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第15章 とある御家騒動の話
第577話 皇帝の真意は
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ここでウァリウスは急に表情を引き締めつつ問いかけてくる。
「それはともかく君が襲われたと言うのは本当なのかい? しかもその男はコンラディンと名乗ったらしいね」
「ええ。元宮廷魔術師だったそうですけど、ご存じですよね?」
「もちろんだよ……君が出ていった後、しばらくして辞めていったけど、まさか君を逆恨みして命を狙っていたとは想像もしていなかった。それはついては謝ろう」
そういって画像のウァリウスは深々と頭を下げる。
「宮廷魔術師を辞めた後の事まで、あなたの責任では無いでしょう」
オレがそう言うとウァリウスは安堵したと言わんばかりの様子で顔を上げる。
「それでコンラディンの処遇についてだけど、君の望みはいかなるものか聞かせて欲しい」
「大勢の人を危険にさらしていますから無罪放免とはいかないでしょうね。しかしなるだけ寛大な処遇にしてくれませんか」
「君ならそう言うとは思っていたよ。ただその理由は聞かせてくれないかな?」
ウァリウスは特に意外な様子は見せなかった。
まあこの男なりにオレの事を理解してくれているという事なのだろう。
「彼は有能な魔法使いですよ。だから正しい方向に進めば、きっと多くの人の役に立てるでしょう」
「本当に君には人を憎むとか恨むとか、そういう意識は無いのだね」
ウァリウスは少々呆れ気味に肩をすくめる。
「そういえば以前にも君を辱めかけた大公も手厚く葬るように願っていたし、皇帝である僕よりもよほど器が大きいね」
「いえ。ただ単に優先順位を考えただけです」
「アルタシャは本当に自分の身は顧みないのだな。だけど僕にとっては何よりも君の事が最優先のつもりなのだけどね」
「前にも言いましたけど、それでは皇帝失格というものです」
皇帝失格でも男としては合格かもしれない。
しかしそこはオレには関係の無い話である。
「皇帝としてはもっと考えるべき事があると思いますけどね」
「もちろんそれぐらいは分かっている。コンラディンを援助し、君にけしかけた黒幕が何者かという事だね」
「思い当たる相手は当然あなたの方にあるのでしょうね。そちらはお任せしますよ」
「もちろん愛しいアルタシャを狙ったからには、言われるまでも無く徹底的に追求するよ」
「それもほどほどにしておいて下さいよ」
オレにアピールしようとして、大量粛清などやられたらまたこっちがたまらない。
ウァリウスはそこまで軽率な相手ではないが、それでも一応は釘を刺しておこう。
「ところでこのドズ・カムの領主選びなのですけど、ひとまずは穏便に片付きそうですよ」
「そうか……さすが我が『女神』だよ今回の働きはまた感服させてもらった」
「わたしは何もしていませんよ」
また何か勘違いで過大評価されそうな気配を感じる。
いや。ウァリウスの場合は、分かっていても敢えて自分の権威付けに利用しそうだ。
「そんな事は無いさ。ドズ・カムが領主選びで騒動が起きていた事は、帝国内部でもかなり広まっていた話だからね」
「あなたも詳しい事情は殆ど知らなかったのではないのですか?」
「その通りだよ。だけど人間はお家騒動というだけで、興味をひかれるものなのさ」
そりゃ元の世界でも、その手の話題は週刊誌やワイドショーの格好のネタだったからね。
オレはそんな事に殆ど興味は無かったけど、自分達と無関係な余所のゴタゴタは人間の好奇心をかき立てるものだって事ぐらいは分かっている。
だからこのドズ・カムの領主争いでもいろいろと無責任な噂は、それなりに広まってはいたのだろう。
「それとわたしに何の関係があるのですか?」
「ドズ・カムで起きていた騒動がアルタシャの訪問で収まって、領主がちゃんと選ばれたというならそれで十分だよ」
やっぱりそういうことか。
ウァリウスにとっては事実がどうなのかは大して問題じゃ無い。
オレの事を自分の権威付けに使っているから、ここでもオレを利用しようという魂胆なのだろう。
「あなたはそう言いますけど、今後の事は保証出来ませんよ」
「もしもの事があれば、帝国軍を介入させるまでさ。その大義名分は君の身に危険が及んだからという事で十分だ」
おい。少なくともコンラディンの件はドズ・カムとは関係無いだろ。
あの男はたまたまオレがこの町にいるときに襲撃してきただけだぞ。
ウァリウスもそんな事は承知の上だろうけど、コンラディンの身柄は帝国の司法が抑えるわけだから、そのあたりはどうにでもなると言う事らしい。
「軍を動かす事は僕も望んではいないけどね。そしてこれからは君のお陰でいろいろとやりやすくなりそうだ」
「まさか今回の件を利用するつもりですか?」
「もちろんだよ。君がいつも言うとおり『帝国の安寧』が僕にとって最優先だからね」
真実がどうなのかはともかく、ウァリウスは今回ドズ・カムの町の後継者争いをオレが収めたということにして、それを建前にして他の町にも帝国の影響力を強めるつもりか。
