異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第14章 拳の王

第482話 本人の思いとは裏腹に

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 オレは頭を抱えたい思いで、顔を引きつらせつつもどうにかマクラマンの話に付き合う事となっていた。

「それと殆どの場合、かの『アルタシャ』はあなたと同世代な若い娘の姿をとっているそうですが、本来の姿は二十代前半の並外れて美しい乙女らしいですな」

 うう。それはオレがあの女神の化身になったときの姿のはずだけど、なんでそれが本来の姿という事になっているんだ。

「マクラマンさんの話からすると『彼女』は多くの姿を取るそうですが、なぜその姿が本来の姿だと言えるのですか?」
「実は彼女は西方にあるフェルスター湖周辺で、邪神の復活を阻止したそうですが、そのときにその姿で多くの人の前に現れて、邪神の撃退を宣言したそうですな。それが本当ならば最大の力を発した時が本来の姿と考えるのが自然でしょう」

 それはウルハンガといろいろやり合ったときか――と言っても戦ったのではなく、いろいろと話し合った末に引きこもってもらったものなんだけどな。
 しかし『邪神』か。
 この世界ではほぼあらゆるものに守護神が存在しているので『強盗』や『無法者』などロクでもない存在の守護神も存在する。
 だがそれらはいずれも信者はごく少数で、神としては『迷惑者』程度の存在でしかない。

 神造者であるテセルによれば、神とは『崇拝の結果』であって『原因』ではなく、崇拝があるところに神が生まれるのだった。
 だから『強盗』の守護神などが存在しても、それが大きな崇拝を受ける事は無い。
 逆を言えばその神が何かの間違いで多くの農民から崇拝されるようになれば、それは『農民の神』へと変化するし、もちろんその逆の場合も存在する。
 そんなわけで『邪神』と言われるのは、殆どの場合は宗教観の異なる他の信仰をそう蔑んでいるものなのだ。
 元の世界のフィクションであったように『長らく封じされていたが、復活すれば一気に世界を席巻する力を有したとんでもない邪神』など、この世界では存在し得ない。
 だけどそもそも『邪神』など実際には存在しない元の世界でも、その手の話が幾らでもあった事を考えれば、やっぱり『世界の脅威となる邪神の復活』を信じる人間は多々存在するのだろうなあ。

 そしてウルハンガの撃退を宣言した時には、とにかく争いを抑えるためにその場にいた勢力全部にとってひとまず納得するホラを吹いたのだった。
 しかしよくよく考えるとあのときは確かにウルハンガの力を得て成長した姿を皆にさらしていたな。
 よりにもよってその『邪神』の力を受けた時の外見を『本来の姿』と勘違いされるとは、もう誰に話をしても『自分でも何を言っているのか分からない』というややこしい状態だ。

「話によると、その姿を見せる前には年端もいかぬ幼女の姿をとっていたそうです。本当に変幻自在というところですな」

 それはたまたま魔法の実験に失敗して、この身が若返っていただけなんです。
 本当にオレがそんなに都合よく姿を変える事が出来たのなら、こんな苦労はしていないよ。
 しかしこんな話が広まっているとなると、オレが本物だと言ってもそれを証明するのは一苦労だろうなあ。
 実際にオレの事を知っている知り合いは大勢いるけど、そんな相手をそうそう呼び出して連れてくるわけにもいかないからな。
 大陸を股にかけたストーカー、ミツリーンだったら呼ばなくともやってくるかもしれないけど、あいつの顔は見たくも無い。
 そんなわけで下手をすると紛れも無い当人なのに『変身も出来ないアルタシャを騙る偽者』と言う事にされてしまいかねないぞ。

「これで『アルタシャ』を名乗る者が、どうして当局の手で取り調べを受けねばならないのか、お分かりでしょうか?」
「ええ……イヤと言うほど思い知りました」

 オレは不承不承ながら同意した。
 もともと自分が本物などと言い出す気は無かったし、称賛される事にも興味は無いけど、もう絶対に『本物のアルタシャ』などと名乗りを上げるのは辞めにしよう。

「それでは改めてお願いしますが、愚僧と共に来ていただけますか? 先ほども申し上げたようにこれはあなた自身の身の安全のためでもあるのですよ」
「ありがたい申し出ではありますけど、こちらの返答も変わりません」
「そうですか。仕方ありませんな。ならばあなたの気が変わるのを待ちましょう」

 マクラマンは特に落胆した様子はない。ひょっとすると先ほどの宣言通り、オレと同行出来るのが嬉しいのかも知れないが、そこは考えないでおこう。
 面倒な道連れが出来るのは、とっくに慣れっこだからな。
 それにオレ自身の話題についつい釣られてしまったけど、ここに来た本題はもっと別のところにある。

「ところで改めてお願いですけど――」
「先ほどのビネースという司祭の事ですな。ご心配なく。愚僧は意味も無く一騎打ちなど受けはいたしませんし、相手がいかなる神の信徒だろうと武器を持たぬ弱き者を守る覚悟に変わりはありません」
「そう言って下さると安心出来ます。では失礼します」

 ちょっとどころでなく脇道にそれていたが、ひとまず安堵してオレはマクラマンのところを後にする。
 そしてすっかり日の沈んだ中で、オレの前に月光を受けて立っている姿が目に入った。
 それは剣をビネースにへし折られて、それからいろいろ悩んでいたらしいミーリアだった。
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