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第15章 とある御家騒動の話
第547話 思わぬ襲撃を受けて
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ミリンサと追っ手との関わりが不明なまま、オレ達二人は険しい山の中を進んでいた。
オレの『藪渡り』の魔法で藪や茂み、小さな枝は避けていってくれるので移動そのものは楽に出来るのだが、それでも急な斜面を上り下りしたりするのは結構、手間だ。
「……」
何度も繰り返し『疲労回復』をかけてはいるが、さすがに疲れているらしくミリンサは口を開くのも億劫と言わんばかりに無言で歩いている。
たださすがに追っ手もこんな山の中を通るとは思っていなかったらしく、今のところは姿を見せる気配は無い。
もちろん追っ手以外にも何が潜んでいるか分からないので、警戒を怠るわけにはいかないが少なくとも人間に追い回されるよりはずっと気が楽だ。
このまま順調に進むことができればいいのだが、ミリンサの秘密がわからないままというのも困りものだな。
そんなことを考えていると日が暮れてくる。
いまは野宿をするしかないようだな。
夜露をしのげそうな木陰を探して、とりあえず歩みを止める。
我ながら随分とワイルドな生活が板についたものだ。
「今晩はここで休みましょう」
「ああ……それはありがたい」
見たところミリンサの疲れはかなり深刻な様子だが、よく耐えて文句を言わないでくれるだけでもありがたい。
「しかしあなたは後宮で皇帝陛下も魅了する貴婦人だったそうだが、それでいてこんな野外でも自由に振舞えるとは、出来ないことは何もないと思えるほどですね」
「それは買いかぶりと言うものです。本当に出来ないことだらけで、いつも自分の力不足を痛感してばかりなのですけど」
そうだよ。もうここ数ヶ月、何度も死にかけてどうにか切り抜けてきた事もあれば、根本的な問題は何も解決出来ず、難題を先送りして何とか凌ぐだけだった事がしょっちゅうだった。
むしろ自分がいかに無力なのか、思い知らされる事ばっかりだ。そんなオレが女神だの何だの称賛されるのはむしろ気恥ずかしいだけだ。
「あなたは本当に自分自身には厳しいのだな……どこまでいっても私ごときとは比較にならない」
やっぱりオレとミリンサでは感覚がまるで違うらしい。
こちらが全てを語っていないからこうなるのだが、たぶんそれはいまミリンサについてオレが抱いている不可思議な感覚にも近いかもしれない。
「それではここで待っていて下さい。水を探してきます」
オレがひとまず周囲を探ろうとした時、視界の片隅に蠢くものがあった。
それも普通の獣の類いでは無い。
霊体を感知する魔法『霊視』を常時かけているオレの目には、霊体と思しき存在がどんどんと迫ってくるのが写っていた。
ただ野山を動き回っている普通の精霊では無く、何らかの意図を持ってこっちに向かっているのは明らかだ。
「いったいどうしたのです?」
ミリンサも妙な気配を察したのか、それともオレの表情に気付いたのか、不安げに声をかけてくる。
「まさか? 何かが――」
ミリンサの表情がこわばった瞬間、その霊体は一気にこちらに向かってくる。
それと同時に相手は顕現し、通常の視覚でも見えるようになる。
ぱっと見た限りでは、鏡のように周囲の景色を反射している複雑な多角形が宙に浮いて、絶えず変形を続けつつ飛んでくるような外見だ。
もちろんわざわざこっちの世界に出てきたと言う事は、相手がただの野良精霊では無い。
少なくともオレは並の精霊からは、相当強大な存在に見えているはずだから
「わたしから離れないで!」
オレは警告の声を挙げるとひとまず『霊体遮断』の魔法を展開する。
そうすると霊体は見えない壁があるかのように動きを止める。
近くで見るとその多面体の一つ一つにミリンサの顔が写っている。
どういうことだ? いや。恐らくはこの霊体のターゲットがミリンサということなのだろう。
「これは?!」
「大丈夫。心配は無用です」
オレが『追放』の魔法を放つと、相手の多面体は一気に歪み、それによって写っていたミリンサの顔もねじれていく。
正直に言えばかなりシュールな光景だ。
しかしそれも僅かな時間だ。相手は見る見る小さくなっていく。
いや。実際にはこの霊体がこっちの世界に出ている部分が、オレの『追放』で強制的に元いたところに戻されているのだ。
そして霊体が完全に見えなくなったところで、オレは緊張に身を固くしているミリンサに振り向く。
「ほうら。大丈夫だと言ったでしょう」
「あんなにあっさりと……」
少なくともオレを襲うのであれば、この程度の霊体では問題にならないよ。
魔法一つで簡単に追い払えるああいう『この世のものならぬ存在』の方が、人間を相手にするよりも遥かに楽なのだ。
ただ相手がミリンサを狙っていたと言う事は、まず間違い無く追っ手が差し向けて来たのだろう。
そのような霊体を扱うシャーマンを雇ったのか、それとも何らかの神の眷族でそれを扱う信徒がいるのか。
どちらにせよあの霊体が元いたところに戻ったという事は、ミリンサがここにいることが送り出した相手に分かってしまったと考えねばならない。
