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第8章 ライバンス・魔法学院編
第165話 実は学園の守護精霊様は……
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オレはとりあえずビューゼリアンの真意を探る事にした。
「あなたの本当の意図は何ですか? いったい何が目的なんです?」
『それもまた心外だな。我は別に嘘などついていないぞ』
「嘘はついていなくても、肝心な事は隠しているのではないですかね」
ここ半年でオレがそんな相手とどれだけ出会ってきたと思っているんだ。まあこのビューゼリアンが知っているはずが無いけどさ。
『それを言えばそなたとて何でも我に教えているわけではあるまい。お互い様というものだろう』
オレの真意までは気付いていないだろうけど、それでも隠し事をしているのはさすがにバレバレか。
それは仕方が無いな。
「確かにそれはその通りですね」
『それはともかく、そなたは自分が《人間以上》の存在であることを理解しているか?』
「だから何なんですか?」
そりゃまあオレがそこらの人間を圧倒する能力があることは分っているけど、それでいい事なんてロクになかったんですけど。
少なくとも自分を《人間以上》だなんて喜んで調子に乗っていたら、オレは何度命を落としていたか分ったもんじゃない。
もともとオレは神様になりたいなんてこれっぽっちも思ってなかったし、まかり間違って神様になっても『女神様』でしかも『行く先々に恋人がいる』ような立場なわけだから、激しく遠慮したいところなんだ。
『既に知っていると思うが《人間以上》の存在は本来ならば、人の世に直接関わる事が許されていない。あくまでも己の有する権能を通じて間接的に関わるだけだ。我も学園内部で定められた規律を守るために力を振るうしか出来ん』
「それは当然でしょうね。そうしないと世界がメチャクチャになりかねませんから」
神様が勝手気ままに力を振るい、自分の信徒でもない相手にまで直接影響を与える世界なんて、普通のファンタジーだったら『神々の大戦争』を招いた挙げ句、神様達が力を使い果たして世界が人間の手にゆだねられたという伝説の由来じゃないですか。
「おそらく『唯一なるもの』が直接、力を振るう事が無く、あくまでも聖セルムに預言という形で世界の有り様を示したのもそれが理由なんじゃないですか?」
『ほう。そなたはそういう見方をしているのか』
むう。ちょっと口を滑らせたか。
こっちの住民にとって『唯一なるもの』の解釈は、ちょっと気まぐれに議論するなどという軽いものではないんだ。
下手をすれば『異端』として迫害の対象にすらなりかねない事だった。
ビューゼリアンはそこまで深刻には受け止めておらず、単純にオレの考え方を興味深そうに見ているだけらしいが、今後は気をつけるとしよう。
『そもそも我らは全て《唯一なるもの》のほんの一部に過ぎん。その全体を理解するのは人の身を越えてもまだまだ不十分だ。この我がこの学園の守護精霊になってから百年ほどが経つが、未だに遙か及ばぬ事を知るばかり』
「それはそうでしょうけど……あれ? 百年ですか?」
詳しい歴史までは知らないけど、この学園が出来てから百年やそこらではないはずだ。
ちょっと短いのではないのだろうか。
『我は初代から数えて四代目の守護精霊だ。人の身を越えてはいても、我らもまた不滅の存在というわけにはいかんからな。力を使えば当然、消耗する』
え? ケノビウスは千年は首輪の中に存在し続けていたのに、ビューゼリアンはそれに比べると随分と短命な気がする ―― いや。感覚が麻痺してきているのは自覚しているけどね。
ああ。そうか。ケノビウスはしょせんは首輪の精霊だ。
首輪をはめた相手の魔力を封じ、時に助言を与えるぐらいだから、自分の力を使う事なんて殆ど無いんだ。
ビューゼリアンのようなこの学園の守護精霊はケノビウスと比較したら、酷使されまくっているのでずっと寿命が短いということになるらしい。
