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第8章 ライバンス・魔法学院編
第169話 霊体の襲撃、そして……
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オレを突き飛ばしたガランディアはこちらに向けて必死に叫ぶ。
「ここは僕が何とかするから逃げるんだ!」
そう言ってガランディアが霊体に立ち向かおう駆け出すが、ちょっと待てや!
そんな事をされたらオレの【霊体遮断】の防壁から、ガランディアが外れてしまうだろ。
いろいろあって説明していなかったこっちも悪いけど、勝手な真似するんじゃ無い!
だいたい相手が霊体だったら素手で殴っても無意味じゃないか。
「ぐう……くそう……」
思った通りあっさりと霊体に捕まって、ガランディアはその身を半ば覆われている。
相手がどういう霊体なのか、知識の無いオレにはさっぱり分らないし、ひょっとしたら相手はただの『野良精霊』で何もしないで放置してくれたかもしれないけど、こうなってしまった以上は手遅れだ。
「早く! 逃げて!」
霊体に絡まれつつガランディアは必死でこちらに呼びかける。
どうやら本気で自分が襲われている間に、こっちに逃げるように指示しているつもりらしいな。
なるほど。確かに口先だけでない心底のハーレム野郎だと言うことはよく分った。
これならもてるのも分るさ ―― などと感心している場合じゃ無い!
とにかく今は助けないと話にならん!
オレはひとまず【除霊】をガランディアにかける。
これで霊体からの攻撃からは防御されるはずだ。
オレの霊体からの防御魔法は、数体程度が相手なら鉄壁だから、その次には――おや。今の変な霊体は逃げていったぞ。
攻撃しても無駄だと悟ってさっさと逃げたのだろうか。
「ふう……」
息が荒く、肩を大きく上下させているが、どうにかガランディアは無事のようだ。
直接腕力を振るわれたらオレは脆いけど、霊体だったらちょっとやそっとの相手ならば軽いものだよ。
もちろん油断は禁物だ。今までも調子にのって酷い目にあったことが何度もあるからな。
「ガランディアさん。大丈夫ですか?」
「あ……ああ……君が無事で良かった」
「それはどうも……」
オレの魔法のお陰で助かったと思っていないのだろう。
ここで『自分が追い払った』と自慢してこないだけマシ、というか本当に追い払っても恩に着せたりしないのがハーレム野郎の定番だな。
もちろんオレはそれで胸キュンなんてしないけどさ。
いずれにせよこれ以上の猶予はない。
「このままここにいたら、またさっきみたいに何かやってくるかもしれません。ここはわたしが助けを呼んできます」
「え? 君が……かい?」
「ええ。今まで言い出す機会がなかったのですけど、ひとりだけなら逃げ出せたんですよ。ただガランディアさんが心配だったので躊躇してました」
「そうか。それはよかった」
本当に安心した様子で、ただしどこか苦しそうにガランディアはこぼす。
これはさっき攻撃を受けた影響か?
とりあえず【疲労回復】をかけておこう。
「それではすぐに助けを呼んで戻ってきますから、可能な限り動かないで――」
そこまで口にしたところで、オレの【霊視】には周囲に蠢く霊体が幾つも目に入った。
畜生! やっぱりさっきのヤツはただ逃げたのではなく、仲間を呼んできたのか。
残念ながらオレはシャーマン魔術で霊体から防御は出来るけど、連中を蹴散らしたりする攻撃魔法は使えない。
本来の世界から別の世界に召喚されているのなら【追放】で追い払う事も出来るが、ここは連中にとってホームグラウンドだからその手も使えない。
ただ唯一の救いはオレの【霊視】で見る限り、それほど強力な霊体が集まってきているわけではないようだ。
何しろ神話の世界だと、偉大な英雄、場合によっては神様ですら苦戦するような相手とたまたま出くわしてしまう、何てことすらしばしばあるからな。
「こうなったら仕方ない……君だけでも逃げてくれ……」
そういってガランディアはオレのほうに身体を押しつけてくる。
相変わらず息が荒いし、苦しそうだ。【疲労回復】の効果があまり感じられないが、今はそれを確認している場合じゃ無い。
それに気持ちは分るけど、密着しすぎですよ。
もちろんこの場でツンデレヒロインのごとく殴ったり、突き飛ばしたりはしないけどね。
そんなわけでオレは最大出力でもって霊体群れの前に【霊体遮断】の障壁を形成する。
「とにかく急いで逃げましょう!」
幾ら魔法によって防御したところで、防いでいるだけではどうしようもない。
障壁で連中を食い止めたところで、逃げるしか無いんだ。
「……」
オレは駆け出しかけるが、どういうわけかガランディアは動かなかった。
おい。どういうつもりだよ!
