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第16章 破滅の聖者
第582話 いつものように面倒事が
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ドズ・カムを出た後で、オレは再びそれまでの目的通り、大陸の東部を目指して街道を進んでいた。
ひょっとしたらウァリウスは帝都でオレがやってくるのを待っているかもしれないが、あいにくこちらが付き合ってやる義理はない。
それはともかく明確な国境線も無く、正確な地図もないから今のところはだいたいの場所しか分からないが、現在位置は恐らく以前に通ったラマーリア王国の辺境あたりに位置するだろうか。
そんなわけで一歩間違うと、その地域の掟だの何だので、いろいろと面倒な事にもなりかねないので常に注意は必要だ。
そして現在オレが通過しているのは、それなりに豊かな穀倉地帯だ
広い農地を農民たちが働き回っていて、のどかな光景が広がっている。
普段からこんな感じで、トラブルなく進んでくれたらどれだけ楽なことか。
いや。そんな甘い事を考えていると、何かあった時のショックが大きいから、ここは常に問題があると考えて精神的に身構えておくとしよう。
我ながらすっかりトラブルが習い性になってしまった気がするな。
そんな事を考えていると、やっぱり何か問題のタネらしきものがオレの視界の片隅に飛び込んできた。
見ると農村部をざっと見ても数十人の兵士が動き回っているのだ。
一瞬、戦争でもあるのかとヒヤッとなったが、兵士達は数人ずつのグループで道の警戒に当たっているらしく、少なくとも大規模な戦闘を目的としているワケではないらしい。
しかし遠目でも兵士達はかなり緊張しているらしく、少なくとも平常のパトロールの類いとは違うようだな。
その対象がオレであるかもしれないし、別の誰かかもしれないが、そのあたりはどうにか確認したいところだ。
そんなわけでオレは隠れつつ、狭い農道で警戒している兵士達へと近づく。
前もって隠密系魔術の『隠身』を自分にかけたので、こちらから攻撃をするか、意図的に姿を見せようとしない限り、通常の感覚で察知される事は無い。
ただし魔法的な手段では感知されてしまうし、当然ながらその場合は相手に警戒されてしまうのは明らかだからそうそう使う気は無いが、いま目の前にいるのは一般の兵士らしいのでその可能性は少ないはずだ。
あとは彼らの声を盗み聞きすれば、だいたいの事は分かるだろう。
少なくとも追っている対象が、オレかどうかぐらいの見当はつくと思う。
そんな風に近づくと思わぬ事が起きる。
農民達が十人ほど集まって、兵士達のところに迫ってきたのだ。
殺気だっているとまでは言わないが、少なくとも農民達の方もかなりの興奮と緊張が漂っていて少なくとも兵士達に従うつもりはないらしい。
これはひょっとして農民の蜂起とか抗議だろうか?
そうすると兵士達もそういう農民達をおさえるためにここにいるのかもしれないぞ。
最悪の場合、戦争と同じかもっと始末に負えない状況になるかもしれない。
とにかく今は近づいて、状況を把握すべきだろう。
もしも誰かが武器を振るうような真似に出たら、オレが暴力的活動を抑止する『調和』をかけて止めるしかない。
それでちょっとばかり目立ってしまって、こっちが追われてもそれは仕方の無いことだと諦めよう。
そんなわけでオレがこっそりと近づくと、もめている声が響いてきた。
「お前たち! 隠し立てしているとためにならんぞ!」
「うるせえ! てめえらこそ俺達の土地にズカズカと入り込んできやがって!」
「邪魔だ! とっとと失せやがれ!」
まずいな。どう見てもお互いに穏便に済ませる気は無い。
しかしこれだけでは何が理由で対立しているか分からない。
ただ『隠し立て』という言葉からして、兵士達は何者かを追っていて、農民達がその対象を隠しているのではないかと疑っているらしい――それが事実かどうかは別として。
まあこっちが聞きにいったらたまたま関係者が分かりやすく事情を説明している場面に出くわす、何て都合のいい事はないのだからちょっと聞いただけで何が起きているのか分からないのは当たり前だ。
そしてその振る舞いや装備を見る限り、兵士達も多くは専門職ではなく、どこから徴集されてきた連中らしい。
つまり農民達と比べてそれほど強いと言うわけでも無いわけで、兵士達が積極的に戦う気にはならないかもしれないが、逆に相手を恐れて過激な反応に出かねないという危惧もある。
「ええい。我らの公務を邪魔するのなら、全員引っ立てるぞ!」
「俺達の仕事を邪魔しているのはお前らの方だろうが」
ああ。困った事に水掛け論だな。
しかし本当に何で対立しているんだろう。少なくとも徴税とか、そういうありふれた事情が理由というワケではないらしい。
「そう言うならお前達は作業に戻れ。何も考えずに日々のつとめを果たすのだ」
「誤解するな。我らはお前達を庇護しているのだからな」
そう言いつつ、兵士達は引き上げていくようだ。
幸いにもここで農民達と直接事を構える気はなかったらしいな。
この世界では農村もまた小さな社会であって、かなり独立性が強い面がある。要するにおのおのの『村の決まり』を、そうそう権力者も自由には出来ないと言う事だ。
そんなわけでオレとしては、兵士達を追い返した農民達の方にこっそり近づく。
はた目にはかなり怪しい人だが、実際フードをかぶって顔を隠しているのだから仕方ない。
「思い知ったか!」
「とっとと失せやがれ!」
農民達は気勢を上げている様子だが、そこで少しばかり聞き逃せない言葉があった。
「あんな奴らに『あのお方』を渡してたまるか」
「おい。お前。余計な事を口にするんじゃないぞ」
「ああ。それは分かっている」
