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第12章 強奪の地にて
第369話 最後にして最大の障害物とは
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砦から少し離れたところで、オレは川を流れている卵に飛び移ると、精霊が待っていたと言わんばかりに顔を出す。
『ほう。どうやら無事だったようだな』
「ええ。お互いに」
どうせオレの事を心配していたワケではなく、卵の糧となる魔力だけを気にしていたのは分かっている。
『それで連中を皆殺しにしたのか?』
「やってませんから!」
まったく何だってオレの周囲にはこういう物騒な連中が集まるのか――と、言いたいけど実際にはオレの方からクビを突っ込んでいることは承知している。
『どうしてそんなに人間を始末するのを嫌がるのだ? どうせ数十年しか生きていない存在なのだから、邪魔ならばさっさと消せば良かろうが』
「あなたにとってはそうかもしれませんけど、わたしにとっては違うんです」
この精霊にとって人間はせいぜい数十年――彼らにとってはちょっとした期間――でいなくなる短命な存在だから、命を奪う事に何ら抵抗はないのだろうな。
この点で議論してもたぶん実りのあるものにはならないのは分かっている。相手は数十年どころか数百年単位でドラゴンに気に入られたらいいと考えるような存在なのだ。
そしてそうこうしていると川岸から鬨の声が上がる。
見ると兵士が何人か現れていた。
どうやら弩がオレの手で使用不能にされたので、今度は川縁から攻撃をするつもりらしいが、ドラゴンの卵を覆っている紋様の魔法を知らなかったので、そこで連中は動きを止めたらしい。
万一の事があるから注意は怠れないとオレは緊張していたが、何事もなく卵はその脇を抜けていった。
ふう。どうやら何とかなったようで一安心だ。
だけどまたあんな砦があったら、いろいろと面倒だけど困った事にオレはこの周辺の地理を知らないし、魔法で脳内に収容している資料にも詳しいものはない。
手書きの大ざっぱな地図ぐらいしかないけど、これで分かるのはせいぜいこのまま下っていけば海に出るというところまでだ。
まあ情報がないものは仕方ない。
ピンチになったら、そのときにどうにかするという『高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する』という行き当たりばったりなのはいつものことだ。
「ところで海に出るまで、あとどれぐらいかかるかは分かりますよね?」
この精霊が人間の建築物について知らないのは当たり前だろうけど、いくら何でもこれぐらいは分かっていないとおかしいはずだ。
『そうだな。このままいけば明日中には海に出るだろう』
「そこまで行けばこちらも卵を降りますよ」
大海に出てしまえば、幾らこの卵が大きくても人間が探し出すのは至難の業のはずだ。
そうすれば後はこの卵が孵るのを待つだけで、そこまではオレも関わる気は無い。
そんな事を考えつつ、その日はこれ以降、特に何事も起きる事は無く、オレはまた卵の上で眠りにつく事になった。
それでも海に出る前には、必ず何か厄介事が起きるだろうというちょっとばかり空しい確信はあったのだが。
翌朝に目が覚めると周囲には特に人の気配もなく、オレにとってはちょっとばかり安心出来る状況だった。
そして水路もかなり複雑になっていて、支流が合流しているところもあれば、逆に枝別れてしているところもある。
そんな中を卵は迷う事無く下流に進んでいるらしい。
今までは事実上、流れに沿って下流に進んでいれば良かったわけだが、行く先が複数になってくるとオレもちょっとばかり不安になる。
「あのう。このまま進んで間違いないんですか?」
『どういう事かね』
「いろいろな流れがありますけど、卵の進む先が浅くて動けなくなってしまったら困るでしょう」
こんな大きな卵が進退窮まって止まっていたら、誰かに発見されてしまいかねない。
その場合、また欲に駆られた人間が襲撃してくる危険がある。
『心配する事はないぞ。この卵は可能な限り深い流れに沿って動くように出来ているからな』
それなら大丈夫なのだろうか。
まあオレが心配しても仕方ない。ちょっとばかり浅瀬で座礁したぐらいなら、水の精霊に魔力を提供して協力してもらえばどうにかなるだろう。
この時のオレはそんな事を考えていたのだが、それがいつものように甘すぎる見通しだったことに気付かされるのはすぐだった。
とにかく今日中には卵は海に出て、この地にドラゴンの怒りが降り注ぐ事も無くオレもお役御免だと少しばかり安心していたところ、思わぬ精霊の言葉が聞こえてくる。
『むう。妙だな』
「どうしました?」
『流れがかなり遅くなっている』
「それは河口に近くなったからではないのですか?」
『そうではない。何か別の要因だ』
ちょっと待てよ。こういう場合、考えられる要素と言えば――まさか?!
オレはわき上がる不吉な予感と共に精霊に勢い込んで問いかける。
「すみません。この流れを遡って、別のルートを取る事は出来ませんか?」
『それは無理だ。我は卵の動きある程度は操れるが、流れに逆らうことは不可能だな』
「ええ?!」
それはまずいぞ!
