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第14章 拳の王
第465話 『招集』をかけてみると
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見ていると廃虚の中でビネースが体から立ち上っているのは、何らかの魔力の塊だ。
それが宙に登ると、いきなり破裂して魔力は周囲へと四散していった。
特に有害なものではないようだが、どんな効果があるのだろうか。
「ビネースさん。あなたは一体、何をされているのですか?」
「私はいま信徒の皆さんに招集をかけているのですよ」
「え? どういうことですか?」
魔法の『狼煙』のように周囲から注目されるようなものは存在するけど、ビネースが使ったのは明らかにそういう類のものではない。
「もちろん言葉をかけることが出来るワケではありません。私が今使ったのは『崇拝者招集』という我が教団に伝わる魔法です」
「それで信徒の皆さんをここに集めるのですか」
「これを使うと歩いて二日以内の場所にいるガイザーを崇拝する成人は、この地に集まってくるのですよ」
今まで神様がそれに近い能力を示した事があるけど、まさか司祭でもそれが可能になるとはちょっと驚きだ。
「もちろん命に関わる事であれば、無理はしませんよ。だから遠くまで動けない老人や病人、妊婦などはこの招集を免除されています。しかし健康な成人であれば、この招集がかかる事を前提にして常に準備を怠らないのが、ガイザーの信徒の心がけなのです」
う~む。戦士系の神の信徒だったら、戦いになったときに備えて常に武器や兵糧の準備している事はよくある事だが、この神の信徒もそれに近いものらしい。
そんな指摘をしたら、一緒にするなとビネースは怒りそうだけど。
「ただしこの魔法は大いなる特権です。寺院が攻撃された場合のような緊急時か、年に一度の大聖日のお祭り、あとは今の私のように旅をしている『心の王』が信徒に礼拝儀式を行う時以外での使用は禁じられています」
なるほど。ちりぢりになっている信徒に対してどうやって連絡をとっているのかと思ったら、こういうやり方があるわけか。
「これから二日間、私はここから動かず、信徒が集まるのを待って、そこでガイザーを礼拝する儀式を行うのです。それはこの地における我が神への崇拝の残り火であり、将来再びこの寺院が再建され、人々を平和に導く礎となるはずです」
「このような場所は他にもあるのですか?」
「ええ……太古の昔、ガイザー神が偉大な帝国を築き、人々を平和に導いていた『黄金の時代』から信仰を守り通している敬虔な信徒は少数ながら各地にいますが、悲しい事に彼らの多くは今でも迫害を受けていたり、そこまで行かずとも周囲から奇異の目をむけられていたりするのです」
正直に言えば、ビネースを見るとそうなるのも仕方ないとは思うな。
この世界では誰もが『自分達こそ正しく、異なる立場の者達は誤っている』と考えているけど、平和主義者を掲げる人間でも同じなんだな。
かつて男だった頃には『世界平和のために圧倒的戦闘力を振るって戦う』なんて話に出くわす事はフィクションならしばしばあったけど、それに近い思考の持ち主が目の前に現れるとかなりヤバい。
「しかし我らはガイザーの望みし武器の無い平和な世界を諦めません。たとえ信徒が一人しか残っていなくとも世界に脈々と我らの信念が受け継がれている事を示さねばなりません……いえ。我らが神の高邁な精神を知らず、武器に怯えて暮らしている者達全てにその教えを広めねばならないのです」
確かにその心意気は高邁で高潔で、遠大な理想を追求しているのだから、迫害を受けつつ神代の昔から信仰を受け継いできたのは立派だとは思う。
しかし元の世界でもそれで周囲から浮いている少数派が迫害を受けるのは、珍しくもなかったわけで、そんな信仰こそが摩擦と軋轢を生んで面倒臭い事態を招いていると考えると素直に称賛も出来ないな。
「そういうわけなので、私は信徒が集まるまでこの地を動く事は出来ません。動くと魔法が破れて信徒達の招集も無くなりますから。従ってアルタシャが先を急ぐ旅ならば、ここでお別れとなります」
「いえ。お構いなく」
実際に先を急ぐ旅でも無いからな。
もちろん聖女教会の追っ手が執念深く追って来ているだろうけど、たぶんどこに行っても付きまとわれる必然のようなものだ。
「ありがとうございます。それでは勝手な頼みですが、ここに訪れた信徒達に怪我人や病人がいれば手当をお願い出来ますか?」
「ええ……それは構いませんよ」
ここに集まるのがどれぐらいになるかは分からないが、普通に考えてせいぜい数十人というところだろう。
その程度なら全員、重傷者でもオレなら回復させる事は雑作もないさ。
そうこうしていると、廃虚の入り口のあたりには既に人が何人か姿を見せているようだ。
まあこの近隣に住んでいる信徒であれば、招集がかかればすぐにやってくるのは当たり前だろう。