しかし神様はもっと力を使っているはずだけど、おそらく神様は信徒から崇拝の力を得ているのに対し、さすがに守護精霊ぐらいでは敬意は払っても崇拝の対象とまではいかないから、力を得られるわけじゃないんだろう。
人間に比べたら遙かに寿命は長いのだろうけど、それでも不老不死にはほど遠いということか。
だからビューゼリアンはさっきからオレに対して不死者と呼びかけていたんだな。
『残念ながら我もそうは長くない。あともってせいぜい二十年というところだろうか。そういう意味ではもう我は定命と大して違いは無いのだ』
人間として生きた上で、それから学園の守護精霊として百年以上存在したのなら十分だと思うけどまだ満足してないのか。
「ひょっとすりと、その間に何か凄い業績を挙げたいと思っているわけですか?」
『当然だろう。肉体に根ざす欲求は持たぬ我だが、学究の徒としての欲求を無くしたわけではないぞ』
こいつはかなりヤバい気がしてきたぞ。
考えて見るとコイツは力を使い果たして消える事はあっても、地位を奪われるとか富を失うとかそっちの危険性は無いわけだ。
そしてそれがオレという想定外の存在に出会った事で、ビューゼリアンの中で何かが鎌首をもたげたのか。
厳しい限定はあるにせよ、神様のように信徒を通じてしか力を振るえないわけでもないとしたら、何かとんでもない事を企んでいるような気がしてきた。
もういい加減、ビューゼリアンとは関わり合いになりたくない気がしてきたが、ここに留まる以上は付き合わないといけないで、ここはどうにかせねばなるまい。
本当に《人間以上》の能力があったところで、それで自由になるものなんて本当に少ないよ。
「それでいったい具体的にこちらに何をさせたいのですか?」
『そなたが人間以上の存在であるならば、人間を支配しようとは思わないのか?』
「生憎ですけど、そんな事にはまるで関心がありません」
そんな気があったらとっくの昔にどこかの王太子や皇帝に輿入れしてるよ。
だいたいオレが常人を圧倒する能力があったところで、たとえ『神の力』があったところで、それで簡単に支配できるほど世の中が甘くないのは、元の世界の社会科の授業で習った事だよ。
『そうだろうな。そなたのこれまでの行動を見ると、世俗の権力には興味が無い事は明らかだ。あくまでも崇拝を広めたい事は分っている』
丸っきり分ってねえよ!
もちろん結果的にあちこちでオレを『女神』だの『黄金の乙女』だのと崇拝する連中が雨後の竹の子のように生まれているのだから、そう見られるのは仕方ない。
もう誤解されるのにも慣れてきたから、今さらムキになって言い返す気にもならなくなったのは、このオレが悟りを開いたから ―― なわけでは全然ない。
『しかしそれはそなたが世俗の権力に全く魅力を感じないというよりは、その困難さを理解しているからではないのか?』
「ハッキリ言えばその両方ですよ」
何よりも『男の嫁』になるのがイヤだったという、もっと切実な理由もあるけどな。
『しかしそなたもとっくに気付いているはずだ、民衆にとって必要なのは偶像であり、虚構なのだと。そしてそなたはその虚構がもたらす力についても十分に知っておろう』
そりゃまあつい先日『首輪のスピーカー』に過ぎなかったオレを、何万という人間がありがたがっていたんだから、そっちもよく分ってますよ。
『そなたが民衆を支配するための偶像となってくれれば、具体的に何をすればよいかはこの我が助言しようではないか』
「そんな事をしてあなたに何の利益があるんですか?」
普通に考えると自分が崇拝されることで、信仰の力を得て永遠の存在になりたいとか、そういう安っぽそうな動機だろうか。
『簡単な事だ。《人間以上》に直接統治された国は今まで存在したことがない。それは殆どの《人間以上》がその地位を得れば、現世を離れてしまうからだ。そなたのような存在はまさに例外中の例外と言えよう』
確かに言われて見ればその通りか。
ひょっとするとこっちの基準で言えば、崇拝を集めて神の域に達したのに、それでも敢えてこの世界に留まるのは下手をすると『小学校にいつまでも通い続ける大人』みたいなものなのかもしれないな。
