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第17章 海と大地の狭間に
第666話 聖地の近くにて
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そんなわけでオレ達一行は田園地帯の外れの地域に足を踏みいれる。
見たところ既に干拓地ではなくなっており、人口もかなりまばらになっているようだが、点在している小さな農村は周囲を土塁や柵で囲っていて、外敵に侵入に備えた様子がうかがえる。
どうやら双子神の支配地域ではなくなってきたようだ。
そしてここで緊張と供に、エレリアは声をかけてくる。
「もうすぐ聖地に近づきますが、アルさんもくれぐれも注意して下さい」
「教団からの追っ手がありうるのですか?」
エレリアたちの話を聞いていれば、当然ながら行き先は見当がつくわけだ。
双子神の教団が反対ならば、前もって信徒たちを送り込んで、身柄を抑えにくる事は十分に考えられる。
普通の人間ならば恐ろしいのは『地の底に呼ぶもの』のような亡霊供だろうけど、オレの場合は人間の方がよっぽど厄介だ。
暴力的な活動を抑止する『調和』を使えば、戦闘は避けられるけど、相手を撃退出来るわけではないから、大勢で追いかけられたら面倒事は避けられない。
どうしても人目を避けてこそこそと行動するしか無いが、何しろエレリア・ガレリアの双子は美形なのはまだしも同じ顔をしているのでとにかく目立つ。
もちろんオレの方はこの二人を足したより、更に目立つ容貌だ。
一度見たら忘れられない風体の人間が三人揃っていたら、そうそう隠しおおせるものではないぞ。
これまでもなるだけ人目につかないように行動はしてきたつもりだが、それで簡単に追っ手を振り切れるものではないのだ――なにしろオレ自身、付きまとう追っ手のためにどれだけ苦労してきた事か。
「それもありますが、何しろ行く先にある冒涜された聖地がいまどのようになっているのかは、よく分かっていないのです。そのような場所に敢えて近づく信徒が殆どいませんし、双子神の信徒で無いものがどのように考えているのかも分かりません」
確かに自分達が信仰していない神様の寺院が数百年前、このあたりにありました、と言われてもオレだって特に意識はしないだろうな。
「あと双子神を敵視する者も少なくは無いと聞き及んでいます」
こういう勢力が入り組んだ場所に入り込む羽目になるのは過去何度もあったけど、やっぱり慣れはしないものだな。
しかしエレリアの脳裏にその聖地の光景がイメージとして浮かんでいるとしても、いま現在その地がどうなっているかは分からない。
見る角度が少し違うだけでも、まるで別に見えてしまう事は十分にありうるからな。
そうするとやはり何らかの魔法的なものがないと、目的地を見つけるのは困難ということでもある。
しかしそれについて当てがあるわけでもないし、やっぱり現地に近づいて確認するしかないのは確かだろう。
そんな事を考えつつ歩いていると、オレ達の進む道の前方から騎馬に乗って兜をかぶり、槍を持って武装した相手がこちらに向けて駆けてくるのが目に入った。
もちろん別に目当てがオレ達ではないかもしれないが、ひとまずオレが先行して確認するべきだろうな。
「あの――」
オレが口を開きかけたところで、ガレリアが宣言する。
「ひょっとすると俺達を探している相手かもしれん。あれは俺が相手をするからお前達は隠れているんだ」
どうやらガレリアもオレと同じ事を考えていたらしい。
「アルはエレリアの事を頼みたい」
「いえ。待って下さい。ここはわたしの方が適任でしょう」
「何を言う。妹はもちろんアルも俺が守るのが当然だろう」
うう。それはありがたい心遣いではあるのだけど、残念ながら迷惑です。
「武器を持った相手に対し、アルを矢面に立たせるなど出来るはずが無かろう」
ガレリアも一応は小剣を腰に差して武装しているけど、一般人ならともかく槍を持った騎兵の相手など出来るものではないだろう。
それでも妹やオレを守るために身体を張ろうとしているのだから、確かにいわゆる『いい男』ではある。
しかしこのままではラチがあかない。
やっぱり前もって俺の能力について説明しておくべきだったと、今さらながらに後悔するがこうなったらオレの方が折れるしか無いか。
「それではとりあえずエレリアさんはわたしと一緒に――」
そこまで口にしたところで、やってきた騎馬の方から声が飛んでくる。
「そこのもの達。止まれ!」
うわあ。手遅れか。まあいい。
とにかく今は相手がオレ達を探しているのではない事を祈るしかないか。
まあ相手は一人だけだから、もし敵対してきてもオレの魔法でどうにかなるけど、なるだけ穏便に済ませたい。
そういうわけなので騎馬が迫ってくる間にガレリアに改めて願う。
「ここはわたしがあの人の相手をします。ガレリアさんはエレリアさんをお願いします」
「だから――」
「あちらは今すぐこちらを攻撃してくる様子はありません。それに失礼ですけど、お二方は外の世界についてあまりご存じないのでしょう? ここはわたしが相手をした方がいいですよ」
オレのこの言葉を聞いて、ガレリアも肩を落とす。
「確かに……言われて見ればその通りだ。だがもしもの時はいつでも俺を呼んでくれ」
「分かりました」
