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第9章 『思想の神』と『英雄』編
第215話 幻の島の在処とは
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エウスブスはさきほど盗賊達から襲撃されたところから、だいたい二時間ほど湖の岸辺を歩いたところにある別の漁村で小舟を買い取った。
「本当に大丈夫なんでしょうね?」
「このフェルスター湖は湖面が荒れる事は滅多に無いよ。だから小舟でも時間をかければ目的地まではつけるさ。食料さえ十分に積んでおけばいいんだ」
まあここはエウスブスを頼りにするしかあるまい。
フェルスター湖は大きな湖だけど比較的細長い形をしている。
もちろん小舟で乗り出すには細長いと言っても、十分過ぎるぐらい広いわけだが、地元の漁民や交易商だって毎日そうやって生活しているのだから、そこはさして心配はしていない。
ただしさっきの盗賊連中のように湖を縄張りにする湖族なんかもいるわけで、逃げ場の無い水の上で襲われたら、幾らオレでもかなり困った事になりかねない。
そして最大の問題は『ウルハンガ生誕の地』というタラスター島はフェルスター湖のどこかにあって、今まで魔法で存在を隠されている、という以上の事が何も分かっていない点だ。
実質、エウスブスひとりで操船する小舟で、フェルスター湖を隅々まで探索するなど、何年かかるか分からないし、噂を聞く限りでは既に大勢の人間がそこを探して回っているにも関わらず見つける事が出来ないらしい。
驚いた事に湖の女神の神託ですら、その存在が分からないのだ。
冷静に考えると、そんなのオレ達が見つけられるはずがない。
先々の事を考えるだけ、どんどん気分が沈むオレに対して、エウスブスはまたしても朗らかな笑顔を注いでくる。
「ひょっとすると心配なのかい?」
「ええ……まあ……」
そりゃそうでしょう。『幻の島』を探すだけでも至難の業の上に、その先に待っているウルハンガをどうにかするのは、もっと無理難題なんだ。
しかしエウスブスの方はオレのそんな悩みなどぶっちぎる。
「ははは。僕もそんなに船の扱いがうまいわけじゃないけど、そこまで心配されるほど酷くはないつもりだよ」
「そっちは別に心配していませんよ」
「まあそれならゆっくりと手がかりを探すとしようじゃないか」
そんなに悠長な事はしていられませんよ。
ウルハンガが本格的に行動を開始したら、それこそどんな大事件になるか想像も出来ないのですから。
いや。思わず内心でツッコんでしまったけど、たぶんエウスブスはオレほど事態の深刻さを考えていないのだろうな。
そりゃそうか。
そもそもエウスブスがこの地に来たのも、自分の教団が教えている『偉大な光の神』であるウルハンガを保護するためなわけで、戦う相手は『邪神グバシの手先』だった。
つまり『神様』と事を構えるつもりなどないんだ ―― 当たり前だけど。
そしてエウスブスが外見に全くそぐわない異常な能力を有しているオレの事をあっさりと受け入れたのは、たぶん彼が考えているウルハンガも似たような存在だからなのだろうな。
いずれにせよウルハンガがいるというタラスター島について、こっちに手がかりが何も無い ―― オレの脳内資料でも何も見当たらないのだ。
千年前に魔法で隠されたのが事実だとしても、いくら何でも大勢の人間が探しているにも関わらず、限られた湖の中で見つからないなんてあり得るのだろうか?
そんな凄い魔法で隠蔽されているなら、絶対に見つけられそうに無いぞ。
もうあまりの難題にオレが投げ出したくなっていると、視界の片隅にて、湖の対岸付近で一筋の光がまばゆく輝いて、こちらの目に飛び込んできた。
なんだ? 何かが太陽光に反射したのか?
いや。違う。
あれは反射では無く、本当に光っているんだ。
そしてホンの一瞬だが、光の中に人影が映っているようにも見えた。
まさかあれはウルハンガの光か?
ひょっとしたらウルハンガが、オレを誘導しているのか。
だけど光っていたところは、どう見ても『島』じゃ無い。
むしろ対岸の平地の中にある小高い丘に思えるけど ―― ああ! そうか?!
