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第17章 海と大地の狭間に
第663話 双子の目指すところとは
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オレはせまりくる醜悪な亡霊共を食い止めつつ、兄妹に向けて叫ぶ。
「とにかく今のうちに逃げましょう」
「しかしそこもとを置いて―――」
「大丈夫ですよ。一緒に参りますから」
面倒だけど、こいつらも所詮はかつて火山の噴火で命を落とした人間達の浮かばれぬ亡霊に過ぎないはず。
実際、数は多いけど個々の力はそうでもないし、これなら『霊体遮断』の持続時間は持ちこたえるのはさほど難しくは無い。
まあ普通の人間だったらその姿を見ただけで、恐怖で何も出来なくなるかもしれないけど、オレにとってはこんなの慣れっこなのだ。
いちいち放逐していてもキリが無いし、送り込んで来た相手にとってこんなのは手駒に過ぎない。ここはとっとと逃げるのが賢明な判断というものである。
「それでは先に行って下さい」
「わ、分かった。エレリアはどうだ?」
「アルさんのお陰ですっかり元気になりましたよ」
二人はオレの作った『霊体遮断』の防御壁で霊体達を食い止めている後ろから逃げていく。
先ほどオレが魔法をかけたことでエレリアはある程度元気になったようだ。
そんなわけでオレは双子と一緒に小さな家屋を後にする。
最悪の場合、周囲に外にも亡霊が埋め尽くされているとか、大勢の人間に包囲されているとかそういう事態も想定していたが、さすがにそこまでは無かったようだ。
しかしどのみちここにいるわけにはいかないから、どこか次の落ち着き先を探すしかないだろうな。
そんなわけで沈みつつある村を離れつつ、オレは双子に問いかける。
「すみません。お二人にはどこか行く当てがあるのでしょうか?」
「もちろん……」
「もちろんですとも」
この態度からしてやはり行き先を決めているのは、妹の方らしい。
そして彼女には何らかの確信はあるのだが、兄の方はそれを無条件に賛成しているわけではなくやや不安があるようだ。
これまでの態度からすると、兄は妹の言葉を疑ってはいない。つまり行く先は身体が丈夫では無い妹にとって不安な場所なのか、はたまた何らかの危険があるのか。
「そこにはこの地が海に沈むのを食い止める手がかりがあるのですね?」
「その通りです」
この態度からしてエレリアにはかなりの自信があるらしい。
しかしそれが兄以外の人間の支持を得られなかったとすれば、相応の理由があるはずだ。
「今後、同行するにあたって詳しい事をお教え下さいますか?」
「分かりました」
エレリアはここで僅かに微笑む。
これはひょっとすると今まで兄以外に彼女の言葉を聞き入れなかったのに『同士』を得られた喜びだろうか。
「それでは初めから説明させていただきますが、アルさんはこの地のことについてどこまでご存じですか?」
この問いかけに対し、オレは先ほど助祭から聞いた話をする。
「そこまでご存じならば、話は早いです。この地が海に沈みつつある事を、殆どの信徒は守護神である海の女王リーナ神と大地の王レリオン神のお力が弱まり、母神たる大海の貴婦人に圧倒されつつあるからだと考えています」
その言い方からするとエレリアの考えは違うらしい。
「このため教団は双子神の力を増すためとして、何世代も努力を積み重ね、結果として近親婚を繰り返してきた事は先ほどお教えした通りです」
「それでエレリアさんは別の方策を考えたのですね」
「いえ。あくまでも神の導きです。私が考えるなどおこがましい限りです」
ここでエレリアはどこかつかみ所の無い笑顔を浮かべる。
「双子神が両親から海と大地の力を供に受け継いでいながら、母なる海に呑み込まれつつあるのならば、父なる大地の力を増すべきなのです」
「それは分かりますが……」
もちろん元の世界の基準で考えれば、人間ごときが何をしようがどうにか出来る域を遥かに超えている。
しかしこの世界ではかつて出会った神造者のように、人間のやり方次第では、地域限定とはいえ空に輝く月だって作れるのだ。
そうすると『双子神の寵愛篤い』らしいこの兄妹が力を合わせれば、本当に大地の力を強めて地盤沈下を止める事が出来るかもしれない。
「具体的にはどうされるおつもりなのですか?」
「我らの聖地は幾つかあります。最大の聖地はご存じの大堤防ですが、それとは別に双子神がお生まれになった場所もあります。そこはかつて火山の神ボルカと大海の貴婦人が交わった聖なる土地なのです。そこに向かえば必ずや大地の力を増す事が出来るはずなのです」
確かに神の寵愛篤い人間が、守護神の聖地にてその力を復活させようとするのはよく聞く話だ――英雄譚だとむしろ邪神復活のパターンだけどな。
だけどそれでもいろいろと疑問が浮かんでくるぞ。
「しかしそんな神聖な場所ならば、双子神の教団もこれまでにもあなた方と同様の事に取り組んで来たのではありませんか? あとあなた方を探している人たちも大勢待ち受けているかもしれません」
「いいえ。それがあり得ない事は間違いありません」
「ああそうだ……周囲の連中も不可能だと誰もが反対した。しかしエレリアならば可能なはすだ」
いったいどういうことだ?