ちょっとばかり苦しい様子だけど、動けないなんてことはないだろう。
こんなところで一方的に自己犠牲精神なんて発揮されてもこっちが困るんだ。
「ガランディアさん! 一緒に早く! 痛い?!」
オレがガランディアの手をつかんで引っ張ろうとしたとき、その手が逆に固く握りしめられる。
そしてこの時、オレを見るガランディアの目は、まるで空洞のごとく何の感情も示されず、彼の意志が感じられなくなっていた。
まさか? これは操られている?!
しまった?! さっきの霊体は精神を操る能力があって、それでガランディアは支配されてしまっているのか!
オレは無機質な機械人形のごとく、感情無くギクシャクと動くガランディアにその身を拘束された状態で愕然となっていた。
------------------------- 第260部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
ガランディアに襲われてから
【本文】
「ガ、ガランディア……離して……」
「……」
押さえつけられたオレはどうにか振りほどこうとするものの、無駄に頑健なガランディアの手はびくともしない。
見るとガランディアの目はまるでガラス玉のように精気を失い、自らの意志で行動しているわけではないのは明らかだった。
くそう。図書館で書籍をあさるだけのつもりだったから『筋力強化』をしていなかったけど、まさかこんなことになろうとは、オレも迂闊としか言いようが無い。
オレは霊体に対する防御は幾つも自分の身にかけていたが、直接的に暴力を振るわれる事に脆いのは相変わらずだ。
こんな時には今さらながらこっちが『人の身』である事が少々、恨めしくなってくるよ。
しかも当然ながら今のガランディアはオレの腕を押さえ込んで、魔法が使えないようにしている。
もしも魔法が使えれば『呪払』でガランディアにかけられた魔法を解くことも出来たはずだけど、相手もそれは分っていたようで真っ先にこちらの魔術を封じにきたに違いない。
これはシャレにならないぞ。このままでは確実にオレ達をこの世界に引き込んだ何ものかに捕まってしまう。
唯一の救いはガランディアが豹変する直前にかけておいた『霊体遮断』の魔法がまだ有効で、周囲に集まってきている霊体がこっちに近寄ってこられない事だ。
ガランディアを操っている魔法がどんなものかは知らない ―― 残念ながら回復・支援系特化のオレは人間を自在に操るなんて魔法は使えないのだ。
しかしながらこの世界においては不本意な行為を強制する魔法は相当に高度な魔法であり、そんなに長い時間に渡って有効なものではないはずだ。
ガランディアはさっき霊体に短時間触れていただけなのだから、影響を受ける時間もほんのいっときだけに違いない。
幸いにもガランディアはオレを押さえ込んでいるだけで、それ以上のことをするつもりはないようだ ―― 万が一、スケベこましにきたらマジで『つぶれる』まで蹴り飛ばしたかもしれないけどな。
どうにか今のままで凌いで時間を稼いでいれば、ガランディアも正気に戻ってくれるかもしれない。
もしも『霊体遮断』が切れかかったら、そのときにはもうちょっとばかり過激な手に訴える事も仕方ないだろう。
そんなわけでここはガランディアの意識を取り戻す手伝いをするべきだ。
例によって羞恥心をかなり消耗するが、ここは背に腹はかえられない。
「お願いですから……ガランディアさん。正気に戻って下さい」
「……」
オレが懇願すると、ガランディアの力がちょっとばかり弱まった気がする。
お?! これは思ったより効果はありそうだ。
実にハーレム野郎らしく『女の子のお願い』には弱いらしいな。それは意識を乗っ取られていても変らないようだ。
非常に不本意だけど、有効ならばこの路線でいくしかない。
「ガランディアさん。あなたはそんなことをする人じゃないはずです。スビーリーさんやアニーラさんだって今のあなたを見たらきっと悲しみますよ」
「……!!」
ガランディアの表情が苦しみのこもったものになり始めた。どうやら魔法による命令と蘇りつつある本人の意識が葛藤をはじめたようだな。
オレのかけた【霊体遮断】はまだ有効時間がかなり残っているし、これはいけるかもしれないぞ!
