きないに違いない。
内面は……非常識でハチャメチャな人。だけど純粋で真っすぐな人。
この穏やかな地でニコラス様と人生を共にする女性はきっと笑いの絶えない日々を送るのだろう。
ベッドに入るとすぐに睡魔がやって来た。
ゆらりゆらりと夢と現を漂っていると、ゆらりゆらりと赤黒い物が漂って来て飛び起きた。
なんてものを夢に出してしまったのだ!!!
結局、この夜は夢の中に繰り返し赤黒い物が出て来て、何度も飛び起きる羽目になった……。
普段なら清々しく思う、少し冷たい朝の風を頬に受ける。
アレの持ち主はまだ熟睡しているに違いない。
なんか理不尽だ。納得できない。モヤモヤする……。
このモヤモヤをどうやって解消しようかと悩んでいたら、一石二鳥の素晴らしい方法があった。
ダンダンダン!
「起きて下さーい!服を着たらドアを開けて下さーーい!」
理不尽をぶつけるようにドアと叩く。
叩いてスッキリするし、ニコラス様も起こせる。
伯爵家の使用人が背後を通って行くが、奇人変人に慣れているだけあって動じていない。
「ニコラスさまぁー起きましたかぁー?」
再び叩こうと振り上げたこぶしが、開いたドアから出て来た素肌の胸を叩いてしまった。
「わっ!申し訳ございません。勢いあまって」
「構わない。それよりあんなに強くドアを叩いたら手が痛いだろ?」
上半身はシャツを羽織っただけだが、下半身はちゃんと穿いてくれていてホッとする。
はんっ!もう胸ぐらいで動じませんよ!アレさえ隠れていれば平気ですとも!
「頑丈なんで大丈夫です。おはようございます」
まだ寝ぼけ眼のニコラス様が、私の手を取り……ペロリと舐めた。
「ぎぁーー!何するんですか!」
「なにって労わったんだ。動物の親が子を舐めるのと一緒だ。気にするな」
気にするわーー!!
「クロエの手を放しなさい。ここの男たちは、生まれた時は人間だったのに、どうして獣に育つのかしらね」
振り向くより早く、扇子がニコラス様の手を叩いた。
「いでっ!それの骨組み鉄で出来ているだろ!?凶器だぞ!」
「凶器にするために鉄で作ったのですよ」
随分しっかりした扇子だと思っていたが、高級な扇子だからだと思い込んでいた。鉄骨扇子だったか……。
興味津々で眺めていると、
「クロエにも作って差し上げましょう」
と仰ってくれた。やった!
マーガレット様が何をしに来たのかと言うと、おつかいを命じに来たそうだ。
伯爵家の跡取りはご長男のスタン様だが領地経営は苦手らしい。数字を見ると血の気が引く病にかかっているとか。
なので社交はスタン様が担当し、内向きの運営をニコラス様が担当しているそうだ。
「一人ですべき事を二人でするなんて嘆かわしい」
と、マーガレット様はおっしゃるが適材適所でうまく回っているのだろう。
しかし、ニコラス様が領地の視察に出向かないのは、由々しき問題だと指摘するマーガレット様には同意するしかない。
机上置かれた書類では分からない事もあるだろう。
そ・こ・で、手始めにおつかいがてら領民の暮らしを見て来いと命ぜられたわけだ。
「二人でこのリストの物を買って来なさい」
紙を握らせるとさっさと行ってしまったが、小さな文字でびっしりと書いてある。
なかなか大変なおつかいになりそう。
外套を羽織って、玄関で植物を眺めながらニコラス様を待っていると、寝癖が付いたままやって来た。
「しゃがんでください」
手櫛で直すとニコラス様の頬が赤くなる。
「こ、こういう行為は軽々しくしてはいけない。いくら頭髪が死んだ細胞とはいえ、相手の男に勘違いされるぞ」
何を言っているんだこの男は。アレを見られたり、人の手を舐めるのは恥ずかしくないくせに、ちょっと死んだ細胞に触られたくらいで照れるのか。恥ずかしがるところが違うでしょうよ。
「なら寝癖ぐらい直して来て下さいよ」
まだ乙女のようにもじもじしながら、ぶつぶつと言っていたが、さっさと馬車のドアを開けて押し込んでやった。
下の毛に息が当たっても何にも言わなかったくせに、上の毛でぶつぶつ言うんじゃないわよ。まったく!
