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第16章 破滅の聖者
第603話 現れた新人聖女は
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オレは見慣れた格好をした金髪の女性を前にして思わず立ちすくむ。
しまった!
そういえば聖女教会の聖女も同行しているとは聞いていたが、ファザールとの思わぬ対面もあってすっかり忘れていたな。
捕まったらシャレにならないし、ここはファザールには悪いけど、急いで逃げ出すべきだろうか。
いや。待て。
幾ら何でもここに聖女教会から大勢来ているはずがない。
ファザールの手前もあるから、少なくとも今すぐオレを拘束するような真似はできないはずだ。
そうすると今のところは様子見で付き合うしかないか。
見たところ相手の聖女は、外見的には十七歳ぐらいで、オレよりちょっと年上という程度だろうか。
聖女ならば当然と言うべきか、なかなかの美人だ――兵士達に無意味な劣情をかき立てないか心配になるぐらいに。
もっとも聖女の場合は外見年齢が実年齢と直結していないから、もっと年上と言う事は当然考えられるな。
そしてくだんの聖女がファザールを笑顔で出迎え、一礼した態度からすると、少なくとも現時点でオレの事は知らないようだ。
「ファザール閣下。いったい何用でしょうか?」
「ノイエル殿。こちらの方のお世話をお願いします」
「かしこまりました」
ノイエルと呼ばれた聖女はオレの方に改めて視線を向け、そこで驚いた表情を浮かべる。
むう。オレの薄汚れた格好からして、いきなり『アルタシャ』と気付かれるとは思っていなかったけど、一目で見抜かれたのか。
ひょっとするとオレの事について、イロールから神託があったのか? それとも既に聖女教会の組織ではオレの似顔絵が広く出回っているのかもしれない。
しかしそこでノイエルの発した言葉は、良くも悪くもオレの想像を裏切った。
「まあ大変。そちらのお方はお怪我をなさっておられるではありませんか」
何だ。さっきの兵士と同じくオレの服が泥と血で汚れているのを見て、負傷していると思っただけなのか。
どうやらノイエルはオレの顔を直接見た事は無いらしい。
首都コルストにいる聖女なら、オレを直に見た事はあるだろうけど、こんな辺境にまで従軍してくるはずもないか。
「とりあえずこちらにどうぞ」
ノイエルはオレをいま借り上げているらしい建物へと案内しようとする。
しかしノイエルの態度は本気なのか?
オレの事は別としても、これからアンデッドや病の精霊相手の討伐が行われるのだから、負傷者どころか死者だって出るのは確実なのに、どうもそんな雰囲気がまるで感じられない。
まさかこの純朴そうな外見に反して、そんな事に遥か以前に体験済みどころか、スレきってしまっているのか?
「それでは彼女の事はお任せしますよ」
ファザールはそれだけ口にすると、引き上げていく。どうやら後の事は全部ノイエルに任せるつもりらしい。
そりゃまあオレは今から着替えるワケだから、のぞくわけにいかないのは当たり前だけど、オレが聖女教会と複雑な関係にある事ぐらい知っているよな?
いや。考えて見れば、今でも聖女教会はオレの事について公式に何の発表もしていないのだった。
当然ながら『お尋ね者』というわけでもない事は分かっているので、このままでも別に問題ないと思っているのだろう。
そんなわけでオレを連れ込んだノイエルは明らかに心配げな視線を向けてくる。
「それでは服を脱いで下さい。私が手当しますから」
「あ……いえ……お気になさらず」
どう応対してよいか分からず、オレはしどろもどろになる。
だがどういうわけかノイエルはいきなり頭を下げる。
「す、すみません!」
いったい何があったんだ?
「私はつい先日、正式に聖女に任じられたばかりで、至らぬところは多々あると思いますけど、どうかご容赦下さい」
おい! 全く実地経験無しかよ!
初めての経験が、よりによってあからさまにロクでもない討伐部隊の随行だって?
少なくともこれが普通の聖女の初体験でない事だけは間違い無い。
恐らくはどの聖女もやりたがらなかったので、たぶん立場の弱い新人に嫌な仕事を押しつけただけなんだろうな。
ひょっとすると『過酷な現場を体験させる』とか正当化しつつ行われている新人いびりの一環かも知れない。
オレはいつの間にやら、目の前のノイエルにちょっとばかり同情というか、親近感というか、いろいろと複雑な感情を抱いていたのだった。
「あのう。わたしは怪我はしていません。だからノイエルさんもお気になさらず」
「え……そうでしたか。その服の血からてっきり……」
どこか残念そうに見えるが、治療したかったのだろうか。
まさかと思うけど、ギャグ展開でよくあるトンデモないヤブ女医、かつ治療ジャンキーで手当を受けたらかえって傷が増えるとかないよな?
もちろん才能のある人間を選抜し、なおかつ九割が脱落するという選りすぐりのエリート揃いである聖女にそんな人間がいるはずないけど、ノイエルはどうにも頼りない雰囲気が漂っているのだ。
何というか『安心して命を任せられるとはとても言えない』のだな。むしろ他人が命をかけてノイエルを守ってあげたいとか、そんな風に思わせるところだ。
しまった!
