5 / 11
内緒話は手を取り合って
彼のギレイベリアを守るため
しおりを挟む
「いつの時代も愛してるよ・・・・・」
「もっと、あなたの側にいさせて」
「居てよ。ずっと・・・最後まで一緒に・・・・」
「やだ!いやぁ!・・・・・離れたくない・・・・・」
あなたの
側に
側に
居られるだけで
良いから・・・・・
「ん・・・・・」
ぐしゃぐしゃに乱れた髪。汗ばんだ手の平。なんだか目眩に似た、ぐわん、ぐわん、と揺れる感覚。
ここのところずっとこの夢だ。
大好きな彼との別れであり、自分の死の瞬間である。
オディールは、自分の手の平を見つめた。ギレイベリアのためにここに嫁いで来たはずなのに、ギレイベリアのために何ができただろう。最近何事もなく、復興が進んでいる中、辺りの静けさに違和感を感じるのは異国の者の自分だけだろうか。
いつか、いつの日か、彼と幸せにーーしかし、現実としてはどうだろう。自身は一度死んでいる身、つまり前世の記憶があるという形である。彼にはその記憶があるだろうか。同じ時代に生きているだろうか。他の人と・・・幸せになっているのだろうか・・・
胸の痛みはどうにもならず、オディールは乱れた髪を手櫛で軽く整えた。
勢いよく桃色のカーテンを開けると、清々しい日光が部屋を満たした。
今日は、姉と妹達がやって来る。
これで最後になるはずだ。もう、あの人達と縁を切れる。
***
姉達を待つ。
フォルゲンカトゥルのものとは比べ物にならないほど豪華な応接間。
まだまだ誰かが来る気配はないので、少し寄りかかっても良いかなと深緑のソファに寄りかかる。
昨夜の夢のせいでなんだか寝疲れしてしまったようで、瞼がうっすらと下がった来た。
何か固いものに頭をぶつけ、微量な痛みに目を覚ました。慌てて背筋を伸ばすと、隣から笑うような気配がした。
「寝顔アホ面・・・・」
(なっ!ギレイベリアの男の人って結婚したら嫁に暴言吐いて良いんですか!?アホ面って悪口でしょう?そもそもそんなのと結婚したのあんたでしょう!)
内心憤慨しながらも、すっかり眠りこけてしまったことは反省した。
「申し訳ありません・・・・・」
「もう少し寝てたら?来たら起こしてやらないから」
「いえ、本当に申し訳ありません」
ひどく反省した。
「こっちには慣れたか?」
不機嫌そうに頬杖をついているジオラ。
あんな姉妹と会うために・・・そう思うと、申し訳ない思い半分に少しばかり安心する。
きっと姉達もギレイベリアの国王の前で、あからさまな皮肉は言わないだろう。オディールは一度時計に目を向けた。
「えぇ」
「はぁ・・・あんたさ、俺になんか隠してるだろう?」
驚いた。ただ、隠し事ではないことは確かだ。隠しているのではなく、言わないだけだ。ちょっとした疚しさもあるけれど、そんなに大それたことではない。
「・・・・・」
「いつもと・・・違うな・・・?」
眉間に皺を寄せ、冷ややかな視線で見られた。
いつもと違うのではなくて、わざわざ国王の前で姉の様に振る舞うのは変だし、当の姉の前で姉の様に振る舞うのはもっと変だ。
「ごきげんようっ!」
ノックもせずに飛び出して来た姉。そしてその後ろに立つ二人の妹。
「まぁ!オディール! 久しぶりねぇ」
跳ねるように駆け寄って来たオディールの姉、オデットはベタベタとオディールに触る。
「お美しい姉君ですね、オディール」
柔和で美しさそのものの笑顔をオデットに向けるジオラ。
そんなジオラは世辞というより、まるで口説きにかかるような口調だった。オディールは目の前の光景に心底呆れた。皆、姉のものになってしまう。挙句の果てには夫まで持っていく。
別に構わないが、本来はジオラが姉達と顔を合わせるはずだったのに・・・なんて曖昧な思考をオディールは巡らせていた。
