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第13章 広大な平原の中で起きていた事
第410話 ターダと追っ手の関係は
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ええ? いきなりなんですか?
まさかターダは路地裏で無理矢理にオレとチョメチョメする気になって――はさすがにないか。
そんな事を考えるならそもそもこの街に来る前に、旅の途中で襲っているはずだ。
それでもいきなり人気の無いところに連れ込まれたら、こっちだってショックですよ。
「な、なんですか?」
「少しだけ黙っていてくれ」
ターダは緊張の面持ちで、先ほどまでオレ達が通っていた道を凝視している。
さほど広くない道ではあっても結構な数の人間が通っていたのだが、しばらくするとターダは、安堵の息をついてオレを解放する。
「すまんな。また迷惑をかけたようだ」
それだけ言ってターダは歩き出す。
推測だが、どうやらこのパップスの町中で追っ手らしき相手を見かけたので、いったん路地裏に隠れてやり過ごしたのか?
例によって肝心な事は話してくれないようだが、それでもオレは一つ気付いた事があった。
先ほどの行動からするとターダを追っている相手は、間違いなく彼の顔見知り――恐らくは同じ部族――と言う事になる。
そうするとやはり族長の地位を巡る争いなのだろうか。
しかしそれにしては不可解な事が多すぎる。
ただこれまでのところターダは『自分たち遊牧民のこと』は喜んで語るが『自分自身のこと』は語りたがらない。
触れて欲しくない事を無理に聞き出すのもどうかと思うが、お互い命がかかるかもしれないし、やはり尋ねてみるべきだろう。
「いったい何事ですか? 理由ぐらいは説明してくれますよね」
「……」
ターダはしばし沈黙するが、ここで諦めたように息を吐き出す。
「分かった。アルタシャにはいろいろと迷惑をかけているし、いつまでも黙っているわけにもいかないとは思っていた」
「それでは事情を話してくれるのですね」
ここでターダはようやく語り出す。
随分と時間がかかった気がするが、まあそんな事はどうでもいいさ。
「まず何から話せばいいか……」
「それでは先ほど、ターダは『追っ手』を避けようとしたのですよね?」
「ああ……そうだ……」
「そしてその相手はあなたの顔見知りですよね。そうでないと、見かけて即座に裏路地に逃げ込んだり出来ませんから」
「それぐらいは当然気付くだろうな」
「ひょっとしてあなたの部族は族長の座を巡って、争っているのですか? それでターダは一人であの『悪鬼の湿地』で狩りをして、自分が族長になろうとしているのではないのでしょうか?」
「なるほど。そう思うか……」
ターダは少しばかり残念そうに見える。
「生憎だがそれは違う。そもそも俺には族長になれるだけの能力も無ければ、人望もないからな。まだまだ半人前に過ぎんのだ」
それは俺も疑問だったのだ。実力と人望を兼ね備えた戦士でないと族長になれないという以上、いくら何でも十代半ばのターダにその資格があるとは思えない。
ならば『悪鬼の湿地』で狩りをして、勇者の称号を得ようと思っているのか?
いや。それもおかしい。その場合、自分の部族で認められるのが目的なのに、同族から追われてまでそんな狩りにこだわるのは不可解だ。
しかしそれなら一体、なぜ命の危険を賭してまで、ターダはこのパップスにまでやってきたのだろうか。
ただの巡礼のためならば、自分の部族から追っ手がかかるような事までする必要はないはずだ。
「俺がここまで来た理由だが――」
ターダがようやく真相を語り始めたところで、周囲の様子がおかしくなる。
どうもこの路地の周りに人間が集まってきている感覚があるのだ。
「ちょっと待って下さい。この近くに人が何人か来ています」
「どうした? あ? しまった! 気付かれていたのか!」
そうか。先ほどは何事もなくやり過ごしたかと思ったが、たぶん相手もこちらに気付いていたのだろう。
それで向こうも知らん顔して通り過ぎた後で、仲間を呼んできたに違いない。
とりあえず『調和』をかけて、暴力的な行動を抑止した上で、この場を逃げるしかないな。
「話は後にしましょう。今は逃げるのが先決です」
「あ……ああ……」
どうしたんだ? 下手をすれば命に関わるような危険があるはずなのに、どうもターダは戸惑っているようだ。
やっぱり顔見知りの同族と争いたくはないのか?
ええい。今は細かい事を考えている場合では無いだろう。
下手をすれば殺されるかもしれないのだぞ。
しかしここでターダは動きを止める。
「どうしたんですか?」
「すまん。お前には迷惑のかけっぱなしだが、もう逃げるのは辞めにした」
ここで戦うというワケではなさそうだけど一体、何を考えているんだ?
オレが困惑していると今いる路地の前後から幾人もの遊牧民が姿を見せた。
これ見よがしに武器をちらつかせているワケではないが、素直に解放してくれそうな雰囲気ではもちろんない。
そしてターダはオレをかばうように手を広げつつ口を開く。
「ここは聖地パップスだぞ。争いが御法度なのはお前達も知っているだろう?」
「もちろんですとも。我らも荒事は望みません」
リーダーらしき中年の男が出てきて、ターダに対し頭を下げる。
う~ん。どうも連中はターダに危害を加えるつもりには見えない。
もちろん『調和』をかけているから、暴力的な行動には出られないはずだが、そもそも連中には敵意とかそういうものも感じられないのだ。
「ここまで来ただけで十分でしょう。今ならまだ巡礼を果たしたと言うだけで収まります。どうか部族にお帰り下さい」
「そうはいかん! ここまで来て引き下がれるか!」
これはいったいどういうことだ?
この人達は『追っ手』というよりは、ターダを連れ戻しに来たということなのか?