こういう場合、ありがちなパターンでは正気を取り戻させるため、抱きしめたり、いっそキスとかするのもありかもしれないけど、いくら何でもそんな真似はオレには出来ない。
そんなわけでもう一押し!
「あなたは他人を力尽くで言うことを聞かせる事など出来ないですよね? 普段の優しいガランディアさんに戻って!」
「ぼ……ぼくは……」
とうとうガランディアの目に精気が戻りかけ、その口がわななき、オレを押さえ込んでいた手の力が弱まっていく。
よっしゃ。一時はどうなるかと思ったけど、どうにかしのげそうだ。
いったいどこの何ものがこんな大がかりな手を使って、オレ達を襲ってきたのかは分らないが、今はこの場を切り抜けるのが最優先だ。
オレはガランディアにつかまれていた手を引き抜き、完全に正気に戻すべく【呪払】をかけようとする。
だがその瞬間 ―― いきなりオレの後頭部に激しい衝撃が走って、オレはたたらを踏んで膝を地面につく。
な、なんだ? まだオレの 【霊体遮断】はまだ有効なはずだぞ。
いや違う。今のは明らかに霊体では無く、物理的な打撃だ。
つまりそれが何を意味するかと言えば ―― どうにか振り向きかけた瞬間、オレの視界には何かが一杯に広がり、それとともに視界どころか意識までが一気に暗転する事になった。
そうか。霊体もガランディアを操ったのも、そしてこの世界に引き込んだのですら全部、オレを捕まえるための囮であって、本命はこうやってオレをぶん殴ることだったのか。
バカらしいようで実は一番有効な手段だな。
オレは妙に納得しつつ、今度こそ完全に意識が闇の中に引き釣り込まれることとなったのであった。
「ここは僕が何とかするから逃げるんだ!」
そう言ってガランディアが霊体に立ち向かおう駆け出すが、ちょっと待てや!
そんな事をされたらオレの【霊体遮断】の防壁から、ガランディアが外れてしまうだろ。
いろいろあって説明していなかったこっちも悪いけど、勝手な真似するんじゃ無い!
だいたい相手が霊体だったら素手で殴っても無意味じゃないか。
「ぐう……くそう……」
思った通りあっさりと霊体に捕まって、ガランディアはその身を半ば覆われている。
相手がどういう霊体なのか、知識の無いオレにはさっぱり分らないし、ひょっとしたら相手はただの『野良精霊』で何もしないで放置してくれたかもしれないけど、こうなってしまった以上は手遅れだ。
「早く! 逃げて!」
霊体に絡まれつつガランディアは必死でこちらに呼びかける。
どうやら本気で自分が襲われている間に、こっちに逃げるように指示しているつもりらしいな。
なるほど。確かに口先だけでない心底のハーレム野郎だと言うことはよく分った。
これならもてるのも分るさ ―― などと感心している場合じゃ無い!
とにかく今は助けないと話にならん!
オレはひとまず【除霊】をガランディアにかける。
これで霊体からの攻撃からは防御されるはずだ。
オレの霊体からの防御魔法は、数体程度が相手なら鉄壁だから、その次には――おや。今の変な霊体は逃げていったぞ。
攻撃しても無駄だと悟ってさっさと逃げたのだろうか。
「ふう……」
息が荒く、肩を大きく上下させているが、どうにかガランディアは無事のようだ。
直接腕力を振るわれたらオレは脆いけど、霊体だったらちょっとやそっとの相手ならば軽いものだよ。
もちろん油断は禁物だ。今までも調子にのって酷い目にあったことが何度もあるからな。
「ガランディアさん。大丈夫ですか?」
「あ……ああ……君が無事で良かった」
「それはどうも……」
オレの魔法のお陰で助かったと思っていないのだろう。
ここで『自分が追い払った』と自慢してこないだけマシ、というか本当に追い払っても恩に着せたりしないのがハーレム野郎の定番だな。
もちろんオレはそれで胸キュンなんてしないけどさ。
いずれにせよこれ以上の猶予はない。
「このままここにいたら、またさっきみたいに何かやってくるかもしれません。ここはわたしが助けを呼んできます」
「え? 君が……かい?」
「ええ。今まで言い出す機会がなかったのですけど、ひとりだけなら逃げ出せたんですよ。ただガランディアさんが心配だったので躊躇してました」
「そうか。それはよかった」
本当に安心した様子で、ただしどこか苦しそうにガランディアはこぼす。
これはさっき攻撃を受けた影響か?