「はじめまして、私フォルゲンカトゥルの第1王女のオデットといいます。もっと早く伺いたかったのですが・・・」
カシャンとセンスが地面に広がった。
どこの部品か、白い破片が無残に散っている。
「あぁ・・・どうしましょ・・・・」
オロオロとする姉を冷たい目で見つめるオディール。
「片付けておいてください。 お気になさらず、おかけください」
素早く使用人に指示を出し、姉達を促すジオラ。
オディールは今まで自分が一度も見せられたことのないジオラの笑顔が、おもしろくなかった。
ドレスにシミがついているし、髪も乱れているし、靴には傷も付いている。背中のリボンだって曲がっている。
どうして、どうして、こんな姉が良いのか昔っから全く理解できない。
「お姉様はどうです?ご迷惑おかけしていませんか?」
「いえ・・・・」
「お姉様は昔から男勝りなところがございますから、ご苦労なさっているかと思いまして」
嘲笑うような笑い声が広い部屋に響く。
下を向いて何も言わなくなってしまったオディールに、ジオラは気づかなかった。
「オディールは礼儀作法とか昔から苦手でして・・・」
苦笑いを浮かべる姉に、しみじみ頷く妹達。
恥ずかしくて、悲しくて、消えてしまいたくなった。
「オデット姫はオディールと双子と聞いているのですが、あまり似ておられないのですね」
「二卵性ですの。顔が似ていなくて良かったです。いちいちそれと間違えられてはこちらも嫌ですわ」
だんだんオデットの言葉はキツくなり、オディールの視界は揺らいでいた。
せっかく忘れられると思ったのに。
ギレイベリアで、幸せになれると思っていたのに。彼と一緒になれると思っていたのに。
結局同じだ。
明日からみんな冷たくなって、あの嫌な視線が向けられ、ここにいられなくなる。
ただギレイベリアを守りたいのに・・・
まるで別の世界の会話のように遠退いていった悪意の塊でできた声。
自由になりたい!
「もっと、あなたの側にいさせて」
「居てよ。ずっと・・・最後まで一緒に・・・・」
「やだ!いやぁ!・・・・・離れたくない・・・・・」
あなたの
側に
側に
居られるだけで
良いから・・・・・
「ん・・・・・」
ぐしゃぐしゃに乱れた髪。汗ばんだ手の平。なんだか目眩に似た、ぐわん、ぐわん、と揺れる感覚。
ここのところずっとこの夢だ。
大好きな彼との別れであり、自分の死の瞬間である。
オディールは、自分の手の平を見つめた。ギレイベリアのためにここに嫁いで来たはずなのに、ギレイベリアのために何ができただろう。最近何事もなく、復興が進んでいる中、辺りの静けさに違和感を感じるのは異国の者の自分だけだろうか。
いつか、いつの日か、彼と幸せにーーしかし、現実としてはどうだろう。自身は一度死んでいる身、つまり前世の記憶があるという形である。彼にはその記憶があるだろうか。同じ時代に生きているだろうか。他の人と・・・幸せになっているのだろうか・・・
胸の痛みはどうにもならず、オディールは乱れた髪を手櫛で軽く整えた。
勢いよく桃色のカーテンを開けると、清々しい日光が部屋を満たした。
今日は、姉と妹達がやって来る。
これで最後になるはずだ。もう、あの人達と縁を切れる。
***
姉達を待つ。
フォルゲンカトゥルのものとは比べ物にならないほど豪華な応接間。
まだまだ誰かが来る気配はないので、少し寄りかかっても良いかなと深緑のソファに寄りかかる。
昨夜の夢のせいでなんだか寝疲れしてしまったようで、瞼がうっすらと下がった来た。
何か固いものに頭をぶつけ、微量な痛みに目を覚ました。慌てて背筋を伸ばすと、隣から笑うような気配がした。
「寝顔アホ面・・・・」
(なっ!ギレイベリアの男の人って結婚したら嫁に暴言吐いて良いんですか!?アホ面って悪口でしょう?そもそもそんなのと結婚したのあんたでしょう!)
