異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第14章 拳の王

第506話 そして今度は役人といろいろやり取りが

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「う……お前は……」

 間近でオレの容姿を目の当たりにした役人の方は圧倒された様子で、少しばかりひるむ。
 そして近くにいる部下達も少しばかり心配げに問いかける。

「大丈夫ですか? このものは本当に偽者なのでしょうか?」

 オレを偽者と断言する当人が『賄賂を渡されたから』とも言えないので、周囲の面々も困惑している様子が見られる。
 そのために役人は苛立たしげに叫びを挙げる。

「ええい! このようないかがわしい輩が容貌だけが取り柄なのは今まで何度も見かけて来た事だろうが!」
「しかし……これまで取り締まってきた相手とは、その……何といいますか……格が違うのではありませんか?」

 自分で言うのは気恥ずかしいが、今のオレは『神々しいまでの美少女』のはずなので役人達にも『ひょっとしたら』という気分が芽生えているようだ。
 少なくとも『アルタシャ』を騙って、詐欺を働いてきた連中とでは容姿にしろ、魔力にしろ桁違いだという自負はある。
 それでいい事があった覚えは殆ど無いけどな。

「う……うるさい! こやつは昨晩、この私に対し――」

 ここでさすがの役人も言葉に詰まる。
 そりゃまあこれだけ大勢の前で『賄賂を受け取った』とは言えないものな。
 しかし言葉に詰まった事で、部下達もちょっとばかり疑念の目を向ける。
 だがここで引き下がったらこの役人もメンツが立たない事はオレにも分かる。

「とにかく! 今はお前を連行し、領主様の元で取り調べる!」
「待ってください。あなたが真っ当な役人で法にのっとって、わたしの身を拘束しようとしているのはわかります」

 ここは一応、相手の顔も立てておこう。
 無闇に刺激して激発でもされたら、またややこしくなるだろうからな。

「そうだ! ならば――」
「それでは領主様の前でありのままの話をしてよいのですか?」
「う……それは……」

 さすがにこの役人もオレから賄賂を受け取った事を、領主の前で明かされたら困るだろうからな。
 この役人がどういう神様を崇めているのかは知らないが、そんな事になって『神託』でもされたら言い逃れが出来まい。
 もちろんオレの方は領主の前に引き立てられるつもりはないので、そうなる前に魔法でどうにか逃げ出すつもりだけどな。
 今はビネース達が罪に問われなければいいので、うまくいかなければいったんこの役人に連行される最中に魔法でどうにかしよう。
 それでもどうしようも無くなったら最悪、またイロールの化身になるという手もある――可能な限り避けたい『最後の手段』だけどな。

 しかしここ数ヶ月の経験でオレも随分とスレてきたものだ。
 男だった時のオレだったら、役人に賄賂を渡したり、更にそれを逆手にとったりするような事は考えもしなかったろう。
 名声だの崇拝だのを集めていながら、オレ自身はむしろ俗世への関わりが深まっているのだから、何とも皮肉なものだな。
 まあそれを言ったら以前から『鎖をはめられて奴隷扱いされつつ聖女として崇敬される』とか、とてつもなく倒錯している状況に追い込まれた事は何度もあるから、今さらと言ってしまえばそれまでだけど。

「おのれ……」

 オレが『調和』をかけて暴力的な行動にも出られないようにしているから、力尽くで連れて行く事も出来ない状態で、進むに進めず、引くに引けなくて本人もお困りのようだ。
 あれだけ自信満々に大勢の前でオレを偽者と断言しておいて、そこで何もせずに引き下がったら自分の立場がないという事もあるのだろう。
 ただビネース達、ガイザー信徒を解散させるためだけにやってきたはずなのに、こんな事になってさぞかし混乱しているだろう。
 この点についてはちょっとばかりこの役人にも同情している。
 まあここはオレの方から助け船を出すか。

「あなたが法を守ろうとしているのは分かりますが、ここは通達の場所からは少し離れているはずですよ」

 以前にマクラマンとビネースでちょっとした摩擦になっていたが、このあたりの境界線の線引きが微妙なので『アルタシャを名乗る者を連行して取り調べる』という通達の範囲も曖昧だったはず。
 今はそれを盾にして、この役人を引き下がらせるしかないか。

「そうです。確かにここはその通達の範囲外です!」

 ここでビネースがオレに同意するが、これはかえって相手をムキにさせかねないのではと一瞬ヒヤッとなる。

「なんだと――」
「そういえば……かの者の言うとおりだったかもしれません」

 ここで空気を読んだらしい部下の方が合いの手を入れてくれる。
 たぶんこの部下の人はオレの事を考えてくれたのではなく、この場で争いになったら自分達の身が危険にさらされかねないので、とにかく穏便に済ませたいのだろう。
 何しろビネースはもちろんマクラマンやミーリア、あとは『地獄の轟き』の連中もいるからな。
 役人達は十人ぐらいだから、本気でぶつかりあったらたまったものじゃないはずだ。
 ひょっとするとこの役人が賄賂を受け取った事も察しているかもしれないが、逆を言えばそんな上役のために自分が傷つくのは真っ平という意識もあるのだろうな。
 そんなわけで今が潮時かな。

「わたしはここで失礼させてもらいます」

 ビネース達がオレをかばう形になって、その間に逃げ出すような事になれば、役人は『疑わしい相手を逃がすのを手伝った』と彼らを罪に問いかねない。
 だけど今の状態で役人を振り切って逃げ出せば、罪に問われるとしてもオレ一人で済むはずだ。
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