愛し合えない夫婦です

十人 秋夜

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1、結婚なんてできません

優しい旦那様との初夜

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 豪華な部屋なんて目に入らないぐらいに、美しい青年。

「そんなに力を入れなくていいですよ。私達はもう夫婦ですから思ったことをなんでも言ってください。」

 あまり大きくないソファに座らされ、その隣にぴったりとくっつくようにセルザイト殿下も座る。

「あの、今夜私はどこで眠るのですか?」

 先ほどからずっと疑問に思っていた。そんなすぐに部屋なんて用意できるものだろうかと思いもあり、迷惑をかけているような気がするのだ。細やかな気遣いをしてくれる侍女の方やセルザイト殿下にも、なんだか申し訳なくなってくる。
 その上セルザイト殿下は容易に触れてくる。いやらしいわけではないのだが、男性に慣れていないというか"他人"の男性と関わったことすらないので、やけに気になる。

「私の寝室ですけど、嫌ですか?」

 グッと眉間にシワがよる。嫌かどうかの問題ではない。今日初対面の男性と一緒に寝るということが、世間的にどうなのだろうと思った。

「ご安心ください。まだ正式に結婚していませんから、何もしませんよ。」

 優しく笑うセルザイト殿下を見て、こんな人のお嫁さんが自分で良いのかなと思ってしまう。不釣り合いなんてものじゃなくて、自分達の婚姻はもっと色々な角度から見ればデメリットの方が多いと思う。

「セルザイト殿下はお疲れでしょう?私は床でもどこでも眠れますから。」

 セルザイト殿下の優しさに惑わせれてしまいそうだけれど、きちんと身分をわきまえなければならない。

「そんなことさせませんよ?私は大切な妻を床で寝かせることなどできません。床が良いのなら私もその隣で寝ます。」

 少し怒ったような強い口調。それなのに恐いとも思わず、優しいと思った。

「そのようなこと・・・・・」

「もう眠る支度をしましょうか?遅くまで申し訳ありません。今侍女を呼びますね。」

 侍女なんて一生聞かないと思っていた。こんな生活が毎日続くと思うと、幸せ者なのか、苦労者なのか分からない。

 眠る支度、ただお風呂に入って夜着に着替えるだけかと思っていた。

 しかしなんとなくここまでの周囲の対応でなんとなく想像していたが、想像を上回る結果となった。複数の侍女に体を洗われ、体を拭かれ、全身に香油を塗られた。そして、面積の少ないふんわりとした夜着を着せられた。
 体から漂う甘い香りに戸惑いつつ、先ほど座っていたソファに座ってセルザイト殿下の帰りを待つ。

「お待たせしてしまいましたか?」

 こんな夜着を着せられている自分とは対に、セルザイト殿下は濃紺のバスローブだけだった。
 首を横に振って、セルザイト殿下に微笑みかける。

「もうお疲れでしょうから・・・」

 セルザイト殿下は膝の裏と首の後ろに腕を当てて、いとも簡単に持ち上げられる。

「せっ、セルザイト殿下?」

 不安定な体勢で、慌ててセルザイト殿下にしがみつく。ゆっくりとドアの方に向かって歩いているセルザイト殿下は、微笑みかけてくれた。

 セルザイト殿下の寝室に入ると、大きな寝台が中央に鎮座していた。天蓋の下がった寝台なんて初めて見た。
 セルザイト殿下は丁寧に寝台に降ろしてくれた。そしてセルザイト殿下も寝台の上に上がると、優しく布団をかけてくれた。

「おやすみなさいアーシャ殿」
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