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第8章 ライバンス・魔法学院編
第170話 追い込まれつつも希望を求めると
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うう。頭が痛い。まるでバケツをかぶせられて、それをたたかれているかのように、がんがんと響いてくるよ。
ここはどこだ。いったい何が起きたんだ ―― 次第に意識が覚醒してくると、オレは思わず周囲を見回す。
見るといまオレがいる場所は薄暗い殺風景な石造りの狭い部屋で、のぞき窓のついたいかにも丈夫そうな金属の扉が閉められ、明かりはそののぞき窓から僅かに光が差し込んでいる程度だ。
オレの感覚は魔法を使わずとも常人よりはかなり鋭いので、そのわずかな明かりでもだいたい周囲の景色は見えるのだが、いまオレがいるのはあからさまに牢屋の類いだな。
しかもこちらは手足が鎖で縛られて、壁につながれており、とても動ける様子は無い。
魔法さえ使えれば、この状況でもどうにか出来るかもしれないけど、拘束されていたら殆ど打てる手はないのだ。
傍目には完全に八方ふさがりだ。
これは普通だったらパニックに陥るところかもしれないけど、オレはとりあえず安心していたと言ったら、知らない人間には激しく誤解されそうだな。
こうやって拘束されているということは、とりあえず相手は今すぐオレを殺す気はないということだ。
あと暴行とかその手の忌まわしい所業をされている気配もないのは胸をなで下ろすところだな。
まあそれは下手すれば生け贄だの生体解剖だのの対象なので、手出ししないようにされているかもしれない。
ひょっとしたら『商品』として、オレを売り飛ばすため傷ものにはしないとか、そっちの線もありうるな。
どっちにしろ生きているからにはチャンスは必ずあるはず。
むしろいま心配するのは、姿の見えないガランディアがどうなっているかだ。
あとになって黒幕からいきなり『用済みだから始末した』なんて言われると、こっちにとってもシャレにならないよ ―― それだったらまだガランディアこそが実は全ての黒幕で、オレを捕らえるために近づいたと言われた方がマシだ。
何にせよやばい相手に捕まった自分の身よりも、ガランディアの事を気にかける羽目になるとはな。
ああ。拘束され捕まることにすっかり慣れてしまうなんて、何というか奇妙な『ヒロイン気質』が身についてしまったものだ。
まあいい。とにかく今は魔法も使えないし、状況が変るのを待つしか無い。
ビューゼリアンは当然、オレ達がこうなっていることを知っているはずだが、あのマッドな研究者気質からすると助けるどころか『面白い事になった。記録しておこう』などと考えてスルーしている可能性が高いな。
あの役立たずな守護精霊様はともかく、オレとガランディアが非常事態に直面している事は、ホン・イール達もそう遠からず気付くはずだから、ひょっとしたら助けが来るかもしれない。
もちろん望めないのなら、自力で脱出するしかないわけだが、そのためにもどうにか状況を把握するしかないだろう。
まさかあれだけ大がかりな仕掛けをしてまでオレをとっ捕まえて、このまま幽閉したままという事はあるまい ―― むしろそんな事をされた方が真っ平だ。
このままずっと放置されて、焦らしプレイなどされた日には、誰かやってきただけで飛びついてしまうかもな。などととりとめの無いことを考えていたら、誰かがこちらにやってくる足音が響いてくる。
どうやらお待ちかねの相手が来てくれたらしい。
オレが期待を込めて扉ののぞき窓を凝視していると、そこで何者かがこちらをのぞき込んでくる。
意識を失ったままのフリをしてやりすごそうか、などと少しは考えてみたが、やはりここは相手と意思疎通を行って何を考えているのかさぐるべきだろう。
この世界に来る前の男子高校生のままだったら、たぶんパニックに陥ってどうすればいいのかすら分からなかっただろうから、この半年間の経験でずいぶんとオレも図太くなったものだと思うよ。