「それでは出迎えに行きましょう」
そんなわけで特にやることもないオレはビネースと共にやってきた信徒達を出迎えたのだが、そこに起きていた事はやっぱり思わぬ出来事だったのだ。
それが宙に登ると、いきなり破裂して魔力は周囲へと四散していった。
特に有害なものではないようだが、どんな効果があるのだろうか。
「ビネースさん。あなたは一体、何をされているのですか?」
「私はいま信徒の皆さんに招集をかけているのですよ」
「え? どういうことですか?」
魔法の『狼煙』のように周囲から注目されるようなものは存在するけど、ビネースが使ったのは明らかにそういう類のものではない。
「もちろん言葉をかけることが出来るワケではありません。私が今使ったのは『崇拝者招集』という我が教団に伝わる魔法です」
「それで信徒の皆さんをここに集めるのですか」
「これを使うと歩いて二日以内の場所にいるガイザーを崇拝する成人は、この地に集まってくるのですよ」
今まで神様がそれに近い能力を示した事があるけど、まさか司祭でもそれが可能になるとはちょっと驚きだ。
「もちろん命に関わる事であれば、無理はしませんよ。だから遠くまで動けない老人や病人、妊婦などはこの招集を免除されています。しかし健康な成人であれば、この招集がかかる事を前提にして常に準備を怠らないのが、ガイザーの信徒の心がけなのです」
う~む。戦士系の神の信徒だったら、戦いになったときに備えて常に武器や兵糧の準備している事はよくある事だが、この神の信徒もそれに近いものらしい。
そんな指摘をしたら、一緒にするなとビネースは怒りそうだけど。
「ただしこの魔法は大いなる特権です。寺院が攻撃された場合のような緊急時か、年に一度の大聖日のお祭り、あとは今の私のように旅をしている『心の王』が信徒に礼拝儀式を行う時以外での使用は禁じられています」
なるほど。ちりぢりになっている信徒に対してどうやって連絡をとっているのかと思ったら、こういうやり方があるわけか。
「これから二日間、私はここから動かず、信徒が集まるのを待って、そこでガイザーを礼拝する儀式を行うのです。それはこの地における我が神への崇拝の残り火であり、将来再びこの寺院が再建され、人々を平和に導く礎となるはずです」
「このような場所は他にもあるのですか?」
「ええ……太古の昔、ガイザー神が偉大な帝国を築き、人々を平和に導いていた『黄金の時代』から信仰を守り通している敬虔な信徒は少数ながら各地にいますが、悲しい事に彼らの多くは今でも迫害を受けていたり、そこまで行かずとも周囲から奇異の目をむけられていたりするのです」
正直に言えば、ビネースを見るとそうなるのも仕方ないとは思うな。
この世界では誰もが『自分達こそ正しく、異なる立場の者達は誤っている』と考えているけど、平和主義者を掲げる人間でも同じなんだな。
かつて男だった頃には『世界平和のために圧倒的戦闘力を振るって戦う』なんて話に出くわす事はフィクションならしばしばあったけど、それに近い思考の持ち主が目の前に現れるとかなりヤバい。
「しかし我らはガイザーの望みし武器の無い平和な世界を諦めません。たとえ信徒が一人しか残っていなくとも世界に脈々と我らの信念が受け継がれている事を示さねばなりません……いえ。我らが神の高邁な精神を知らず、武器に怯えて暮らしている者達全てにその教えを広めねばならないのです」
確かにその心意気は高邁で高潔で、遠大な理想を追求しているのだから、迫害を受けつつ神代の昔から信仰を受け継いできたのは立派だとは思う。
しかし元の世界でもそれで周囲から浮いている少数派が迫害を受けるのは、珍しくもなかったわけで、そんな信仰こそが摩擦と軋轢を生んで面倒臭い事態を招いていると考えると素直に称賛も出来ないな。
「そういうわけなので、私は信徒が集まるまでこの地を動く事は出来ません。動くと魔法が破れて信徒達の招集も無くなりますから。従ってアルタシャが先を急ぐ旅ならば、ここでお別れとなります」
「いえ。お構いなく」
実際に先を急ぐ旅でも無いからな。
もちろん聖女教会の追っ手が執念深く追って来ているだろうけど、たぶんどこに行っても付きまとわれる必然のようなものだ。
「ありがとうございます。それでは勝手な頼みですが、ここに訪れた信徒達に怪我人や病人がいれば手当をお願い出来ますか?」
「ええ……それは構いませんよ」
ここに集まるのがどれぐらいになるかは分からないが、普通に考えてせいぜい数十人というところだろう。
その程度なら全員、重傷者でもオレなら回復させる事は雑作もないさ。
そうこうしていると、廃虚の入り口のあたりには既に人が何人か姿を見せているようだ。
まあこの近隣に住んでいる信徒であれば、招集がかかればすぐにやってくるのは当たり前だろう。
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