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第16章 破滅の聖者
第644話 ファザール達と合流して
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テマーティンに対して今さら帰れと言ったところで『アルタシャが同行してくなければ帰らない』と言いだすのは分かっている。
もしもの時はオレが回復魔法をかけてどうにかするしかないし、たぶんテマーティンもそれを当てにしているのだろう。
だがそれでもなるだけ釘は刺しておかねばなるまい。
「とにかく。あなたはご自身の立場を考えて、危険なことは可能な限り避けて下さい」
「それならばアルタシャは危険を避けているのですか?」
「いえ……」
そりゃまあオレは危険を避けるどころか、自分から首を突っ込むのはしょっちゅうなのは誤魔化しようもない。
だがそんなオレの返答を聞いて、テマーティンは我が意を得たりと笑う。
「ならば私も同じですよ。愛しいあなたが危険に身を晒しているのを黙って見過ごすなど出来ませんね。そんな臆病者にはなりたくありません」
「勇気と無謀が違うように、慎重と臆病も別物ですよ」
「ならば私は勇気と慎重さを兼ね備えるように心がけるとしましょう」
さすが王子だけあってああ言えばこう言うな。
しかし敵がすぐ近くにいるのに、あれこれ議論しているわけにもいかない。
どう考えてもそちらの方が危ないからな。
「注意は怠らないで下さい。月並みな言葉ですけど、あなたの身はあなた一人だけのものではないのですからね」
「もしもアルタシャの身が私一人だけのものとなるのなら、喜んで全てを捧げますよ」
つい先ほどメトゥサイラや『2号』から人倫をぶっ飛ばした無茶な要求をされたので、大した事では無い気もするが、冷静に考えると王太子としてかなりの問題発言だな。
テマーティンとあれこれやり取りしていると、とりあえず周囲のアンデッド達は片付いた様子だ。
戦闘中に何もしていなかったのに、兵士達から文句を言われなかったのはやはり周囲の連中がテマーティンを腫れ物扱いしているのだろうな。
「とりあえずわたしは負傷者の手当をしてきます」
「その後はどうするつもりなのですか?」
「もちろんあなた方の言う『叛徒』が片付くまで協力はしますよ」
これは推測だけど、たぶんこの地から連中を追い払うまでなら、それほど手間はかからないはずだ。
しかしそれは残念ながら『虚ろなる者』の信徒や病の精霊を崇めるもの達を殲滅出来るという意味では無い。
奴らは別に『守るべき領土』だとかそんなものがあるわけではないからな。指導者達はとっとと逃げ出している可能性が高い。
犠牲になるのはしょせんこの地で騙されてアンデッドにされたり、病を恐れていやいや崇拝させられたり生け贄を捧げる羽目となったりした人たちだろう。
村から生け贄を捧げて『共犯』になってしまったら、どちらにしても罪人になるわけで、下手をすると『汚れ仕事』を引き受けただけなのに、他の村人からスケープゴートにされてつるし上げという可能性もあるのか。
ああ。想像するだけで気分がめいってくる。
それを考えると軽率ではあっても自ら危険を買って出るテマーティンの行為は美徳と言える面もあるのか。
少なくとも側近や部下泣かせではあっても、庶民からは支持されるのは間違い無い。
しかしテマーティンはオレのそういう悩みとは無縁に、むしろ脳天気と言えるような笑顔を注いでくる。
「その後はもちろん私と共に王都に来てくれるのですね」
「そこまでの約束はしていません」
ここでテマーティンに『お持ち帰り』されたら、また結婚しろとしつこく迫られるのは目に見えているからな。
そんなわけでオレが負傷兵の手当をしたところで、ファザール達がやってきた。
オレとしてはようやく一息つけるところだが、もちろんファザールは息せき切ってこちらに駆けつけてくる。
恐らく大声で文句を言いたいところだろうけど、建前上『テマーティン王子はここにはいない』事になっているので小声にならざるをえないらしい。
「さあ殿下。アルタシャ様のご無事は確認出来たのですから、早くお引き上げ下さい」
「しかしだな――」
「そこまでの約束だったはずです。まさかとは思いますが我が忠誠を捧げし王太子殿下は約束を破るようなお方ではありますまいな?」
ファザールに睨み付けられて、テマーティンは諦めた様子で肩を落とす。
「分かった。分かった。お前の言うとおりにする」
「それでよろしいのです」
とりあえず話がついたらしいのでオレはファザールに質問する。
「ところで戦況はどうなっていますか?」
「既にあちこちで戦闘が行われています。連絡を受けたところでは叛徒共が下級アンデッドや病の精霊で反撃はしていますが、大した抵抗はないようです」
「それはつまり足止めをしているだけと言う事ですね?」
「ご明察の通りです」
かなり強力な魔法使いもいたのに本気で戦っているとは思えないのは、たぶん指導者や魔法使いが逃げる時間を稼いでいるからだろう。
まず間違い無く他国の支配地域に逃げ込んで、そこにいる支持者と共にまた再起を企てる事だろう。