それがアンデッド教団にさらわれたり、偽皇帝に辱められかけたり、鎖をはめられて奴隷扱いされ続けた結果だと思うと、少しもうれしくないけどな。
こちらから声を放つ前に、のぞき窓に見えた範囲では相手は人間の男性だろう。
もっともそれ以上はさすがに分らないけど、少なくともそんな知り合いはいないはずだ。
「そこのお人。すみません。ここはどこなんですか? いまわたしはどうなっているのでしょうか?」
「ほう……」
どこか感心した様子で相手はつぶやく。
「この状況において、まずまずの適応力だ。普通の人間ならとっくに恐慌に陥っているところだろう」
相手はまるで実験動物を値踏みするかの様子でつぶやく。
そりゃまあ今までこれぐらいのピンチはしょっちゅうでしたからね。
初めてだったらここまで落ち着いてはいませんよ。
それはともかく、とりあえず言葉が通じる人間であるようだ。
ただし意思疎通が出来るかどうかは別問題である。
これがよくあるパターンの安っぽい看守のたぐいだったら、オレの色仕掛けでドアを開けさせ、鎖を解かせるというお約束の手口が使えるかもしれなかったけど、どうやらそれは望み薄のようだ。
しかしここであっさりと諦めるほど、オレが物わかりがよかったら、とっくに男に戻るのを諦めているさ。
とりあえずこれからが正念場だ。
今すぐ脱出するのは無理としても、聞くべき事はいくらでもある。
オレは改めて覚悟を固めつつ、やってきた相手を見つめ返した。
そんなわけで覗いている相手を可能な限り観察する。
こっちだってさっきから鎖につながれた姿を凝視されるというちょっとエロっぽい状態だから、それぐらいはやってもいいよね。
のぞき窓から見える範囲だけなので、詳しい事は分からないが相手はどうも五〇歳ぐらいに見える、オレの見たことのない男性だ。
もっともこちらでは変身と言わずとも、見た目をちょっと変える変装の魔法ぐらいなら、使える魔法使いはかなりいるらしい ―― だからこそこの学園では外見を装う魔法は禁止されているのだ。
残念ながら魔法を封じられた今のオレにはそれ以上の事は探りようがない。
仕方ないのでここは気になっている事を問いかける。
「ところでガランディアさんはどうなったんですか?」
「これは意外だな。まさか次に問うのが他人の事だったとは」
「そんなのあなたには関係ないでしょう。ご存じでしたら教えて下さい」
「自分の身については不安ではないのか?」
どうやらこっちの質問に対して、まともに答える気はないらしい。
本当に実験材料・観察対象としか思っていないのか。
それならそれで『あくまでもあるがまま。自然の姿を観察する』という発想にいたって欲しかったけど、それを今さら文句言ってもはじまらない。
「自分の事はイヤでも思い知ることになるでしょうからね。それよりも知り合いの事が気になるのはおかしいですか?」
「ふうむ……つまりあのものはそなたの『恋人』だったのか?」
「違いますよ」
ええい。いくらガランディアがハーレム野郎だからって、近くにいる女子がみんななびくと思ったら大きな間違いだぞ。
だけどどいつもこいつも同じように見ているということは、やっぱりガランディアにはそういう女子を惹き付けるものがあるのかね。
まあご先祖様が謎の多い英雄にして背教者で、本人も特殊な生来の能力を身につけていて、しかも親しい女子のためには喜んで協力するようなヤツだからな。そんな勘違いをされてしまうのは仕方ないかもしれない ―― もちろんその勘違いを事実にする気はさらさらないけどな。
しかしここで覗いていた顔が少々、意外そうにその目が見開かれる。
「己の命が危ういような状況でありながら、自分の身よりも他人の心配をするとすれば、よほど昵懇な間柄ではないのか」
「言っておきますけど、ガランディアさんに出会ってからまだ数日ですよ。知り合いではあっても、昵懇だなんて大げさにすぎます」
「それにも関わらず、自分の身よりも優先するのか? 不可思議な考えをしているのだな」
「あなたほどだとは思っていませんけどね」
オレの皮肉に対して相手の視線は微動だにしなかった。
「ところでガランディアさんの事については答えてくれないんですか?」