考えてみたら『千年前の島が今も島である保証は無い』んだ。
未だに見つかっていないとか、沈んでしまっているとか、そっちの可能性をばかり考えていたけど、千年の間に水位が下がるとか周囲が埋め立てられるとかで、とっくに島で無くなっている事もありうるじゃないか!
それを知らない後世の人間が『島』を血眼になって探している結果、このフェルスター湖でいつまでも見つからないままという事はありうる。
そしてくだんの『島』は既に湖面に存在しないのだから、湖の女神に神託したって答えられるはずもない。
うう。そこは完全に盲点だったな。
今の光がなかったら、オレだって気付きもしなかったろうよ。
そしてオレが目をこすって改めて見直すと、既に先ほどの光は見えなくなっていた。
しかしまさにオレにとっては『導きの光』だった。
手がかりなど存在しない以上、ここは他の選択肢など無い。
「エウスブスさん。わたしたちが行くべき場所が見つかりましたよ」
「そうかい。君がそういうならその通りなのだろう。分かったよ」
エウスブスはあっさりとオレの言葉を受け入れた。
しかし先ほどの漁村で、あっさりと湖に乗り出していたら、今の光を目にする事もなく、エウスブスもオレの力を認める事はなかったろう。
つくづく物事は何が幸いするか分からないものなんだな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ところでアルタシャ。本当に島を探すのでは無くて対岸を目指していいのかい?」
「ええ。是非お願いします。そこにきっとウルハンガがいるはずですから」
「……分かった。君が言うことなら信じよう」
「ありがとうございます」
しばしの後、エウスブスの操る船に揺られつつオレはこれからどうするかを考えていた。
もしも行った先にウルハンガがいなければ、オレはがっかりする反面、ちょっとは安堵するかもしれないな。
危険があるのはともかく、ウルハンガに次に会ったときに、どうすればいいのか、自分でもハッキリした事が分からないのだ。
誤解を恐れずに言えば、まるで意中の相手に告白する直前のような心境だろうか ―― もっとも元の世界で『ハーレム』にあこがれる男子高校生だった時から、一度としてそんな経験はないけどな。
それはともかく本当にウルハンガがいた場合の事を、今から考えておかねばならないのは自明の理だ。
その場合、まず困るのはウルハンガを『邪神グバシ』として崇拝している連中が、寄り集まっていて、こちらでは近寄る事も出来ない場合だ。
それでもエウスブスだったら死を恐れず、正面突破を計るかもしれないが、そのときはオレの魔法で止めるしかない。
あとあと恨まれるかも知れないけど、エウスブスを見殺しにするよりはずっとマシだ。
しかしながら、オレにはそんなやっかいな事にはならないだろうという見込みもあった。
ウルハンガには敵も多いが、味方する者も多いようだ。だがそいつらもまた勢力毎に考えている事がまるで別物なのは、今まで何度も思い知られてきたことだ。
そんな連中が今の子供形態のウルハンガの周囲に集まってきたら、たぶん仲間割れして互いに殺し合いになるが必定だろう。
あんまり見たくも無い光景だけど、そうなっていたらその間をすり抜けてウルハンガに近づけるかもしれない。
それにウルハンガ自身、あまり崇拝者を必要としているようには見えないから、意図的にその手の連中を呼び寄せるとも思えないのだ。
もう一つ言えるのは、これまでに他の神と出会ってきた経験からして、今のウルハンガはオレと同じく人間の肉体を持った存在なのは間違いない。
ならば実力で倒す事はさほど難しくは無いだろう。
オレ自身が何度力尽くでピンチに陥ったか、数え切れない程だし、ウルハンガも『認識をごまかして存在しないように思わせる能力』はあるにしても、そのような事をしているということは戦闘能力に欠けるからと考えるのが自然だ。
ウルハンガはオレが味方につくことを望んでいたのだから、その通りにするフリをして近づき、ナイフでグサッとやれば一件落着だ ―― そんな事が出来るならオレも苦労はしないよ。
相手が人間でないとしても、人型をしていて言葉を交わした相手を殺害などオレに出来るはずがない。
下手をすれば大戦争の火種になりかねない相手だと分かっていても、殺すという選択肢は最初からオレには無いのだ。
ただ言い訳をすると、たぶんウルハンガはその肉体を破壊しても滅びない。
その思想をどのような形であれ、奉じる人間がいる限り、何度でも形を変えて復活してくると思う。
それでも一時的にウルハンガをこの世界から追い払って、戦乱を先延ばしには出来るかもしれない。
だけどウルハンガを保護すべく行動しているエウスブスがそんな事をするはずが無いし、騙してやらせるなどという卑劣な真似もオレには無理だ。
