異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第10章 神造者とカミツクリ

第245話 支部長室にて「化かし合い」が

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 ワストリの視線を受けつつ、オレは必死で考えを巡らせていた。
 何というか危ない点については思い当たる節が沢山ありすぎて、何に気付かれたのか考えるのもおっくうというところだ。
 今のところオレは支部長であるテセルの管轄下にあるワケだから、いきなり手を出して来る事は無いだろうが、この副支部長の底が見えない以上、警戒を怠るわけにはいかない。

「見たところ神造者ではないようですが、まあ秘書ならばいいでしょう。ただこの支部では個人を判別出来ない人間が歩き回るのを許す訳にはまいりません」

 そりゃ当然の話だな。
 ここは国家の重要な出先機関であり、地域の支配の要でもあり、しかもちょっと離れた廃墟の中では、少数といえ敵対している相手が巣くっているのだ。
 そんな重要なところで顔を隠した人間が堂々と行動するには、かの有名な『赤い彗星』あたりでなければ無理な話だ。

「分かった。ちゃんと顔を見せろ」

 テセルの指示でオレは仕方なく無言でフードを外す。
 髪の毛は魔法で黒く染めているので、たとえオレの噂を聞いていたとしても、即座に正体に気づかれはしないだろうけど、それでもこの神造者支部ではどんな相手がいるのかも分からないし、ちょっと緊張せずにはいられない。

「ほう……」

 さらしたオレの容貌を見て、ワストリは感嘆の声を漏らす。それはこの副支部長が初めて見せた『思いがけないものを目の当りにした』時の態度だった。

「これは少しばかり驚きましたな。支部長にこのような秘書がおられたとは」
「君は知らないかもしれないが、帝都ではこれぐらいは普通なのだよ」

 元男のオレが言うのも何だけど、いくらフォンリット帝国の首都でもオレ並みの容姿はそうそういないはずだ。
 何よりオレの素顔を初めて見たときのテセルの態度からすれば、その言葉が嘘なのは明らかだろう。
 元の世界ならネットで少し検索すればすぐにばれるだろうけど、こっちではそんなあからさまな嘘でも通じるのだなあ。

「なるほど。確かに支部長ほどのお方ならば、このような女性の一人ぐらいお側においていても不思議ではありませんね」

 ワストリの言葉には、先ほど一瞬だけ見せた動揺は消えたようだ。
 しかしこの会話はどう見てもオレは完全に『テセルの愛人』と思われているだろ。
 まあそんな経験はしょっちゅうだけど、慣れはしないな。

「分かりました。ただ老婆心ながら念を押しておきますが、くれぐれも情報の漏洩には気をつけて下さい。この者は神造者ではないのですから」

 確かにオレはワストリの言葉通り神造者では無いが、ただ『身内』でないという点だけでは無く、どこか含みがあるようにも感じられるな。

「言われるまでもないことだ。それより本題に入ってもらえるかな」
「とりあえずご就任に即し、お祝いが関係各所から届いております」

 今度は愛想良い笑顔を浮かべつつ報告するワストリに対し、テセルは表情をゆるめることなく問いかける。

「まさかとは思うが、余計な付け届けまで来ていないだろうね」

 なるほど。特権階級である神造者には、当然いろいろな形で取り入ろうとする人間が出てくるに決まっている。
 しかも支部長ともなれば、この近辺での神や精霊の扱いにはかなり大きな権限があるはずだ。そうなると有力者が自分達に有利になるように、テセルに近づくのは当然ということになる。
 オレは帝国の法律はロクに知らないが、いくら何でも私的な利益の為に神話をいじるような真似が許されるとは思えない。まず間違いなく重罪だろう。
 つまりテセルとしては地域の有力者を相手に、つかず離れずかなり難しい舵取りをせねばならないという事になるのだろう。
 権力になど全く興味の無いオレだけど、テセルの方は一歩間違うとかなりややこしい事になりそうだな。

「ご心配には及びません。法的に不備のあるものは全て送り返しております。テセル支部長を煩わすようなものはありません」
「それはご苦労様。あとで目を通させてもらうよ」
「あとバッド・ディール神の大司祭たるデュロス卿が歓待の宴を催したいとの連絡が入っております。ご参加頂けますでしょうか」
「大司祭ね……」

 テセルはその髪をいじり回しながら、気のない返答をしている。
 このフォンリット帝国における最高の権力者が神造者なのは間違いないが、直接的にこのバッド・ディールの統治を行うのは市長をかねた街の守護神の大司祭という話だ。
 当然ながらテセルとしても、友好関係を構築する必要のある相手だろう。
 そして話を聞くに大司祭は、先ほど出会ったカリアの父親であるらしい。

「どうなさいましたか?」
「その大司祭の娘という女司祭が陳情に来ていたのだが、副支部長も見ていただろう」
「ああ。カリア女史ですな。もちろん存じておりますとも」
「彼女が気になる事を言っていたのでね。心に引っかかっていたのだよ」
「言いにくい事ですが親の引き立てもあって若くして司祭になったので、自分の存在を意識させようとして些細な事を大げさに取り上げているのですよ。この街は順調に発展しており、気にするような事はありません」

 ワストリは微笑みながら太鼓判を押す。
 一見すれば確かに副支部長の言葉の方によほど説得力があるだろう。
 そしてワストリは相変わらずの仮面のごとき笑みをオレに向けてくる。

「これほどの秘書をお側に置いておられる支部長ならば、彼女の言に惑わされる事も無いでしょうな」
「心配せずとも僕は真実のみしか興味は無いさ」

 そう言ってテセルは副支部長に対して傲然と胸をはった。
 オレの事についてテセルはどこか誇らしげだ。やっぱりオレを『自分のもの』扱いしている感じがするぞ。
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