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第12章 強奪の地にて
第368話 砦に『女神が参上』し
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外からぱっと見たところで河原から岸壁、そして塔の壁面までほぼ垂直で高さは数十メートルあるだろうか。
塔だけならだいたい十メートルぐらいだが、いずれにしても常人にはとても登れるところではない。
そのお陰でこちらの側にはほとんどの防御施設がなく、塔の頂部にまで何の妨害も受けずに這い上がる事が出来た。
この方向から攻撃されることを想定していなかったからだが、これが砦の全周を防備して真ん中に塔が立っているようなタイプだったら、かなり困っていたところだな。
そんなわけでオレは突き出た弩の先端をつかみつつ頂部の周囲に巡らされた石壁の上に立って、まずは真っ先に『調和』をかける。
そこには据え付けられた大きな弩とあくせく働く数人の兵士がいたが、いきなり現れたオレを呆気にとられて眺めていた。
まあこんな塔の頂上にオレのような相手が現れたら、何がなんだか分からなくなるのは当たり前か。
しかしどうする。『調和』は暴力的な行動は阻害するが、魔法をかけたときに効果範囲外の人間が入ってきて攻撃してきたら、即座に効果が消えてしまう。
あとオレの視界外にも効果は及ぼせないから、下から誰か上がってきた時点で結構ヤバい。
大勢に一斉にのしかかられたら、オレはひとたまりもないからここの異変に気づかれる前にどうにかするしかないのだ。
「あ……あの……あなた様はいったい?」
ここの指揮官らしき軽装の鎧をまとった男が動揺しつつ問いかけてくる。
「先ほどからのあなた方の攻撃ですけど――」
ひとまずオレと卵には危害を加える気がないので、攻撃はやめるように伝えるつもりだったのだが、ここでどういうわけか結構、強い風が吹く。
いや。いまオレがいるのは遮るモノが何もない塔の上なんだから、下よりも風が強いのは当たり前なんだけど、それを考えていなかったのだ。
そしてそのせいでオレの服がいきなりまくれあがって、兵士達の前でいろいろと晒す事になる。
たぶん『エヴァン○リオン』における『アス○来日』の有名なカットを思わせる光景だったろう。
「ああ!」
よく見るとこれまでかなり無理をしてきた上に、塔を上るときにもあちこちこすったらしく服が何カ所も破れて結構ワイルドな格好になっていた。
例えるなら昔の秘境冒険もの映画で、いろいろと露出してきわどい格好になっているヒロインに近いだろうか。
そしてオレが羞恥に浸るいっぽうでこっちを注視していた兵士達から歓声が上がる。
「ぬああ!」
「おお! これは!」
「やはり女神様だ!」
うう。女っ気のない砦暮らしのせいでこいつらよっぽど餓えていたらしい。
勝手に感動したり、鼻血をだしたりしているが、もしも『調和』をかけていなかったら、一斉に襲いかかられていたかもしれないと思うとゾッとする。
ええい。こいつらの頭を立て続けにぶん殴って、記憶を消してやりたいところだが、いまはそれどころではない。
「どうした? 何の騒ぎだ!」
「敵襲か?」
下の方から呼びかける声が聞こえ、武器を持って動き回る兵士も見える。
こりゃマズい。
さっきの歓声を聞きつけて、別の兵士達がここにやってくるのは時間の問題だ。
こうなったら話し合いなどと回りくどい事はしてられん。とっとと終わらせねばならない。
「お願いです。もっと見せて下さい」
「いや。いっそ――」
まさにオレの事を女神様のごとく――ひょっとしたら痴女のごとく――兵士達は目を血走らせて寄ってくる。
勝手な事をほざいているんじゃねえよ。
オレはあんたらを慰めるために来たわけじゃないんだよ。
むしろこんな連中に触られるだけでも真っ平だ。
そんなわけでオレは弩に手をかけて【植物歪曲】の魔法をかける。
金属製ならどうしようもなかったけど、かなりの部分が木製だったので、オレの魔法で弩は見る見る変形して、あっという間に使い物にならなくなる。
しかし武器を破壊するのは兵士達には敵対行動だから、オレの『調和』はここで効果が切れてしまう。
出来れば話し合いでどうにかしたかったけど、すぐに逃げ出さねばならない。
「おお! その力。やっぱり女神様だ」
おい。目を血走らせて勝手に盛り上がっているんじゃねえよ。
そして下に続く階段からは、上がってくる兵士達の足音と声が迫ってくる。
「それではさようなら!」
「ああ! お待ちを!」
オレは一方的に別れを告げると、再び塔を駆け降り岸壁を下って河川敷に降り立つ。
塔にいた兵士達はたぶんたんまりとお目玉を食らうだろうけど、オレの身体を見た事の正当な代償だと思ってくれ。
そんな事を考えていると、オレの周囲には砦から次々に矢が飛んでくる。
まあ弩を破壊したのだから、当然の反応というものか。
あの卵を攻撃しなければ、こっちだって何もせずにとっとと立ち去ったのだから、余計な手出しをした代償というものだ。
しかし人が傷つかずに済んでひとまず安心というところだな。身体をさらしてしまったのは、かなり羞恥心にダメージがあったけど。