要するにオレは結局のところウルハンガを消滅させる事も出来ないし、その身体を破壊して一時的にしても止める事も出来そうに無い。
これでウルハンガがモラーニ達の言うような本当に邪悪な存在で、人々の心を汚し、世界を腐敗させるために行動しているのなら、ひょっとしたらオレも別の事を考えたかもしれない。
しかしウルハンガとしばし付き合って、その存在を理解してしまったからこそ、オレとしてはあの神を『倒すべき敵』とはどうしても思えなくなってしまった。
それならばウルハンガと出会った時に、オレはどうすべきだろうか。
誰の助けも得られない ―― もちろんオレの守護神を自称しているイロールも含め ―― もっと言えば助けを求める気も無い。
だけどオレは何をするかは決めている。むしろオレに出来ることは一つしか無い、と言うのが正解か。
ウルハンガをどうにか説得するのだ。
もちろんうまくいく保証は何も無い。たぶん殺害するより遙かに難しいだろう。
それを承知でやらねばならない。どうせオレの行く道が楽な事など一度も無かったのだ。
これまで受けてきた苦難に比べれば大した事は無い ―― とはさすがに言えないが、とにかく乗り越えなければならないのだ。
精神論で危機を克服するのは少年漫画の甘っちょろい世界の出来事だと思っていたけど、もっと甘いハーレムを夢見ていたオレだからそれぐらいはいいよね。
「この僕が光の眷属たるウルハンガを保護するのだな……大勢の犠牲になった仲間も浮かばれる事だろう。将来、我が神の御許に行ったとき、せいぜい自慢させてもらうよ」
「それは……頑張って下さい」
どうやらオレよりずっと甘い事を考えている人がいるようだ。
まあウルハンガを『自分達の悪行を正当化してくれる神』なんて考えている連中に比べたらずっとマシだと思うしかないのだろうなあ。
「本当に大丈夫なんでしょうね?」
「このフェルスター湖は湖面が荒れる事は滅多に無いよ。だから小舟でも時間をかければ目的地まではつけるさ。食料さえ十分に積んでおけばいいんだ」
まあここはエウスブスを頼りにするしかあるまい。
フェルスター湖は大きな湖だけど比較的細長い形をしている。
もちろん小舟で乗り出すには細長いと言っても、十分過ぎるぐらい広いわけだが、地元の漁民や交易商だって毎日そうやって生活しているのだから、そこはさして心配はしていない。
ただしさっきの盗賊連中のように湖を縄張りにする湖族なんかもいるわけで、逃げ場の無い水の上で襲われたら、幾らオレでもかなり困った事になりかねない。
そして最大の問題は『ウルハンガ生誕の地』というタラスター島はフェルスター湖のどこかにあって、今まで魔法で存在を隠されている、という以上の事が何も分かっていない点だ。
実質、エウスブスひとりで操船する小舟で、フェルスター湖を隅々まで探索するなど、何年かかるか分からないし、噂を聞く限りでは既に大勢の人間がそこを探して回っているにも関わらず見つける事が出来ないらしい。
驚いた事に湖の女神の神託ですら、その存在が分からないのだ。
冷静に考えると、そんなのオレ達が見つけられるはずがない。
先々の事を考えるだけ、どんどん気分が沈むオレに対して、エウスブスはまたしても朗らかな笑顔を注いでくる。
「ひょっとすると心配なのかい?」
「ええ……まあ……」
そりゃそうでしょう。『幻の島』を探すだけでも至難の業の上に、その先に待っているウルハンガをどうにかするのは、もっと無理難題なんだ。
しかしエウスブスの方はオレのそんな悩みなどぶっちぎる。
「ははは。僕もそんなに船の扱いがうまいわけじゃないけど、そこまで心配されるほど酷くはないつもりだよ」
「そっちは別に心配していませんよ」
「まあそれならゆっくりと手がかりを探すとしようじゃないか」
そんなに悠長な事はしていられませんよ。
ウルハンガが本格的に行動を開始したら、それこそどんな大事件になるか想像も出来ないのですから。
いや。思わず内心でツッコんでしまったけど、たぶんエウスブスはオレほど事態の深刻さを考えていないのだろうな。
そりゃそうか。
そもそもエウスブスがこの地に来たのも、自分の教団が教えている『偉大な光の神』であるウルハンガを保護するためなわけで、戦う相手は『邪神グバシの手先』だった。
つまり『神様』と事を構えるつもりなどないんだ ―― 当たり前だけど。
そしてエウスブスが外見に全くそぐわない異常な能力を有しているオレの事をあっさりと受け入れたのは、たぶん彼が考えているウルハンガも似たような存在だからなのだろうな。
いずれにせよウルハンガがいるというタラスター島について、こっちに手がかりが何も無い ―― オレの脳内資料でも何も見当たらないのだ。
千年前に魔法で隠されたのが事実だとしても、いくら何でも大勢の人間が探しているにも関わらず、限られた湖の中で見つからないなんてあり得るのだろうか?