つくづく面倒だけど、やつらはそうやって自分達の勢力を長年維持してきたに違いない。
これをどうにかするには周辺国が揃って協力し、連中を一斉に追い詰めるしか手が無いのだが現状ではそれは出来ないので、その場しのぎで我慢するしかないのだ。
もしもの時はオレが回復魔法をかけてどうにかするしかないし、たぶんテマーティンもそれを当てにしているのだろう。
だがそれでもなるだけ釘は刺しておかねばなるまい。
「とにかく。あなたはご自身の立場を考えて、危険なことは可能な限り避けて下さい」
「それならばアルタシャは危険を避けているのですか?」
「いえ……」
そりゃまあオレは危険を避けるどころか、自分から首を突っ込むのはしょっちゅうなのは誤魔化しようもない。
だがそんなオレの返答を聞いて、テマーティンは我が意を得たりと笑う。
「ならば私も同じですよ。愛しいあなたが危険に身を晒しているのを黙って見過ごすなど出来ませんね。そんな臆病者にはなりたくありません」
「勇気と無謀が違うように、慎重と臆病も別物ですよ」
「ならば私は勇気と慎重さを兼ね備えるように心がけるとしましょう」
さすが王子だけあってああ言えばこう言うな。
しかし敵がすぐ近くにいるのに、あれこれ議論しているわけにもいかない。
どう考えてもそちらの方が危ないからな。
「注意は怠らないで下さい。月並みな言葉ですけど、あなたの身はあなた一人だけのものではないのですからね」
「もしもアルタシャの身が私一人だけのものとなるのなら、喜んで全てを捧げますよ」
つい先ほどメトゥサイラや『2号』から人倫をぶっ飛ばした無茶な要求をされたので、大した事では無い気もするが、冷静に考えると王太子としてかなりの問題発言だな。
テマーティンとあれこれやり取りしていると、とりあえず周囲のアンデッド達は片付いた様子だ。
戦闘中に何もしていなかったのに、兵士達から文句を言われなかったのはやはり周囲の連中がテマーティンを腫れ物扱いしているのだろうな。
「とりあえずわたしは負傷者の手当をしてきます」
「その後はどうするつもりなのですか?」
「もちろんあなた方の言う『叛徒』が片付くまで協力はしますよ」
これは推測だけど、たぶんこの地から連中を追い払うまでなら、それほど手間はかからないはずだ。
しかしそれは残念ながら『虚ろなる者』の信徒や病の精霊を崇めるもの達を殲滅出来るという意味では無い。
奴らは別に『守るべき領土』だとかそんなものがあるわけではないからな。指導者達はとっとと逃げ出している可能性が高い。
犠牲になるのはしょせんこの地で騙されてアンデッドにされたり、病を恐れていやいや崇拝させられたり生け贄を捧げる羽目となったりした人たちだろう。
村から生け贄を捧げて『共犯』になってしまったら、どちらにしても罪人になるわけで、下手をすると『汚れ仕事』を引き受けただけなのに、他の村人からスケープゴートにされてつるし上げという可能性もあるのか。
ああ。想像するだけで気分がめいってくる。
それを考えると軽率ではあっても自ら危険を買って出るテマーティンの行為は美徳と言える面もあるのか。
少なくとも側近や部下泣かせではあっても、庶民からは支持されるのは間違い無い。
しかしテマーティンはオレのそういう悩みとは無縁に、むしろ脳天気と言えるような笑顔を注いでくる。
「その後はもちろん私と共に王都に来てくれるのですね」
「そこまでの約束はしていません」
ここでテマーティンに『お持ち帰り』されたら、また結婚しろとしつこく迫られるのは目に見えているからな。
そんなわけでオレが負傷兵の手当をしたところで、ファザール達がやってきた。
オレとしてはようやく一息つけるところだが、もちろんファザールは息せき切ってこちらに駆けつけてくる。
恐らく大声で文句を言いたいところだろうけど、建前上『テマーティン王子はここにはいない』事になっているので小声にならざるをえないらしい。
「さあ殿下。アルタシャ様のご無事は確認出来たのですから、早くお引き上げ下さい」
「しかしだな――」
「そこまでの約束だったはずです。まさかとは思いますが我が忠誠を捧げし王太子殿下は約束を破るようなお方ではありますまいな?」
ファザールに睨み付けられて、テマーティンは諦めた様子で肩を落とす。
「分かった。分かった。お前の言うとおりにする」
「それでよろしいのです」
とりあえず話がついたらしいのでオレはファザールに質問する。
「ところで戦況はどうなっていますか?」
「既にあちこちで戦闘が行われています。連絡を受けたところでは叛徒共が下級アンデッドや病の精霊で反撃はしていますが、大した抵抗はないようです」
「それはつまり足止めをしているだけと言う事ですね?」
「ご明察の通りです」
かなり強力な魔法使いもいたのに本気で戦っているとは思えないのは、たぶん指導者や魔法使いが逃げる時間を稼いでいるからだろう。
まず間違い無く他国の支配地域に逃げ込んで、そこにいる支持者と共にまた再起を企てる事だろう。
つくづく面倒だけど、やつらはそうやって自分達の勢力を長年維持してきたに違いない。
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