「自分自身の身の上の質問よりも、優先するとはやはり――」
「だからどっちなんです?!」
オレは少々いらだちを込めて問いかける。
今の状況と自分の立場をわきまえてないのか、と言われたらその通りだ。
しかし同じ事を言われ続けるのはうんざりだという気持ちぐらい察してくれ。
もっともオレがガランディアの身を案じている事を察知されると、人質にされてしまう可能性も否定出来ない。
しかしオレの身柄がこのとおり拘束されて、圧倒的優位にある側がわざわざ人質を使うとは普通は考えられないわけで、ここはオレの関心を優先させてもらおう。
「まあいいだろう。あのものならば無事だ。今のところは……だがな」
この状況で嘘をつく理由はないだろうから、これは信じていいだろうな。
とりあえずだが一安心か。
「それで次にこっちをどうするんですか?」
「そうだな……何しろそなたのように不死者の特性を持ちつつ、未だに人の身に固執している存在は極めて珍しいものだ。実に貴重な検体なのでな。いろいろと悩んでいるとも」
そりゃそうだろう。
今までオレはこの世界における神様や聖人の多くが人間だったと聞いても、そんなに簡単に人間世界を捨てられるのかとちょっと疑問に思っていたんだけど、自分の身に降りかかってくるとなぜそうなるのかよく分ったよ。
不死者がこんなにしょっちゅう毎度毎度ロクでもない目に遭うのだったら、ウンザリしてとっとと神の領域だとかそんなところ引きこもりたくもなるだろうよ。
オレがそんな事を考えていると、まったく口調を変えることなく相手はオレに向けて、不吉極まる宣告を行った。
「まずはしばらくこのままにして、不死者が飢えや渇きにどのような反応をするのか、調べて見るのもよいな」
おい! ちょっと待て! それでオレが死んでしまったらどうすんだ?!
それは実験じゃなくて拷問だろ?!
自分で言うのも何だけど、これだけの美少女を捕まえたのに、飢え死にテストなんて悪党の風上にもおけないやつだ。
自覚してない可能性も高いけど、どうせ悪党なら悪党らしく、もっと別のロクでもない事を考えろよ!
そしてそこで隙を作って、結局は逃げられてしまうところまでがいちセットというものじゃないのか?!
そんな事を考えてオレが表情を変えたのを向こうも察知したらしく、どこか満足げにその唇が歪んだような気がした。
ここはどこだ。いったい何が起きたんだ ―― 次第に意識が覚醒してくると、オレは思わず周囲を見回す。
見るといまオレがいる場所は薄暗い殺風景な石造りの狭い部屋で、のぞき窓のついたいかにも丈夫そうな金属の扉が閉められ、明かりはそののぞき窓から僅かに光が差し込んでいる程度だ。
オレの感覚は魔法を使わずとも常人よりはかなり鋭いので、そのわずかな明かりでもだいたい周囲の景色は見えるのだが、いまオレがいるのはあからさまに牢屋の類いだな。
しかもこちらは手足が鎖で縛られて、壁につながれており、とても動ける様子は無い。
魔法さえ使えれば、この状況でもどうにか出来るかもしれないけど、拘束されていたら殆ど打てる手はないのだ。
傍目には完全に八方ふさがりだ。
これは普通だったらパニックに陥るところかもしれないけど、オレはとりあえず安心していたと言ったら、知らない人間には激しく誤解されそうだな。
こうやって拘束されているということは、とりあえず相手は今すぐオレを殺す気はないということだ。
あと暴行とかその手の忌まわしい所業をされている気配もないのは胸をなで下ろすところだな。
まあそれは下手すれば生け贄だの生体解剖だのの対象なので、手出ししないようにされているかもしれない。
ひょっとしたら『商品』として、オレを売り飛ばすため傷ものにはしないとか、そっちの線もありうるな。
どっちにしろ生きているからにはチャンスは必ずあるはず。
むしろいま心配するのは、姿の見えないガランディアがどうなっているかだ。
あとになって黒幕からいきなり『用済みだから始末した』なんて言われると、こっちにとってもシャレにならないよ ―― それだったらまだガランディアこそが実は全ての黒幕で、オレを捕らえるために近づいたと言われた方がマシだ。
