異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
547 / 1,316
第15章 とある御家騒動の話

第547話 思わぬ襲撃を受けて

しおりを挟む
 ミリンサと追っ手との関わりが不明なまま、オレ達二人は険しい山の中を進んでいた。
 オレの『藪渡り』ブッシュ・パッセージの魔法で藪や茂み、小さな枝は避けていってくれるので移動そのものは楽に出来るのだが、それでも急な斜面を上り下りしたりするのは結構、手間だ。

「……」

 何度も繰り返し『疲労回復』スタミナをかけてはいるが、さすがに疲れているらしくミリンサは口を開くのも億劫と言わんばかりに無言で歩いている。
 たださすがに追っ手もこんな山の中を通るとは思っていなかったらしく、今のところは姿を見せる気配は無い。
 もちろん追っ手以外にも何が潜んでいるか分からないので、警戒を怠るわけにはいかないが少なくとも人間に追い回されるよりはずっと気が楽だ。
 このまま順調に進むことができればいいのだが、ミリンサの秘密がわからないままというのも困りものだな。
 そんなことを考えていると日が暮れてくる。
 いまは野宿をするしかないようだな。
 夜露をしのげそうな木陰を探して、とりあえず歩みを止める。
 我ながら随分とワイルドな生活が板についたものだ。

「今晩はここで休みましょう」
「ああ……それはありがたい」

  見たところミリンサの疲れはかなり深刻な様子だが、よく耐えて文句を言わないでくれるだけでもありがたい。

「しかしあなたは後宮で皇帝陛下も魅了する貴婦人だったそうだが、それでいてこんな野外でも自由に振舞えるとは、出来ないことは何もないと思えるほどですね」
「それは買いかぶりと言うものです。本当に出来ないことだらけで、いつも自分の力不足を痛感してばかりなのですけど」

 そうだよ。もうここ数ヶ月、何度も死にかけてどうにか切り抜けてきた事もあれば、根本的な問題は何も解決出来ず、難題を先送りして何とか凌ぐだけだった事がしょっちゅうだった。
 むしろ自分がいかに無力なのか、思い知らされる事ばっかりだ。そんなオレが女神だの何だの称賛されるのはむしろ気恥ずかしいだけだ。

「あなたは本当に自分自身には厳しいのだな……どこまでいっても私ごときとは比較にならない」

  やっぱりオレとミリンサでは感覚がまるで違うらしい。
 こちらが全てを語っていないからこうなるのだが、たぶんそれはいまミリンサについてオレが抱いている不可思議な感覚にも近いかもしれない。

「それではここで待っていて下さい。水を探してきます」

 オレがひとまず周囲を探ろうとした時、視界の片隅に蠢くものがあった。
 それも普通の獣の類いでは無い。
 霊体を感知する魔法『霊視』ソウルサイトを常時かけているオレの目には、霊体と思しき存在がどんどんと迫ってくるのが写っていた。
 ただ野山を動き回っている普通の精霊では無く、何らかの意図を持ってこっちに向かっているのは明らかだ。

「いったいどうしたのです?」

 ミリンサも妙な気配を察したのか、それともオレの表情に気付いたのか、不安げに声をかけてくる。

「まさか? 何かが――」

 ミリンサの表情がこわばった瞬間、その霊体は一気にこちらに向かってくる。
 それと同時に相手は顕現し、通常の視覚でも見えるようになる。
 ぱっと見た限りでは、鏡のように周囲の景色を反射している複雑な多角形が宙に浮いて、絶えず変形を続けつつ飛んでくるような外見だ。
 もちろんわざわざこっちの世界に出てきたと言う事は、相手がただの野良精霊では無い。
 少なくともオレは並の精霊からは、相当強大な存在に見えているはずだから

「わたしから離れないで!」

 オレは警告の声を挙げるとひとまず『霊体遮断』スピリット・スクリーンの魔法を展開する。
 そうすると霊体は見えない壁があるかのように動きを止める。
 近くで見るとその多面体の一つ一つにミリンサの顔が写っている。
 どういうことだ? いや。恐らくはこの霊体のターゲットがミリンサということなのだろう。

「これは?!」
「大丈夫。心配は無用です」

 オレが『追放』バニッシュメントの魔法を放つと、相手の多面体は一気に歪み、それによって写っていたミリンサの顔もねじれていく。
 正直に言えばかなりシュールな光景だ。
 しかしそれも僅かな時間だ。相手は見る見る小さくなっていく。
 いや。実際にはこの霊体がこっちの世界に出ている部分が、オレの『追放』で強制的に元いたところに戻されているのだ。
 そして霊体が完全に見えなくなったところで、オレは緊張に身を固くしているミリンサに振り向く。

「ほうら。大丈夫だと言ったでしょう」
「あんなにあっさりと……」

 少なくともオレを襲うのであれば、この程度の霊体では問題にならないよ。
 魔法一つで簡単に追い払えるああいう『この世のものならぬ存在』の方が、人間を相手にするよりも遥かに楽なのだ。
 ただ相手がミリンサを狙っていたと言う事は、まず間違い無く追っ手が差し向けて来たのだろう。
 そのような霊体を扱うシャーマンを雇ったのか、それとも何らかの神の眷族でそれを扱う信徒がいるのか。
 どちらにせよあの霊体が元いたところに戻ったという事は、ミリンサがここにいることが送り出した相手に分かってしまったと考えねばならない。
 やっぱり人間の方がオレにとってはよっぽど恐ろしい相手だと、毎度毎度思い知らされてばかりだよ。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...