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第16章 破滅の聖者
第604話 突然の襲撃が
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とりあえずオレはひとまずノイエルの言葉に従って、建物の中に入る。
どうやらまだ深刻な怪我人や病人は出ていないらしく、中には誰もいないが、薬草らしき匂いが漂っていて、ちょっとばかり緊張するな。
当たり前だが聖女が回復魔法を使えるといっても、当然それには魔力の限界がある。
並の聖女では、瀕死の重傷者となると一日に一人救えるかどうかだ。
もちろん怪我人を前にして、今日は魔力を使い切ってしまったからもう何もしません、というわけにはいかないので、聖女には魔法を使わない薬師と同程度に通常の医療知識もあるのだ。
しかしそれでも数十人はいる討伐部隊に対して、医療関係者がノイエル一人だけとはやはり心細い。
地元の薬師の協力もあるだろうけど、人手不足は明らかだな。
やっぱりオレが協力しないと話にならない状況のようだ。
「それではお召し物をかえて下さい」
「……分かりました」
ノイエルが差し出してきたのは、清潔ではあるがごく普通の貫頭衣だった。
当たり前だがノイエル自身も常時、聖女の正装である白一色の格好というわけにもいかないだろうから、たぶん彼女の普段着なのだろう。
そんなわけでオレは先ほどゾンビによって地面に叩きつけられた時、ボロボロになっていた旅装束を脱いで、着替える事にした。
「あ……あの……」
服を脱ぎ、また素顔を晒したオレの姿を見てノイエルは明らかに困惑したというか、驚いた様子だ。
そうか。そういえば彼女はまだオレが『アルタシャ』だと知らなかったんだな。
いきなりオレの容姿を見たら、驚くのは当然か。ただ髪の毛は黒く染めたままだから、まだノイエルはオレの正体には気付いていない。
ファザールは特に何も伝えていなかったらしいけど、心労でそこまで気が回らなかったのだろうな。
ノイエル一人でオレをどうこうするのは無理だろうし、しばらく付き合う事になるのも分かっているから、ここは名乗っておいた方がいいだろう。
「実はわたしは――」
そこまで口にしたところで、いきなり悲鳴にも似た叫ぶ声が外から響いて来た。
なんだ? いや。まさか戦闘になっているのか?!
「ちょっとここで待っていて下さい」
ノイエルは表情を引き締めると、あたふたと外に出て行く。
オレも同行したかったけど、さすがに裸で出ていくワケにもいかず、ひとまず服をまとってから後を追うことにした。
外に出たところでは村人や兵士達が悲鳴を挙げつつ逃げ惑っていた。
また狭い村の中だが何人か既に倒れ伏している様子もうかがえる。
やっぱり敵の襲撃か? 討伐部隊が送り込まれてきた事を知れば、相手が先手を打って攻撃してくるのは驚くような事ではない。
だがすぐにオレは違和感を抱く。
少なくとも視界内に敵の姿が見当たらないし、倒れた兵士達も傷を負っている様子は無いのだ。
しかしよろよろと歩いている兵士はその皮膚はただれて、顔からは血の気が引いている。
「助けてくれ……」
弱々しくつぶやきつつ、その兵士は倒れ伏す。
これはもしや!
オレは改めて『霊視』を自分にかけて、周囲を見回す。
そうすると視界内のあちこちに霊体が動き回っているのが飛び込んできた。
やっぱりそうだ。きっとあれが病の精霊なんだろう。
たぶんこの討伐部隊がこの村に駐屯する事を知って、病の精霊を扱うシャーマンが霊体を操ってこちらに送り込んで来たに違いない。
「襲撃してきた精霊など数は知れている! 落ち着いて対処しろ!」
「しかし閣下……いったいどうすれば……」
ファザールの声が響くが、兵士達の動揺は収まらない。
確かにそこらのシャーマンなら使役出来る精霊はそう何体もいないだろう。
数十人はいる討伐部隊を全滅させる事は出来ないかもしれないが、襲撃するのが精霊だけならば相手の戦力を削った上で、自分達は何の損害も受けないという計算があるのだろう。
しかも一般兵では霊体が見えないから、敵がどれだけいて、いつ自分が襲撃されるのかも分からない。
それにこんな事を繰り返されたら、いつ襲撃されるか分からず、武器も効果の無い精霊に怯えて士気もドンドン下がって、本格的に戦う前に撤退を余儀なくされる羽目となる可能性が高い。
やられる側からすれば、何ともやっかいなゲリラ戦術だな。
もちろんこれが王太子の側近であるファザールの地位にふさわしいラマーリア王国の精鋭部隊なら、精霊に対処出来る魔術師も同行していただろう。
しかし今回はテマーティン王子が出張ろうとしたのを止めるために、ファザールが急遽同行しただけなので、兵員達は寄せ集めに過ぎず魔術師もいないらしい。
正直に言えばかなり相手を侮っていたようだな。
そんなわけで大半の兵士はただ逃げ惑うだけのようだ。
そうしていると一体の精霊がオレに向かってくる。
精霊の知覚は霊力を感知するので、この精霊からするとオレは間違い無く目立ちまくっているはずだ。
うむ。他の兵士よりもオレを襲撃してくれた方がよっぽど安心出来るよ。
「ダメです! 早く逃げて!」
「大丈夫ですよ。それよりも倒れた人を手当して下さい」
ノイエルが必死で叫んでいたが、オレは精霊に立ち向かうことにした。
こんな状況だが、オレはちょっとばかりホッとしたところもあった。
