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第15章 とある御家騒動の話
第542話 湯船に浸かりつつ考えた事は
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それからしばらくデレンダからは、風呂に入りつつこれまでの旅の事についてあれこれと聞かれる事となった。
もちろんこれまでの出来事について、全てありのままに話すわけにもいかないけど、下手に脚色するととんでもない伝説が作られてしまいかねないので、適当にぼかして話しをする事にした。
しかしそれでもデレンダは感嘆した様子で頷く。
「さすがはアルタシャさんですね。僅か半年の間に大陸の半分にその足跡を刻み込んでいるとは……まさに『神のごとき業績』というものです」
オレに言わせればせいぜいあちこちを『走破』したぐらいだけど、どうもデレンダには『制覇』したと勘違いされているらしい。
まあこの世界の基準だと数ヶ月で大陸の半分を駆け回るだけでも、デレンダにとってはとんでもない偉業に思えるのかもしれないが。
「アルタシャさんであれば異邦の蛮人や邪神、いかがわしい精霊共をお一人で相手にしても一歩も引かないのですね」
「そこまでは大げさに過ぎますよ」
「いえいえ。それはご謙遜というものです」
いつもの事だけど、オレの『業績』を巡ってあれこれ話を、すれ違いが大きすぎて徒労にしかならないのだなあ。
ここでオレは先ほどからちょっとばかり引っかかっていた事をデレンダに問う。
「そういえばマニマトさんはどうされましたか」
「はて? いったい何の事でしょうか?」
デレンダはあからさまにすっとぼける。
少しばかりオレに見とれていた婚約者に対して、かなり強烈にお灸をすえたらしく、その件については一切触れる気がないようだ。
そしてデレンダはこちらに身を寄せつつ問いかけてくる。
「ところでやはりアルタシャさんは明日にはここを立ち去ってしまわれるのですか?」
「ええ。先ほどデレンダに伝えた通りですよ」
オレの場合、友人は大勢いるつもりだが、恨みを抱いているであろう相手もまたうなるほどいるからな。
それ以外でも聖女教会の追っ手もいるし、ミリンサを追っている連中もいるのだから、一箇所に留まるワケにはいかないのだ。
さすがに町の中で有力者であるデレンダの実家にいきなり攻撃をかけてくるとは思わないけど、こちらが出てくるのを待って既に包囲されていたりする事も考えられる。
そう考えると出て行く時も、可能な限り目立たずにこっそりと旅立つしかないけど、これも以前にデレンダと別れた時と同じだなあ。
「そうですか……残念ですが仕方ありません。また是非とも尋ねて来て下さい。アルタシャさんならばいつでも大歓迎ですから」
婚約者がいる場合、普通だったら『結婚式には出て下さい』というのがお約束のパターンなんだろうけど、デレンダは可能な限りオレと婚約者のマニマトを対面させたく無いらしいのでそこは避けているようだ。
幾ら何でもそこまで神経質になる事では無い気もするのだが、それもオレとデレンダの感覚の違いなのだろうな。
オレの場合、元の世界では美形などテレビでも本でもネットでもあふれかえっていたけど、こっちではそういう相手が直に目に触れる事が滅多にないので、それだけデレンダには警戒されてしまっているのかもしれない。
「とにかく今はゆっくりと疲れを癒やして下さいね」
「ええ。そうさせてもらいます」
取りあえず湯船に浸かってゆっくりしつつ、今の状況についてオレは考えることにした。
もしもミリンサがドズ・カム領の後継者選定に関わるとして、何がありうるだろうか。
先ほど聞いた言葉に嘘が無いとしたら、女性は領主にはなれないし、また後継者候補はすでに複数名乗り出ていて、彼女が後継者になる可能性はない。
また実家が後継者争いを左右する有力な勢力でもないらしいので『人質にするなど、実家を脅すため』ということもないようだ。
ひょっとすると後継者の誰かと彼女が恋仲だとか、実は隠し子だとか、個人的な人間関係が関わっているのだろうか?