そういえば聖女教会の聖女も同行しているとは聞いていたが、ファザールとの思わぬ対面もあってすっかり忘れていたな。
捕まったらシャレにならないし、ここはファザールには悪いけど、急いで逃げ出すべきだろうか。
いや。待て。
幾ら何でもここに聖女教会から大勢来ているはずがない。
ファザールの手前もあるから、少なくとも今すぐオレを拘束するような真似はできないはずだ。
そうすると今のところは様子見で付き合うしかないか。
見たところ相手の聖女は、外見的には十七歳ぐらいで、オレよりちょっと年上という程度だろうか。
聖女ならば当然と言うべきか、なかなかの美人だ――兵士達に無意味な劣情をかき立てないか心配になるぐらいに。
もっとも聖女の場合は外見年齢が実年齢と直結していないから、もっと年上と言う事は当然考えられるな。
そしてくだんの聖女がファザールを笑顔で出迎え、一礼した態度からすると、少なくとも現時点でオレの事は知らないようだ。
「ファザール閣下。いったい何用でしょうか?」
「ノイエル殿。こちらの方のお世話をお願いします」
「かしこまりました」
ノイエルと呼ばれた聖女はオレの方に改めて視線を向け、そこで驚いた表情を浮かべる。
むう。オレの薄汚れた格好からして、いきなり『アルタシャ』と気付かれるとは思っていなかったけど、一目で見抜かれたのか。
ひょっとするとオレの事について、イロールから神託があったのか? それとも既に聖女教会の組織ではオレの似顔絵が広く出回っているのかもしれない。
しかしそこでノイエルの発した言葉は、良くも悪くもオレの想像を裏切った。
「まあ大変。そちらのお方はお怪我をなさっておられるではありませんか」
何だ。さっきの兵士と同じくオレの服が泥と血で汚れているのを見て、負傷していると思っただけなのか。
どうやらノイエルはオレの顔を直接見た事は無いらしい。
首都コルストにいる聖女なら、オレを直に見た事はあるだろうけど、こんな辺境にまで従軍してくるはずもないか。
「とりあえずこちらにどうぞ」
ノイエルはオレをいま借り上げているらしい建物へと案内しようとする。
しかしノイエルの態度は本気なのか?
オレの事は別としても、これからアンデッドや病の精霊相手の討伐が行われるのだから、負傷者どころか死者だって出るのは確実なのに、どうもそんな雰囲気がまるで感じられない。
まさかこの純朴そうな外見に反して、そんな事に遥か以前に体験済みどころか、スレきってしまっているのか?
「それでは彼女の事はお任せしますよ」
ファザールはそれだけ口にすると、引き上げていく。どうやら後の事は全部ノイエルに任せるつもりらしい。
そりゃまあオレは今から着替えるワケだから、のぞくわけにいかないのは当たり前だけど、オレが聖女教会と複雑な関係にある事ぐらい知っているよな?
いや。考えて見れば、今でも聖女教会はオレの事について公式に何の発表もしていないのだった。
当然ながら『お尋ね者』というわけでもない事は分かっているので、このままでも別に問題ないと思っているのだろう。
そんなわけでオレを連れ込んだノイエルは明らかに心配げな視線を向けてくる。
「それでは服を脱いで下さい。私が手当しますから」
「あ……いえ……お気になさらず」
どう応対してよいか分からず、オレはしどろもどろになる。
だがどういうわけかノイエルはいきなり頭を下げる。
「す、すみません!」
いったい何があったんだ?
「私はつい先日、正式に聖女に任じられたばかりで、至らぬところは多々あると思いますけど、どうかご容赦下さい」
おい! 全く実地経験無しかよ!
初めての経験が、よりによってあからさまにロクでもない討伐部隊の随行だって?
少なくともこれが普通の聖女の初体験でない事だけは間違い無い。
恐らくはどの聖女もやりたがらなかったので、たぶん立場の弱い新人に嫌な仕事を押しつけただけなんだろうな。
ひょっとすると『過酷な現場を体験させる』とか正当化しつつ行われている新人いびりの一環かも知れない。
オレはいつの間にやら、目の前のノイエルにちょっとばかり同情というか、親近感というか、いろいろと複雑な感情を抱いていたのだった。
「あのう。わたしは怪我はしていません。だからノイエルさんもお気になさらず」
「え……そうでしたか。その服の血からてっきり……」
どこか残念そうに見えるが、治療したかったのだろうか。
まさかと思うけど、ギャグ展開でよくあるトンデモないヤブ女医、かつ治療ジャンキーで手当を受けたらかえって傷が増えるとかないよな?
もちろん才能のある人間を選抜し、なおかつ九割が脱落するという選りすぐりのエリート揃いである聖女にそんな人間がいるはずないけど、ノイエルはどうにも頼りない雰囲気が漂っているのだ。
何というか『安心して命を任せられるとはとても言えない』のだな。むしろ他人が命をかけてノイエルを守ってあげたいとか、そんな風に思わせるところだ。
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