救いようのないバカを娶りました

十人 秋夜

文字の大きさ
6 / 11
内緒話は手を取り合って

ザ・引きこもり姫

しおりを挟む
 ぼんやりとしたひかりに包まれた部屋。
 ぼんやりとした意識。
 背中の辺りが妙に重い。

 あの甲高い笑い声がいつまでも脳髄に響いて、ジオラの優しい笑顔が霞んだ。
 こんな自分でギレイベリアが守れるのだろうか。彼に愛されるだけの価値があるのだろうか。そもそもここに、この世に、貢献するどころか、負担をかけている。

 そんな風に考えると、わざわざ起き上がるのがバカバカしく感じた。


「奥様、お目覚めでしょうか?お部屋の鍵を開けてください」
 困ったメイドの声が聞こえて来て、現実に引き戻される。
「鍵が開かな~い」
 腑抜けた声が壁に当たる。もう、誰にも会いたくない。
 早く彼に会いたいのに、一人が寂しいのに、この身の側には誰もいない。寒くて冷たい空気に耐え兼ね、布団を顔まで被った。
「奥様、それは大変困ります。お部屋を開けてください」
 「実を言いますと、オディールは不出来の子なんです。ですので、フォルゲンカトゥルには不要なんですの」
 無駄なことを言う妹。いつも、家族はオデットの味方だ。父親譲りの澄んだ瞳の色と、母親譲りの愛らしい髪の色。たったそれだけ。
 そんな姉は家族だけでなく、何もかもを奪っていった。
「ん~もう少し寝させて?」
 大嫌いな姉。たくさんの人に好かれる姉。
 そんな姉のように振る舞えば、もう寂しい思いをしなくて済むと思っていた。
 ただ無理なものは無理である。双子と言えど二人はちっとも似ていない。
「分かりました」

***

「オディール・・・オディール・・・」
 肩を激しく揺すられ、うっすらと瞼を開く。
「ん・・・ジークフリード・・・?」
 諦めたようにため息を吐いたのはジオラだった。
 深緑の髪が目に入り、オディールは自分を起こした人を把握した。
 ゆっくり上体を起こし、ぐしゃぐしゃになった髪をなんとなくまとめた。
「オディール?」
「ジオラ様・・・おはようございます・・・」
 随分長い間寝ていたようで、寝疲れしてしまった。まだ、若干ぼやけている視界。
 そっとジオラの手のひらが頰に当てられ、顔を覗き込まれると、オディールの頰は仄かに染まった。
「泣いていた・・・のか?」
 柔らかな声に安心する一方、オデットと親しげにしていた様子がチラついて、オディールは複雑な心情だった。
「いえ・・・昨日、久しぶりに家族と会って・・・疲れてしまいまして・・・」
 静かなオディールの言葉は、矛盾していた。
 わずかに暗くなるジオラの表情はオディールの視界には入らず、その表情の裏側の複雑な思いまでに気づかない。
「申し訳ないことをしたな。君がこんな所に嫁いで来た理由を考えれば・・・」
「ジオラ様は悪くありません。こんな私がいけないのです」
 再び涙が滲んできて、情けない、と自分を突き飛ばす。
 真っ白い髪を震える手で梳いて、熟れた柘榴(ザクロ)のような瞳を潤した。
「俺は、オディールがあの人達が言ってたような人だとは思わない」
 
っ!


 その瞳は今にも溶け落ちてしまいそうで、

 大きく、大きく、

 見開いていた
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...