内心憤慨しながらも、すっかり眠りこけてしまったことは反省した。
「申し訳ありません・・・・・」
「もう少し寝てたら?来たら起こしてやらないから」
「いえ、本当に申し訳ありません」
ひどく反省した。
「こっちには慣れたか?」
不機嫌そうに頬杖をついているジオラ。
あんな姉妹と会うために・・・そう思うと、申し訳ない思い半分に少しばかり安心する。
きっと姉達もギレイベリアの国王の前で、あからさまな皮肉は言わないだろう。オディールは一度時計に目を向けた。
「えぇ」
「はぁ・・・あんたさ、俺になんか隠してるだろう?」
驚いた。ただ、隠し事ではないことは確かだ。隠しているのではなく、言わないだけだ。ちょっとした疚しさもあるけれど、そんなに大それたことではない。
「・・・・・」
「いつもと・・・違うな・・・?」
眉間に皺を寄せ、冷ややかな視線で見られた。
いつもと違うのではなくて、わざわざ国王の前で姉の様に振る舞うのは変だし、当の姉の前で姉の様に振る舞うのはもっと変だ。
「ごきげんようっ!」
ノックもせずに飛び出して来た姉。そしてその後ろに立つ二人の妹。
「まぁ!オディール! 久しぶりねぇ」
跳ねるように駆け寄って来たオディールの姉、オデットはベタベタとオディールに触る。
「お美しい姉君ですね、オディール」
柔和で美しさそのものの笑顔をオデットに向けるジオラ。
そんなジオラは世辞というより、まるで口説きにかかるような口調だった。オディールは目の前の光景に心底呆れた。皆、姉のものになってしまう。挙句の果てには夫まで持っていく。
別に構わないが、本来はジオラが姉達と顔を合わせるはずだったのに・・・なんて曖昧な思考をオディールは巡らせていた。
「はじめまして、私フォルゲンカトゥルの第1王女のオデットといいます。もっと早く伺いたかったのですが・・・」
カシャンとセンスが地面に広がった。
どこの部品か、白い破片が無残に散っている。
「あぁ・・・どうしましょ・・・・」
オロオロとする姉を冷たい目で見つめるオディール。
「片付けておいてください。 お気になさらず、おかけください」
素早く使用人に指示を出し、姉達を促すジオラ。
オディールは今まで自分が一度も見せられたことのないジオラの笑顔が、おもしろくなかった。
ドレスにシミがついているし、髪も乱れているし、靴には傷も付いている。背中のリボンだって曲がっている。
どうして、どうして、こんな姉が良いのか昔っから全く理解できない。
「お姉様はどうです?ご迷惑おかけしていませんか?」
「いえ・・・・」
「お姉様は昔から男勝りなところがございますから、ご苦労なさっているかと思いまして」
嘲笑うような笑い声が広い部屋に響く。
下を向いて何も言わなくなってしまったオディールに、ジオラは気づかなかった。
「オディールは礼儀作法とか昔から苦手でして・・・」
苦笑いを浮かべる姉に、しみじみ頷く妹達。
恥ずかしくて、悲しくて、消えてしまいたくなった。
「オデット姫はオディールと双子と聞いているのですが、あまり似ておられないのですね」
「二卵性ですの。顔が似ていなくて良かったです。いちいちそれと間違えられてはこちらも嫌ですわ」
だんだんオデットの言葉はキツくなり、オディールの視界は揺らいでいた。
せっかく忘れられると思ったのに。
ギレイベリアで、幸せになれると思っていたのに。彼と一緒になれると思っていたのに。
結局同じだ。
明日からみんな冷たくなって、あの嫌な視線が向けられ、ここにいられなくなる。
ただギレイベリアを守りたいのに・・・
まるで別の世界の会話のように遠退いていった悪意の塊でできた声。
自由になりたい!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる