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第12章 強奪の地にて
第371話 近づいて来た相手は
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卵の精霊とやりとりをしていた間に、どうやらこちらの存在が周囲の人間に知られてしまったようだ。
近くに来たのなら、一般人は殻に込められた魔力で動けなくなってしまうけど、遠目で見てそのまま人を呼びに行った人間がいたのだろう。
今のところは大多数は、遠巻きにこちらの様子を伺っているようだ。
まあ相手が何も知らない一般人なら、こんな怪しい存在には警戒が先に立つだろう。
だがずっとこのまま放置してくれる事は無い。
ただの村人が好奇心で近づいてくるだけなら構わない。
しかしこのドラゴンの卵を目当てにしている連中がいたら、地元の住民に卵を見つけたら自分達に連絡するように言い含めているのは確実だ。
そんな連中がやってきたら、戦いになることは避けられない。
現状では進退窮まったこちらとしては、なんとかして穏便に済ませたいところだが、莫大な富につながるドラゴンの卵を前にして、欲に目がくらんだ人間を口先で説得するのは、たぶん不可能だ。
もちろんこの精霊のいうように、ダムを破壊して先に進むのを許すわけにはいかない。
こんな時に応用できる魔法は何か無いだろうか――片っ端から試してみたいところだけど、ずっと卵に魔力を吸収されているから結構キツい。
あと卵に乗ってから使った魔力が殆ど回復していないのだ。たぶん回復する分だけ吸収されているからだろう。
まだ常人よりは遙かに魔力はあるはずだけど、まだ戦いがあるかも知れないときに魔力を浪費するワケにはいかないのだ。
うう。こうなったら最後の手段だけど、下流の村に避難を呼びかけて堤防を破壊するしかないのだろうか。
これでもドラゴンの怒りを買って、あたり一帯を焼け野原にされるよりは遙かにマシだろうけど、村や周囲の作物が押し流されるのをはいそうですかと受け入れてくれるはずがないから、かなり脅迫めいた事をせねばならないかもしれない。
待てよ。ここは少しばかり考えを切り替えてみたらどうだろう。
人が集まってきたとして、その中にはただの野次馬やいれば、ドラゴンを恐れているのも少なくないはず。
そういう人間にドラゴンの脅威を伝え、また状況次第ではドラゴンの感謝も得られるかもしれないと伝えることで、協力が得られるかもしれないぞ。
卵の魔力はオレが抑える事は出来るので、それで集めた人手に引っ張らせ、卵をいったん引き上げそこから川に流せばいい。
もちろん金目当てにドラゴンの卵を襲撃する輩だって紛れているはずだから、そいつらの相手をせねばならないのが実に厄介だけど、今は地元の人達の協力を仰ぐべきだ。
そしていつの間にか、ダム湖の周囲には人間が次第に集まってきたようだ。
もちろん近づいて来た相手の多くは、卵の殻の魔力に魅せられて動けなくなっていて、このままだとそいつらの数がドンドン増えていくだろう。
あれ? もしもこのドラゴンの卵が動けなかったら、この人達はずっとこのままかもしれないのだよな。
本来ならば川を下っていくばかりだから、せいぜい数分で人の視界から消えるけど、今は川がせき止められて動けないから、魅せられた人達もこのままなんだ。
う~ん。あまり脅迫するような真似はしたくないが、やっぱりダムを破壊するよりはマシだろうから、このままここに卵が居座ったる事の危険性を訴えるべきだな。
そう考えたところで、遠くからオレに向けて声がかけられてくる。
視線を向けると水辺には鎧をまとった結構、みなりのよい人物が姿を見せ、こちらに向け手を振っていた。
「そこの御仁はどこのどなたかな? その卵の守護者であられるか? それとも川神の娘御か?」
あいにくどっちでもありません。
ただの通りすがりが、ちょっとした気まぐれで卵を守っているだけです。
それはともかく相手はだいたい二十代前半ぐらいの若い男性だ。
このドラゴンの卵を見て普通に行動しているところから、たぶんバラストールでつくられた卵のアイテムを身につけているのだろう。
姿を見せたのは一人だけなので、この卵の魔力を知っているのは間違いあるまい。
ただ武装はしているが、今のところ戦う意志はないようだ。
とりあえずは話をしてみよう。
オレはちょっとばかり水の精霊に頼んで、岸に卵を近づかせる。
「こ……これは……」
距離が近づいてよく見えるようになった事で、オレの容姿を確認した相手が息を呑んだ様子が伝わってくる。
ここは男の下心も少しばかり利用させてもらっていいところだろう。
「我の名はコロニウス。あなたは?」
「アルタシャと呼んで下さい」
「やはりそうですか。噂はかねがね伺っております」
どんな噂だよ。まあいい。この男が何を目的に近づいたのか、それを確認せねばならないからな。
「コロニウスさん。あなたはこの卵をどうされるおつもりですか? もしも金のために襲うと言われるなら、こちらにも相応の覚悟がありますよ」
少しばかり威嚇を込めて問いかけると、コロニウスは大げさに肩をすくめる。