いや。こういう場合のよくあるパターンと言えば――
「もしや……その生誕の地がどこにあるのか今は誰も知らないのですか?」
「そうです。だからこそ我ら兄妹が失われた聖地を探し出し、大地の力を取り戻さねばならないのです」
エレリアは決意を込めて断言した。
「とにかく今のうちに逃げましょう」
「しかしそこもとを置いて―――」
「大丈夫ですよ。一緒に参りますから」
面倒だけど、こいつらも所詮はかつて火山の噴火で命を落とした人間達の浮かばれぬ亡霊に過ぎないはず。
実際、数は多いけど個々の力はそうでもないし、これなら『霊体遮断』の持続時間は持ちこたえるのはさほど難しくは無い。
まあ普通の人間だったらその姿を見ただけで、恐怖で何も出来なくなるかもしれないけど、オレにとってはこんなの慣れっこなのだ。
いちいち放逐していてもキリが無いし、送り込んで来た相手にとってこんなのは手駒に過ぎない。ここはとっとと逃げるのが賢明な判断というものである。
「それでは先に行って下さい」
「わ、分かった。エレリアはどうだ?」
「アルさんのお陰ですっかり元気になりましたよ」
二人はオレの作った『霊体遮断』の防御壁で霊体達を食い止めている後ろから逃げていく。
先ほどオレが魔法をかけたことでエレリアはある程度元気になったようだ。
そんなわけでオレは双子と一緒に小さな家屋を後にする。
最悪の場合、周囲に外にも亡霊が埋め尽くされているとか、大勢の人間に包囲されているとかそういう事態も想定していたが、さすがにそこまでは無かったようだ。
しかしどのみちここにいるわけにはいかないから、どこか次の落ち着き先を探すしかないだろうな。
そんなわけで沈みつつある村を離れつつ、オレは双子に問いかける。
「すみません。お二人にはどこか行く当てがあるのでしょうか?」
「もちろん……」
「もちろんですとも」
この態度からしてやはり行き先を決めているのは、妹の方らしい。
そして彼女には何らかの確信はあるのだが、兄の方はそれを無条件に賛成しているわけではなくやや不安があるようだ。
これまでの態度からすると、兄は妹の言葉を疑ってはいない。つまり行く先は身体が丈夫では無い妹にとって不安な場所なのか、はたまた何らかの危険があるのか。
「そこにはこの地が海に沈むのを食い止める手がかりがあるのですね?」
「その通りです」
この態度からしてエレリアにはかなりの自信があるらしい。
しかしそれが兄以外の人間の支持を得られなかったとすれば、相応の理由があるはずだ。
「今後、同行するにあたって詳しい事をお教え下さいますか?」
「分かりました」
エレリアはここで僅かに微笑む。
これはひょっとすると今まで兄以外に彼女の言葉を聞き入れなかったのに『同士』を得られた喜びだろうか。
「それでは初めから説明させていただきますが、アルさんはこの地のことについてどこまでご存じですか?」
この問いかけに対し、オレは先ほど助祭から聞いた話をする。
「そこまでご存じならば、話は早いです。この地が海に沈みつつある事を、殆どの信徒は守護神である海の女王リーナ神と大地の王レリオン神のお力が弱まり、母神たる大海の貴婦人に圧倒されつつあるからだと考えています」
その言い方からするとエレリアの考えは違うらしい。
「このため教団は双子神の力を増すためとして、何世代も努力を積み重ね、結果として近親婚を繰り返してきた事は先ほどお教えした通りです」
「それでエレリアさんは別の方策を考えたのですね」
「いえ。あくまでも神の導きです。私が考えるなどおこがましい限りです」
ここでエレリアはどこかつかみ所の無い笑顔を浮かべる。
「双子神が両親から海と大地の力を供に受け継いでいながら、母なる海に呑み込まれつつあるのならば、父なる大地の力を増すべきなのです」
「それは分かりますが……」
もちろん元の世界の基準で考えれば、人間ごときが何をしようがどうにか出来る域を遥かに超えている。
しかしこの世界ではかつて出会った神造者のように、人間のやり方次第では、地域限定とはいえ空に輝く月だって作れるのだ。
そうすると『双子神の寵愛篤い』らしいこの兄妹が力を合わせれば、本当に大地の力を強めて地盤沈下を止める事が出来るかもしれない。
「具体的にはどうされるおつもりなのですか?」
「我らの聖地は幾つかあります。最大の聖地はご存じの大堤防ですが、それとは別に双子神がお生まれになった場所もあります。そこはかつて火山の神ボルカと大海の貴婦人が交わった聖なる土地なのです。そこに向かえば必ずや大地の力を増す事が出来るはずなのです」
確かに神の寵愛篤い人間が、守護神の聖地にてその力を復活させようとするのはよく聞く話だ――英雄譚だとむしろ邪神復活のパターンだけどな。
だけどそれでもいろいろと疑問が浮かんでくるぞ。
「しかしそんな神聖な場所ならば、双子神の教団もこれまでにもあなた方と同様の事に取り組んで来たのではありませんか? あとあなた方を探している人たちも大勢待ち受けているかもしれません」
「いいえ。それがあり得ない事は間違いありません」
「ああそうだ……周囲の連中も不可能だと誰もが反対した。しかしエレリアならば可能なはすだ」
いったいどういうことだ?
いや。こういう場合のよくあるパターンと言えば――
「もしや……その生誕の地がどこにあるのか今は誰も知らないのですか?」
「そうです。だからこそ我ら兄妹が失われた聖地を探し出し、大地の力を取り戻さねばならないのです」
エレリアは決意を込めて断言した。
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