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第10章 神造者とカミツクリ
第224話 新たな地にて新たな何かが
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ウルハンガとのあれこれで、当然ながらオレはフェルスター湖周辺地域にいることは出来なくなり、更に逃げ出す事にした。
とりあえず身体は『元』に戻ったので、前と同様に髪の毛は黒く染め、男装して人前に姿を見せる事無くフェルスター湖から更に南方の地域に向かった。
オレがこれまでの得てきた情報によると、そこは大陸から突出した大きな半島であり、その根元にある険しい山脈によって他の地域とは半ば隔絶した土地となっている。
その半島を統治する国家はフォンリット帝国と呼ばれ、規模の面ではこの大陸でも有数の大国であるが、当時に文化的にも宗教的にも他の地域とは大きく異なっているらしい。
残念ながらいつものごとく、その地域についてオレが得ている情報はかなりいい加減で偏見に満ちたものだが、それについては実際にそこを訪れて自分で調べるしかないだろう。
これまでに得た情報によるとその地域は百年ほど前まで、他の地域と似た多神教を崇拝していた小国が乱立していたのだが、その中で勃興したフォンリット帝国が他国を一気に併呑して半島を統一したということだ。
そしてその後、その帝国ではこれまでと異なる信仰が広められ、今では他の地域とはかなり異なっているらしい。
もちろんこれまでも同じ神を崇める信徒達でも、地域毎にかなり違いがあることは何度も見てきた。
だがフォンリット帝国では、他の地域にある同じ名前の神でも組織はほぼ別物であり、当然繋がりはまるでないらしい。
それが本当ならば聖女教会からずっと追われているオレとしては、追っ手を心配せずに安心出来る場所になるかもしれないな。
まあそんなに都合の良い話がオレにあったことは一度も無いけど、少しぐらいの期待はもってもいいよね。
そんな事を考えつつオレは山脈に足を踏み入れていた。
魔法で移動力を強化し、夜間でも視覚を確保し、環境への対応力を得て、なおかつ動物を利用できるオレにとって常人には難攻不落の険しい地形も、まるで障害にはならない。
野外活動用のドルイド魔術を駆使すれば、獣道でも藪や枝の方がオレを避けてくれるし、険しい断崖絶壁を動き回るのも簡単だ。
すっかりサバイバル生活が身についてしまった気もするが、どこにいるのかも分からないオレへの追っ手を振り切る事を考えれば、仕方ないだろう。
人目につかないよう、なるだけ人気の無い獣道を明かりの無い夜中に動き回るのもすっかり慣れてしまったよ。
そして山地を超えた時、肌に来る感覚がどこか違うような気がしてきた。
すぐには言葉に出来ないのだが、何かがおかしい。
これまでもいろいろな地域を回ってきて、本当にロクでもない事に何度も出会ってきたわけだが、そういうのとは明らかに別物の、何か大きな違和感があったのだ。
だがどういうわけか、その違和感にはどこか懐かしい感覚があった。
そして獣道を出て、それなりにちゃんとした街道にまでたどり着いたところで、オレはその違和感の正体に気がついた。
オレの足下には比較的ハッキリした影が映っていたのだ。
つまり夜中にも関わらず、かなりの光がある事になる。
もちろん昼間の灯りにとでは比較にならないにしても、元の世界における都市部の夜景ぐらいに明るいのだ。
こっちの世界でも光系の魔法を使うと、それなりの灯りは得られるが、数分ぐらいならともかく夜通し照らす事が出来るのは、王宮や大寺院のようなきわめて重要な箇所だけだし、それでも元の世界のように、きらびやかな光が放たれ続ける不夜城には遠く及ばない。
険しい山脈を越えたとはいえ、まだまだ民家もろくに見えないこんな辺鄙な土地がこれほど明るいなどあり得ないはずだ。
まさかいつものようにろくでもない神様が、呼んでもいないのにオレに関わり合いになろうとしているんじゃないだろうな。
不吉な予感を胸に抱きつつ、オレはふと夜空を見上げてそこで思わず硬直する。
「あ……あれは何だ?」
このときオレは少しどころでは無い衝撃を受けずにはいられなかった。
こっちの世界の夜空については、これまでさほど関心も無かったが、基本的には元の世界と大して変わらず、月と幾つもの星座があった。
もちろん月には月の神が、星座にもそれぞれ支配する神や伝説があり、またそれらも地域毎にかなり異なっているのも、この世界における当たり前の話だった。
しかしこのフォンリット帝国の領域に入ったところでは、どういうわけかこれまで見てきた月の他に『もう一つ別のもっと大きく、強い輝きを放つ月』があったのだ。
もうこっちで暮らすようになってから半年以上経っているのに、いくら何でも月が二つあったら見落とすはずが無い。
つまりフォンリット帝国の領域内では、今で見ていたものとはまた別のより強く大きく輝くもう一つの月があると言うことになる。
いくら地域毎に月に関わる神話が別物だとしても、そんなのありなのか?