やっぱり人間の方がオレにとってはよっぽど恐ろしい相手だと、毎度毎度思い知らされてばかりだよ。
オレの『藪渡り』の魔法で藪や茂み、小さな枝は避けていってくれるので移動そのものは楽に出来るのだが、それでも急な斜面を上り下りしたりするのは結構、手間だ。
「……」
何度も繰り返し『疲労回復』をかけてはいるが、さすがに疲れているらしくミリンサは口を開くのも億劫と言わんばかりに無言で歩いている。
たださすがに追っ手もこんな山の中を通るとは思っていなかったらしく、今のところは姿を見せる気配は無い。
もちろん追っ手以外にも何が潜んでいるか分からないので、警戒を怠るわけにはいかないが少なくとも人間に追い回されるよりはずっと気が楽だ。
このまま順調に進むことができればいいのだが、ミリンサの秘密がわからないままというのも困りものだな。
そんなことを考えていると日が暮れてくる。
いまは野宿をするしかないようだな。
夜露をしのげそうな木陰を探して、とりあえず歩みを止める。
我ながら随分とワイルドな生活が板についたものだ。
「今晩はここで休みましょう」
「ああ……それはありがたい」
見たところミリンサの疲れはかなり深刻な様子だが、よく耐えて文句を言わないでくれるだけでもありがたい。
「しかしあなたは後宮で皇帝陛下も魅了する貴婦人だったそうだが、それでいてこんな野外でも自由に振舞えるとは、出来ないことは何もないと思えるほどですね」
「それは買いかぶりと言うものです。本当に出来ないことだらけで、いつも自分の力不足を痛感してばかりなのですけど」
そうだよ。もうここ数ヶ月、何度も死にかけてどうにか切り抜けてきた事もあれば、根本的な問題は何も解決出来ず、難題を先送りして何とか凌ぐだけだった事がしょっちゅうだった。
むしろ自分がいかに無力なのか、思い知らされる事ばっかりだ。そんなオレが女神だの何だの称賛されるのはむしろ気恥ずかしいだけだ。
「あなたは本当に自分自身には厳しいのだな……どこまでいっても私ごときとは比較にならない」
やっぱりオレとミリンサでは感覚がまるで違うらしい。
こちらが全てを語っていないからこうなるのだが、たぶんそれはいまミリンサについてオレが抱いている不可思議な感覚にも近いかもしれない。
「それではここで待っていて下さい。水を探してきます」
オレがひとまず周囲を探ろうとした時、視界の片隅に蠢くものがあった。
それも普通の獣の類いでは無い。
霊体を感知する魔法『霊視』を常時かけているオレの目には、霊体と思しき存在がどんどんと迫ってくるのが写っていた。
ただ野山を動き回っている普通の精霊では無く、何らかの意図を持ってこっちに向かっているのは明らかだ。
「いったいどうしたのです?」
ミリンサも妙な気配を察したのか、それともオレの表情に気付いたのか、不安げに声をかけてくる。
「まさか? 何かが――」
ミリンサの表情がこわばった瞬間、その霊体は一気にこちらに向かってくる。
それと同時に相手は顕現し、通常の視覚でも見えるようになる。
ぱっと見た限りでは、鏡のように周囲の景色を反射している複雑な多角形が宙に浮いて、絶えず変形を続けつつ飛んでくるような外見だ。
もちろんわざわざこっちの世界に出てきたと言う事は、相手がただの野良精霊では無い。
少なくともオレは並の精霊からは、相当強大な存在に見えているはずだから
「わたしから離れないで!」
オレは警告の声を挙げるとひとまず『霊体遮断』の魔法を展開する。
そうすると霊体は見えない壁があるかのように動きを止める。
近くで見るとその多面体の一つ一つにミリンサの顔が写っている。
どういうことだ? いや。恐らくはこの霊体のターゲットがミリンサということなのだろう。
「これは?!」
「大丈夫。心配は無用です」
オレが『追放』の魔法を放つと、相手の多面体は一気に歪み、それによって写っていたミリンサの顔もねじれていく。
正直に言えばかなりシュールな光景だ。
しかしそれも僅かな時間だ。相手は見る見る小さくなっていく。
いや。実際にはこの霊体がこっちの世界に出ている部分が、オレの『追放』で強制的に元いたところに戻されているのだ。
そして霊体が完全に見えなくなったところで、オレは緊張に身を固くしているミリンサに振り向く。
「ほうら。大丈夫だと言ったでしょう」
「あんなにあっさりと……」
少なくともオレを襲うのであれば、この程度の霊体では問題にならないよ。
魔法一つで簡単に追い払えるああいう『この世のものならぬ存在』の方が、人間を相手にするよりも遥かに楽なのだ。
ただ相手がミリンサを狙っていたと言う事は、まず間違い無く追っ手が差し向けて来たのだろう。
そのような霊体を扱うシャーマンを雇ったのか、それとも何らかの神の眷族でそれを扱う信徒がいるのか。
どちらにせよあの霊体が元いたところに戻ったという事は、ミリンサがここにいることが送り出した相手に分かってしまったと考えねばならない。
やっぱり人間の方がオレにとってはよっぽど恐ろしい相手だと、毎度毎度思い知らされてばかりだよ。
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