異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第10章 神造者とカミツクリ

第271話 テセルと共に入り込んだところは

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 一瞬幻惑された後で気がついた時、周囲の景色は一変していた。
 何というかそれまで普通に見えていた景色に、光のカーテンがかけられたかのように、周囲がボンヤリと見えるのだ。

「これはいったい?」

 最初は先ほどの閃光でオレの視覚がおかしくなったのかと思ったが、慌てて自分の手を見るとそちらには何の変化も無かった。
 つまりオレの目がおかしくなったのではない事が分かって少しはホッとした。

「どうやら問題は無かったようだな」
「え?」

 ここ数日、聞き慣れていた声に思わず振り向くと、そこにはさっきまでと変わらぬ姿のテセルがたっていた。
 周囲の景色が変わっているのにテセルには何の変わりもないという事は、ほぼ間違いなく、この出来事はコイツの仕業だということだ。

「これはどういうことなんですか?」
「なんだ。お前は神界に入れるぐらいの崇拝を得ておきながら、この程度の事も知らないのか? つくづく変なヤツだ」
「こっちの質問に答えてくれますかね」

 オレが少しばかりの怒りを込めて睨み付けると、テセルは小さく肩をすくめる。

「いま僕たちが存在しているのは、物質世界 ―― まあお前には『現世』と言った方が分かりやすいか ―― それと重なりあった精霊界の端っこだ」
「精霊界ですか?」

 以前に精霊を信仰するシャーマンのアカスタに出会った事があるが、そういう精霊が普段いる場所という事なんだろうな。
 この世界の場合、神様への認識だけでなく、異世界に関する認識も勢力毎にまるで別物だろうから、鵜呑みにするわけにはいかないけど、とりあえずテセルの説明を聞くしか無いわけだ。

「我ら神造者の認識では世界は大きく分けて、我らのいる中層次元界、天界である上層次元界、そして死者の魂が送られる地界である下層次元界がある」

 なるほど。言わばサンドイッチ状に次元界が重なり合っていると神造者は考えている訳か。

「さっきの信仰の流れはこっちに近い上層次元界を見たものでもある。そしてこの『遠見の間』はそういう異世界を見る事も出来れば、逆に入り込む事も出来るというわけだ」
「それは凄いですけど、だったら神の領域だとか、死者の領域にも入れると言うのですか」
「さすがに僕一人の力では無理だな。そういうところに入って、操作するには大勢の神造者を集めて行う大規模な儀式になる。僕に出来るのはせいぜい精霊界の端っこに入る程度だが、それだって並の神造者では数人集めて何日もの儀式が必要なんだぞ」

 いつものテセルの自慢を切り捨てると、神造者はそうやって神界や精霊界に首を突っ込んで自分達に都合よく操作しているということらしい。

「これでバッド・ディールの廃虚領域に入って、周囲を見て回ってもそこにいる連中から手を出される事はもちろん、見つかることすら無いぞ」
「当然、こっちから廃虚領域にいる相手に、手出しも出来ないのですよね」
「ほう。それは分かるのか」

 それはお約束だからな。
 精霊界から一方的に攻撃が出来るのなら、やっぱりとっくの昔に廃虚地域を制圧出来ているのは間違いない。
 あと他にも気になるところはいくつかある。

「それでもシャーマンだとか、精霊を相手にする職業だったら、こっちが精霊界にいても手を打つ事が出来るのではないですかね」

 いくら何でもこの世界で精霊界にどうこうできる存在が神造者だけという事はあり得ない。シャーマンが具体的に何が出来るのかは、オレもよく知らないけど、警戒しておいて損はないはずだ。

「そのときはそのときだ。この僕がついているのだから心配するな」

 テセルの有能さと、紙一重の脆さを知っているオレとしては、とても安心はしていられないけどな。
 あとこれまでにも精霊の類いなら、人間相手に比べるとまだ楽だったのでここは付き合うしかないだろう。

「分かりました。それでここからどうするのです? ここからまた歩いて廃虚地区に入るのですか?」
「精霊界での移動は本人の精神力の影響を強く受ける。だから強くイメージすれば、その場所にすぐにいける」

 それは凄いが逆に言えば精神を攻撃する相手に捕まったら、逃げられなくなる危険性があるということだな。

「ただ神殿のように神の領域がこの世界に入り込んでいる場所には近づくなよ。そういう所には守護精霊がいるからな。無関係なところでの厄介事は避けたい。もちろんこの神造者支部にも各所に精霊界からの望まれぬ訪問者を撃退する仕掛けがあるから、余計な事はするな」

 以前に出会った『魔法学院の守護精霊』は随分とロクでもない相手だったから、こっちだってそんな相手には近づきたくもないよ。

「それでは行くとするか。お前は精霊界は初めてらしいから、僕の後についてくるがいいぞ」

 少々、不本意ではあるがここは付き合うしかないだろう。
 そういうわけでオレはテセルの後についていく事になった。
 テセルは自信満々な様子だけど、オレの場合、こういうことをするといつもとんでもない目に遭うわけで、今回も絶対に無事には終わらないだろうなあ、と言う悲しい確信と共にオレは廃虚地区をイメージすることにした。
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