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第16章 破滅の聖者
第611話 再会した『聖者の少年』は
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あの一目で分かるだけの目を引くメトゥサイラの姿を見逃すはずがない。
いったいいつの間にここに来たのだ?
いや。この登場はやっぱり以前に出会った、ウルハンガとどこか似ているな。
考えてみるとオレには凄い存在感を抱かせていながら、他の人達にはまるで感知されないかのような現れ方も似たところがあるぞ。
やっぱり何らかの神か、さもなくばその化身であるかもしれない。
名前が知られていないとしても、ウルハンガのように幾つも名前があって、本人がその中でマイナーなものを敢えて選んでいる可能性もあるな。
いずれにせよ『霊視』ではメトゥサイラはオレよりもかなり弱い魔力――つまり圧倒的多数の相手と同じに見える程度ーーなので少なくともとてつもない力を有した存在というわけではなさそうだ。
そうすると本当にどうやって『世界を救う』つもりなのか、ますます不可解だな。
そしてメトゥサイラはいつの間にか、オレの傍らに立っていた。
つい先ほど村の柵の外にいたはずなのだが、まるで瞬間移動でもしたかと思えるようだ。
「会いたかったよ。無事で何よりだ」
こちらはもう一度話をしたい気分が半分、警戒心が半分というところだろうか。
「ところでアルタシャはあちらの人たちを助けたいと思っているのかな?」
そう言ってウルハンガはあくせくとこの村を引き払う準備に忙しい、兵士や農民たちへと視線を向ける。
「もちろんですよ。今までもそうしてきましたし、これからも同じです。もしもあなたが手助けしてくれると言うなら、嬉しいのですけどね」
「当然手助けはするよ。私はそのための存在だからね」
一見すると協力を確約してくれたように見えるけど、どう考えても額面通りの意味には受け止められないな。
「そのためにアルタシャには私について来て欲しいのだよ。それで彼らを含めた世界の全てを救う事が出来るのだから」
やっぱりそう来たか。もちろん彼の言葉に興味が無いと言えば嘘になるけど、今はもっと優先する事がある
「あいにくですけど、今はあなたに従うことは出来ませんよ」
ファザールにも言った通り、いつまでも同行する気は無い――特にテマーティンと顔を合わせたら『お持ち帰り』されてしまう危険性が大きい――にせよ、とりあえずは安全が確認出来るところまでは彼らに付き合うつもりだ。
「それではやっぱり、彼らをまだまだ苦しめるというのかい?」
メトゥサイラは理解に苦しむと言わんばかりに首をひねる。
「苦しめる……と言うのはあなたが前にも言っていたように、この世界には苦痛が満ちているので、ここから逃げても別の苦しみがあるという理屈ですか?」
「その通りだね」
不可思議な少年は悟りきったかのように頷いた。
「彼らはここから離れても、今以上の苦しみが待っているだけだろう。それなのにまだ苦しみ足りないのかな」
「それではここに残って殺されたらいいとでも言うのですか?」
「とんでもない。前にも言ったけど、死後の世界に安息を求めるのは、ただの逃避に過ぎないよ。今いる世界でどうにかせねば永遠に苦しみが続くだけだ」
言っていることは正論にも思えるけど、やっぱりどこか引っかかる。
以前に出会った時は、アンデッドになるのは『永遠の苦痛』だと言っていたけど、それではここでアンデッドの襲撃を撃退し、その多数を倒した事をどう思っているのだろうか。
「一つ聞きますけど、先ほどここで何があったのかはあなたも知っているのですよね?」
「もちろんだよ。アルタシャ達がアンデッドを多数破壊したのだね」
「それをあなたはどう思っているのです」
もしもメトゥサイラがアンデッド教団と何らかの関係があるのなら、反応があってしかるべきだろうか。
いや。この少年が本当に神やそれに準じる存在だとしたら、そうそうオレにその内面が分かる筈が無いだろうな。だが――
「そうだね……彼らの魂の安息を祈らずにはいられないよ」
メトゥサイラはそう言って痛ましい表情を浮かべる。
それは本当に真剣な様子であり、このオレでも一瞬、ハッとなる程だった。
「だけど私がいくら祈ったところで、彼らが安息を得られるかどうかは分からない。こんな時はつくづく己の無力をかみしめるしかないよ」
恐らくは騙され下級アンデッドにされて利用された挙げ句、捨て駒として使われてすりつぶされた人々の魂の平穏を願う、メトゥサイラのその態度には嘘が含まれているようには見えなかった。
本当に縁もゆかりもない人々の魂の行方を、まるで我が事のように気にしているらしい。
オレだって自分自身が偽善者としか思えないきれい事を口にしていると思う事はしばしばあるけど、それでも無関係な人間が下級アンデッドにされた事について、そこまで思いを馳せたことはない。
そういう意味ではオレよりもメトゥサイラの方がよっぽど世俗離れしているようだ。
それがこの近辺の一般人から彼が『お方』と呼ばれ、敬意を払われている理由なのかもしれないな。
だけどそんな聖者と感じられる程の慈愛を見せるメトゥサイラには、オレとの決定的な断絶というか、根本的な違いがあるように思えてならなかった。
いったいいつの間にここに来たのだ?