似たような事は過去何度もあったけど、ウァリウスもまたすっかり政治家になってきたもんだな。
「それはともかく君が襲われたと言うのは本当なのかい? しかもその男はコンラディンと名乗ったらしいね」
「ええ。元宮廷魔術師だったそうですけど、ご存じですよね?」
「もちろんだよ……君が出ていった後、しばらくして辞めていったけど、まさか君を逆恨みして命を狙っていたとは想像もしていなかった。それはついては謝ろう」
そういって画像のウァリウスは深々と頭を下げる。
「宮廷魔術師を辞めた後の事まで、あなたの責任では無いでしょう」
オレがそう言うとウァリウスは安堵したと言わんばかりの様子で顔を上げる。
「それでコンラディンの処遇についてだけど、君の望みはいかなるものか聞かせて欲しい」
「大勢の人を危険にさらしていますから無罪放免とはいかないでしょうね。しかしなるだけ寛大な処遇にしてくれませんか」
「君ならそう言うとは思っていたよ。ただその理由は聞かせてくれないかな?」
ウァリウスは特に意外な様子は見せなかった。
まあこの男なりにオレの事を理解してくれているという事なのだろう。
「彼は有能な魔法使いですよ。だから正しい方向に進めば、きっと多くの人の役に立てるでしょう」
「本当に君には人を憎むとか恨むとか、そういう意識は無いのだね」
ウァリウスは少々呆れ気味に肩をすくめる。
「そういえば以前にも君を辱めかけた大公も手厚く葬るように願っていたし、皇帝である僕よりもよほど器が大きいね」
「いえ。ただ単に優先順位を考えただけです」
「アルタシャは本当に自分の身は顧みないのだな。だけど僕にとっては何よりも君の事が最優先のつもりなのだけどね」
「前にも言いましたけど、それでは皇帝失格というものです」
皇帝失格でも男としては合格かもしれない。
しかしそこはオレには関係の無い話である。
「皇帝としてはもっと考えるべき事があると思いますけどね」
「もちろんそれぐらいは分かっている。コンラディンを援助し、君にけしかけた黒幕が何者かという事だね」
「思い当たる相手は当然あなたの方にあるのでしょうね。そちらはお任せしますよ」
「もちろん愛しいアルタシャを狙ったからには、言われるまでも無く徹底的に追求するよ」
「それもほどほどにしておいて下さいよ」
オレにアピールしようとして、大量粛清などやられたらまたこっちがたまらない。
ウァリウスはそこまで軽率な相手ではないが、それでも一応は釘を刺しておこう。
「ところでこのドズ・カムの領主選びなのですけど、ひとまずは穏便に片付きそうですよ」
「そうか……さすが我が『女神』だよ今回の働きはまた感服させてもらった」
「わたしは何もしていませんよ」
また何か勘違いで過大評価されそうな気配を感じる。
いや。ウァリウスの場合は、分かっていても敢えて自分の権威付けに利用しそうだ。
「そんな事は無いさ。ドズ・カムが領主選びで騒動が起きていた事は、帝国内部でもかなり広まっていた話だからね」
「あなたも詳しい事情は殆ど知らなかったのではないのですか?」
「その通りだよ。だけど人間はお家騒動というだけで、興味をひかれるものなのさ」
そりゃ元の世界でも、その手の話題は週刊誌やワイドショーの格好のネタだったからね。
オレはそんな事に殆ど興味は無かったけど、自分達と無関係な余所のゴタゴタは人間の好奇心をかき立てるものだって事ぐらいは分かっている。
だからこのドズ・カムの領主争いでもいろいろと無責任な噂は、それなりに広まってはいたのだろう。
「それとわたしに何の関係があるのですか?」
「ドズ・カムで起きていた騒動がアルタシャの訪問で収まって、領主がちゃんと選ばれたというならそれで十分だよ」
やっぱりそういうことか。
ウァリウスにとっては事実がどうなのかは大して問題じゃ無い。
オレの事を自分の権威付けに使っているから、ここでもオレを利用しようという魂胆なのだろう。
「あなたはそう言いますけど、今後の事は保証出来ませんよ」
「もしもの事があれば、帝国軍を介入させるまでさ。その大義名分は君の身に危険が及んだからという事で十分だ」
おい。少なくともコンラディンの件はドズ・カムとは関係無いだろ。
あの男はたまたまオレがこの町にいるときに襲撃してきただけだぞ。
ウァリウスもそんな事は承知の上だろうけど、コンラディンの身柄は帝国の司法が抑えるわけだから、そのあたりはどうにでもなると言う事らしい。
「軍を動かす事は僕も望んではいないけどね。そしてこれからは君のお陰でいろいろとやりやすくなりそうだ」
「まさか今回の件を利用するつもりですか?」
「もちろんだよ。君がいつも言うとおり『帝国の安寧』が僕にとって最優先だからね」
真実がどうなのかはともかく、ウァリウスは今回ドズ・カムの町の後継者争いをオレが収めたということにして、それを建前にして他の町にも帝国の影響力を強めるつもりか。
似たような事は過去何度もあったけど、ウァリウスもまたすっかり政治家になってきたもんだな。
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