今のオレのようにどれほど強大な魔力を有していようと、人の肉体に縛られていたら、何かあったらすぐに命がけとなるわけで、それを考えたら呼び名が神様でも聖者でもいいけど、この世を超越した存在になろうとするのが当たり前なのだろう。
そう考えるとホン・イールがオレの行動を『本物の女神になるため』と勘違いしているのも自然なことなのだろうか。
『実際に《人間以上》の存在が人間を統治する国がどうなるか、そして国家元首が不死者であり代替わりなく統治する事がいかなる結果を招くのか、研究者として実に興味深い』
要するに全部、あんたの研究対象というわけか。
それで国の運命まで左右する、というか下手すれば一つの国を新しく作るところまで考えるとはいくら何でもぶっちぎり過ぎだろう。
『そなたが何故にこの世に留まっているのかは敢えて問うまい。しかしそれが己の選択であれ、そうでないのであれ今の自分自身を生かす事は考えないか? たとえば多くの国では混乱や滅亡の原因が、後継者争いであることは知っているだろう』
そりゃもちろん。オレはそれに絡んで後宮にまで入った事がありますからね。
「つまり不死でなおかつ人間を越えた存在が国家を指導する事で、普通の国よりもずっといい国になれるのではないか、と言うのがあなたの考えなんですね」
『その通りだ。この我がその行く末を確認する事が出来ないのが、何とも口惜しいがな』
そういえばついさっき、ビューゼリアンがこの世に存在出来るはせいぜいもって二十年だと言っていたな。
「研究者としての行動だったら、その結果を自分が見届けられなくていいんですか?」
『そんな事はどうでもよい。この学園で行われている研究には、百年単位で時間をかけ、代を重ねて行われているものが幾つもあるのだ。この我も先代の守護精霊から引き継いで観測しているものがあり、それをひとつ増やすだけに過ぎない』
うがあ。やっぱりコイツ、感覚が人間をぶっちぎり過ぎているよ。
元の世界で言えば国家建設のシミュレーションゲームのように考え、国もその指導者もマウスのクリック一つでどうにか出来るつもりなのか。
それでいてたぶん『自分が消える前に、興味のある実験をやってみたい』というある意味で人間的な要素もあるかもしれない。
たぶんずっと前から考えていたけど、このオレという格好の実験材料を見いだしたので、可能な実験に乗り出しているという事なんだろうか。
「あなたの本当の意図は何ですか? いったい何が目的なんです?」
『それもまた心外だな。我は別に嘘などついていないぞ』
「嘘はついていなくても、肝心な事は隠しているのではないですかね」
ここ半年でオレがそんな相手とどれだけ出会ってきたと思っているんだ。まあこのビューゼリアンが知っているはずが無いけどさ。
『それを言えばそなたとて何でも我に教えているわけではあるまい。お互い様というものだろう』
オレの真意までは気付いていないだろうけど、それでも隠し事をしているのはさすがにバレバレか。
それは仕方が無いな。
「確かにそれはその通りですね」
『それはともかく、そなたは自分が《人間以上》の存在であることを理解しているか?』
「だから何なんですか?」
そりゃまあオレがそこらの人間を圧倒する能力があることは分っているけど、それでいい事なんてロクになかったんですけど。
少なくとも自分を《人間以上》だなんて喜んで調子に乗っていたら、オレは何度命を落としていたか分ったもんじゃない。
もともとオレは神様になりたいなんてこれっぽっちも思ってなかったし、まかり間違って神様になっても『女神様』でしかも『行く先々に恋人がいる』ような立場なわけだから、激しく遠慮したいところなんだ。
『既に知っていると思うが《人間以上》の存在は本来ならば、人の世に直接関わる事が許されていない。あくまでも己の有する権能を通じて間接的に関わるだけだ。我も学園内部で定められた規律を守るために力を振るうしか出来ん』
「それは当然でしょうね。そうしないと世界がメチャクチャになりかねませんから」
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「おそらく『唯一なるもの』が直接、力を振るう事が無く、あくまでも聖セルムに預言という形で世界の有り様を示したのもそれが理由なんじゃないですか?」
