愛し合えない夫婦です

十人 秋夜

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2、愛情なんて不要?

盗まれたお姫様

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「今夜空いてます?」

「えぇ」

「今日のドレスはどうですか?殿下のために少し張り切ってしまいましたわ。」

「そうですか。」

「私のことどう思います?」

「えぇ」

「セルザイト殿下っ!先ほどから私の話を聞いていませんわね!」

 大きな声で怒鳴られ、我に帰る。
 実際、リネアの声なんてちっとも聞こえていない。それよりもアーシャのことが気になって仕方がない。ここのところずっとそうなのだ。アーシャのことが頭から離れない。
 今、あの男といると思うと、また胸が煙たくなる。
 それどころか、ちっとも帰って来ないアーシャがとても腹立たしい。
(どうせまた仲睦まじくイチャイチャ、イチャイチャと・・・)

「あちらばかり見ていらっしゃいますわね?私よりもあちらのドアの方が良いのです?」

 ふいとそっぽを向くリネア。
(今日は私とアーシャ殿の式なのに・・・・アーシャ殿は他の男と・・・・)
 考えるだけでますます腹立たしくなって、胸の内で渦巻く感情が畝る。

「いえ、そんなことは・・・ただ、アーシャ殿がなかなか帰って来ないなと。」

 脳裏に浮かぶ、嫌な予感。あの男と一緒に逃げたのかもしれない。そんな予感が余計に腹立たしさをくすぐる。

「私とあの方、セルザイト殿下はどちらを愛するのです?」

 拗ねたような口調のリネアは、上品でもなければ可愛らしくもない。アーシャは自分がリネアと二人っきりのことに嫉妬するどころか、送り出してくれた。喜ぶべきことなのかもしれないが、嬉しいどころかすごく不快な気分になった。
 自分はアーシャがあの男と一緒にいる、そう思うだけでとても不快で腹立たしいのに、アーシャはまるでなんとも思っていないようだ。

「私はもうアーシャ殿の夫に・・・」

「あの人、今以前の恋人といるのでしょう?それならセルザイト殿下だって、私とー緒に過ごして良いのでは?」

 チクリと胸に何かが刺さったように痛む。
 アーシャ、妻となる存在。でも、いつになっても自分のものにならない。一定の距離から離れることがなくても、その距離が縮むことはないだろう。

「でも・・・・」

 なんとも言い返し様がない。だが、ふと良い案が浮かんだ。

「では、さようなら。」

 逃げるは勝ちである。
 走って逃げる。さすがにリネアだって、追いかけては来ないだろう。

 すすり泣くような音が、無機質な廊下に響く。
 いつも通っている廊下が、不気味に感じる。
 そろそろと歩きゆっくりと角を曲がる。

「あ、アーシャ殿?」

 見覚えのある髪の色に、声をかける。廊下の壁にもたれかかるように座り込み、膝に顔を埋めている。

「セルザイト殿下?」

 びっくりするようなか細い声。泣いているし、そんな声で呼ばれては動揺しても仕方がないのではないだろうか。

「どうなさったのです?」

 アーシャと目が合うように、しゃがむ。できるだけ優しく言ったつもりだった・・・

 うわあぁと更に泣かせてしまい、困ってしまう。

「あ、えっと・・・もう部屋に戻りましょう。疲れたでしょう?」

 泣かせたくないのに、泣かせてしまう。
 おどけて笑わせるような術など持ち合わせておらず、励ますような暖かい言葉も出て来ない。

「失礼します。」
 
 膝の後ろと首の後ろに横から手を入れ、抱き上げる。

「ひゃあっ!セルザイト殿下!」

 驚いたからなのか、泣き止んだアーシャ。ぎゅっと首にしがみついてきて、身体と身体の距離が無くなる。
 暖かい体温が伝わってきて、心地よい。

 これが妻に対する愛情なのだろうか・・・l
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