とりあえず【疲労回復】をかけておこう。
「それではすぐに助けを呼んで戻ってきますから、可能な限り動かないで――」
そこまで口にしたところで、オレの【霊視】には周囲に蠢く霊体が幾つも目に入った。
畜生! やっぱりさっきのヤツはただ逃げたのではなく、仲間を呼んできたのか。
残念ながらオレはシャーマン魔術で霊体から防御は出来るけど、連中を蹴散らしたりする攻撃魔法は使えない。
本来の世界から別の世界に召喚されているのなら【追放】で追い払う事も出来るが、ここは連中にとってホームグラウンドだからその手も使えない。
ただ唯一の救いはオレの【霊視】で見る限り、それほど強力な霊体が集まってきているわけではないようだ。
何しろ神話の世界だと、偉大な英雄、場合によっては神様ですら苦戦するような相手とたまたま出くわしてしまう、何てことすらしばしばあるからな。
「こうなったら仕方ない……君だけでも逃げてくれ……」
そういってガランディアはオレのほうに身体を押しつけてくる。
相変わらず息が荒いし、苦しそうだ。【疲労回復】の効果があまり感じられないが、今はそれを確認している場合じゃ無い。
それに気持ちは分るけど、密着しすぎですよ。
もちろんこの場でツンデレヒロインのごとく殴ったり、突き飛ばしたりはしないけどね。
そんなわけでオレは最大出力でもって霊体群れの前に【霊体遮断】の障壁を形成する。
「とにかく急いで逃げましょう!」
幾ら魔法によって防御したところで、防いでいるだけではどうしようもない。
障壁で連中を食い止めたところで、逃げるしか無いんだ。
「……」
オレは駆け出しかけるが、どういうわけかガランディアは動かなかった。
おい。どういうつもりだよ!
ちょっとばかり苦しい様子だけど、動けないなんてことはないだろう。
こんなところで一方的に自己犠牲精神なんて発揮されてもこっちが困るんだ。
「ガランディアさん! 一緒に早く! 痛い?!」
オレがガランディアの手をつかんで引っ張ろうとしたとき、その手が逆に固く握りしめられる。
そしてこの時、オレを見るガランディアの目は、まるで空洞のごとく何の感情も示されず、彼の意志が感じられなくなっていた。
まさか? これは操られている?!
しまった?! さっきの霊体は精神を操る能力があって、それでガランディアは支配されてしまっているのか!