何にせよやばい相手に捕まった自分の身よりも、ガランディアの事を気にかける羽目になるとはな。
ああ。拘束され捕まることにすっかり慣れてしまうなんて、何というか奇妙な『ヒロイン気質』が身についてしまったものだ。
まあいい。とにかく今は魔法も使えないし、状況が変るのを待つしか無い。
ビューゼリアンは当然、オレ達がこうなっていることを知っているはずだが、あのマッドな研究者気質からすると助けるどころか『面白い事になった。記録しておこう』などと考えてスルーしている可能性が高いな。
あの役立たずな守護精霊様はともかく、オレとガランディアが非常事態に直面している事は、ホン・イール達もそう遠からず気付くはずだから、ひょっとしたら助けが来るかもしれない。
もちろん望めないのなら、自力で脱出するしかないわけだが、そのためにもどうにか状況を把握するしかないだろう。
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このままずっと放置されて、焦らしプレイなどされた日には、誰かやってきただけで飛びついてしまうかもな。などととりとめの無いことを考えていたら、誰かがこちらにやってくる足音が響いてくる。
どうやらお待ちかねの相手が来てくれたらしい。
オレが期待を込めて扉ののぞき窓を凝視していると、そこで何者かがこちらをのぞき込んでくる。
意識を失ったままのフリをしてやりすごそうか、などと少しは考えてみたが、やはりここは相手と意思疎通を行って何を考えているのかさぐるべきだろう。
この世界に来る前の男子高校生のままだったら、たぶんパニックに陥ってどうすればいいのかすら分からなかっただろうから、この半年間の経験でずいぶんとオレも図太くなったものだと思うよ。
それがアンデッド教団にさらわれたり、偽皇帝に辱められかけたり、鎖をはめられて奴隷扱いされ続けた結果だと思うと、少しもうれしくないけどな。
こちらから声を放つ前に、のぞき窓に見えた範囲では相手は人間の男性だろう。
もっともそれ以上はさすがに分らないけど、少なくともそんな知り合いはいないはずだ。
「そこのお人。すみません。ここはどこなんですか? いまわたしはどうなっているのでしょうか?」
「ほう……」
どこか感心した様子で相手はつぶやく。
「この状況において、まずまずの適応力だ。普通の人間ならとっくに恐慌に陥っているところだろう」
相手はまるで実験動物を値踏みするかの様子でつぶやく。
そりゃまあ今までこれぐらいのピンチはしょっちゅうでしたからね。
初めてだったらここまで落ち着いてはいませんよ。
それはともかく、とりあえず言葉が通じる人間であるようだ。
ただし意思疎通が出来るかどうかは別問題である。
これがよくあるパターンの安っぽい看守のたぐいだったら、オレの色仕掛けでドアを開けさせ、鎖を解かせるというお約束の手口が使えるかもしれなかったけど、どうやらそれは望み薄のようだ。
しかしここであっさりと諦めるほど、オレが物わかりがよかったら、とっくに男に戻るのを諦めているさ。
とりあえずこれからが正念場だ。
今すぐ脱出するのは無理としても、聞くべき事はいくらでもある。
オレは改めて覚悟を固めつつ、やってきた相手を見つめ返した。
そんなわけで覗いている相手を可能な限り観察する。
こっちだってさっきから鎖につながれた姿を凝視されるというちょっとエロっぽい状態だから、それぐらいはやってもいいよね。
のぞき窓から見える範囲だけなので、詳しい事は分からないが相手はどうも五〇歳ぐらいに見える、オレの見たことのない男性だ。
もっともこちらでは変身と言わずとも、見た目をちょっと変える変装の魔法ぐらいなら、使える魔法使いはかなりいるらしい ―― だからこそこの学園では外見を装う魔法は禁止されているのだ。
残念ながら魔法を封じられた今のオレにはそれ以上の事は探りようがない。
仕方ないのでここは気になっている事を問いかける。
「ところでガランディアさんはどうなったんですか?」
「これは意外だな。まさか次に問うのが他人の事だったとは」
「そんなのあなたには関係ないでしょう。ご存じでしたら教えて下さい」