『ほう。そなたはそういう見方をしているのか』
むう。ちょっと口を滑らせたか。
こっちの住民にとって『唯一なるもの』の解釈は、ちょっと気まぐれに議論するなどという軽いものではないんだ。
下手をすれば『異端』として迫害の対象にすらなりかねない事だった。
ビューゼリアンはそこまで深刻には受け止めておらず、単純にオレの考え方を興味深そうに見ているだけらしいが、今後は気をつけるとしよう。
『そもそも我らは全て《唯一なるもの》のほんの一部に過ぎん。その全体を理解するのは人の身を越えてもまだまだ不十分だ。この我がこの学園の守護精霊になってから百年ほどが経つが、未だに遙か及ばぬ事を知るばかり』
「それはそうでしょうけど……あれ? 百年ですか?」
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ちょっと短いのではないのだろうか。
『我は初代から数えて四代目の守護精霊だ。人の身を越えてはいても、我らもまた不滅の存在というわけにはいかんからな。力を使えば当然、消耗する』
え? ケノビウスは千年は首輪の中に存在し続けていたのに、ビューゼリアンはそれに比べると随分と短命な気がする ―― いや。感覚が麻痺してきているのは自覚しているけどね。
ああ。そうか。ケノビウスはしょせんは首輪の精霊だ。
首輪をはめた相手の魔力を封じ、時に助言を与えるぐらいだから、自分の力を使う事なんて殆ど無いんだ。
ビューゼリアンのようなこの学園の守護精霊はケノビウスと比較したら、酷使されまくっているのでずっと寿命が短いということになるらしい。
しかし神様はもっと力を使っているはずだけど、おそらく神様は信徒から崇拝の力を得ているのに対し、さすがに守護精霊ぐらいでは敬意は払っても崇拝の対象とまではいかないから、力を得られるわけじゃないんだろう。
人間に比べたら遙かに寿命は長いのだろうけど、それでも不老不死にはほど遠いということか。
だからビューゼリアンはさっきからオレに対して不死者と呼びかけていたんだな。
『残念ながら我もそうは長くない。あともってせいぜい二十年というところだろうか。そういう意味ではもう我は定命と大して違いは無いのだ』
人間として生きた上で、それから学園の守護精霊として百年以上存在したのなら十分だと思うけどまだ満足してないのか。
「ひょっとすりと、その間に何か凄い業績を挙げたいと思っているわけですか?」
『当然だろう。肉体に根ざす欲求は持たぬ我だが、学究の徒としての欲求を無くしたわけではないぞ』
こいつはかなりヤバい気がしてきたぞ。
考えて見るとコイツは力を使い果たして消える事はあっても、地位を奪われるとか富を失うとかそっちの危険性は無いわけだ。
そしてそれがオレという想定外の存在に出会った事で、ビューゼリアンの中で何かが鎌首をもたげたのか。
厳しい限定はあるにせよ、神様のように信徒を通じてしか力を振るえないわけでもないとしたら、何かとんでもない事を企んでいるような気がしてきた。
もういい加減、ビューゼリアンとは関わり合いになりたくない気がしてきたが、ここに留まる以上は付き合わないといけないで、ここはどうにかせねばなるまい。
本当に《人間以上》の能力があったところで、それで自由になるものなんて本当に少ないよ。
「それでいったい具体的にこちらに何をさせたいのですか?」
『そなたが人間以上の存在であるならば、人間を支配しようとは思わないのか?』
「生憎ですけど、そんな事にはまるで関心がありません」
そんな気があったらとっくの昔にどこかの王太子や皇帝に輿入れしてるよ。
だいたいオレが常人を圧倒する能力があったところで、たとえ『神の力』があったところで、それで簡単に支配できるほど世の中が甘くないのは、元の世界の社会科の授業で習った事だよ。
『そうだろうな。そなたのこれまでの行動を見ると、世俗の権力には興味が無い事は明らかだ。あくまでも崇拝を広めたい事は分っている』
丸っきり分ってねえよ!