そんな凄い魔法で隠蔽されているなら、絶対に見つけられそうに無いぞ。
もうあまりの難題にオレが投げ出したくなっていると、視界の片隅にて、湖の対岸付近で一筋の光がまばゆく輝いて、こちらの目に飛び込んできた。
なんだ? 何かが太陽光に反射したのか?
いや。違う。
あれは反射では無く、本当に光っているんだ。
そしてホンの一瞬だが、光の中に人影が映っているようにも見えた。
まさかあれはウルハンガの光か?
ひょっとしたらウルハンガが、オレを誘導しているのか。
だけど光っていたところは、どう見ても『島』じゃ無い。
むしろ対岸の平地の中にある小高い丘に思えるけど ―― ああ! そうか?!
考えてみたら『千年前の島が今も島である保証は無い』んだ。
未だに見つかっていないとか、沈んでしまっているとか、そっちの可能性をばかり考えていたけど、千年の間に水位が下がるとか周囲が埋め立てられるとかで、とっくに島で無くなっている事もありうるじゃないか!
それを知らない後世の人間が『島』を血眼になって探している結果、このフェルスター湖でいつまでも見つからないままという事はありうる。
そしてくだんの『島』は既に湖面に存在しないのだから、湖の女神に神託したって答えられるはずもない。
うう。そこは完全に盲点だったな。
今の光がなかったら、オレだって気付きもしなかったろうよ。
そしてオレが目をこすって改めて見直すと、既に先ほどの光は見えなくなっていた。
しかしまさにオレにとっては『導きの光』だった。
手がかりなど存在しない以上、ここは他の選択肢など無い。
「エウスブスさん。わたしたちが行くべき場所が見つかりましたよ」
「そうかい。君がそういうならその通りなのだろう。分かったよ」
エウスブスはあっさりとオレの言葉を受け入れた。
しかし先ほどの漁村で、あっさりと湖に乗り出していたら、今の光を目にする事もなく、エウスブスもオレの力を認める事はなかったろう。
つくづく物事は何が幸いするか分からないものなんだな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ところでアルタシャ。本当に島を探すのでは無くて対岸を目指していいのかい?」
「ええ。是非お願いします。そこにきっとウルハンガがいるはずですから」
「……分かった。君が言うことなら信じよう」
「ありがとうございます」
しばしの後、エウスブスの操る船に揺られつつオレはこれからどうするかを考えていた。
もしも行った先にウルハンガがいなければ、オレはがっかりする反面、ちょっとは安堵するかもしれないな。
危険があるのはともかく、ウルハンガに次に会ったときに、どうすればいいのか、自分でもハッキリした事が分からないのだ。
誤解を恐れずに言えば、まるで意中の相手に告白する直前のような心境だろうか ―― もっとも元の世界で『ハーレム』にあこがれる男子高校生だった時から、一度としてそんな経験はないけどな。
それはともかく本当にウルハンガがいた場合の事を、今から考えておかねばならないのは自明の理だ。
その場合、まず困るのはウルハンガを『邪神グバシ』として崇拝している連中が、寄り集まっていて、こちらでは近寄る事も出来ない場合だ。
それでもエウスブスだったら死を恐れず、正面突破を計るかもしれないが、そのときはオレの魔法で止めるしかない。
あとあと恨まれるかも知れないけど、エウスブスを見殺しにするよりはずっとマシだ。
しかしながら、オレにはそんなやっかいな事にはならないだろうという見込みもあった。
ウルハンガには敵も多いが、味方する者も多いようだ。だがそいつらもまた勢力毎に考えている事がまるで別物なのは、今まで何度も思い知られてきたことだ。
