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第15章 とある御家騒動の話
第578話 帝国の支配とウァリウスの意図と
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ここでウァリウスはオレの表情に気付いたらしい。
「分かっているよ。君はたとえ名声が高まる方向であろうとも利用されるのは本意ではないのだろう?」
「どうせわたしが辞めろと言っても、あなたは聞かないでしょうけどね」
「そんな事は無いさ。こんな魔法での会話では無く、本当に帝都に来て君の本意で無い事をその口で訴えてくれたら、こちらが翻意するさ」
相変わらずつまらないダジャレを会話に挟む男ではある。
さすがに皇帝として普段からそんな事をしているとは思わないから、オレとの会話はウァリウスにとってはむしろ息抜きなのかもしれないな。
しかしこの言葉の通りにするわけにはいかない。
「その場合、二度と城壁の外に出られなくなりそうなので、辞めておきますよ」
まあオレとしてもウァリウスがそこまで軽率に出るとは思っていないけど、下手に顔を合わせて懇願されると断り切れないかもしれないという不安がちょっとはあったのだ。
いや。下手をするとオレが来るまでに大々的に宣伝して、こっちの逃げ道を塞いで強引にゴールインなんてやらかしかねないし、警戒するに越した事は無いだろう。
「それはあんまりだな。僕は君に縛られたいけど、君を縛る気などさらさらないのに」
ウァリウスは大げさに肩をすくめて天を仰ぐ。
いっそリアルに縛り上げて、鞭打ってやろうかなどという妄想がちょっとばかり脳裏に浮かぶが、そんな事をしたらかえって喜ばれてしまいかねないな。
思い返せばコイツは女装趣味もある変態皇帝なのだ。
下手をするとマゾ趣味もあるかもしれないのでそういう事を迂闊に口にするとオレの方が墓穴を掘りかねない。
そんなわけでもっと真っ当な話題を持ちかけることにする。
「コンラディンの襲撃はともかく、わたしを利用する事は最初から考えていましたね。そのつもりだったからこんな魔法で連絡を取る準備までしていたのでしょう?」
「それぐらいは許して欲しいな。僕にとっては君の次に重大な帝国の安寧がかかっているのだから」
ヌケヌケと言ってくれるものだ。ただちょっとは嬉しい気もするが、ここは敢えて無視するとしよう。
「たかが地方土地の領主選びで大げさに過ぎるでしょう」
「本当にそれだけだと思うかい?」
ウァリウスはどこか面白そうに、またからかうように微笑む。
そしてこれまでの旅の中で、このような状況において利用された経験が思い浮かんだ。
「わたしがこのドズ・カムの後継者争いを収めたということにした上で、周辺の町々にまで干渉しようと思っているのでは無いですか?」
「まあそういうことになるだろうね」
やっぱりそうか。
さすがに後継者争いがそんなにしょっちゅう起きるワケではないだろうけど、それ以外でも日常的にいろいろな問題はあるはずだ。
「何しろ帝国に忠誠を誓っていると口では言っても、城壁の中の事は自治を唱えつつ、隙あらば税を値切るし、山賊が出た、怪物が現れたと言っては助けを要求するけど、帝国軍が駐留すると言ったら拒否するような身勝手なところばかりだからね」
こっちでは元の世界のように軍隊が駐留すると言っても、必要とする物資は殆ど地元持ちだからな。
しかも自治を望む方としては、帝国軍の駐留はなるだけ避けたいに決まっている。
それでいて一朝有事には『税金払っているのだから、今すぐどうにかしろ』とせっつくし、頼りないとなればすぐに庇護の対象を他国に切り換える。
一見すると身勝手なようだけど、そんな事はこの世界では当たり前の話だ。
他国との境界線近くに位置する町であれば、落ち目の国家にわざわざ義理立てして、助ける力も無いのに税を払う方がおかしいと思われる程度の帰属意識しか無いのである。
このマニリア帝国の領土が最盛期より大幅に減っているのも、戦争で負けて領地を奪われたというよりは、過去に帝国の傘下に入っていた地域の領主達がその弱体化により見切りをつけて、税を他国に払うようになったのが大半らしい。
「それでウァリウスとしては、このドズ・カムの事でわたしを持ち上げつつ、それを口実にして地方への支配を強化したいというわけですか」
「きっと君の信者も増えるだろうし、僕も帝国領が安定する。それに辺境の町も今まで以上に帝国の庇護を受ける事が出来るようになって大勢の人間が助かる。みんなにとっていい事ずくめだろう」
「本気でそんな何でも都合のいいことになると考えているなら、かえってそれがあなたにとっての命取りになりかねませんよ」
ウァリウスの考えている事は分かるが、性急に進めればきっと強い反発を招くだろう。
元の世界で歴史を勉強したところでは、政権が不安定だからと、強引な手に打って出て反発を招き、かえって自分の首を絞めてしまった例は多々あったらしい。
「僕だってそんなに急に事を進める気など無いさ。何よりも帝国が本当に実力を有しなければ、誰も従わないという事ぐらい重々承知しているし、無理矢理忠誠を誓わせてもそんな口約束は霞も同じさ」
「それを分かってくれているのなら、わたしの方からあれこれ言う事はないですよ」
オレは少しばかり安堵したが、それはやはり早かった。
「今の僕にとってはまずコンラディンを差し向けて君の命を狙った黒幕共をどうにかするのが先決だよ。そんな愚かな真似をした連中は一族郎党そろって鮮血でその身を染め上げてやろう」