一般兵からすれば目に見えず、武器も通じない霊体は手に負えない存在だろうけど、オレにとっては生身の人間はもちろん。先ほど攻撃してきた『僅かでも人間の意識が残っているアンデッド』などよりも余程扱いやすい相手だったからだ。
どうやらまだ深刻な怪我人や病人は出ていないらしく、中には誰もいないが、薬草らしき匂いが漂っていて、ちょっとばかり緊張するな。
当たり前だが聖女が回復魔法を使えるといっても、当然それには魔力の限界がある。
並の聖女では、瀕死の重傷者となると一日に一人救えるかどうかだ。
もちろん怪我人を前にして、今日は魔力を使い切ってしまったからもう何もしません、というわけにはいかないので、聖女には魔法を使わない薬師と同程度に通常の医療知識もあるのだ。
しかしそれでも数十人はいる討伐部隊に対して、医療関係者がノイエル一人だけとはやはり心細い。
地元の薬師の協力もあるだろうけど、人手不足は明らかだな。
やっぱりオレが協力しないと話にならない状況のようだ。
「それではお召し物をかえて下さい」
「……分かりました」
ノイエルが差し出してきたのは、清潔ではあるがごく普通の貫頭衣だった。
当たり前だがノイエル自身も常時、聖女の正装である白一色の格好というわけにもいかないだろうから、たぶん彼女の普段着なのだろう。
そんなわけでオレは先ほどゾンビによって地面に叩きつけられた時、ボロボロになっていた旅装束を脱いで、着替える事にした。
「あ……あの……」
服を脱ぎ、また素顔を晒したオレの姿を見てノイエルは明らかに困惑したというか、驚いた様子だ。
そうか。そういえば彼女はまだオレが『アルタシャ』だと知らなかったんだな。
いきなりオレの容姿を見たら、驚くのは当然か。ただ髪の毛は黒く染めたままだから、まだノイエルはオレの正体には気付いていない。
ファザールは特に何も伝えていなかったらしいけど、心労でそこまで気が回らなかったのだろうな。
ノイエル一人でオレをどうこうするのは無理だろうし、しばらく付き合う事になるのも分かっているから、ここは名乗っておいた方がいいだろう。
「実はわたしは――」
そこまで口にしたところで、いきなり悲鳴にも似た叫ぶ声が外から響いて来た。
なんだ? いや。まさか戦闘になっているのか?!
「ちょっとここで待っていて下さい」
ノイエルは表情を引き締めると、あたふたと外に出て行く。
オレも同行したかったけど、さすがに裸で出ていくワケにもいかず、ひとまず服をまとってから後を追うことにした。
外に出たところでは村人や兵士達が悲鳴を挙げつつ逃げ惑っていた。
また狭い村の中だが何人か既に倒れ伏している様子もうかがえる。
やっぱり敵の襲撃か? 討伐部隊が送り込まれてきた事を知れば、相手が先手を打って攻撃してくるのは驚くような事ではない。
だがすぐにオレは違和感を抱く。
少なくとも視界内に敵の姿が見当たらないし、倒れた兵士達も傷を負っている様子は無いのだ。
しかしよろよろと歩いている兵士はその皮膚はただれて、顔からは血の気が引いている。
「助けてくれ……」
弱々しくつぶやきつつ、その兵士は倒れ伏す。
これはもしや!
オレは改めて『霊視』を自分にかけて、周囲を見回す。
そうすると視界内のあちこちに霊体が動き回っているのが飛び込んできた。
やっぱりそうだ。きっとあれが病の精霊なんだろう。
たぶんこの討伐部隊がこの村に駐屯する事を知って、病の精霊を扱うシャーマンが霊体を操ってこちらに送り込んで来たに違いない。
「襲撃してきた精霊など数は知れている! 落ち着いて対処しろ!」
「しかし閣下……いったいどうすれば……」
ファザールの声が響くが、兵士達の動揺は収まらない。
確かにそこらのシャーマンなら使役出来る精霊はそう何体もいないだろう。
数十人はいる討伐部隊を全滅させる事は出来ないかもしれないが、襲撃するのが精霊だけならば相手の戦力を削った上で、自分達は何の損害も受けないという計算があるのだろう。
しかも一般兵では霊体が見えないから、敵がどれだけいて、いつ自分が襲撃されるのかも分からない。
それにこんな事を繰り返されたら、いつ襲撃されるか分からず、武器も効果の無い精霊に怯えて士気もドンドン下がって、本格的に戦う前に撤退を余儀なくされる羽目となる可能性が高い。
やられる側からすれば、何ともやっかいなゲリラ戦術だな。
もちろんこれが王太子の側近であるファザールの地位にふさわしいラマーリア王国の精鋭部隊なら、精霊に対処出来る魔術師も同行していただろう。
しかし今回はテマーティン王子が出張ろうとしたのを止めるために、ファザールが急遽同行しただけなので、兵員達は寄せ集めに過ぎず魔術師もいないらしい。
正直に言えばかなり相手を侮っていたようだな。
そんなわけで大半の兵士はただ逃げ惑うだけのようだ。
そうしていると一体の精霊がオレに向かってくる。
精霊の知覚は霊力を感知するので、この精霊からするとオレは間違い無く目立ちまくっているはずだ。
うむ。他の兵士よりもオレを襲撃してくれた方がよっぽど安心出来るよ。
「ダメです! 早く逃げて!」
「大丈夫ですよ。それよりも倒れた人を手当して下さい」
ノイエルが必死で叫んでいたが、オレは精霊に立ち向かうことにした。
こんな状況だが、オレはちょっとばかりホッとしたところもあった。
一般兵からすれば目に見えず、武器も通じない霊体は手に負えない存在だろうけど、オレにとっては生身の人間はもちろん。先ほど攻撃してきた『僅かでも人間の意識が残っているアンデッド』などよりも余程扱いやすい相手だったからだ。
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