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第13章 広大な平原の中で起きていた事
第409話 『聖地』の理由は
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パップスの城門を前にして、ターダはその両手を広げて感嘆の声を挙げる。
「おお。ようやくたどり着いたか。我らが聖地パップスよ」
どうやらターダはかなり感動しているらしい。
「ターダもここに来るのは初めてなのですか?」
「もちろんだ。我が部族でも、ここを直接訪れたものはそれほど多くは無い」
そりゃ周囲が不毛な荒野だし、無法者だけでなく以前に出会った『風の欠片』のようなロクでもない存在がうろついているわけだから、気軽に訪れるわけにはいかないよな。
巡礼に来るだけでも命がけなのだ。
「遊牧民の男ならば、一生に一度はここに来て『定めし者』を礼拝する事が望まれているのだが簡単ではない。危険な『悪鬼の湿地』で狩りをするものはさすがに少数だが、巡礼しただけでも十分に誇らしい事なのだぞ」
やっぱり『男』限定ですか。
以前に聞いた話では女性は『最優先で守る部族の宝』と言う事だったが、逆を言えば部族を離れる事が許されず巡礼の旅など論外ということなのだろう。
まあこの平原で女性が部族の庇護無く旅をすることは不可能とは言わないまでも、極めて困難なので仕方の無い事かもしれないが。
城門の近くでは交易商がひっきりなしに行き来し、また『恩恵の運河』には食料を輸送してきたとみられる川船が何艘も見えてくる。
川の民が『川を汚した』遊牧民を嫌っていると言っても、河川交通で生計を立てているために付き合っている人間も少なからずいるということだな。
あと遊牧民の姿は当然あるが、周辺が『悪鬼の湿地』を除き不毛の荒野なので、家畜を大勢連れてくる事も出来ず、せいぜい数人のグループで来ているようだ。
巡礼目的でないのなら、恐らく交易目的で家畜の毛皮などの特産品――あとは奴隷――を売りにきたのだろう。
殆どの遊牧民は金銭に興味が薄いらしいが、金属製の武器や防具類など遊牧生活では手に入らないものを得るため交易を必要としており、このパップスはそのための拠点となっている事は知っていた。
もちろんターダが言っていたように『悪鬼の沼地』で狩りをして、勇者の称号を得るなり、族長の座を射止めるなりするために来ている遊牧民もいるだろう。
しかしいずれにせよやってきている遊牧民は、大人数ではないようだ。
なるほど。
最初はこの不毛の荒野に聖地がある事に、オレは違和感を抱いていたが、どうやらそれにはちゃんと合理性があるのだな。
ここが遊牧民にとって最大の聖地となれば、ひとつの部族でそっくりこの地を訪れたいと思うものだっているだろう。
しかしそうすると敵対する部族同士で出会う事も多くなるだろうから、このパップスが熾烈な争いの元になるのは確実だ。
だが周囲が不毛の荒野となると、家畜を多数連れてこられないので、いったん部族と離れた少数で訪れるしかない。
それならばそうそう大きな争いは起きないだろう。
またここが交易拠点であることから、略奪目的で襲おうと思う無法者がいても、河川交通で運び込まれる以外に食料もロクに得られない荒野のただ中にある以上、大勢で攻め込むのは難しい。
他の地域のように大規模な戦争をやるなら、川を監視して兵糧攻めという事もあるだろうけど、良くも悪くもこの平原ではそこまでする相手はまずいない。
この不毛の地が遊牧民最大の聖地として崇められているのは、そのような争いを抑止する効果を狙ったものではないのだろうか。
ターダの語った『遊牧民の興り』の伝説の真偽はひとまず置くとして、こんな不便な土地が聖地であるのも遊牧民にとっては意義のある事だったのだ。
パップスの城門や城壁には警戒にあたっている兵士の姿がちらほらと見えて、ここだけを見ると普通の田舎の都市と大して違いは無い。
「ここまでの約束だったな。それではお別れだ」
「ちょっと待って下さい。ターダはこれからいったいどうするつもりなんですか?」
「そんな事を聞いてどうするつもりだ」
ここでオレはちょっとばかり考える。
いや。実際、具体的にどうするか自分でも明確に考えていなかったのは確かだ。
敢えて言えば『ここまで同行してきた知り合いが心配で放っておけない』というところである。
自分自身、相変わらずの出しゃばり癖なのは分かっているが、仕方の無い事だ。
「もしも可能ならターダの力になりたいのですよ」
「そんな事をしてもらっても、何の返礼も出来ないと言ったはずだぞ」
「構いませんよ。わたしも別に気にしていませんから」
「そうか……」
今度はターダの方が少しばかり考え込んでいる。
ターダが何をするつもりなのかは未だによく分からないが、危険な事に取り組もうとしているのは間違いないはずだ。
それならオレはかなり役に立つという自負はある。
「確かにお前が手を貸してくれるのならばありがたいのだが――」
そこまでターダが口にしたところで、その表情がいきなり厳しくなる。
「ちょっとこちらにこい!」
