異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第10章 神造者とカミツクリ

第237話 「神をすげかえる」とどうなっていたか

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ここでオレはテセルに改めて問いかける。

「それで神のすげ替えなんてそんなにうまくいくものなんですか?」
「そんなことが簡単にできるわけがないだろうが」

 テセルはあっさりと断言するが、もちろんそれでオレが納得できる筈がない。
 周囲の豊かに実った穀倉地帯を指し示しつつ、オレは改めて問いかける。

「それではこれはうまくいった場合であって、他には失敗したところがたくさんあるということですか」
「馬鹿な事を言うんじゃないぞ」

 ここでテセルは少々小馬鹿にした態度を見せる。

「人の身を捨てて神界に入れるだけの力がありながら、いまだに俗世にとどまっているひねくれ者だと思っていたら、お前は知性まで足りないのか?」
「こっちの知性が足りないのなら、テセルは品性が足りないと思うんですけどね」
「おい? どうして僕の首にお前の手が伸びてきているんだ?」

 いつの間にかオレの手は怒りを込めて、テセルの気管と頸動脈を強制的に閉鎖しようとしていたところだった。

「おいおい。落ち着け。どうやらお前に足りないのは知性ではなく理性だったらし ―― ぐがぁあ」

 死ね! この無神経野郎! 生きたままではなく、死んで地獄を見てくるがいい!
 オレは半ば殺意を込めてテセルの首を締め上げる。
 考えてみるとこっちの世界に来て、自分の身でこんな暴力を振るったのは本当に珍しい ―― 以前にオレが泉で身体を洗っていたのを見たガランディアのセクハラ発言に対して制裁を加えた時ぐらいだ。

「お前さん達、本当に仲がいいんだな」

 馬車を操縦している農夫は、実にほのぼのとした笑顔でいる。
 そして『仲がよい』と言われた片割れのテセルは、このとき半ば白目をむいていた。

「まったく……死ぬかと思ったよ」
「これに懲りたらもう少しは自分の発言に気をつけることを覚えなさいよ」

 農夫にはちゃんとした応対をしているが、形式的にも部下のオレに対してはパワハラ・セクハラの繰り返しだ。
 神造者の基準は知らないが、元の世界の先進国の基準だったら、とっくの昔にこのエリート様は地位を失っているところだろう。
 そして農夫はここで改めて苦言を呈してくる。

「おいおい。静かにしてくれよ。気が散って道を外すかと思ったじゃないか」
「どうもすみません」

 ここはひとまずオレの方が頭を下げることにする。さっきからこの農夫にもセクハラ発言されているが、悪気が無いのは分かっているのだ。

「もしも真っ昼間からお前さん達が『その気』になったのならいつでも言ってくれ。こっちも馬車を止めて待っていてやるからさ」
「……それはトイレの事ですよね?」
「え? そっちの事だったのかい?」

 こらオッサン! そこで意外そうな顔をするんじゃねえよ!
 悪気が無いとしてもこっちの堪忍袋もそろそろ限界だぞ。
 まったくこの国の男共はアンブラール神の影響で、セクハラをしないと生きていけない呪いでもかかっているのだろうか。
 もうこれ以上、振り回されるのを避けるためにも、とっとと本題の話を進めるとしよう。

「それで『神様のすげ替え』が失敗したらどうなるのですか?」
「前もって一つ断っておくが、失敗例のほとんどはその神のすげ替えが行われるようになった初期の間だけだぞ」
「その初期というのはどれぐらいの期間だったのですか?」
「今より百年ほど前、実験の期間はだいたい三〇年ぐらいだったと聞いている」

 つい最近、千年前の争いについていろいろ首を突っ込んだせいで結構、最近の事に思えてくるけど、そんなわけはないか。
 しかし失敗の中身はかなり気になるぞ。

「それでは具体的にどんなことになったのです」
「なあに大した事じゃない。殆どの地域では数年は当初の計画通りうまくいっていたのだけど、次第に悪影響が表面化するようになっていっただけだ」

 それは激しく嫌な予感しかしないのですけど。

「あるところでは木に実がならなくなったり、生まれる子供が全部女子になってしまったりとか、その程度の事だったな」
「十分過ぎるぐらい酷い話でしょうが!」

 いくら生まれる前の出来事とはいえ、あまりにも平然と言い切ったテセルに対し、オレは思わず声を荒げる。
 しかし食ってかかるオレに対し、テセルは必要以上に落ち着いた態度で応じる。

「そんな事では神造者はつとまらんぞ! お前も神造者の端くれならば、この程度で驚くんじゃないぞ」

 それはあんたが一方的に任命しただけだろうが。

「さっき挙げたのはマシな部類だ。酷いところになると、神をすげかえた土地ではあらゆる家族関係が一~二年で破綻したり、土地から全ての生命が根こそぎ消え去って不毛の荒野になったりしたんだぞ」
「それは実験の域を超えすぎでしょうが! いったいどれだけの人間の人生が踏みにじられたんですか!」
「まあそれも進歩と発展のための尊い犠牲だ。それがあってこそ現在、僕たちが使うカミツクリが完成したのだからな」
「あっさり流さないで下さいよ」

 もちろんいくら酷い話と言ったところで、テセルには直接関係ないのは分かっているが、それでも当たり前のように受け入れているのはとても納得は出来なかった。
 これまでにも実験や研究のために人倫にもとる行為をしている連中に出会った事はあるが、神造者はそれを何十年、何百年にも渡り国家規模で行ってきており、しかもそれをテセルは当然のことと受け止めているのだ。

「その失敗のお陰で、神のすげ替えの問題が見つかり、改善が進み、今ではそれで多くの人間が恩恵を受けている。故に僕たちがやるべきは、その犠牲に感謝し、決して忘れず、更なる進歩と発展を目指すことだ。違うかい?」

 言っている事は分かるんだが、それで問題は全て解決したのか?
 まだ何かいろいろととんでもない事がありそうな気がするぞ。
 オレがいろいろと悩んでいると、さっきからいろいろセクハラしてきた農夫のオッサンが声をかけてくる。

「おおい。そろそろ見えてきたぞ」

 その言葉に思わず振り向くと、広大な農地の向こうに目的地らしき城壁が見えていた。
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