もちろん結果的にあちこちでオレを『女神』だの『黄金の乙女』だのと崇拝する連中が雨後の竹の子のように生まれているのだから、そう見られるのは仕方ない。
もう誤解されるのにも慣れてきたから、今さらムキになって言い返す気にもならなくなったのは、このオレが悟りを開いたから ―― なわけでは全然ない。
『しかしそれはそなたが世俗の権力に全く魅力を感じないというよりは、その困難さを理解しているからではないのか?』
「ハッキリ言えばその両方ですよ」
何よりも『男の嫁』になるのがイヤだったという、もっと切実な理由もあるけどな。
『しかしそなたもとっくに気付いているはずだ、民衆にとって必要なのは偶像であり、虚構なのだと。そしてそなたはその虚構がもたらす力についても十分に知っておろう』
そりゃまあつい先日『首輪のスピーカー』に過ぎなかったオレを、何万という人間がありがたがっていたんだから、そっちもよく分ってますよ。
『そなたが民衆を支配するための偶像となってくれれば、具体的に何をすればよいかはこの我が助言しようではないか』
「そんな事をしてあなたに何の利益があるんですか?」
普通に考えると自分が崇拝されることで、信仰の力を得て永遠の存在になりたいとか、そういう安っぽそうな動機だろうか。
『簡単な事だ。《人間以上》に直接統治された国は今まで存在したことがない。それは殆どの《人間以上》がその地位を得れば、現世を離れてしまうからだ。そなたのような存在はまさに例外中の例外と言えよう』
確かに言われて見ればその通りか。
ひょっとするとこっちの基準で言えば、崇拝を集めて神の域に達したのに、それでも敢えてこの世界に留まるのは下手をすると『小学校にいつまでも通い続ける大人』みたいなものなのかもしれないな。
今のオレのようにどれほど強大な魔力を有していようと、人の肉体に縛られていたら、何かあったらすぐに命がけとなるわけで、それを考えたら呼び名が神様でも聖者でもいいけど、この世を超越した存在になろうとするのが当たり前なのだろう。
そう考えるとホン・イールがオレの行動を『本物の女神になるため』と勘違いしているのも自然なことなのだろうか。
『実際に《人間以上》の存在が人間を統治する国がどうなるか、そして国家元首が不死者であり代替わりなく統治する事がいかなる結果を招くのか、研究者として実に興味深い』
要するに全部、あんたの研究対象というわけか。
それで国の運命まで左右する、というか下手すれば一つの国を新しく作るところまで考えるとはいくら何でもぶっちぎり過ぎだろう。
『そなたが何故にこの世に留まっているのかは敢えて問うまい。しかしそれが己の選択であれ、そうでないのであれ今の自分自身を生かす事は考えないか? たとえば多くの国では混乱や滅亡の原因が、後継者争いであることは知っているだろう』
そりゃもちろん。オレはそれに絡んで後宮にまで入った事がありますからね。
「つまり不死でなおかつ人間を越えた存在が国家を指導する事で、普通の国よりもずっといい国になれるのではないか、と言うのがあなたの考えなんですね」
『その通りだ。この我がその行く末を確認する事が出来ないのが、何とも口惜しいがな』
そういえばついさっき、ビューゼリアンがこの世に存在出来るはせいぜいもって二十年だと言っていたな。
「研究者としての行動だったら、その結果を自分が見届けられなくていいんですか?」
『そんな事はどうでもよい。この学園で行われている研究には、百年単位で時間をかけ、代を重ねて行われているものが幾つもあるのだ。この我も先代の守護精霊から引き継いで観測しているものがあり、それをひとつ増やすだけに過ぎない』
うがあ。やっぱりコイツ、感覚が人間をぶっちぎり過ぎているよ。
元の世界で言えば国家建設のシミュレーションゲームのように考え、国もその指導者もマウスのクリック一つでどうにか出来るつもりなのか。
それでいてたぶん『自分が消える前に、興味のある実験をやってみたい』というある意味で人間的な要素もあるかもしれない。
たぶんずっと前から考えていたけど、このオレという格好の実験材料を見いだしたので、可能な実験に乗り出しているという事なんだろうか。
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