領地のメインストリートに降ろしてもらって、御者さんと打ち合わせをする。
馬車の中でリストを確認したけど、ここの事を知らない二人では、どうにもならなかった。
「リストのここからここまでは市場で買えますよ。残りの品物はこの通りで一軒一軒回らないと買えませんねぇ」
生鮮食品以外からやっつけようと思ったが、市場は午前中の方が品ぞろえが良いのはどこも同じなので、先に市場へ向かおう。
市場での買い物が終わったら、一度御者さんに伯爵邸に持ち帰ってもらう事で話しが付いた。
二人とも初めての場所だから、おのぼりさん状態できょろきょろしっぱなしだ。
「活気がありますね。思っていたよりかなり大きな市場だわ」
「大型船が入港できる港があるから海外の珍しい食材も手に入る。そのおかげで周辺の領地からも人が集まって来るから、この辺りでは一番取引高の高い市場だ」
取引高が出て来るのがニコラス様らしい。しかし今日は社会見学が目的なので、数字じゃなくて実地訓練となりますからね。
「八百屋さんで買い物するので見ていてください。次の店ではニコラス様にしていただきますよ」
「こんにちは、芽キャベツと人参くださーい」
「らっしゃい。おっ!別嬪さんだねぇ。おじさん別嬪さんにはおまけしちゃうよー」
恰幅と愛想の良いおじさんがお決まりのお世辞を大声で言いながら店から出て来た。
「おじさんも渋くて良い声してますねぇ。じゃあトマトも買うから多めにおまけしてくださいねっ」
「クロエ、君はこんなダミ声の年配者を好むのか?」
慌ててニコラス様の脇腹に肘を打ち込む。うめいているが気にしない。
「おぉ!兄ちゃんも男前だねぇ。母ちゃんがいなくてよかったよ。母ちゃんがいたら店の野菜全部あげちまいそうだよ」
「クロエ痛いじゃないか。奥さんがそのようでは商売あがったりだろう。店主も苦労しますね……」
違うわ、おじさんの冗談ですよ。心底憐れむんじゃない!
そそくさと買い物を終わらせ、お世辞の効果をレクチャーした。
「さぁ、ターゲットはあのお肉屋さんですよ。牛テールとソーセージをゲットして来てください!」
今日はテールスープだろうか?あれ美味しいんだよなぁ。
涎が垂れそうになって、口を押えながら前を見ると、深呼吸をしながら歩いて行くニコラス様。
そんな緊張する事ないのに。近くで見守ろうと声が聞こえる所まで付いていく。
「あー、んっ、んっ、誰かいるか?肉を買いたいんだが」
「はいはーい、ここに居ますよぉ。うちは肉屋だから肉ばかりでねぇ。何の肉が欲しいか言ってくれなきゃ……あらまぁ!おっとこまえ!」
「うっ、あ、ありがとう。あなたは……そうだ、声が大きい。いい事だ」
あれで褒めてるつもりだろうか?もうちょっと他になかったのかしら。
「牛テールとソーセージが欲しいのだが包んでもらえるだろうか」
「ついでにおばさんももらっておくれよー。わっはっはっ」
ニコラス様が瞬時に私の方を振り向いて目で助けを求めている。
頑張れーーまだ大丈夫!口パクで応援した後、ひらひらと手を振っておく。
「あー、僕は肉より魚が好きなので難しい」
訳が分からない返答におばさんがキョトンとしているじゃないか。
「そりゃ残念!うちの旦那は魚好きでも私と結婚してくれたんだけどねぇ」
「不貞行為はお勧めしない。ご主人を大切にしてくれたまえ」
「わははっ!兄ちゃん面白いねぇ。よし、おまけにコロッケつけてあげるよ。ほら持っていきなっ」
よかった。会話は微妙だけど買い物は無事出来た。
達成感で頬を染めながら、意気揚々とニコラス様が向かってくる。
「僕でも買えたぞ!初めてにしては上出来だっただろ?ほらっ見てくれ。おまけまでもらえたんだ!」
かわいい人……さざ波打つ胸を押さえた。
近くの公園のベンチに座りコロッケを半分こして、朝ご飯代わりにする。
「これは美味いな!こんなに美味しいものがあるのか」
きっと達成感や外で食べる経験がスパイスとなっているのだろうけど、ちょっと甘いコロッケは本当に美味しい。
「おまけしてもらえてよかったですね」
二人で微笑みながら、かみしめるように味わった。
【マーガレット、コロッケなるものを食べたことがあるか?肉屋の揚げたてのコロッケだぞ。あれは発明と言っていい代物だ!】
シャワーを浴びていると、曇った鏡に淡いピンクがぼんやり映っている。唯一自慢のローズブロンドの髪。
ニコラス様ほどの容姿なら、自慢できるところが多すぎて一つだけ選ぶ方が難しいでしょうね。
美人は三日で飽きると言うけど間違いだと思う。本当の美人は飽きないに違いない。
内面は……非常識でハチャメチャな人。だけど純粋で真っすぐな人。
この穏やかな地でニコラス様と人生を共にする女性はきっと笑いの絶えない日々を送るのだろう。
ベッドに入るとすぐに睡魔がやって来た。
ゆらりゆらりと夢と現を漂っていると、ゆらりゆらりと赤黒い物が漂って来て飛び起きた。
なんてものを夢に出してしまったのだ!!!