「まさか。この私は金などには興味はありませんよ。もちろんその卵を破壊するつもりなど一切ありません」
コロニウスは愛想良く頬笑みかけてきた。
彼の言葉に確かに嘘はないように思えたが、それでもその笑顔の裏に何かがあるかのように感じられたのだ。
近くに来たのなら、一般人は殻に込められた魔力で動けなくなってしまうけど、遠目で見てそのまま人を呼びに行った人間がいたのだろう。
今のところは大多数は、遠巻きにこちらの様子を伺っているようだ。
まあ相手が何も知らない一般人なら、こんな怪しい存在には警戒が先に立つだろう。
だがずっとこのまま放置してくれる事は無い。
ただの村人が好奇心で近づいてくるだけなら構わない。
しかしこのドラゴンの卵を目当てにしている連中がいたら、地元の住民に卵を見つけたら自分達に連絡するように言い含めているのは確実だ。
そんな連中がやってきたら、戦いになることは避けられない。
現状では進退窮まったこちらとしては、なんとかして穏便に済ませたいところだが、莫大な富につながるドラゴンの卵を前にして、欲に目がくらんだ人間を口先で説得するのは、たぶん不可能だ。
もちろんこの精霊のいうように、ダムを破壊して先に進むのを許すわけにはいかない。
こんな時に応用できる魔法は何か無いだろうか――片っ端から試してみたいところだけど、ずっと卵に魔力を吸収されているから結構キツい。
あと卵に乗ってから使った魔力が殆ど回復していないのだ。たぶん回復する分だけ吸収されているからだろう。
まだ常人よりは遙かに魔力はあるはずだけど、まだ戦いがあるかも知れないときに魔力を浪費するワケにはいかないのだ。
うう。こうなったら最後の手段だけど、下流の村に避難を呼びかけて堤防を破壊するしかないのだろうか。
これでもドラゴンの怒りを買って、あたり一帯を焼け野原にされるよりは遙かにマシだろうけど、村や周囲の作物が押し流されるのをはいそうですかと受け入れてくれるはずがないから、かなり脅迫めいた事をせねばならないかもしれない。
待てよ。ここは少しばかり考えを切り替えてみたらどうだろう。
人が集まってきたとして、その中にはただの野次馬やいれば、ドラゴンを恐れているのも少なくないはず。
そういう人間にドラゴンの脅威を伝え、また状況次第ではドラゴンの感謝も得られるかもしれないと伝えることで、協力が得られるかもしれないぞ。
卵の魔力はオレが抑える事は出来るので、それで集めた人手に引っ張らせ、卵をいったん引き上げそこから川に流せばいい。
もちろん金目当てにドラゴンの卵を襲撃する輩だって紛れているはずだから、そいつらの相手をせねばならないのが実に厄介だけど、今は地元の人達の協力を仰ぐべきだ。
そしていつの間にか、ダム湖の周囲には人間が次第に集まってきたようだ。
もちろん近づいて来た相手の多くは、卵の殻の魔力に魅せられて動けなくなっていて、このままだとそいつらの数がドンドン増えていくだろう。
あれ? もしもこのドラゴンの卵が動けなかったら、この人達はずっとこのままかもしれないのだよな。
本来ならば川を下っていくばかりだから、せいぜい数分で人の視界から消えるけど、今は川がせき止められて動けないから、魅せられた人達もこのままなんだ。
う~ん。あまり脅迫するような真似はしたくないが、やっぱりダムを破壊するよりはマシだろうから、このままここに卵が居座ったる事の危険性を訴えるべきだな。
そう考えたところで、遠くからオレに向けて声がかけられてくる。
視線を向けると水辺には鎧をまとった結構、みなりのよい人物が姿を見せ、こちらに向け手を振っていた。
「そこの御仁はどこのどなたかな? その卵の守護者であられるか? それとも川神の娘御か?」
あいにくどっちでもありません。
ただの通りすがりが、ちょっとした気まぐれで卵を守っているだけです。
それはともかく相手はだいたい二十代前半ぐらいの若い男性だ。
このドラゴンの卵を見て普通に行動しているところから、たぶんバラストールでつくられた卵のアイテムを身につけているのだろう。
姿を見せたのは一人だけなので、この卵の魔力を知っているのは間違いあるまい。
ただ武装はしているが、今のところ戦う意志はないようだ。
とりあえずは話をしてみよう。
オレはちょっとばかり水の精霊に頼んで、岸に卵を近づかせる。
「こ……これは……」
距離が近づいてよく見えるようになった事で、オレの容姿を確認した相手が息を呑んだ様子が伝わってくる。
ここは男の下心も少しばかり利用させてもらっていいところだろう。
「我の名はコロニウス。あなたは?」
「アルタシャと呼んで下さい」
「やはりそうですか。噂はかねがね伺っております」
どんな噂だよ。まあいい。この男が何を目的に近づいたのか、それを確認せねばならないからな。
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少しばかり威嚇を込めて問いかけると、コロニウスは大げさに肩をすくめる。
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