まあ『もしもの時』でもガレリアを当てにする事はまず無いと思うけど、今はとりあえずあわせておくしかない。
そしてオレは眼前に止まった騎兵に向き直る事となる。
見たところ既に干拓地ではなくなっており、人口もかなりまばらになっているようだが、点在している小さな農村は周囲を土塁や柵で囲っていて、外敵に侵入に備えた様子がうかがえる。
どうやら双子神の支配地域ではなくなってきたようだ。
そしてここで緊張と供に、エレリアは声をかけてくる。
「もうすぐ聖地に近づきますが、アルさんもくれぐれも注意して下さい」
「教団からの追っ手がありうるのですか?」
エレリアたちの話を聞いていれば、当然ながら行き先は見当がつくわけだ。
双子神の教団が反対ならば、前もって信徒たちを送り込んで、身柄を抑えにくる事は十分に考えられる。
普通の人間ならば恐ろしいのは『地の底に呼ぶもの』のような亡霊供だろうけど、オレの場合は人間の方がよっぽど厄介だ。
暴力的な活動を抑止する『調和』を使えば、戦闘は避けられるけど、相手を撃退出来るわけではないから、大勢で追いかけられたら面倒事は避けられない。
どうしても人目を避けてこそこそと行動するしか無いが、何しろエレリア・ガレリアの双子は美形なのはまだしも同じ顔をしているのでとにかく目立つ。
もちろんオレの方はこの二人を足したより、更に目立つ容貌だ。
一度見たら忘れられない風体の人間が三人揃っていたら、そうそう隠しおおせるものではないぞ。
これまでもなるだけ人目につかないように行動はしてきたつもりだが、それで簡単に追っ手を振り切れるものではないのだ――なにしろオレ自身、付きまとう追っ手のためにどれだけ苦労してきた事か。
「それもありますが、何しろ行く先にある冒涜された聖地がいまどのようになっているのかは、よく分かっていないのです。そのような場所に敢えて近づく信徒が殆どいませんし、双子神の信徒で無いものがどのように考えているのかも分かりません」
確かに自分達が信仰していない神様の寺院が数百年前、このあたりにありました、と言われてもオレだって特に意識はしないだろうな。
「あと双子神を敵視する者も少なくは無いと聞き及んでいます」
こういう勢力が入り組んだ場所に入り込む羽目になるのは過去何度もあったけど、やっぱり慣れはしないものだな。
しかしエレリアの脳裏にその聖地の光景がイメージとして浮かんでいるとしても、いま現在その地がどうなっているかは分からない。
見る角度が少し違うだけでも、まるで別に見えてしまう事は十分にありうるからな。
そうするとやはり何らかの魔法的なものがないと、目的地を見つけるのは困難ということでもある。
しかしそれについて当てがあるわけでもないし、やっぱり現地に近づいて確認するしかないのは確かだろう。
そんな事を考えつつ歩いていると、オレ達の進む道の前方から騎馬に乗って兜をかぶり、槍を持って武装した相手がこちらに向けて駆けてくるのが目に入った。
もちろん別に目当てがオレ達ではないかもしれないが、ひとまずオレが先行して確認するべきだろうな。
「あの――」
オレが口を開きかけたところで、ガレリアが宣言する。
「ひょっとすると俺達を探している相手かもしれん。あれは俺が相手をするからお前達は隠れているんだ」
どうやらガレリアもオレと同じ事を考えていたらしい。
「アルはエレリアの事を頼みたい」
「いえ。待って下さい。ここはわたしの方が適任でしょう」
「何を言う。妹はもちろんアルも俺が守るのが当然だろう」
うう。それはありがたい心遣いではあるのだけど、残念ながら迷惑です。
「武器を持った相手に対し、アルを矢面に立たせるなど出来るはずが無かろう」
ガレリアも一応は小剣を腰に差して武装しているけど、一般人ならともかく槍を持った騎兵の相手など出来るものではないだろう。
それでも妹やオレを守るために身体を張ろうとしているのだから、確かにいわゆる『いい男』ではある。
しかしこのままではラチがあかない。
やっぱり前もって俺の能力について説明しておくべきだったと、今さらながらに後悔するがこうなったらオレの方が折れるしか無いか。
「それではとりあえずエレリアさんはわたしと一緒に――」
そこまで口にしたところで、やってきた騎馬の方から声が飛んでくる。
「そこのもの達。止まれ!」
うわあ。手遅れか。まあいい。
とにかく今は相手がオレ達を探しているのではない事を祈るしかないか。
まあ相手は一人だけだから、もし敵対してきてもオレの魔法でどうにかなるけど、なるだけ穏便に済ませたい。
そういうわけなので騎馬が迫ってくる間にガレリアに改めて願う。
「ここはわたしがあの人の相手をします。ガレリアさんはエレリアさんをお願いします」
「だから――」
「あちらは今すぐこちらを攻撃してくる様子はありません。それに失礼ですけど、お二方は外の世界についてあまりご存じないのでしょう? ここはわたしが相手をした方がいいですよ」
オレのこの言葉を聞いて、ガレリアも肩を落とす。
「確かに……言われて見ればその通りだ。だがもしもの時はいつでも俺を呼んでくれ」
「分かりました」
まあ『もしもの時』でもガレリアを当てにする事はまず無いと思うけど、今はとりあえずあわせておくしかない。
そしてオレは眼前に止まった騎兵に向き直る事となる。
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