オレは無機質な機械人形のごとく、感情無くギクシャクと動くガランディアにその身を拘束された状態で愕然となっていた。
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【サブタイトル】
ガランディアに襲われてから
【本文】
「ガ、ガランディア……離して……」
「……」
押さえつけられたオレはどうにか振りほどこうとするものの、無駄に頑健なガランディアの手はびくともしない。
見るとガランディアの目はまるでガラス玉のように精気を失い、自らの意志で行動しているわけではないのは明らかだった。
くそう。図書館で書籍をあさるだけのつもりだったから『筋力強化』をしていなかったけど、まさかこんなことになろうとは、オレも迂闊としか言いようが無い。
オレは霊体に対する防御は幾つも自分の身にかけていたが、直接的に暴力を振るわれる事に脆いのは相変わらずだ。
こんな時には今さらながらこっちが『人の身』である事が少々、恨めしくなってくるよ。
しかも当然ながら今のガランディアはオレの腕を押さえ込んで、魔法が使えないようにしている。
もしも魔法が使えれば『呪払』でガランディアにかけられた魔法を解くことも出来たはずだけど、相手もそれは分っていたようで真っ先にこちらの魔術を封じにきたに違いない。
これはシャレにならないぞ。このままでは確実にオレ達をこの世界に引き込んだ何ものかに捕まってしまう。
唯一の救いはガランディアが豹変する直前にかけておいた『霊体遮断』の魔法がまだ有効で、周囲に集まってきている霊体がこっちに近寄ってこられない事だ。
ガランディアを操っている魔法がどんなものかは知らない ―― 残念ながら回復・支援系特化のオレは人間を自在に操るなんて魔法は使えないのだ。
しかしながらこの世界においては不本意な行為を強制する魔法は相当に高度な魔法であり、そんなに長い時間に渡って有効なものではないはずだ。
ガランディアはさっき霊体に短時間触れていただけなのだから、影響を受ける時間もほんのいっときだけに違いない。
幸いにもガランディアはオレを押さえ込んでいるだけで、それ以上のことをするつもりはないようだ ―― 万が一、スケベこましにきたらマジで『つぶれる』まで蹴り飛ばしたかもしれないけどな。
どうにか今のままで凌いで時間を稼いでいれば、ガランディアも正気に戻ってくれるかもしれない。
もしも『霊体遮断』が切れかかったら、そのときにはもうちょっとばかり過激な手に訴える事も仕方ないだろう。
そんなわけでここはガランディアの意識を取り戻す手伝いをするべきだ。
例によって羞恥心をかなり消耗するが、ここは背に腹はかえられない。
「お願いですから……ガランディアさん。正気に戻って下さい」
「……」
オレが懇願すると、ガランディアの力がちょっとばかり弱まった気がする。
お?! これは思ったより効果はありそうだ。
実にハーレム野郎らしく『女の子のお願い』には弱いらしいな。それは意識を乗っ取られていても変らないようだ。
非常に不本意だけど、有効ならばこの路線でいくしかない。
「ガランディアさん。あなたはそんなことをする人じゃないはずです。スビーリーさんやアニーラさんだって今のあなたを見たらきっと悲しみますよ」
「……!!」
ガランディアの表情が苦しみのこもったものになり始めた。どうやら魔法による命令と蘇りつつある本人の意識が葛藤をはじめたようだな。
オレのかけた【霊体遮断】はまだ有効時間がかなり残っているし、これはいけるかもしれないぞ!
こういう場合、ありがちなパターンでは正気を取り戻させるため、抱きしめたり、いっそキスとかするのもありかもしれないけど、いくら何でもそんな真似はオレには出来ない。
そんなわけでもう一押し!
「あなたは他人を力尽くで言うことを聞かせる事など出来ないですよね? 普段の優しいガランディアさんに戻って!」
「ぼ……ぼくは……」
とうとうガランディアの目に精気が戻りかけ、その口がわななき、オレを押さえ込んでいた手の力が弱まっていく。
よっしゃ。一時はどうなるかと思ったけど、どうにかしのげそうだ。
いったいどこの何ものがこんな大がかりな手を使って、オレ達を襲ってきたのかは分らないが、今はこの場を切り抜けるのが最優先だ。
オレはガランディアにつかまれていた手を引き抜き、完全に正気に戻すべく【呪払】をかけようとする。
だがその瞬間 ―― いきなりオレの後頭部に激しい衝撃が走って、オレはたたらを踏んで膝を地面につく。
な、なんだ? まだオレの 【霊体遮断】はまだ有効なはずだぞ。
いや違う。今のは明らかに霊体では無く、物理的な打撃だ。
つまりそれが何を意味するかと言えば ―― どうにか振り向きかけた瞬間、オレの視界には何かが一杯に広がり、それとともに視界どころか意識までが一気に暗転する事になった。
そうか。霊体もガランディアを操ったのも、そしてこの世界に引き込んだのですら全部、オレを捕まえるための囮であって、本命はこうやってオレをぶん殴ることだったのか。
バカらしいようで実は一番有効な手段だな。
オレは妙に納得しつつ、今度こそ完全に意識が闇の中に引き釣り込まれることとなったのであった。
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