異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第11章 文明の波と消えゆくもの達と

第289話 新たな出会いの相手とは……

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 ひとまずバッド・ディールを離れたオレはいつものように人目を避けて、山中を動き回っていた。
 テセルはどうにか逃がしてはくれたのだが、他の神造者がオレを追ってくるかもしれないし、他にもいろいろと余計なちょっかいをかけてきそうな知り合いには事欠かない身だ。

 とりあえずフォンリット帝国の領土、すなわち神造者の支配地域を出るまではなるだけ人目につきたくないな。
 しかしコソコソと逃げ回るのがすっかり習い性になってしまった事は否めない。
 ただここ数日、人里と自然の境界線を移動していると、あるところでは荒れ地が開拓され、また別のところでは森が切り開かれるなど、あちこちに開発の波が押し寄せていた。
 もちろん巨大な機械で山でも削る元の世界にはとても及ばないだろうけど、それでもこっちの世界の基準では急速な文明化だと言えるだろう。
 それで追い払われる精霊達がどうなるか、かつてファーエンドで厄介な目にあった身としては少々心配になるが、オレに出来る事などたかが知れている。
 だいたいどの世界だろうと『豊かな生活がしたい』という人間の欲求に逆らうのは極めて難しい。
 ドルイド魔術のお陰でサバイバル生活に困らないオレでも、やっぱり人里にて柔らかい寝床でぐっすり眠る方がよっぽどいいのだ。

 そんな事を考えていると、オレは切り株だらけになっている『かつての森の跡地』に出くわした。
 そろそろ日も暮れてくる時間帯になっていたので、いつも通り野宿の準備をしようとかと思っていると、大勢の人間が手に手に武器を持って動き回っているのが目に入った。
 少しばかり警戒しつつ、遠くを見る『遠視』ファーサイトの魔法をかけると、服装からして連中は軍人ではなく、この近辺の木こりや猟師達が粗末な斧だの弓だのを持って山狩りに出ているらしい事が分かった。
 いくら何でもオレを追っているとは思えないけど、これは少しばかり様子をうかがう必要があるな。
 そう思って隠れながら近づくと、魔法で強化しているオレの耳にもいろいろな声が聞こえてくる。

「おい! あれがどこにいったか分かるか!」
「逃がすなよ。今度こそ仕留めるんだ」
「手傷を負わせたのは間違いない。何としても探し出してトドメをさせ!」
「だけど日が暮れてきたぞ……危ないんじゃないのか……」

 どうやら追われているのはオレでは無く、別のなにものかを大勢で捜し回っているらしい。
 しかも捕らえて裁きにかけるとかではなく、あきらかに殺す気満々だ。
 かなり物騒な気配を感じるぞ。
 ここはオレもひとまず逃げた方が賢明だろうか。気が立っていると、単なる通りすがりのよそ者でもどんな乱暴な扱いをされるか分かったものじゃないないのだ。

 ただもうすぐ日が暮れる状況なので、連中はそろそろ引き上げたがっているらしい。
 この世界では、夜になると追いはぎや強盗はもちろん、邪悪な精霊だとかアンデッドのようなとんでもない相手に出くわす危険があるからな。
 もちろん元の世界のように手軽な懐中電灯などありはしない。光系の魔法はあるけど一般人がそうそう簡単に使いこなせるものでもない ―― かじった程度の魔法ではせいぜい数分、周囲を照らす程度なのだ。
 この近辺はまだフォンリット帝国の領域なので、空には神造者が創造した『新しき月』が大きく輝き、ほのかな明かりは得られているが、それでも常人の目には頼りないものでしかないはずだ。
  そう思って見ていると、猟師や木こり達は次第に引き上げていく。
 何を追っていたのかは分からないけど、どうやら諦めたらしい。
 オレとしても関わりにならなくて良かったと、少しばかりホッとしたところだ。
 しかしオレの背後で藪を掻き分け、何かが動いているかすかな音がする。
 魔法で知覚を強化しているオレでなければ気づかないような小さな気配だったが、何しろとんでもない存在に出くわす事はしょっちゅうなのだ。
 常に神経を研ぎ澄ましていなければ、とてもここまで生きている事は出来ない過酷な日々を伊達に生き延びてはいないつもりだよ。
 オレが警戒しつつ振り向くと、そこで運がいいのか悪いのかバッタリと何者かと目が合ってしまった。
 藪の中から、オレを見つめていたのは一対の輝く瞳だ。
 それも人間ではない。おそらくは肉食獣だろう。
 むう。さきほどの猟師達の行動は、家畜や場合によっては人間を襲う肉食獣を狩るためのものだったのか。
 もっともそういう肉食獣が家畜を襲うのは、人間が彼らの縄張りを開拓したせいで、餌を得られなくなったためらしいから、むしろ被害者だと教わった事がある。
 しかしそんな二一世紀の環境保護の理屈が、現実に家畜を殺されている農民達に通用するはずがない。
 悲しい事にそんな獣たちは『駆除』されてしまう運命なのだ。
 そしてこの世界ではそれは動物だけでなく、神や精霊、そして人間にすら当てはまる。
 山や森の精霊を信仰している人間が、その地域が文明化され、開発された事で追い払われてしまうのはよくある事らしい。
 それはともかくオレの場合、ドルイド魔術によって知性の無い野生動物からは、こちらの方から攻撃しない限り襲われる事は無いので、ちょっと近づいて相手が何なのか確認するとしよう。
 だがそう思った瞬間、藪の中から閃光のごとく一つの固まりが弾けるように跳びだし、オレの身をかすめて背後に飛んでいく。
 痛い! すれ違った瞬間、オレの身に痛みが走る。
 反射的に触った手には真っ赤なものがついていた。
 そして薄暗がりの中に浮かび上がった相手は、ほぼ人間サイズで月光に輝く銀色の毛に覆われた ―― 二足歩行の狼?!

 待てよ! これってまさか狼男?!
 オレは血がこびりついた己の身の事も忘れ、眼前に現れた半人半獣の相手に見とれてしまっていたのだった。
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