いや。この登場はやっぱり以前に出会った、ウルハンガとどこか似ているな。
考えてみるとオレには凄い存在感を抱かせていながら、他の人達にはまるで感知されないかのような現れ方も似たところがあるぞ。
やっぱり何らかの神か、さもなくばその化身であるかもしれない。
名前が知られていないとしても、ウルハンガのように幾つも名前があって、本人がその中でマイナーなものを敢えて選んでいる可能性もあるな。
いずれにせよ『霊視』ではメトゥサイラはオレよりもかなり弱い魔力――つまり圧倒的多数の相手と同じに見える程度ーーなので少なくともとてつもない力を有した存在というわけではなさそうだ。
そうすると本当にどうやって『世界を救う』つもりなのか、ますます不可解だな。
そしてメトゥサイラはいつの間にか、オレの傍らに立っていた。
つい先ほど村の柵の外にいたはずなのだが、まるで瞬間移動でもしたかと思えるようだ。
「会いたかったよ。無事で何よりだ」
こちらはもう一度話をしたい気分が半分、警戒心が半分というところだろうか。
「ところでアルタシャはあちらの人たちを助けたいと思っているのかな?」
そう言ってウルハンガはあくせくとこの村を引き払う準備に忙しい、兵士や農民たちへと視線を向ける。
「もちろんですよ。今までもそうしてきましたし、これからも同じです。もしもあなたが手助けしてくれると言うなら、嬉しいのですけどね」
「当然手助けはするよ。私はそのための存在だからね」
一見すると協力を確約してくれたように見えるけど、どう考えても額面通りの意味には受け止められないな。
「そのためにアルタシャには私について来て欲しいのだよ。それで彼らを含めた世界の全てを救う事が出来るのだから」
やっぱりそう来たか。もちろん彼の言葉に興味が無いと言えば嘘になるけど、今はもっと優先する事がある
「あいにくですけど、今はあなたに従うことは出来ませんよ」
ファザールにも言った通り、いつまでも同行する気は無い――特にテマーティンと顔を合わせたら『お持ち帰り』されてしまう危険性が大きい――にせよ、とりあえずは安全が確認出来るところまでは彼らに付き合うつもりだ。
「それではやっぱり、彼らをまだまだ苦しめるというのかい?」
メトゥサイラは理解に苦しむと言わんばかりに首をひねる。
「苦しめる……と言うのはあなたが前にも言っていたように、この世界には苦痛が満ちているので、ここから逃げても別の苦しみがあるという理屈ですか?」
「その通りだね」
不可思議な少年は悟りきったかのように頷いた。
「彼らはここから離れても、今以上の苦しみが待っているだけだろう。それなのにまだ苦しみ足りないのかな」
「それではここに残って殺されたらいいとでも言うのですか?」
「とんでもない。前にも言ったけど、死後の世界に安息を求めるのは、ただの逃避に過ぎないよ。今いる世界でどうにかせねば永遠に苦しみが続くだけだ」
言っていることは正論にも思えるけど、やっぱりどこか引っかかる。
以前に出会った時は、アンデッドになるのは『永遠の苦痛』だと言っていたけど、それではここでアンデッドの襲撃を撃退し、その多数を倒した事をどう思っているのだろうか。
「一つ聞きますけど、先ほどここで何があったのかはあなたも知っているのですよね?」
「もちろんだよ。アルタシャ達がアンデッドを多数破壊したのだね」
「それをあなたはどう思っているのです」
もしもメトゥサイラがアンデッド教団と何らかの関係があるのなら、反応があってしかるべきだろうか。
いや。この少年が本当に神やそれに準じる存在だとしたら、そうそうオレにその内面が分かる筈が無いだろうな。だが――
「そうだね……彼らの魂の安息を祈らずにはいられないよ」
メトゥサイラはそう言って痛ましい表情を浮かべる。
それは本当に真剣な様子であり、このオレでも一瞬、ハッとなる程だった。
「だけど私がいくら祈ったところで、彼らが安息を得られるかどうかは分からない。こんな時はつくづく己の無力をかみしめるしかないよ」
恐らくは騙され下級アンデッドにされて利用された挙げ句、捨て駒として使われてすりつぶされた人々の魂の平穏を願う、メトゥサイラのその態度には嘘が含まれているようには見えなかった。
本当に縁もゆかりもない人々の魂の行方を、まるで我が事のように気にしているらしい。
オレだって自分自身が偽善者としか思えないきれい事を口にしていると思う事はしばしばあるけど、それでも無関係な人間が下級アンデッドにされた事について、そこまで思いを馳せたことはない。
そういう意味ではオレよりもメトゥサイラの方がよっぽど世俗離れしているようだ。
それがこの近辺の一般人から彼が『お方』と呼ばれ、敬意を払われている理由なのかもしれないな。
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