「自分の身については不安ではないのか?」
どうやらこっちの質問に対して、まともに答える気はないらしい。
本当に実験材料・観察対象としか思っていないのか。
それならそれで『あくまでもあるがまま。自然の姿を観察する』という発想にいたって欲しかったけど、それを今さら文句言ってもはじまらない。
「自分の事はイヤでも思い知ることになるでしょうからね。それよりも知り合いの事が気になるのはおかしいですか?」
「ふうむ……つまりあのものはそなたの『恋人』だったのか?」
「違いますよ」
ええい。いくらガランディアがハーレム野郎だからって、近くにいる女子がみんななびくと思ったら大きな間違いだぞ。
だけどどいつもこいつも同じように見ているということは、やっぱりガランディアにはそういう女子を惹き付けるものがあるのかね。
まあご先祖様が謎の多い英雄にして背教者で、本人も特殊な生来の能力を身につけていて、しかも親しい女子のためには喜んで協力するようなヤツだからな。そんな勘違いをされてしまうのは仕方ないかもしれない ―― もちろんその勘違いを事実にする気はさらさらないけどな。
しかしここで覗いていた顔が少々、意外そうにその目が見開かれる。
「己の命が危ういような状況でありながら、自分の身よりも他人の心配をするとすれば、よほど昵懇な間柄ではないのか」
「言っておきますけど、ガランディアさんに出会ってからまだ数日ですよ。知り合いではあっても、昵懇だなんて大げさにすぎます」
「それにも関わらず、自分の身よりも優先するのか? 不可思議な考えをしているのだな」
「あなたほどだとは思っていませんけどね」
オレの皮肉に対して相手の視線は微動だにしなかった。
「ところでガランディアさんの事については答えてくれないんですか?」
「自分自身の身の上の質問よりも、優先するとはやはり――」
「だからどっちなんです?!」
オレは少々いらだちを込めて問いかける。
今の状況と自分の立場をわきまえてないのか、と言われたらその通りだ。
しかし同じ事を言われ続けるのはうんざりだという気持ちぐらい察してくれ。
もっともオレがガランディアの身を案じている事を察知されると、人質にされてしまう可能性も否定出来ない。
しかしオレの身柄がこのとおり拘束されて、圧倒的優位にある側がわざわざ人質を使うとは普通は考えられないわけで、ここはオレの関心を優先させてもらおう。
「まあいいだろう。あのものならば無事だ。今のところは……だがな」
この状況で嘘をつく理由はないだろうから、これは信じていいだろうな。
とりあえずだが一安心か。
「それで次にこっちをどうするんですか?」
「そうだな……何しろそなたのように不死者の特性を持ちつつ、未だに人の身に固執している存在は極めて珍しいものだ。実に貴重な検体なのでな。いろいろと悩んでいるとも」
そりゃそうだろう。
今までオレはこの世界における神様や聖人の多くが人間だったと聞いても、そんなに簡単に人間世界を捨てられるのかとちょっと疑問に思っていたんだけど、自分の身に降りかかってくるとなぜそうなるのかよく分ったよ。
不死者がこんなにしょっちゅう毎度毎度ロクでもない目に遭うのだったら、ウンザリしてとっとと神の領域だとかそんなところ引きこもりたくもなるだろうよ。
オレがそんな事を考えていると、まったく口調を変えることなく相手はオレに向けて、不吉極まる宣告を行った。
「まずはしばらくこのままにして、不死者が飢えや渇きにどのような反応をするのか、調べて見るのもよいな」
おい! ちょっと待て! それでオレが死んでしまったらどうすんだ?!
それは実験じゃなくて拷問だろ?!
自分で言うのも何だけど、これだけの美少女を捕まえたのに、飢え死にテストなんて悪党の風上にもおけないやつだ。
自覚してない可能性も高いけど、どうせ悪党なら悪党らしく、もっと別のロクでもない事を考えろよ!
そしてそこで隙を作って、結局は逃げられてしまうところまでがいちセットというものじゃないのか?!
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