「え? どういうこと――」
オレの質問の途中でターダはいきなり手をつかむと、こちらを強引に引っ張って人気の無い路地裏に連れ込んだのだ。
「おお。ようやくたどり着いたか。我らが聖地パップスよ」
どうやらターダはかなり感動しているらしい。
「ターダもここに来るのは初めてなのですか?」
「もちろんだ。我が部族でも、ここを直接訪れたものはそれほど多くは無い」
そりゃ周囲が不毛な荒野だし、無法者だけでなく以前に出会った『風の欠片』のようなロクでもない存在がうろついているわけだから、気軽に訪れるわけにはいかないよな。
巡礼に来るだけでも命がけなのだ。
「遊牧民の男ならば、一生に一度はここに来て『定めし者』を礼拝する事が望まれているのだが簡単ではない。危険な『悪鬼の湿地』で狩りをするものはさすがに少数だが、巡礼しただけでも十分に誇らしい事なのだぞ」
やっぱり『男』限定ですか。
以前に聞いた話では女性は『最優先で守る部族の宝』と言う事だったが、逆を言えば部族を離れる事が許されず巡礼の旅など論外ということなのだろう。
まあこの平原で女性が部族の庇護無く旅をすることは不可能とは言わないまでも、極めて困難なので仕方の無い事かもしれないが。
城門の近くでは交易商がひっきりなしに行き来し、また『恩恵の運河』には食料を輸送してきたとみられる川船が何艘も見えてくる。
川の民が『川を汚した』遊牧民を嫌っていると言っても、河川交通で生計を立てているために付き合っている人間も少なからずいるということだな。
あと遊牧民の姿は当然あるが、周辺が『悪鬼の湿地』を除き不毛の荒野なので、家畜を大勢連れてくる事も出来ず、せいぜい数人のグループで来ているようだ。
巡礼目的でないのなら、恐らく交易目的で家畜の毛皮などの特産品――あとは奴隷――を売りにきたのだろう。
殆どの遊牧民は金銭に興味が薄いらしいが、金属製の武器や防具類など遊牧生活では手に入らないものを得るため交易を必要としており、このパップスはそのための拠点となっている事は知っていた。
もちろんターダが言っていたように『悪鬼の沼地』で狩りをして、勇者の称号を得るなり、族長の座を射止めるなりするために来ている遊牧民もいるだろう。
しかしいずれにせよやってきている遊牧民は、大人数ではないようだ。
なるほど。
最初はこの不毛の荒野に聖地がある事に、オレは違和感を抱いていたが、どうやらそれにはちゃんと合理性があるのだな。
ここが遊牧民にとって最大の聖地となれば、ひとつの部族でそっくりこの地を訪れたいと思うものだっているだろう。
しかしそうすると敵対する部族同士で出会う事も多くなるだろうから、このパップスが熾烈な争いの元になるのは確実だ。
だが周囲が不毛の荒野となると、家畜を多数連れてこられないので、いったん部族と離れた少数で訪れるしかない。
それならばそうそう大きな争いは起きないだろう。
またここが交易拠点であることから、略奪目的で襲おうと思う無法者がいても、河川交通で運び込まれる以外に食料もロクに得られない荒野のただ中にある以上、大勢で攻め込むのは難しい。
他の地域のように大規模な戦争をやるなら、川を監視して兵糧攻めという事もあるだろうけど、良くも悪くもこの平原ではそこまでする相手はまずいない。
この不毛の地が遊牧民最大の聖地として崇められているのは、そのような争いを抑止する効果を狙ったものではないのだろうか。
ターダの語った『遊牧民の興り』の伝説の真偽はひとまず置くとして、こんな不便な土地が聖地であるのも遊牧民にとっては意義のある事だったのだ。
パップスの城門や城壁には警戒にあたっている兵士の姿がちらほらと見えて、ここだけを見ると普通の田舎の都市と大して違いは無い。
「ここまでの約束だったな。それではお別れだ」
「ちょっと待って下さい。ターダはこれからいったいどうするつもりなんですか?」
「そんな事を聞いてどうするつもりだ」
ここでオレはちょっとばかり考える。
いや。実際、具体的にどうするか自分でも明確に考えていなかったのは確かだ。
敢えて言えば『ここまで同行してきた知り合いが心配で放っておけない』というところである。
自分自身、相変わらずの出しゃばり癖なのは分かっているが、仕方の無い事だ。
「もしも可能ならターダの力になりたいのですよ」
「そんな事をしてもらっても、何の返礼も出来ないと言ったはずだぞ」
「構いませんよ。わたしも別に気にしていませんから」
「そうか……」
今度はターダの方が少しばかり考え込んでいる。
ターダが何をするつもりなのかは未だによく分からないが、危険な事に取り組もうとしているのは間違いないはずだ。
それならオレはかなり役に立つという自負はある。
「確かにお前が手を貸してくれるのならばありがたいのだが――」
そこまでターダが口にしたところで、その表情がいきなり厳しくなる。
「ちょっとこちらにこい!」
「え? どういうこと――」
オレの質問の途中でターダはいきなり手をつかむと、こちらを強引に引っ張って人気の無い路地裏に連れ込んだのだ。
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