どうやらさっきの兵士と農民は『あのお方』とやらを巡って争っていたらしい。
この世界ではそう呼ばれているからと言って、相手が人間とは限らないし、またいろいろとややこしい事になりそうな予感がしてくるよ。
ひょっとしたらウァリウスは帝都でオレがやってくるのを待っているかもしれないが、あいにくこちらが付き合ってやる義理はない。
それはともかく明確な国境線も無く、正確な地図もないから今のところはだいたいの場所しか分からないが、現在位置は恐らく以前に通ったラマーリア王国の辺境あたりに位置するだろうか。
そんなわけで一歩間違うと、その地域の掟だの何だので、いろいろと面倒な事にもなりかねないので常に注意は必要だ。
そして現在オレが通過しているのは、それなりに豊かな穀倉地帯だ
広い農地を農民たちが働き回っていて、のどかな光景が広がっている。
普段からこんな感じで、トラブルなく進んでくれたらどれだけ楽なことか。
いや。そんな甘い事を考えていると、何かあった時のショックが大きいから、ここは常に問題があると考えて精神的に身構えておくとしよう。
我ながらすっかりトラブルが習い性になってしまった気がするな。
そんな事を考えていると、やっぱり何か問題のタネらしきものがオレの視界の片隅に飛び込んできた。
見ると農村部をざっと見ても数十人の兵士が動き回っているのだ。
一瞬、戦争でもあるのかとヒヤッとなったが、兵士達は数人ずつのグループで道の警戒に当たっているらしく、少なくとも大規模な戦闘を目的としているワケではないらしい。
しかし遠目でも兵士達はかなり緊張しているらしく、少なくとも平常のパトロールの類いとは違うようだな。
その対象がオレであるかもしれないし、別の誰かかもしれないが、そのあたりはどうにか確認したいところだ。
そんなわけでオレは隠れつつ、狭い農道で警戒している兵士達へと近づく。
前もって隠密系魔術の『隠身』を自分にかけたので、こちらから攻撃をするか、意図的に姿を見せようとしない限り、通常の感覚で察知される事は無い。
ただし魔法的な手段では感知されてしまうし、当然ながらその場合は相手に警戒されてしまうのは明らかだからそうそう使う気は無いが、いま目の前にいるのは一般の兵士らしいのでその可能性は少ないはずだ。
あとは彼らの声を盗み聞きすれば、だいたいの事は分かるだろう。
少なくとも追っている対象が、オレかどうかぐらいの見当はつくと思う。
そんな風に近づくと思わぬ事が起きる。
農民達が十人ほど集まって、兵士達のところに迫ってきたのだ。
殺気だっているとまでは言わないが、少なくとも農民達の方もかなりの興奮と緊張が漂っていて少なくとも兵士達に従うつもりはないらしい。
これはひょっとして農民の蜂起とか抗議だろうか?
そうすると兵士達もそういう農民達をおさえるためにここにいるのかもしれないぞ。
最悪の場合、戦争と同じかもっと始末に負えない状況になるかもしれない。
とにかく今は近づいて、状況を把握すべきだろう。
もしも誰かが武器を振るうような真似に出たら、オレが暴力的活動を抑止する『調和』をかけて止めるしかない。
それでちょっとばかり目立ってしまって、こっちが追われてもそれは仕方の無いことだと諦めよう。
そんなわけでオレがこっそりと近づくと、もめている声が響いてきた。
「お前たち! 隠し立てしているとためにならんぞ!」
「うるせえ! てめえらこそ俺達の土地にズカズカと入り込んできやがって!」
「邪魔だ! とっとと失せやがれ!」
まずいな。どう見てもお互いに穏便に済ませる気は無い。
しかしこれだけでは何が理由で対立しているか分からない。
ただ『隠し立て』という言葉からして、兵士達は何者かを追っていて、農民達がその対象を隠しているのではないかと疑っているらしい――それが事実かどうかは別として。
まあこっちが聞きにいったらたまたま関係者が分かりやすく事情を説明している場面に出くわす、何て都合のいい事はないのだからちょっと聞いただけで何が起きているのか分からないのは当たり前だ。
そしてその振る舞いや装備を見る限り、兵士達も多くは専門職ではなく、どこから徴集されてきた連中らしい。
つまり農民達と比べてそれほど強いと言うわけでも無いわけで、兵士達が積極的に戦う気にはならないかもしれないが、逆に相手を恐れて過激な反応に出かねないという危惧もある。
「ええい。我らの公務を邪魔するのなら、全員引っ立てるぞ!」
「俺達の仕事を邪魔しているのはお前らの方だろうが」
ああ。困った事に水掛け論だな。
しかし本当に何で対立しているんだろう。少なくとも徴税とか、そういうありふれた事情が理由というワケではないらしい。
「そう言うならお前達は作業に戻れ。何も考えずに日々のつとめを果たすのだ」
「誤解するな。我らはお前達を庇護しているのだからな」
そう言いつつ、兵士達は引き上げていくようだ。
幸いにもここで農民達と直接事を構える気はなかったらしいな。
この世界では農村もまた小さな社会であって、かなり独立性が強い面がある。要するにおのおのの『村の決まり』を、そうそう権力者も自由には出来ないと言う事だ。
そんなわけでオレとしては、兵士達を追い返した農民達の方にこっそり近づく。
はた目にはかなり怪しい人だが、実際フードをかぶって顔を隠しているのだから仕方ない。
「思い知ったか!」
「とっとと失せやがれ!」
農民達は気勢を上げている様子だが、そこで少しばかり聞き逃せない言葉があった。
「あんな奴らに『あのお方』を渡してたまるか」
「おい。お前。余計な事を口にするんじゃないぞ」
「ああ。それは分かっている」
どうやらさっきの兵士と農民は『あのお方』とやらを巡って争っていたらしい。
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