そんな連中が今の子供形態のウルハンガの周囲に集まってきたら、たぶん仲間割れして互いに殺し合いになるが必定だろう。
あんまり見たくも無い光景だけど、そうなっていたらその間をすり抜けてウルハンガに近づけるかもしれない。
それにウルハンガ自身、あまり崇拝者を必要としているようには見えないから、意図的にその手の連中を呼び寄せるとも思えないのだ。
もう一つ言えるのは、これまでに他の神と出会ってきた経験からして、今のウルハンガはオレと同じく人間の肉体を持った存在なのは間違いない。
ならば実力で倒す事はさほど難しくは無いだろう。
オレ自身が何度力尽くでピンチに陥ったか、数え切れない程だし、ウルハンガも『認識をごまかして存在しないように思わせる能力』はあるにしても、そのような事をしているということは戦闘能力に欠けるからと考えるのが自然だ。
ウルハンガはオレが味方につくことを望んでいたのだから、その通りにするフリをして近づき、ナイフでグサッとやれば一件落着だ ―― そんな事が出来るならオレも苦労はしないよ。
相手が人間でないとしても、人型をしていて言葉を交わした相手を殺害などオレに出来るはずがない。
下手をすれば大戦争の火種になりかねない相手だと分かっていても、殺すという選択肢は最初からオレには無いのだ。
ただ言い訳をすると、たぶんウルハンガはその肉体を破壊しても滅びない。
その思想をどのような形であれ、奉じる人間がいる限り、何度でも形を変えて復活してくると思う。
それでも一時的にウルハンガをこの世界から追い払って、戦乱を先延ばしには出来るかもしれない。
だけどウルハンガを保護すべく行動しているエウスブスがそんな事をするはずが無いし、騙してやらせるなどという卑劣な真似もオレには無理だ。
要するにオレは結局のところウルハンガを消滅させる事も出来ないし、その身体を破壊して一時的にしても止める事も出来そうに無い。
これでウルハンガがモラーニ達の言うような本当に邪悪な存在で、人々の心を汚し、世界を腐敗させるために行動しているのなら、ひょっとしたらオレも別の事を考えたかもしれない。
しかしウルハンガとしばし付き合って、その存在を理解してしまったからこそ、オレとしてはあの神を『倒すべき敵』とはどうしても思えなくなってしまった。
それならばウルハンガと出会った時に、オレはどうすべきだろうか。
誰の助けも得られない ―― もちろんオレの守護神を自称しているイロールも含め ―― もっと言えば助けを求める気も無い。
だけどオレは何をするかは決めている。むしろオレに出来ることは一つしか無い、と言うのが正解か。
ウルハンガをどうにか説得するのだ。
もちろんうまくいく保証は何も無い。たぶん殺害するより遙かに難しいだろう。
それを承知でやらねばならない。どうせオレの行く道が楽な事など一度も無かったのだ。
これまで受けてきた苦難に比べれば大した事は無い ―― とはさすがに言えないが、とにかく乗り越えなければならないのだ。
精神論で危機を克服するのは少年漫画の甘っちょろい世界の出来事だと思っていたけど、もっと甘いハーレムを夢見ていたオレだからそれぐらいはいいよね。
「この僕が光の眷属たるウルハンガを保護するのだな……大勢の犠牲になった仲間も浮かばれる事だろう。将来、我が神の御許に行ったとき、せいぜい自慢させてもらうよ」
「それは……頑張って下さい」
どうやらオレよりずっと甘い事を考えている人がいるようだ。
まあウルハンガを『自分達の悪行を正当化してくれる神』なんて考えている連中に比べたらずっとマシだと思うしかないのだろうなあ。
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