結局、この夜は夢の中に繰り返し赤黒い物が出て来て、何度も飛び起きる羽目になった……。
普段なら清々しく思う、少し冷たい朝の風を頬に受ける。
アレの持ち主はまだ熟睡しているに違いない。
なんか理不尽だ。納得できない。モヤモヤする……。
このモヤモヤをどうやって解消しようかと悩んでいたら、一石二鳥の素晴らしい方法があった。
ダンダンダン!
「起きて下さーい!服を着たらドアを開けて下さーーい!」
理不尽をぶつけるようにドアと叩く。
叩いてスッキリするし、ニコラス様も起こせる。
伯爵家の使用人が背後を通って行くが、奇人変人に慣れているだけあって動じていない。
「ニコラスさまぁー起きましたかぁー?」
再び叩こうと振り上げたこぶしが、開いたドアから出て来た素肌の胸を叩いてしまった。
「わっ!申し訳ございません。勢いあまって」
「構わない。それよりあんなに強くドアを叩いたら手が痛いだろ?」
上半身はシャツを羽織っただけだが、下半身はちゃんと穿いてくれていてホッとする。
はんっ!もう胸ぐらいで動じませんよ!アレさえ隠れていれば平気ですとも!
「頑丈なんで大丈夫です。おはようございます」
まだ寝ぼけ眼のニコラス様が、私の手を取り……ペロリと舐めた。
「ぎぁーー!何するんですか!」
「なにって労わったんだ。動物の親が子を舐めるのと一緒だ。気にするな」
気にするわーー!!
「クロエの手を放しなさい。ここの男たちは、生まれた時は人間だったのに、どうして獣に育つのかしらね」
振り向くより早く、扇子がニコラス様の手を叩いた。
「いでっ!それの骨組み鉄で出来ているだろ!?凶器だぞ!」
「凶器にするために鉄で作ったのですよ」
随分しっかりした扇子だと思っていたが、高級な扇子だからだと思い込んでいた。鉄骨扇子だったか……。
興味津々で眺めていると、
「クロエにも作って差し上げましょう」
と仰ってくれた。やった!
マーガレット様が何をしに来たのかと言うと、おつかいを命じに来たそうだ。
伯爵家の跡取りはご長男のスタン様だが領地経営は苦手らしい。数字を見ると血の気が引く病にかかっているとか。
なので社交はスタン様が担当し、内向きの運営をニコラス様が担当しているそうだ。
「一人ですべき事を二人でするなんて嘆かわしい」
と、マーガレット様はおっしゃるが適材適所でうまく回っているのだろう。
しかし、ニコラス様が領地の視察に出向かないのは、由々しき問題だと指摘するマーガレット様には同意するしかない。
机上置かれた書類では分からない事もあるだろう。
そ・こ・で、手始めにおつかいがてら領民の暮らしを見て来いと命ぜられたわけだ。
「二人でこのリストの物を買って来なさい」
紙を握らせるとさっさと行ってしまったが、小さな文字でびっしりと書いてある。
なかなか大変なおつかいになりそう。
外套を羽織って、玄関で植物を眺めながらニコラス様を待っていると、寝癖が付いたままやって来た。
「しゃがんでください」
手櫛で直すとニコラス様の頬が赤くなる。
「こ、こういう行為は軽々しくしてはいけない。いくら頭髪が死んだ細胞とはいえ、相手の男に勘違いされるぞ」
何を言っているんだこの男は。アレを見られたり、人の手を舐めるのは恥ずかしくないくせに、ちょっと死んだ細胞に触られたくらいで照れるのか。恥ずかしがるところが違うでしょうよ。
「なら寝癖ぐらい直して来て下さいよ」
まだ乙女のようにもじもじしながら、ぶつぶつと言っていたが、さっさと馬車のドアを開けて押し込んでやった。
下の毛に息が当たっても何にも言わなかったくせに、上の毛でぶつぶつ言うんじゃないわよ。まったく!