もしもオレの予想が当たっていたら、もの凄くヤバい。
『どうしたのだ。この先にはそなたが顔色を変える程、危ないものがあるのか?』
「普通だったら別に危ないものではないんですけど……この卵の場合は違うんです」
そう言っている内に、正面に予想通りのものが見えてきた。
「やっぱりそうか……」
卵の流れる先にあったのはちょっとした湖、そしてその先につくられたダムだったのだ。
最後にして最大の障害物を前にして、オレは思わず愕然とならずにはいられなかった。
『ほう。どうやら無事だったようだな』
「ええ。お互いに」
どうせオレの事を心配していたワケではなく、卵の糧となる魔力だけを気にしていたのは分かっている。
『それで連中を皆殺しにしたのか?』
「やってませんから!」
まったく何だってオレの周囲にはこういう物騒な連中が集まるのか――と、言いたいけど実際にはオレの方からクビを突っ込んでいることは承知している。
『どうしてそんなに人間を始末するのを嫌がるのだ? どうせ数十年しか生きていない存在なのだから、邪魔ならばさっさと消せば良かろうが』
「あなたにとってはそうかもしれませんけど、わたしにとっては違うんです」
この精霊にとって人間はせいぜい数十年――彼らにとってはちょっとした期間――でいなくなる短命な存在だから、命を奪う事に何ら抵抗はないのだろうな。
この点で議論してもたぶん実りのあるものにはならないのは分かっている。相手は数十年どころか数百年単位でドラゴンに気に入られたらいいと考えるような存在なのだ。
そしてそうこうしていると川岸から鬨の声が上がる。
見ると兵士が何人か現れていた。
どうやら弩がオレの手で使用不能にされたので、今度は川縁から攻撃をするつもりらしいが、ドラゴンの卵を覆っている紋様の魔法を知らなかったので、そこで連中は動きを止めたらしい。
万一の事があるから注意は怠れないとオレは緊張していたが、何事もなく卵はその脇を抜けていった。
ふう。どうやら何とかなったようで一安心だ。
だけどまたあんな砦があったら、いろいろと面倒だけど困った事にオレはこの周辺の地理を知らないし、魔法で脳内に収容している資料にも詳しいものはない。
手書きの大ざっぱな地図ぐらいしかないけど、これで分かるのはせいぜいこのまま下っていけば海に出るというところまでだ。
まあ情報がないものは仕方ない。
ピンチになったら、そのときにどうにかするという『高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する』という行き当たりばったりなのはいつものことだ。
「ところで海に出るまで、あとどれぐらいかかるかは分かりますよね?」
この精霊が人間の建築物について知らないのは当たり前だろうけど、いくら何でもこれぐらいは分かっていないとおかしいはずだ。
『そうだな。このままいけば明日中には海に出るだろう』
「そこまで行けばこちらも卵を降りますよ」
大海に出てしまえば、幾らこの卵が大きくても人間が探し出すのは至難の業のはずだ。
そうすれば後はこの卵が孵るのを待つだけで、そこまではオレも関わる気は無い。
そんな事を考えつつ、その日はこれ以降、特に何事も起きる事は無く、オレはまた卵の上で眠りにつく事になった。
それでも海に出る前には、必ず何か厄介事が起きるだろうというちょっとばかり空しい確信はあったのだが。
翌朝に目が覚めると周囲には特に人の気配もなく、オレにとってはちょっとばかり安心出来る状況だった。
そして水路もかなり複雑になっていて、支流が合流しているところもあれば、逆に枝別れてしているところもある。
そんな中を卵は迷う事無く下流に進んでいるらしい。
今までは事実上、流れに沿って下流に進んでいれば良かったわけだが、行く先が複数になってくるとオレもちょっとばかり不安になる。
「あのう。このまま進んで間違いないんですか?」
『どういう事かね』
「いろいろな流れがありますけど、卵の進む先が浅くて動けなくなってしまったら困るでしょう」
こんな大きな卵が進退窮まって止まっていたら、誰かに発見されてしまいかねない。
その場合、また欲に駆られた人間が襲撃してくる危険がある。
『心配する事はないぞ。この卵は可能な限り深い流れに沿って動くように出来ているからな』
それなら大丈夫なのだろうか。
まあオレが心配しても仕方ない。ちょっとばかり浅瀬で座礁したぐらいなら、水の精霊に魔力を提供して協力してもらえばどうにかなるだろう。
この時のオレはそんな事を考えていたのだが、それがいつものように甘すぎる見通しだったことに気付かされるのはすぐだった。
とにかく今日中には卵は海に出て、この地にドラゴンの怒りが降り注ぐ事も無くオレもお役御免だと少しばかり安心していたところ、思わぬ精霊の言葉が聞こえてくる。
『むう。妙だな』
「どうしました?」
『流れがかなり遅くなっている』
「それは河口に近くなったからではないのですか?」
『そうではない。何か別の要因だ』
ちょっと待てよ。こういう場合、考えられる要素と言えば――まさか?!
オレはわき上がる不吉な予感と共に精霊に勢い込んで問いかける。
「すみません。この流れを遡って、別のルートを取る事は出来ませんか?」
『それは無理だ。我は卵の動きある程度は操れるが、流れに逆らうことは不可能だな』
「ええ?!」
それはまずいぞ!
もしもオレの予想が当たっていたら、もの凄くヤバい。
『どうしたのだ。この先にはそなたが顔色を変える程、危ないものがあるのか?』
「普通だったら別に危ないものではないんですけど……この卵の場合は違うんです」
そう言っている内に、正面に予想通りのものが見えてきた。
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卵の流れる先にあったのはちょっとした湖、そしてその先につくられたダムだったのだ。
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