そんなわけでオレは飛んでくる矢をかわししつつ、流れてくる卵に再度合流すべく駆け出した。
塔だけならだいたい十メートルぐらいだが、いずれにしても常人にはとても登れるところではない。
そのお陰でこちらの側にはほとんどの防御施設がなく、塔の頂部にまで何の妨害も受けずに這い上がる事が出来た。
この方向から攻撃されることを想定していなかったからだが、これが砦の全周を防備して真ん中に塔が立っているようなタイプだったら、かなり困っていたところだな。
そんなわけでオレは突き出た弩の先端をつかみつつ頂部の周囲に巡らされた石壁の上に立って、まずは真っ先に『調和』をかける。
そこには据え付けられた大きな弩とあくせく働く数人の兵士がいたが、いきなり現れたオレを呆気にとられて眺めていた。
まあこんな塔の頂上にオレのような相手が現れたら、何がなんだか分からなくなるのは当たり前か。
しかしどうする。『調和』は暴力的な行動は阻害するが、魔法をかけたときに効果範囲外の人間が入ってきて攻撃してきたら、即座に効果が消えてしまう。
あとオレの視界外にも効果は及ぼせないから、下から誰か上がってきた時点で結構ヤバい。
大勢に一斉にのしかかられたら、オレはひとたまりもないからここの異変に気づかれる前にどうにかするしかないのだ。
「あ……あの……あなた様はいったい?」
ここの指揮官らしき軽装の鎧をまとった男が動揺しつつ問いかけてくる。
「先ほどからのあなた方の攻撃ですけど――」
ひとまずオレと卵には危害を加える気がないので、攻撃はやめるように伝えるつもりだったのだが、ここでどういうわけか結構、強い風が吹く。
いや。いまオレがいるのは遮るモノが何もない塔の上なんだから、下よりも風が強いのは当たり前なんだけど、それを考えていなかったのだ。
そしてそのせいでオレの服がいきなりまくれあがって、兵士達の前でいろいろと晒す事になる。
たぶん『エヴァン○リオン』における『アス○来日』の有名なカットを思わせる光景だったろう。
「ああ!」
よく見るとこれまでかなり無理をしてきた上に、塔を上るときにもあちこちこすったらしく服が何カ所も破れて結構ワイルドな格好になっていた。
例えるなら昔の秘境冒険もの映画で、いろいろと露出してきわどい格好になっているヒロインに近いだろうか。
そしてオレが羞恥に浸るいっぽうでこっちを注視していた兵士達から歓声が上がる。
「ぬああ!」
「おお! これは!」
「やはり女神様だ!」
うう。女っ気のない砦暮らしのせいでこいつらよっぽど餓えていたらしい。
勝手に感動したり、鼻血をだしたりしているが、もしも『調和』をかけていなかったら、一斉に襲いかかられていたかもしれないと思うとゾッとする。
ええい。こいつらの頭を立て続けにぶん殴って、記憶を消してやりたいところだが、いまはそれどころではない。
「どうした? 何の騒ぎだ!」
「敵襲か?」
下の方から呼びかける声が聞こえ、武器を持って動き回る兵士も見える。
こりゃマズい。
さっきの歓声を聞きつけて、別の兵士達がここにやってくるのは時間の問題だ。
こうなったら話し合いなどと回りくどい事はしてられん。とっとと終わらせねばならない。
「お願いです。もっと見せて下さい」
「いや。いっそ――」
まさにオレの事を女神様のごとく――ひょっとしたら痴女のごとく――兵士達は目を血走らせて寄ってくる。
勝手な事をほざいているんじゃねえよ。
オレはあんたらを慰めるために来たわけじゃないんだよ。
むしろこんな連中に触られるだけでも真っ平だ。
そんなわけでオレは弩に手をかけて【植物歪曲】の魔法をかける。
金属製ならどうしようもなかったけど、かなりの部分が木製だったので、オレの魔法で弩は見る見る変形して、あっという間に使い物にならなくなる。
しかし武器を破壊するのは兵士達には敵対行動だから、オレの『調和』はここで効果が切れてしまう。
出来れば話し合いでどうにかしたかったけど、すぐに逃げ出さねばならない。
「おお! その力。やっぱり女神様だ」
おい。目を血走らせて勝手に盛り上がっているんじゃねえよ。
そして下に続く階段からは、上がってくる兵士達の足音と声が迫ってくる。
「それではさようなら!」
「ああ! お待ちを!」
オレは一方的に別れを告げると、再び塔を駆け降り岸壁を下って河川敷に降り立つ。
塔にいた兵士達はたぶんたんまりとお目玉を食らうだろうけど、オレの身体を見た事の正当な代償だと思ってくれ。
そんな事を考えていると、オレの周囲には砦から次々に矢が飛んでくる。
まあ弩を破壊したのだから、当然の反応というものか。
あの卵を攻撃しなければ、こっちだって何もせずにとっとと立ち去ったのだから、余計な手出しをした代償というものだ。
しかし人が傷つかずに済んでひとまず安心というところだな。身体をさらしてしまったのは、かなり羞恥心にダメージがあったけど。
そんなわけでオレは飛んでくる矢をかわししつつ、流れてくる卵に再度合流すべく駆け出した。
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