領地のメインストリートに降ろしてもらって、御者さんと打ち合わせをする。
馬車の中でリストを確認したけど、ここの事を知らない二人では、どうにもならなかった。
「リストのここからここまでは市場で買えますよ。残りの品物はこの通りで一軒一軒回らないと買えませんねぇ」
生鮮食品以外からやっつけようと思ったが、市場は午前中の方が品ぞろえが良いのはどこも同じなので、先に市場へ向かおう。
市場での買い物が終わったら、一度御者さんに伯爵邸に持ち帰ってもらう事で話しが付いた。
二人とも初めての場所だから、おのぼりさん状態できょろきょろしっぱなしだ。
「活気がありますね。思っていたよりかなり大きな市場だわ」
「大型船が入港できる港があるから海外の珍しい食材も手に入る。そのおかげで周辺の領地からも人が集まって来るから、この辺りでは一番取引高の高い市場だ」
取引高が出て来るのがニコラス様らしい。しかし今日は社会見学が目的なので、数字じゃなくて実地訓練となりますからね。
「八百屋さんで買い物するので見ていてください。次の店ではニコラス様にしていただきますよ」
「こんにちは、芽キャベツと人参くださーい」
「らっしゃい。おっ!別嬪さんだねぇ。おじさん別嬪さんにはおまけしちゃうよー」
恰幅と愛想の良いおじさんがお決まりのお世辞を大声で言いながら店から出て来た。
「おじさんも渋くて良い声してますねぇ。じゃあトマトも買うから多めにおまけしてくださいねっ」
「クロエ、君はこんなダミ声の年配者を好むのか?」
慌ててニコラス様の脇腹に肘を打ち込む。うめいているが気にしない。
「おぉ!兄ちゃんも男前だねぇ。母ちゃんがいなくてよかったよ。母ちゃんがいたら店の野菜全部あげちまいそうだよ」
「クロエ痛いじゃないか。奥さんがそのようでは商売あがったりだろう。店主も苦労しますね……」
違うわ、おじさんの冗談ですよ。心底憐れむんじゃない!
そそくさと買い物を終わらせ、お世辞の効果をレクチャーした。
「さぁ、ターゲットはあのお肉屋さんですよ。牛テールとソーセージをゲットして来てください!」
今日はテールスープだろうか?あれ美味しいんだよなぁ。
涎が垂れそうになって、口を押えながら前を見ると、深呼吸をしながら歩いて行くニコラス様。
そんな緊張する事ないのに。近くで見守ろうと声が聞こえる所まで付いていく。
「あー、んっ、んっ、誰かいるか?肉を買いたいんだが」
「はいはーい、ここに居ますよぉ。うちは肉屋だから肉ばかりでねぇ。何の肉が欲しいか言ってくれなきゃ……あらまぁ!おっとこまえ!」
「うっ、あ、ありがとう。あなたは……そうだ、声が大きい。いい事だ」
あれで褒めてるつもりだろうか?もうちょっと他になかったのかしら。
「牛テールとソーセージが欲しいのだが包んでもらえるだろうか」
「ついでにおばさんももらっておくれよー。わっはっはっ」
ニコラス様が瞬時に私の方を振り向いて目で助けを求めている。
頑張れーーまだ大丈夫!口パクで応援した後、ひらひらと手を振っておく。
「あー、僕は肉より魚が好きなので難しい」
訳が分からない返答におばさんがキョトンとしているじゃないか。
「そりゃ残念!うちの旦那は魚好きでも私と結婚してくれたんだけどねぇ」
「不貞行為はお勧めしない。ご主人を大切にしてくれたまえ」
「わははっ!兄ちゃん面白いねぇ。よし、おまけにコロッケつけてあげるよ。ほら持っていきなっ」
よかった。会話は微妙だけど買い物は無事出来た。
達成感で頬を染めながら、意気揚々とニコラス様が向かってくる。
「僕でも買えたぞ!初めてにしては上出来だっただろ?ほらっ見てくれ。おまけまでもらえたんだ!」
かわいい人……さざ波打つ胸を押さえた。
近くの公園のベンチに座りコロッケを半分こして、朝ご飯代わりにする。
「これは美味いな!こんなに美味しいものがあるのか」
きっと達成感や外で食べる経験がスパイスとなっているのだろうけど、ちょっと甘いコロッケは本当に美味しい。
「おまけしてもらえてよかったですね」
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