しかしドズ・カムの町を何年も前に離れていたという言葉を信じるなら、そういう話でもないらしい。
そうすると『後継者は神託によると数年前に街を出ているミリンサという娘が決める事になった』とか、そんなとんでもない事があるのだろうか。
だけどいきなりそんな使命を課せられたら、普通は平静ではいられまい。
ましてや大勢の人間に追われる身でありながら、平常心を維持できるとは思えない――オレ自身にとってはいつものことなので、慣れてしまったけどな。
だがミリンサの様子からすると、今の状況は十分に予想がつくものだったらしい。
そうすると彼女にとって今の展開はいきなり神託が下ったとか、そういう突拍子もないものでは無いという事になる。
う~ん。残念ながら情報が少なすぎて、結論を出すのは早すぎる。
以前に遊牧民の族長選びに関わった時も、はた目にはワケの分からない話が情報を深めると無関係な人間には実に下らない、だが当事者にとっては極めて深刻な状況だったことがある。
そんな感じでオレにとってはとんでもない下らない事で、大勢の人間が目の色を変えるような展開なのかもしれないな。
もっとも皇帝陛下からのプロポーズを断っておいて、地方領主の後継者争いに危険を承知でクビを突っ込むオレ自身も、部外者には何を考えてこんな行動をしているのかまるで理解不能に見えるだろうから人の事を言えた義理ではないのだがな。
もちろんこれまでの出来事について、全てありのままに話すわけにもいかないけど、下手に脚色するととんでもない伝説が作られてしまいかねないので、適当にぼかして話しをする事にした。
しかしそれでもデレンダは感嘆した様子で頷く。
「さすがはアルタシャさんですね。僅か半年の間に大陸の半分にその足跡を刻み込んでいるとは……まさに『神のごとき業績』というものです」
オレに言わせればせいぜいあちこちを『走破』したぐらいだけど、どうもデレンダには『制覇』したと勘違いされているらしい。
まあこの世界の基準だと数ヶ月で大陸の半分を駆け回るだけでも、デレンダにとってはとんでもない偉業に思えるのかもしれないが。
「アルタシャさんであれば異邦の蛮人や邪神、いかがわしい精霊共をお一人で相手にしても一歩も引かないのですね」
「そこまでは大げさに過ぎますよ」
「いえいえ。それはご謙遜というものです」
いつもの事だけど、オレの『業績』を巡ってあれこれ話を、すれ違いが大きすぎて徒労にしかならないのだなあ。
ここでオレは先ほどからちょっとばかり引っかかっていた事をデレンダに問う。
「そういえばマニマトさんはどうされましたか」
「はて? いったい何の事でしょうか?」
デレンダはあからさまにすっとぼける。
少しばかりオレに見とれていた婚約者に対して、かなり強烈にお灸をすえたらしく、その件については一切触れる気がないようだ。
そしてデレンダはこちらに身を寄せつつ問いかけてくる。
「ところでやはりアルタシャさんは明日にはここを立ち去ってしまわれるのですか?」
「ええ。先ほどデレンダに伝えた通りですよ」
オレの場合、友人は大勢いるつもりだが、恨みを抱いているであろう相手もまたうなるほどいるからな。
それ以外でも聖女教会の追っ手もいるし、ミリンサを追っている連中もいるのだから、一箇所に留まるワケにはいかないのだ。
さすがに町の中で有力者であるデレンダの実家にいきなり攻撃をかけてくるとは思わないけど、こちらが出てくるのを待って既に包囲されていたりする事も考えられる。
そう考えると出て行く時も、可能な限り目立たずにこっそりと旅立つしかないけど、これも以前にデレンダと別れた時と同じだなあ。
「そうですか……残念ですが仕方ありません。また是非とも尋ねて来て下さい。アルタシャさんならばいつでも大歓迎ですから」
婚約者がいる場合、普通だったら『結婚式には出て下さい』というのがお約束のパターンなんだろうけど、デレンダは可能な限りオレと婚約者のマニマトを対面させたく無いらしいのでそこは避けているようだ。
幾ら何でもそこまで神経質になる事では無い気もするのだが、それもオレとデレンダの感覚の違いなのだろうな。
オレの場合、元の世界では美形などテレビでも本でもネットでもあふれかえっていたけど、こっちではそういう相手が直に目に触れる事が滅多にないので、それだけデレンダには警戒されてしまっているのかもしれない。
「とにかく今はゆっくりと疲れを癒やして下さいね」
「ええ。そうさせてもらいます」
取りあえず湯船に浸かってゆっくりしつつ、今の状況についてオレは考えることにした。
もしもミリンサがドズ・カム領の後継者選定に関わるとして、何がありうるだろうか。
先ほど聞いた言葉に嘘が無いとしたら、女性は領主にはなれないし、また後継者候補はすでに複数名乗り出ていて、彼女が後継者になる可能性はない。
また実家が後継者争いを左右する有力な勢力でもないらしいので『人質にするなど、実家を脅すため』ということもないようだ。
ひょっとすると後継者の誰かと彼女が恋仲だとか、実は隠し子だとか、個人的な人間関係が関わっているのだろうか?
しかしドズ・カムの町を何年も前に離れていたという言葉を信じるなら、そういう話でもないらしい。
そうすると『後継者は神託によると数年前に街を出ているミリンサという娘が決める事になった』とか、そんなとんでもない事があるのだろうか。
だけどいきなりそんな使命を課せられたら、普通は平静ではいられまい。
ましてや大勢の人間に追われる身でありながら、平常心を維持できるとは思えない――オレ自身にとってはいつものことなので、慣れてしまったけどな。
だがミリンサの様子からすると、今の状況は十分に予想がつくものだったらしい。
そうすると彼女にとって今の展開はいきなり神託が下ったとか、そういう突拍子もないものでは無いという事になる。
う~ん。残念ながら情報が少なすぎて、結論を出すのは早すぎる。
以前に遊牧民の族長選びに関わった時も、はた目にはワケの分からない話が情報を深めると無関係な人間には実に下らない、だが当事者にとっては極めて深刻な状況だったことがある。
そんな感じでオレにとってはとんでもない下らない事で、大勢の人間が目の色を変えるような展開なのかもしれないな。
もっとも皇帝陛下からのプロポーズを断っておいて、地方領主の後継者争いに危険を承知でクビを突っ込むオレ自身も、部外者には何を考えてこんな行動をしているのかまるで理解不能に見えるだろうから人の事を言えた義理ではないのだがな。
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