異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第13章 広大な平原の中で起きていた事

第399話 またしても追い詰められたところで

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 周囲が少しばかり騒がしくなって来たので、見回すと馬に乗った遊牧民達が幾人も動き回っているようだ。
 どうやらまだこちらには気付いていないらしい。
 少年は斃れていたし、オレも体勢を低くしていたから遠くからは見えていなかったのだ。
 何よりオレは魔法で知覚力を強化していて、常人よりも遥か遠くまで見通せるし、音もよく聞こえるから先に見つけて当然なんだけどな。

 問題なのはやってきた遊牧民と、オレが助けた少年との関わりだ。
 あれが少年と同じ部族で、はぐれた仲間を探しているのならば問題は無い。
 自分の正体を明かしかねない回復魔法など使う事無く、少年を引き渡してとっととこの場を去ればいいだけだ。
 この平原の遊牧民は部族単位で互いに相争う事も多く、敵対関係にある部族同士の場合、顔を合わせれば即座に戦闘にもなりかねないと聞いている。
 もっともそうやって相争っているお陰で、この地の遊牧民は周辺地域の脅威となる事は滅多にないらしい。
 しかし過去、数百年に一度かそのような極めて希な例として、遊牧民をまとめ上げる指導者が現れて国家を建設し周辺地域を侵略しまくる事もあったようだ。
 ただその国も殆どの場合、その指導者が没すると国は乱れ、またバラバラの遊牧民の群れに逆戻りしてしまったと聞く。
 それはともかく、今は周囲で動き回っている遊牧民が、この少年とどんな関わりがあるのかを確認せねばなるまい。

「すみません。あちらにいる人達はあなたの仲間でしょうか?」
「なんだと?! ぐう!」

 少年は地面に伏せた状態で警戒の声を上げるが、そこで自分の傷を押さえて苦しそうな声をもらす。
 どう見ても自分を探している仲間と出会った時の態度ではない。
 そうすると集まってきたのは敵対する部族の連中か。
 この地での部族間の抗争にクビを突っ込む気はさらさらないが、一度助けてしまったからには見捨てるにも忍びない。
 覚悟を固めると、オレは少年の身体に手をあてて【肉体治癒】ヒール・ボディをかける。

「これは……まさか?」

 自分の傷が見る見る治っていくのを目の当たりにして、少年は驚愕の表情を浮かべる。
 これでオレの事もかなり分かってしまうだろうけど、ここは細かい事にこだわってはいられない。

「説明は後です。いまはとにかく隠れましょう」
「わ、分かった」

 オレと少年はひとまず、近くにあった小さなくぼ地に揃って身を潜める。

「どうやらまだ見つかってはいないようだが……」

 怪我の治った少年は周囲の状況を確認して苦しげにこぼすが、それは傷が痛むからではないはずだ。
 見ると辺りを探し回っている遊牧民達は十人以上に増えてきたようだ。
 これはかなり厄介だな。
 オレが普段使っている『調和』は範囲内での暴力的な行動を抑止するが、魔法をかけたときの効果範囲外から入ってきた相手には影響が無いし、その相手が暴力を振るえば魔法が消えてしまうのだ。
 つまりこのような見晴らしの良すぎる平原では、すぐに他の連中がかけつけてくるので効果が期待出来ないのだ。
 今は地形の起伏に隠れて周囲の連中から見えていないようだが、もしも見つかったら一斉に集まってくるだろう。
 相手がこの少年を探しているなら発見されるのは時間の問題だ。
 オレ一人なら魔法で脚力を強化し『走って逃げる』という選択肢もあるのだが、少年が一緒ではそういうわけにもいかない。

「くう。とても逃げ切れないようだな」

 少年は口惜しそうにこぼす。まあ徒歩で複数の騎馬から逃げ切れるものではないからな。

「こうなったらやむを得ないか」

 そして少年は観念した様子でオレの方に振り向く。

「せっかく助けてくれたのに申し訳ないが、俺が出ていこう。それならお前はここに隠れていれば奴らも気にはとめないだろう」

 もしも周囲にいる連中が、少年と敵対している部族だったら、よくて奴隷、下手をすれば即座に殺されるはず。
 当然、それを承知での申し出だろう。
 やれやれ。そんな事を言われたら、やっぱり見捨てるわけにはいかなくなるか。

「待って下さい。ここは二人で隠れましょう」
「無駄だ。少しばかり起伏があって俺達はくぼ地にいるから見つかっていないが、すぐにここにもやってくるだろう。そうなればおしまいだ」

 そんなのオレだって分かってますよ。しかしここは野外だ。
 隠れる場所がないなら、つくればいいのだよ。
 オレは地面に【成長促進】グロウス【植物歪曲】ワープ・ウッドの魔法をかけて、オレ達のいる小さなくぼ地を草で覆う。
 もしも相手に場所の目星がついているなら、これでもごまかせるのは少しの時間だろうけど、どこにいるのか分からない相手をただ探しているだけなら十分にやり過ごせるはず。

「これは……お前いったい何者だ?」
「説明は後です。とにかく今は静かにして、あの人達はやり過ごしましょう」

 小さなくぼ地に息を潜めている都合上、オレと少年はかなり身体が密着していてかなり息苦しい。
 まったく何だって男と二人っきりで、こんな狭いところに押し込められねばならないのか。
 毎度の事だと諦めるしかないのだろうな。
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