今までの経験でとんでもない出来事にはとっくに慣れっこだと思っていたが、まだまだオレは甘かったらしい。
そして天を見上げて呆然となっていたオレの近くで、何者かが蠢いていた事にはまだ気付いていなったのだった。
とりあえず身体は『元』に戻ったので、前と同様に髪の毛は黒く染め、男装して人前に姿を見せる事無くフェルスター湖から更に南方の地域に向かった。
オレがこれまでの得てきた情報によると、そこは大陸から突出した大きな半島であり、その根元にある険しい山脈によって他の地域とは半ば隔絶した土地となっている。
その半島を統治する国家はフォンリット帝国と呼ばれ、規模の面ではこの大陸でも有数の大国であるが、当時に文化的にも宗教的にも他の地域とは大きく異なっているらしい。
残念ながらいつものごとく、その地域についてオレが得ている情報はかなりいい加減で偏見に満ちたものだが、それについては実際にそこを訪れて自分で調べるしかないだろう。
これまでに得た情報によるとその地域は百年ほど前まで、他の地域と似た多神教を崇拝していた小国が乱立していたのだが、その中で勃興したフォンリット帝国が他国を一気に併呑して半島を統一したということだ。
そしてその後、その帝国ではこれまでと異なる信仰が広められ、今では他の地域とはかなり異なっているらしい。
もちろんこれまでも同じ神を崇める信徒達でも、地域毎にかなり違いがあることは何度も見てきた。
だがフォンリット帝国では、他の地域にある同じ名前の神でも組織はほぼ別物であり、当然繋がりはまるでないらしい。
それが本当ならば聖女教会からずっと追われているオレとしては、追っ手を心配せずに安心出来る場所になるかもしれないな。
まあそんなに都合の良い話がオレにあったことは一度も無いけど、少しぐらいの期待はもってもいいよね。
そんな事を考えつつオレは山脈に足を踏み入れていた。
魔法で移動力を強化し、夜間でも視覚を確保し、環境への対応力を得て、なおかつ動物を利用できるオレにとって常人には難攻不落の険しい地形も、まるで障害にはならない。
野外活動用のドルイド魔術を駆使すれば、獣道でも藪や枝の方がオレを避けてくれるし、険しい断崖絶壁を動き回るのも簡単だ。
すっかりサバイバル生活が身についてしまった気もするが、どこにいるのかも分からないオレへの追っ手を振り切る事を考えれば、仕方ないだろう。
人目につかないよう、なるだけ人気の無い獣道を明かりの無い夜中に動き回るのもすっかり慣れてしまったよ。
そして山地を超えた時、肌に来る感覚がどこか違うような気がしてきた。
すぐには言葉に出来ないのだが、何かがおかしい。
これまでもいろいろな地域を回ってきて、本当にロクでもない事に何度も出会ってきたわけだが、そういうのとは明らかに別物の、何か大きな違和感があったのだ。
だがどういうわけか、その違和感にはどこか懐かしい感覚があった。
そして獣道を出て、それなりにちゃんとした街道にまでたどり着いたところで、オレはその違和感の正体に気がついた。
オレの足下には比較的ハッキリした影が映っていたのだ。
つまり夜中にも関わらず、かなりの光がある事になる。
もちろん昼間の灯りにとでは比較にならないにしても、元の世界における都市部の夜景ぐらいに明るいのだ。
こっちの世界でも光系の魔法を使うと、それなりの灯りは得られるが、数分ぐらいならともかく夜通し照らす事が出来るのは、王宮や大寺院のようなきわめて重要な箇所だけだし、それでも元の世界のように、きらびやかな光が放たれ続ける不夜城には遠く及ばない。
険しい山脈を越えたとはいえ、まだまだ民家もろくに見えないこんな辺鄙な土地がこれほど明るいなどあり得ないはずだ。
まさかいつものようにろくでもない神様が、呼んでもいないのにオレに関わり合いになろうとしているんじゃないだろうな。
不吉な予感を胸に抱きつつ、オレはふと夜空を見上げてそこで思わず硬直する。
「あ……あれは何だ?」
このときオレは少しどころでは無い衝撃を受けずにはいられなかった。
こっちの世界の夜空については、これまでさほど関心も無かったが、基本的には元の世界と大して変わらず、月と幾つもの星座があった。
もちろん月には月の神が、星座にもそれぞれ支配する神や伝説があり、またそれらも地域毎にかなり異なっているのも、この世界における当たり前の話だった。
しかしこのフォンリット帝国の領域に入ったところでは、どういうわけかこれまで見てきた月の他に『もう一つ別のもっと大きく、強い輝きを放つ月』があったのだ。
もうこっちで暮らすようになってから半年以上経っているのに、いくら何でも月が二つあったら見落とすはずが無い。
つまりフォンリット帝国の領域内では、今で見ていたものとはまた別のより強く大きく輝くもう一つの月があると言うことになる。
いくら地域毎に月に関わる神話が別物だとしても、そんなのありなのか?
今までの経験でとんでもない出来事にはとっくに慣れっこだと思っていたが、まだまだオレは甘かったらしい。
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