「そこまでしなくてもいいですよ!」
オレは思わず映像に向けて叫ばざるを得なかった。
「分かっているよ。君はたとえ名声が高まる方向であろうとも利用されるのは本意ではないのだろう?」
「どうせわたしが辞めろと言っても、あなたは聞かないでしょうけどね」
「そんな事は無いさ。こんな魔法での会話では無く、本当に帝都に来て君の本意で無い事をその口で訴えてくれたら、こちらが翻意するさ」
相変わらずつまらないダジャレを会話に挟む男ではある。
さすがに皇帝として普段からそんな事をしているとは思わないから、オレとの会話はウァリウスにとってはむしろ息抜きなのかもしれないな。
しかしこの言葉の通りにするわけにはいかない。
「その場合、二度と城壁の外に出られなくなりそうなので、辞めておきますよ」
まあオレとしてもウァリウスがそこまで軽率に出るとは思っていないけど、下手に顔を合わせて懇願されると断り切れないかもしれないという不安がちょっとはあったのだ。
いや。下手をするとオレが来るまでに大々的に宣伝して、こっちの逃げ道を塞いで強引にゴールインなんてやらかしかねないし、警戒するに越した事は無いだろう。
「それはあんまりだな。僕は君に縛られたいけど、君を縛る気などさらさらないのに」
ウァリウスは大げさに肩をすくめて天を仰ぐ。
いっそリアルに縛り上げて、鞭打ってやろうかなどという妄想がちょっとばかり脳裏に浮かぶが、そんな事をしたらかえって喜ばれてしまいかねないな。
思い返せばコイツは女装趣味もある変態皇帝なのだ。
下手をするとマゾ趣味もあるかもしれないのでそういう事を迂闊に口にするとオレの方が墓穴を掘りかねない。
そんなわけでもっと真っ当な話題を持ちかけることにする。
「コンラディンの襲撃はともかく、わたしを利用する事は最初から考えていましたね。そのつもりだったからこんな魔法で連絡を取る準備までしていたのでしょう?」
「それぐらいは許して欲しいな。僕にとっては君の次に重大な帝国の安寧がかかっているのだから」
ヌケヌケと言ってくれるものだ。ただちょっとは嬉しい気もするが、ここは敢えて無視するとしよう。
「たかが地方土地の領主選びで大げさに過ぎるでしょう」
「本当にそれだけだと思うかい?」
ウァリウスはどこか面白そうに、またからかうように微笑む。
そしてこれまでの旅の中で、このような状況において利用された経験が思い浮かんだ。
「わたしがこのドズ・カムの後継者争いを収めたということにした上で、周辺の町々にまで干渉しようと思っているのでは無いですか?」
「まあそういうことになるだろうね」
やっぱりそうか。
さすがに後継者争いがそんなにしょっちゅう起きるワケではないだろうけど、それ以外でも日常的にいろいろな問題はあるはずだ。
「何しろ帝国に忠誠を誓っていると口では言っても、城壁の中の事は自治を唱えつつ、隙あらば税を値切るし、山賊が出た、怪物が現れたと言っては助けを要求するけど、帝国軍が駐留すると言ったら拒否するような身勝手なところばかりだからね」
こっちでは元の世界のように軍隊が駐留すると言っても、必要とする物資は殆ど地元持ちだからな。
しかも自治を望む方としては、帝国軍の駐留はなるだけ避けたいに決まっている。
それでいて一朝有事には『税金払っているのだから、今すぐどうにかしろ』とせっつくし、頼りないとなればすぐに庇護の対象を他国に切り換える。
一見すると身勝手なようだけど、そんな事はこの世界では当たり前の話だ。
他国との境界線近くに位置する町であれば、落ち目の国家にわざわざ義理立てして、助ける力も無いのに税を払う方がおかしいと思われる程度の帰属意識しか無いのである。
このマニリア帝国の領土が最盛期より大幅に減っているのも、戦争で負けて領地を奪われたというよりは、過去に帝国の傘下に入っていた地域の領主達がその弱体化により見切りをつけて、税を他国に払うようになったのが大半らしい。
「それでウァリウスとしては、このドズ・カムの事でわたしを持ち上げつつ、それを口実にして地方への支配を強化したいというわけですか」
「きっと君の信者も増えるだろうし、僕も帝国領が安定する。それに辺境の町も今まで以上に帝国の庇護を受ける事が出来るようになって大勢の人間が助かる。みんなにとっていい事ずくめだろう」
「本気でそんな何でも都合のいいことになると考えているなら、かえってそれがあなたにとっての命取りになりかねませんよ」
ウァリウスの考えている事は分かるが、性急に進めればきっと強い反発を招くだろう。
元の世界で歴史を勉強したところでは、政権が不安定だからと、強引な手に打って出て反発を招き、かえって自分の首を絞めてしまった例は多々あったらしい。
「僕だってそんなに急に事を進める気など無いさ。何よりも帝国が本当に実力を有しなければ、誰も従わないという事ぐらい重々承知しているし、無理矢理忠誠を誓わせてもそんな口約束は霞も同じさ」
「それを分かってくれているのなら、わたしの方からあれこれ言う事はないですよ」
オレは少しばかり安堵したが、それはやはり早かった。
「今の僕にとってはまずコンラディンを差し向けて君の命を狙った黒幕共をどうにかするのが先決だよ。そんな愚かな真似をした連中は一族郎党そろって鮮血でその身を染め上げてやろう」
「そこまでしなくてもいいですよ!」
オレは思わず映像に向けて叫ばざるを得なかった。
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