異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第10章 神造者とカミツクリ

第243話 いつものように何かのトラブルが?

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 ようやくたどり着いた神造者支部の建物を前にして、テセルはあらためてため息をつく。

「ふう……長い道のりだったな。ここに来るだけでも何度命がけの大冒険をやらされる羽目になったことか」

 テセルが自分で首を突っ込んだところが多々ある気がするが、助けてもらったこともあるので、そこは勘弁しておこう。
 オレにすればあれぐらいの危機はしょっちゅうだけど、それを自分一人の力で乗り切ってきたわけでもないし、手助けには感謝するよ。
 だがここでテセルの目が興味深そうに光る。

「おや。これは何か面白そうだな」
「どういうことですか?」

 オレの問いかけを無視して、テセルは支部に向けて歩みを早める。それはこの少年がまた何か、別の関心事を見つけた事の証左であった。
 中央広場を横切りつつ神造者支部に向かったテセルの前では、玄関口で黒髪の女性が中年の男と何か口論している姿が見えていた。
 女性の方はだいたい二十歳ぐらいの年齢であろうか。
 白い肌に白い服という、純白のその身に、対照的な長く黒い髪が強烈なアクセントとなっている印象的な美人であった。

「見ろよ。着任早々、なかなか興味深そうなトラブルだぞ」
「テセルは面白がっていませんか?」
「なんだ。悪いかよ」
「開き直らないで下さい」

 付き合わされている以上、テセルに何かあったらこっちにとばっちりが来るのだ。
 オレに何が出来るのかは分からないが、状況は把握しておかねばなるまい。

「いったい何が起きているのか説明してくれませんかね」
「まあ。いいだろう。よく聞けよ」

 テセルはここで黒髪の女性に興味深そうな視線を送る。

「まずあの女性が身にまとっている白い法服の様相は、彼女が街の神の司祭であることを示している。無論、街の神はそれぞれの街ごとに別個の存在だが、帝国では同じ権能を有する神は原則として等しい様式で崇拝されるから見分けるのは簡単だ」
「司祭ですか? あの年齢で? ちょっと若すぎるでしょう」

 これまでも司祭階級の人間に出会った事は何度もあるけど、聖女教会のように外見年齢が実年齢と合致しない場合は別として、ほとんどは中年以上の年齢だった。
 二十歳やそこらで司祭というのは若すぎるのではないだろうか。

「そうだな。我が帝国では司祭職は本人の能力と実績でのみ選ばれる。例外があるとすれば、若さと清純を司ることから信徒の殆どが子供であり、司祭の条件は『十八才以上の処女』というだけの女神『若葉の乙女シディリス』ぐらいだ」

 その女神様の神殿はきっと帝国の幼稚園か孤児院の役割で、司祭は保母さんなのかな。当然、司祭だからといって何か凄い魔法が使えるわけでもないだろう。
 それはともかく、帝国では服装だけでなく司祭の任命要件なども全部規格化されていて、求められる技能や魔術、更に試験内容とかも統一されているらしいな。

「それじゃあ……あの女司祭は相当卓越した能力の持ち主か、誰もが目を見張る実績を挙げたということなのですか?」
「帝国中央ならそういうことになる……だがこの辺境地では、未だ地縁・血縁が幅を利かせている事も考えられる話だ。まあそういうわけでもっと近づいて調べるとしよう」

 興味をそそられたらしいテセルはゆっくりと女司祭に近づき、オレもその後に続いた。

 ゆっくりと近づくオレとテセルの眼前で黒髪の女祭は少々オドオドしつつ、応対の職員に食い下がっていた。

「あの……わたくしは本当に必要な用件があって……」
「カリア殿。何度も申し上げておりますが、支部長もおられぬ今そのような話を取り次ぐわけにはまいりません。これは規則ですからお従い下さい」

 カリアと呼ばれた女司祭の応対をしている中年の神造者 ―― 胸のオクタゴンは赤銅製だ。ランクはよく知らないが少なくとも銀のテセルより下なのは間違いない ―― の態度は、とりつく島もないと言わんばかりにそっけない。

「それはすみません!」

 カリアは相手に向けて、深々と頭を下げる。だが彼女はそこで終わらなかった。

「しかしわたくしは先代支部長の在任中から、何度も話を持ち込んでいます。それにも関わらずいっこうに……」

 謝罪したところで終わるかと思ったが、カリアはしつこく食い下がっている。
 少なくとも本人にとっては深刻な話であるらしい。

「ですから全ては規則です。お父上たるバッドディール大司祭を通していただかねば、我々としてもどうしようもありません」

 応対している神造者は表向き丁重であるが、態度の端々に『親の七光り』とカリアを蔑む様子がうかがえた。
 どうやら辺境のこの地では、テセルの予想以上に血縁が重視されており、若すぎる女司祭が問題を引き起こしているようだ。

「ふうむ……」

 テセルは着任早々のトラブルを見物しつつ、アゴに手を当てて考え込んでいた。

「いったいどうするのですか?」
「決まっているだろう。僕は『事なかれ』というのが嫌いでね」
「それはもう散々、思い知らされていますよ」

 テセルがむしろ役人根性丸出しの『事なかれ』主義の人間であれば、どれだけ楽だったか。今のオレに出来るのはそんな無意味な妄想をもてあそぶだけだった。

「ならばやるべきことはひとつだ」

 ここでテセルはツカツカと二人に近づき、遠慮する事無く神造者の方に声をかける。

「地元の司祭がここまで必要だと言っているのだから、神造者たるもの話ぐらい聞くのが筋だと思うのだがね」
「……何だお前は?」

 新支部長たるテセルの就任について連絡が来ているのは間違い無いが、広大な帝国領を旅して赴任せねばならない都合上、具体的な到着の日付まで決められているわけでないのは明らかだ。
 この神造者も目の前にいる若造が、新任の支部長だとは夢にも思っていないようだ。

「とりあえずこれを読みたまえ――」
「ご着任、おめでとうございます。新支部長」
「え?」

 テセルが懐に手を入れ支部長就任の辞令を出そうとした時、いきなり横合いから静かな声がかけられ、テセルやオレを含めたその場の一同が一斉に振り向いた。
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