オレとしては一安心であるけど、それならターダの目的はいったい何だったのだろうか。
まさかターダは路地裏で無理矢理にオレとチョメチョメする気になって――はさすがにないか。
そんな事を考えるならそもそもこの街に来る前に、旅の途中で襲っているはずだ。
それでもいきなり人気の無いところに連れ込まれたら、こっちだってショックですよ。
「な、なんですか?」
「少しだけ黙っていてくれ」
ターダは緊張の面持ちで、先ほどまでオレ達が通っていた道を凝視している。
さほど広くない道ではあっても結構な数の人間が通っていたのだが、しばらくするとターダは、安堵の息をついてオレを解放する。
「すまんな。また迷惑をかけたようだ」
それだけ言ってターダは歩き出す。
推測だが、どうやらこのパップスの町中で追っ手らしき相手を見かけたので、いったん路地裏に隠れてやり過ごしたのか?
例によって肝心な事は話してくれないようだが、それでもオレは一つ気付いた事があった。
先ほどの行動からするとターダを追っている相手は、間違いなく彼の顔見知り――恐らくは同じ部族――と言う事になる。
そうするとやはり族長の地位を巡る争いなのだろうか。
しかしそれにしては不可解な事が多すぎる。
ただこれまでのところターダは『自分たち遊牧民のこと』は喜んで語るが『自分自身のこと』は語りたがらない。
触れて欲しくない事を無理に聞き出すのもどうかと思うが、お互い命がかかるかもしれないし、やはり尋ねてみるべきだろう。
「いったい何事ですか? 理由ぐらいは説明してくれますよね」
「……」
ターダはしばし沈黙するが、ここで諦めたように息を吐き出す。
「分かった。アルタシャにはいろいろと迷惑をかけているし、いつまでも黙っているわけにもいかないとは思っていた」
「それでは事情を話してくれるのですね」
ここでターダはようやく語り出す。
随分と時間がかかった気がするが、まあそんな事はどうでもいいさ。
「まず何から話せばいいか……」
「それでは先ほど、ターダは『追っ手』を避けようとしたのですよね?」
「ああ……そうだ……」
「そしてその相手はあなたの顔見知りですよね。そうでないと、見かけて即座に裏路地に逃げ込んだり出来ませんから」
「それぐらいは当然気付くだろうな」
「ひょっとしてあなたの部族は族長の座を巡って、争っているのですか? それでターダは一人であの『悪鬼の湿地』で狩りをして、自分が族長になろうとしているのではないのでしょうか?」
「なるほど。そう思うか……」
ターダは少しばかり残念そうに見える。
「生憎だがそれは違う。そもそも俺には族長になれるだけの能力も無ければ、人望もないからな。まだまだ半人前に過ぎんのだ」
それは俺も疑問だったのだ。実力と人望を兼ね備えた戦士でないと族長になれないという以上、いくら何でも十代半ばのターダにその資格があるとは思えない。
ならば『悪鬼の湿地』で狩りをして、勇者の称号を得ようと思っているのか?
いや。それもおかしい。その場合、自分の部族で認められるのが目的なのに、同族から追われてまでそんな狩りにこだわるのは不可解だ。
しかしそれなら一体、なぜ命の危険を賭してまで、ターダはこのパップスにまでやってきたのだろうか。
ただの巡礼のためならば、自分の部族から追っ手がかかるような事までする必要はないはずだ。
「俺がここまで来た理由だが――」
ターダがようやく真相を語り始めたところで、周囲の様子がおかしくなる。
どうもこの路地の周りに人間が集まってきている感覚があるのだ。
「ちょっと待って下さい。この近くに人が何人か来ています」
「どうした? あ? しまった! 気付かれていたのか!」
そうか。先ほどは何事もなくやり過ごしたかと思ったが、たぶん相手もこちらに気付いていたのだろう。
それで向こうも知らん顔して通り過ぎた後で、仲間を呼んできたに違いない。
とりあえず『調和』をかけて、暴力的な行動を抑止した上で、この場を逃げるしかないな。
「話は後にしましょう。今は逃げるのが先決です」
「あ……ああ……」
どうしたんだ? 下手をすれば命に関わるような危険があるはずなのに、どうもターダは戸惑っているようだ。
やっぱり顔見知りの同族と争いたくはないのか?
ええい。今は細かい事を考えている場合では無いだろう。
下手をすれば殺されるかもしれないのだぞ。
しかしここでターダは動きを止める。
「どうしたんですか?」
「すまん。お前には迷惑のかけっぱなしだが、もう逃げるのは辞めにした」
ここで戦うというワケではなさそうだけど一体、何を考えているんだ?
オレが困惑していると今いる路地の前後から幾人もの遊牧民が姿を見せた。
これ見よがしに武器をちらつかせているワケではないが、素直に解放してくれそうな雰囲気ではもちろんない。
そしてターダはオレをかばうように手を広げつつ口を開く。
「ここは聖地パップスだぞ。争いが御法度なのはお前達も知っているだろう?」
「もちろんですとも。我らも荒事は望みません」
リーダーらしき中年の男が出てきて、ターダに対し頭を下げる。
う~ん。どうも連中はターダに危害を加えるつもりには見えない。
もちろん『調和』をかけているから、暴力的な行動には出られないはずだが、そもそも連中には敵意とかそういうものも感じられないのだ。
「ここまで来ただけで十分でしょう。今ならまだ巡礼を果たしたと言うだけで収まります。どうか部族にお帰り下さい」
「そうはいかん! ここまで来て引き下がれるか!」
これはいったいどういうことだ?
この人達は『追っ手』というよりは、ターダを連れ戻しに来たということなのか?
オレとしては一安心であるけど、それならターダの目的はいったい何だったのだろうか。
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